日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本の緊急事態とは

2016年04月13日 09時04分43秒 | 日々雑感
自民党は憲法に緊急事態条項が必要だという。自民党の憲法改正案では、「第9章緊急事態」の98条で緊急事態宣言が可能であることを、99条で「緊急事態の際には内閣は法律と同等の政令を制定できる」などを定めているのだ。有事や大規模災害などが発生した場合、緊急事態の宣言を行い、内閣総理大臣等に一時的に緊急事態に対処するための権限を付与することができることなどを規定したいそうだ。

この条項が無かったためにこれまで差しさわりがあったでのあろうか。東日本大震災直後の 東京電力福島第1原発事故では、当時の民主党の菅総理大臣が対応に追われて右往左往した。何しろ日本始まって以来の出来事である。しかし、権限が無いばかりに対応が遅れたとの指摘はこれまで聞いたことが無い。

ただ、事故後の復旧の際、私有の故障車が道路を塞ぎ、交通の邪魔になったとの話はあった。故障車と言え、私有の財産であるため勝手に移動できないとの理由からであった。この場合の私有財産の制限は憲法で定めるほどの話では無く、法律や条例のレベルの話であろう。

政府は、緊急事態を武力攻撃等の手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態または当該行為が発生する明白な危険が切迫している事態で、国家として緊急に対処することが必要な事態と説明している。なるほど、将来のリスクに対して、対処法を考えておくことは必要であろう。

例として、・原子力発電所などが破壊攻撃された場合、・生物剤や化学剤が大量に散布された場合、・航空機などにおける自爆テロなどが発生した場合、等を挙げているが、現在ヨーロッパ各国で多発しているテロ行為が日本に及んだ場合を想定しているようだ。

現時点でテロが発生した場合、大規模な自然災害が発生した場合と同様に、内閣に緊急対策室が設けられて対策が練られるであろうが、今以上の首相権限の強化が必要であろうか。

中国軍が尖閣諸島に上陸した場合、北朝鮮が日本にミサイルを撃ち込んでくる場合を事例として、流石に挙げてはいないが、本心はそこにあるだろう。既に集団的自衛権の行使容認をしているが、自衛隊の軍隊化等と繋がった考えであることには間違いない。日本が直面する緊急事態とは、外国が攻め込んで来ることより、1兆円を超える国の借金と異次元緩和で膨らんだ350億円を超える日銀保有の国債だ。国内の難問から目を逸らすために外に敵を作ることは某国でよく使う手だと、他人事のように話題にするが、決して他人事ではない。

 さて、1919年、制定されたドイツ共和国のワイマール憲法にはこの緊急事態条項と似た条項が定められていた。ワイマール憲法は、 国民主権、男女平等の普通選挙の承認に加えて、新たに所有権の義務性、生存権の保障などを規定し、20世紀の民主主義憲法の典型とされる理想的な憲法となる筈であった。しかし、同憲法は「危機に際して国家元首の権限を拡大する『緊急命令発布権』」も認めていた。悪名高きナチスは、第一次世界大戦後の混乱に乗じたとは言え、この憲法を盾に絶対的権力を掌握し、ホロコースト等を行った。権力の集中は恐ろしいことだ。

 安部首相は、これまで憲法違反と言われた集団的自衛権の容認に踏み切ったし、今回、消費税10パーセント化の再先延ばしを言い始めた。首相は、己の信念に基づく行動であろうが、世論はとにかくうるさく、いちいち文句をつけると思っているだろう。4月5日、ついに日経平均1.6万円を割り込み、アベノミクスは暗礁に乗り上げた感である。先の緊急事態条項があれば、今や日本はリーマンショック級の大不況だと宣言し、首相の権限強化を図りたいと思っているのかも知れない。
2016.04.13(犬賀 大好-224)

消費増税の先送りを想う

2016年04月09日 09時43分25秒 | 日々雑感
 安部首相が来年4月の消費税率10%への引き上げを再延期するのではないか、との観測が広がっている。首相は「リーマン・ショック、大震災級の事態にならない限り、消費税は引き上げる」と明言し、2014年11月予定の消費税10%の引き上げを1年半延長して、衆院解散に踏み切った。日経平均も2万円を超える時もあり、アベノミクスの成果と胸を張ったこともあったが、4月1日にはついに1.6万円台となり、アベノミクスに暗雲が立ちこめてきた。

 今年5月に開催予定のサミットに向けて、世界の経済状況を勉強しようと、世界的に著名な経済学者を招いて国際金融経済分析会合を開いたが、そこで有益な情報が得られたであろうか。世界不況脱却のためのいろいろな提言があったようであるが、アベノミクスの起死回生となる妙案は消費増税の見送りしか思い浮かばなかったのであろうか。

