ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して12月24日で1年10か月になる。ウクライナ軍は23日、東部ドネツク州の拠点、アウディーイウカの周辺でロシア軍が30回余り攻撃を繰り返すなど、東部や南部で激しい戦闘が続いていると明らかにした。この攻撃にはロシア大統領選挙でプーチン現大統領が戦争開始を正当化し、戦争有利を誇示するために犠牲を顧みない繰り返し攻撃がなされているとのことだ。
ロシア大統領選挙は来年2024年3月15日から17日までの3日間投票が行われる。プーチン大統領は与党の代表としてではなく、無所属で立候補する。国民全体の大統領という点を強調するためのようで、投票率70%、得票率80%という極めて高い目標での圧勝を狙っている。そのため、少しでも敵対するような候補者を徹底して排除する方針のようだ。
ロシアの中央選挙管理委員会は23日、ロシア大統領選への出馬を目指していた無所属の女性候補エカテリーナ・ドゥンツォワ氏の立候補届け出の受理を拒否した。AP通信によると、書類に人名の誤字など約100の不備があったことが理由だという。彼女が、ウクライナ侵略に批判的な動員兵の母親や妻らの間で支持が広がることをプーチン政権が危惧した為と思われる。一見民主主義を装っているが、実体は専制主義であり、ロシア国民も気が付いてはいるが、プーチン無き後の混乱を恐れているため仕方のない選択とのことだ。専制体制の末路に混乱が生ずることはロシア国民は歴史で学んだ筈だったが。
米紙ニューヨーク・タイムズは23日、ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領が最近、ウクライナ東・南部4州の占領地域を維持した上での「停戦」に関心を持っているようだと報じた。プーチン氏は、・戦況の停滞、・米欧の支援疲れ、等により、停戦の機会が生まれたと考えていると言う。しかし、これは本当に停戦意思がある訳ではなく、支援疲れが生まれつつある西側諸国へのゆさぶりと見る方が適切とのことだ。
ウクライナ側の支配的な認識では、仮にロシア軍がウクライナ国内に残る状況で停戦交渉を行えば、ロシア軍が態勢を整えて再侵攻を準備する恐れもあり、このため、一人でも多くのロシア兵を国境外まで押し出した状況でなければ、停戦交渉は意味を持たないと言うのが、一般的である。
一方のロシア側は、ウクライナ東部・南部4州とクリミアがロシアに併合されたことをウクライナが認めることが、大前提であるという立場を崩していない。
兎も角、現時点で停戦して和平交渉に入る可能性は、ウクライナとロシアの双方に存在していない。しかし、この紛争の行きつく先はどこにあるのだろう。西側諸国の支援疲れから、ロシアに有利な停戦交渉が進むのではないかと勝手に思うが、そこでプーチン大統領が勝ちロシア国民が喜んだとしても、プーチン専制の終焉後に起こるであろうロシア国内の大混乱をロシア国民は予想しているだろうか。
2023.12.27(犬賀 大好ー971)