正式名称を「経済財政運営と改革の基本方針」と称する俗称「骨太の方針」は、各官庁の来年度の予算獲得の根拠となるため、政府の重要な政策方針決定事項である。しかし政府が6月16日に閣議決定した方針は与党の要望の羅列感が強く、歳出面でコロナ禍のばらまきから平時に戻すと謳うが、緩んだ規律を戻す具体策は示されておらず、相変わらずばらまきの様相を呈している。国の借金は12700兆円を越しているのに、金は印刷すればいくらでもあるとばかりに、各省の要求する予算項目が並んでいる。
政府はこれまで2025年度のプライマリーバランス(PB)黒字化を主張していたが、達成不可能なことは明らかである。政府が力を入れる防衛費や少子化対策の一部が国債発行で賄われるようになる可能性が極めて高く借金は更にに増えるであろう。2025年度以降の中長期的な経済財政の枠組みについては、2024年度に改めて検証する方針が原案で示されているが、これは問題先送り以外の何物でもない。
早期にPB黒字化目標を2025年度からより現実的な2030年度に修正したうえで、黒字化達成の具体策を示すのが本来のやり方だと思うが、これまでの政府の方策は経済成長率を3%以上とありそうにもない高い目標に設定して高い税収を当てにしており、身を切る改革には本腰が入っていない。このまま、国の赤字が増え続けるとどうなるのか、心配する声は国会から聞こえてこない。
国防費の増額、少子化対策に必要な財源は確定しておらず、消費税や所得税等の税金の増額は選挙を意識して二の足を踏み、これほど膨らんだ借金を多少増やしたところで今更問題は増えないと赤字国債の発行で政府はお茶を濁すつもりであろう。
国の借金のGDPに対する割合は2倍以上で、このような借金大国は先進国の中でも日本だけだ。崖っぷちにあるにも拘らず、日本の株価が異常に高いのは外国の大口投資家のマネーゲームが影響しているからだそうだ。日本の株式は日銀を始めとする公的な機関が支えており、暴落するリスクは低く、安心してマネーゲームに参加できるのであろう。
岸田首相が力を入れる異次元少子化対策も日本の将来を心配しての対策の筈だ。出生率の向上のため各種の支援が予定されているが、安心して子どもを産むことのできる環境の整備も当然なすべきだ。将来、ハイパーインフレ、酷税大国等とならないように財政健全化を少しでも進めるべきであろう。
2023.06.21(犬賀 大好ー924)