 政府は、社会保障と税の一体改革の中で、消費増税による4兆円を超える税収分を子育てや介護などの社会保障の充実策に充てることにしている。しかし、消費増税を実施した場合の国内総生産(GDP)の成長率への影響は0.7%程度低下になるとし、そこで税収が減少したのでは本末転倒になるとし、再見送りしようとしている。これはアベノミクスが失敗であったことに繋がるが、そんなことより、夏の参院選で勝つことが最優先と考えているようである。

 14年の増税延期決定後、欧米の主要格付け会社は相次いで日本国債を格下げし、「シングルA]相当にした。再度延期になれば、一段の格下げが現実となる。日本国債の世界における信頼度も一層低下することになるが、日本国債のほとんどは日本人の所有だとして、世界における信頼の失墜などどこ吹く風と問題にしていないようだ。

 自民党は消費税10%化に伴い軽減税率の導入に関して当初は導入に否定的であったが、公明党からの強い要望によりその導入が決まったらしい。この導入により小売り業者の事務手続きの煩雑さや、税収不足を補う財源の確保が課題として残こされたが、それにも増して公明党との連合は重要なことであろうか。

 そこで勘繰るに、首相の頭の中には、既に消費増税先送りや衆参同日選挙の思惑があったのではないかと思われる。すなわち、消費税の再先送りを掲げ、衆参同一選挙を行えば、再び自民党は大勝利し、公明党の支援なしに政権運営が可能と思っているに違いない。その時、軽減税率を撤回すればリーダシップが発揮されたと世の人気が上がるとの腹積もりであろう。

 2014年末、安部首相は消費増税の先送りを公約に掲げ、衆議院を解散し選挙に圧勝した。これまで増税を選挙公約にして勝った例は無いようであり、先送りとはいえこの定説を裏打ちした。

 夏の参院選でも勝つためには、増税を再先送りする必要がある。増税を再先送りの手はもうこれ以上使用できない。それならば、いっそのこと衆議院もついでに解散してしまおう。増税先送りと衆参同時選挙で自民党は大勝だ。アベノミクスが頓挫でも首相の座は当分安泰だ。こんなストーリを描いているのではなかろうか。

 確かに、選挙民は増税に弱い。しかし、税と社会保障の一体化の必要性はよくわかっている。柳の下に2匹目の泥鰌がいると思ったら大間違いだ。
2016.04.09(犬賀 大好-223)

国際金融経済分析会合の成果

2016年04月06日 09時33分08秒 | 日々雑感
 政府は、本年5月に開催されるG7サミットの議長国として、現下の世界的な経済状況に適切に対応するため、世界の経済・金融情勢について、内外の有識者から順次見解を聴取し、意見交換を行う「国際金融経済分析会合」を開催するとして、これまでに3回開催したそうだ。

 3月16日の第1回の会合ではジョセフ・スティグリッツ 米コロンビア大学教授、第2回は17日のデール・ジョルゲンソン ハーバード大学教授と日本経済研究センターの岩田一政理事長であり、第3回はポール・クルーグマン ニューヨーク市立大学教授であった。経済の門外漢にとって、どのような人物かよく知らないが、ノーベル賞を取った人物もおり、世界的な有名人のようである。それぞれの会合における配布資料は、第1,2回の分公開されているので、その概要を知ることが出来る。

 第1回目の資料を見ると、いろいろな角度から世界経済の状況が説明されており、さぞかし重要な情報であろうが、素人には猫に小判、馬の耳に念仏である。

 従って、全体のストーリは定かでないが、耳慣れた言葉を探ってみると次のようなことを言っている。政府主導よりも市場メカニズムの方を優先させた結果、逆に世界的な不安定化の時代に突入した。先進各国が金融緩和を行ったが、その結果格差が拡大し、逆に消費が減った。マイナス金利の試みは悪い副作用をもたらす可能性がある。現在の不況は需要が足りないためであり、総需要を増加させるために国際的な地球暖化対策等に向けた国際協調が必要。TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、 米国議会で批准されないであろう。等である。

 筆者は先進国の消費低迷の根源は社会の成熟にあると思うが、この点の指摘は誰もしていない。相変わらず、新興国頼みか、成長戦略云々である。持続可能な社会の実現に向けての提言を経済学者に期待するのは土台無理な話か。

 兎も角、アベノミクスにとって耳の痛い話が多い。特にTPPの経済効果に関し、内閣官房TPP政府対策本部の資料によれば実質GDPは2.6%増、2014 年度のGDP水準を用いて換算すると、約 14 兆円の拡大効果が見込まれ、その際、労働供給は約 80 万人増と見込まれると、捕らぬ狸の皮算用をしているが、先行き見通しは真っ暗である。

