自民党の最大派閥「安倍派」が後継の会長選びで迷走している。安倍氏の亡き後、安倍派は塩谷立氏と下村博文氏の両氏を会長代理とした。内閣改造・党役員人事が来月11~13日の間にも行われるとの見方が強まる中、8月10日、派閥の新体制について両氏は会談したそうだ。内閣改造の際に安倍派から多くの人間を登用させるためには、岸田首相に安倍派から圧力を高める必要があり、そのためには一致団結する必要があるとの点では一致するが会長選びの点では異なるようだ。
塩谷氏は事実上の代表と位置づける「座長」に自身が就く案を主張する一方、下村氏は会長の選任を求めて互いに譲らず、平行線に終わったそうだが、二人の主導権争いはどちらかが退かない限り続くであろう。正に同床異夢の関係である。
現在、自民党の派閥は、安倍派100名、麻生派55名、茂手木派54名、岸田派46名、二階派42名、その他であり、安倍派は党内最大派閥であり、一致団結すれば怖いもの無しの筈である。そこの会長になれば総裁、更に首相への道の最短距離となるが、それだけに誰もが主導権を握りたいのである。
森元首相は現在は政治家を引退しているその影響力を誇示するためか、塩谷立会長代理の昇格案を示したが、同派中堅若手などの反対で頓挫したことがある。最近の森氏の頭には安倍氏の後継候補として萩生田、世耕、松野、西村、高木の5人がいるようだが、3月23日、森氏は「どこかで誰か一人、代表を決めなければならない」と述べたが、その中の誰かには決めかねている。誰か一人に決めれば、他の4人は同年代であるため総裁の座から遠ざかり、それ故簡単に納得できる筈が無い。派の分裂は森氏の影響力を低下させることになり、決めかねるのは当然であろう。
8月はじめに実施されたある世論調査で、岸田総理大臣の次の総理にふさわしい自民党議員は誰かを聞いたところ、石破元幹事長が16%でトップとなり、2位河野太郎、3位小泉進次郎で、5位に岸田文雄が入ったそうだ。最大派閥の安倍派が会長を決められない状況では、安倍派から次の総裁候補も思い浮かばないのであろうが、岸田首相にとって勿怪の幸いである。安倍政権下で辣腕を振るった二階元幹事長であればこのような状況下では腕がむずむずしているに違いないが、岸田派には二階氏のような古だぬきは居そうにない。
岸田首相は4日夜、東京都内の日本料理店で石破茂元幹事長と会食したようだ。石破氏はかって首相候補として名乗りを上げたことがあるが、最近では石破派も解散し、すっかり大人しくなっている。首相と石破氏とは決して仲良くなさそうであるが、マイナンバーカード問題などで内閣支持率が低迷する中、政権運営などで意見交換したようである。ひょっとすると9月の内閣改造で石破氏の閣僚登用があるかも知れない。
2023.08.16(犬賀 大好ー938)