現在日本は少子高齢化社会の真っただ中にあり、人手不足がいよいよ深刻な状況になってきたようだ。しかし、ハローワークの昨年11月の統計をみると、有効求人倍率は1.28倍であり、前月を0.02ポイント下回り、特に人手不足の兆しが見られない。ハローワークを介さない求人に関してはこの統計に含まれておらず、人手不足は、建設業、医療福祉、飲食業界、運送流通業界、IT業界で顕著となっているとの話だ。特に、流通業におけるドライバー不足は2024問題として予てより取り上げられているし、また、建設業における人手不足は能登被災地や大阪万博建設においても取り上げられている。
日本の国内だけでは人手不足を補えない為、外国人労働者に頼らざるを得なくなっている現状のようだ。政府は、これまで単純労働の人手不足を技能実習制度で対応してきたが、その弊害も目立つようになってきたため、いくつかの改善を試みている。
その一つは単純労働者を対象とした技能実習制度の育成就労制度への移行である。育成就労制度の法律化は今国会でなされる筈であったが、今国会は裏金問題で大騒ぎでありそれどころではなく、成立はもっと遅くなりそうだ。この制度においては、基本的に3年で一定の専門性や技能を持つまでに育成し、専門の知識が求められる特定技能制度へと移行させる。また、これまで原則できなかった「転籍」は、1年以上働いたうえで、一定の技能と日本語の能力があれば同じ分野に限り認めることにする予定とのことだ。
技能実習制度と一体であった特定技能制度は引き続き存続し、日本への永住につながる「2号」の対象は現在、建設業の他、農業、漁業、飲食料品製造、外食等、11分野に広げる予定のようだ。いよいよ日本の人手不足が本格化し、外国人労働者に頼らざるを得なくなり、外国人にとって魅力ある職場作りに変質させる必要に迫られてきているのだ。
特定技能制度1号では家族同伴は許されなかったが、2号では許される為、近年異常な円安で日本で働く価値が低下したとは言え、安心・安全な生活が送れる日本への希望が増加することに期待が込められている。
日本で働くための資格制度は「出入国管理及び難民認定法」に定められており、在留資格の種類は29種類もあり、それぞれ人材獲得の為の工夫をしている。しかしかって程の日本の魅力は無くなり、日本への永住権の魅力も低下しているようだ。日本の魅力は安心・安全な生活が送れることだと思うが、最近金銭的な面がその魅力を半減させているようだ。
アメリカの転職情報サイト「levels fyi」の報酬レポート「Pay Report 2022」では、ソフトウエアエンジニアの年間報酬の中央値が、世界の主要都市別に示されている。それによると、サンフランシスコは23.4万ドル。1ドル=140円換算で約3200万円。これが東京だと6.9万ドルに過ぎない。シンガポールでも9.0万ドル、香港でも8.5万ドル、上海でも8.6万ドルと東京より高い。日本の報酬は、中国・上海より低いのだ。
これは一例に過ぎないが、海外に出稼ぎに行く若者が増えているとの話を聴くと、日本の金銭的な魅力はどんどん減っていると実感する。
2024.02.24(犬賀 大好ー986)