 日本の消費税に関する記述は、資料には見当たらなかったが、需要を喚起する点のみからは、見送った方がよいとの結論になるだろうが、他に耳を傾けるべき話はいくらでもある。会合が具体的にどのように進められたかわからないが、難解な経済の話を、しかも英語での説明をどれくらい理解し得たであろうか。多分、官僚が会合の後、補足説明をするのであろうが、少なくとも、金融緩和が格差を拡大し、消費が減った、との指摘を強調してもらいたいものだ。
2016.04.06(犬賀 大好-222)

囲碁の世界における人口知能の発展から想う

2016年04月02日 09時48分21秒 | 日々雑感
 米IT企業グーグル傘下の英グーグル・ディープマインド社が開発したソフトウエア「アルファ碁」が、韓国のイセドル9段と対戦し4勝1敗で勝った。「アルファ碁」は、人口知能を応用したソフトで、過去の棋譜などをもとに自己学習を繰り返し強くなったという。

 人工知能 (AI:Artificial Intelligence )とは、コンピュータを使って、学習・推論・判断など人間の知能のはたらきを人工的に実現したものと定義される。この言葉は1956年に初めて登場したようだ。 この初期のAIの研究は、それまで単なる計算しかできなかったコンピュータが人間のような知的なこともできるのではないかと期待され、AIの春ともいうべき時期を迎えた。しかし、数年もすると、能力の限界が明らかになり1970年代は冬の時代であった。

 1980年代に入り、「エキスパートシステム」が登場した。特定分野に絞られるもののその専門家の知識やノウハウをルール化し、問題が生じた場合にその原因を即座に特定するなど、コンピューターに処理させようというものであり、一部実用にも供された。しかし、人間の知識は膨大であり、コンピュータに知識を教え込む限界が明らかになり、再び冬の時代を迎えた。

 2000年代に入ると、コンピュータ性能の飛躍的な 進歩があり、膨大な知識を高速のコンピューターを使って並列処理させ、統計的な処理によってコンピューター自身にルール生成をさせようという「機械学習」が登場し、再度脚光を浴びるようになった。2012年には、画像認識の分野でトロント大学のHinton教授のグループの「深層学習; Deep Learning」が注目されることになった。これは、人間の脳の構造をソフトウェア的に模倣し、人間が関与せずに学習を進めることを可能としたものであった。

 深層学習とは、専門的には多層構造のニューラルネットワークの機械学習、のことらしいが素人にはまったく理解できない。 チェスや将棋では、次に打つべき手および何手か先をすべて計算することが出来、理詰めで人間に勝つことが出来たが、囲碁は打つ手の選択肢が多く、スーパーコンピュータでも計算し切れなかったそうだ。そこで、アルファ碁は名棋士の対局記録を10万局覚え込み、3千万回もの自己対局で研究を重ねる「深層学習」で経験を磨き、人間を打ち負かしたとのことである。

 コンピュータが人間に勝つのはしばらく先のことと予想されていたが意外に早く実現されてしまった。AIの進化を象徴する画期的な出来事とのことである。学習するAIの今後の応用範囲は広いようだ。この技術により自動車の自動運転が可能になると聞けば、すぐに軍事利用に思い至る。自動運転には、周りの環境を素早く認識し、自分のとるべき行動を決定する技術が必要だ。戦争ロボットの実現がまた一歩進んだことになる。

 AIの軍事利用は末恐ろしいが、文学や芸術への応用はまだ夢がある。公立はこだて未来大学の松原仁教授のプロジェクトチームは、AIで小説を創作したとのことだ。先日行われた報告会では、人工知能を使って書いた4作品を星新一氏にちなんだ文学賞、「星新一賞」に応募したところ、一部が一次選考を通過したと明らかにした。

小説を書く際にはストーリーを考え出す能力と、そのストーリーに沿って文章を書く能力の2つの能力が必要となるそうだ。今回は、ストーリーは人間が与え、星新一氏の約1000作品をコンピュータに学ばせて文章を組み立てたということだ。

 ストーリーは、その小説の面白さの骨格をなすものであるし、その意外性が読者を魅了する。有名作家の作品を全部学習出来たとしても、発想が似たものになり、意外性に欠ける小説となろう。この点、新たなストーリー作りは、人間の創造力そのものであり、深層学習でも無理なような気がする。

そのうち深層学習も限界が明らかになり、人工知能も再び冬の時代を迎えるかも知れない。しかし、人間の知的好奇心は留まることを知らない。AIは、果てしなく進化を続けるに違いないが、人間の創造力には及ばないであろう。
2016.04.02(犬賀 大好-221)