少子高齢化社会の真っただ中、サービス業界での人手不足は深刻なようだ。現在話題の2024年問題とは、働き方改革関連法によって来年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることから発生する諸問題だ。一般的に時間外労働は、労働基準法で原則月45時間、年間360時間と規定されているが、物流・運送業界は、事業や業務の特性上別の扱いとなり、ほとんど労働基準法は無視されてきた。
観光バス、タクシー運転手や物流トラックドライバーは個人で運転することが多く、労働時間を正確に認定することが難しい背景もあり、労働基準法は軽視されてきたが、少子高齢化時代で人材を大切の扱う時代となったのだ。しかし、これまで労働基準法の適用が難しいとされた特殊性をどのように解決するのかまで筆者はよく理解していない。
兎も角、少子高齢化の時代で労働人口の減少に伴う人材不足で長時間労働が常態化している現状を改善しよう言う訳で結構な話だ。これにより労働環境は改善されるかも知れないが人材不足の対策とはならず、物流コストが大幅に上昇するだけでなく、一部で貨物が運べなくなる事態が発生すると懸念されている。
ある調査によれば、2040年には1,100万人余りの労働者が不足し、特にドライバーについては労働需要に対する不足率が24.2%に及ぶとの話だ。トラックドライバーの有効求人倍率は、2022年では2倍前後の高い水準で推移しており、求職者よりも求人数が多い状態が続いている。観光バスやタクシー運転手の減少は余りそれらを利用しない者にとって大きな受けないが、路線バスの運転者の減少は、バスの運転間隔の長時間化やバス路線そのものの廃止となり、生活にも支障が生ずる。また最近ネット通販が盛んになって注文すれば翌日配達等、買い物に非常に便利になっており、宅配業者の減少は生活にも大きな影響が出ると思われる。
人材不足対策として、物流ロボットの活用による仕分け作業等の効率化、採用する人材の対象範囲を拡大して女性や外国人の積極的採用、競合する業者間の共同配送の実施等、物流アウトソーシングの活用等が検討されている。物流アウトソーシングの典型が出前館やウーバーイーツ等であろうが、このような新たな職種は常識に取れわれる高齢者には驚きだ。宅配業務にも物流アウトソーシングの活用が始まるかも知れず、世の中どんどん変化しそうだ。
また、物流・運送業同様、時間外労働の上限が一般則と異なる業界には建設事業や医師なども挙げられている。大阪万博は建設工事が大幅に遅れ開催に間に合うか騒がれている。これまで24時間突貫工事で間に合わせると言う手法がよく使われてきたが、今回の規制で使えなくなり、建設業界は除外するように政府に働きかけているようだ。しかし、世の流れに逆行する動きに政府は及び腰だし、政府は政治資金規正法の問題でそれどころではないだろう。2023.12.17(犬賀 大好ー969)