日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

タブーへの挑戦;2件

2016年06月11日 09時48分27秒 | 日々雑感
 プロ野球の巨人の元投手らによる野球賭博問題で、昨年11月に3選手が無期失格処分を受けた。警視庁は今年4月、巨人を解雇された笠原将生容疑者を賭博開帳図利幇助容疑で逮捕した。小難しい名前の罪であるが、要は賭博を主催して儲けることに加担した罪とのことだ。巨人の独自調査では、この他に14人が賭けマージャン、23人が賭けトランプの経験があると判明しているが、口頭注意くらいの処分で済ましたようだ。野球協約上も、賭けの主催の組織が反社会的勢力かどうか、その点が処分の軽重を決める分岐点になるようだ。

 賭博罪を分類すると単純賭博、常習賭博、賭博を主催して儲けること(賭博開帳図利)になるようだ。津田岳宏弁護士は、5月20日、朝日新聞オピニオンで自分のお金を掛けて遊ぶことを処罰する今の賭博罪は見直すべきと主張する。しかし、この種の賭博はマージャンやゴルフ等で日常的に行われるが、ほとんど黙認状態であり、実質的には津田弁護士の言う通りに運営されている。しかし、この自分の金でなす賭博が公に解禁されると、単純賭博や常習賭博が大手を振って、ギャンブル依存症を大量に生み出すことになるだろう。

 1950年の最高裁の判例に、賭博を罪とする理由として、賭博には勤労の美風を害し、副次的に犯罪を誘発する弊害があり、公共の福祉に反する、がある。つまり、ギャンブル依存症を生み出す賭博、あるいは反社会勢力を増長させる賭博が罪になるということであろう。

 一方、競馬、競艇、競輪、パチンコはなぜ許されるかの疑問が付きまとう。津田弁護士も指摘するところであるが、全く同感である。これらの公認賭博には所謂ギャンブル依存症として多くの常習賭博者を生んでが、警察が取り締まった、あるいは捕まったとの話は聞いたことが無い。また、収益金が反社会勢力につながっていないと判断しているからであろうが、ギャンブル依存症を生んでいることは確かであり、反社会性の特徴は十分に持っている。法律を厳密に適用すれば、最高裁の判例に従い禁止の対象であろう。

 これらの公営賭博のどれかを禁止したところで、一般人の社会生活に支障をきたすようなことにはならない。しかし、既得権を有する人々は猛反対であろう。普通には陰に隠れてやる賭博を公に開催できる権利は誰でも欲しい権利であり、カジノの解禁を主張する議員連盟があるほどである。経済の活性化や税収の増加を期待できるとの大義名分であるが、その裏には利権を狙う浅ましい根性がある。

 しかし、ギャンブル依存症は人間の本質的な特性に基づく病気だそうで、酒、たばこ、売春等、その扱いが微妙なところはある。完全禁止にすると人間の本能がどこかで爆発するだろうし、解禁すれば依存症の増大等、それはそれで問題が大きい。人間社会では灰色として扱わざるを得ない側面があるが、白黒を明確にしようとする津田弁護士の主張はタブーへの一種の挑戦であろう。

 また、現在の日本では大麻は麻薬の一種として厳禁である。しかし、2014年1月1日よりアメリカ合衆国のコロラド州では、すべての成人に対して大麻の販売を認める法律が施行された。薬理学的に大麻はアルコールやタバコよりも中毒性がなく、カフェインと同程度であるとのことだ。それが本当ならばタバコは良くて大麻はダメという科学的な根拠はなくなる。イギリスではの大麻の成分がそのまま含まれている副作用が少ない薬も作られているそうだ。

 女優でナチュラリストの高樹沙耶氏(52)が5月10日、今夏の参院選に新党改革から大激戦区、東京選挙区で出馬することを正式表明した。高樹氏は、「医療用大麻の推進を訴えていきたい」と持論の大麻合法化を政策としている。先述の賭博の問題より大きなタブーへの挑戦である。

 先のコロラド州では大麻解禁により年約600億円の収益が見込まれ、税収も70億円に達すると試算されている。税収不足を嘆く政府や財務省にとって、カジノ解禁と同様に垂涎の的かもしれない。
2016.06.11(犬賀 大好-241)

医学の進歩が国を亡ぼす

2016年06月08日 09時19分06秒 | 日々雑感
 医学の進歩が著しい。若者の命が救われるのは喜ばしいが、今でも世界1位の長寿命が益々その地位を確固たるものにし、超高齢化社会を推進する。社会保障費の増大が国家予算を圧迫しつつあるが、その削減は老人を姨捨山へと導く。

 がん治療薬「オプジーボ」は、京都大の本庶客員教授のチームが発見した薬であり、直接がん細胞だけを攻撃する薬だそうだ。現在主流の治療法は化学療法や放射線療法であるが、これらはがん細胞以外の正常な細胞も損傷してしまい、その結果脱毛等の副作用が強く出てしまう。オプシーボの使用は免疫療法と呼ばれ、副作用が無いので、他の治療法より患者の身体に優しく、誰もが希望するが、問題はその価格の高さにあるようだ。

 体重60キロの患者が1年間(26回)、オプジーボを使うと、年3500万円かかるとのことだ。患者の平均的な負担は、医療費の自己負担分が一定額を超えると軽減される「高額療養費制度」があるため、月8万円程度で済む。残る金額は患者が加入する医療保険と国や自治体の公費でまかなわれる。オプジーボが適用される非小細胞肺がん患者は年10万人強。このうち、仮に5万人がオプジーボを1年使うとすると、薬代だけで年1兆7500億円を要す計算になる。

 高齢化社会で日本の社会保障費は年1兆円づつ増えていくことが問題になっている。オプシーボだけで、年1兆円以上増加するとなると、日本の財政にとって大問題だ。現在肺がんが対象であるが、日本発の画期的な免疫療法薬として他のがんへの適応拡大も期待され、今後急激に増えていくものと思われる。

 日本赤十字社医療センター化学療法科の国頭英夫部長は「この治療薬を契機にして、国が滅びかねない」と危機感をあらわにしている。がん患者は元気になっても、日本の財政は今でも病弱で喘いでいるのに瀕死状態あるいは死に至るとの警告だ。

 しかし、国を滅ぼしかねないのは、この治療薬だけではない。根本に医学の進歩がある。2014年における日本の平均寿命は、男性が80.5歳、女性が86.8歳であった。男女平均が84歳であり、世界で最も長寿の日本である。死亡原因の一番は男女ともにがんである。がんは早期発見で多くの命が救われる。現在はMRIやCT等で行われるが、費用、時間がかかる。

 しかし、わずかな量の血液検査で早期のがんが診断できる方法が2014年8月に発表された。がん細胞は特有のたんぱく質を分泌するとのことで、血液中に分泌されるこのたんぱく質の存在を調べればわかるらしい。これが実用に付されれば、国民健康保険加入者に毎年行われる健康診断でも早期発見が可能になるだろう。これで、平均寿命は一段と延びるであろう。

 また、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推計される。認知症の一番の原因であるアルツハイマー病は早期発見により、その進行を遅らせることが出来るとのことだ。既に血液検査により早期発見の目途が立ったようであるが、病自体を治す治療薬が開発されることが理想であり、近い将来それも可能になるだろう。これも平均寿命を延ばす一因となろう。

 このように、医学における治療法、検査法の進歩には驚くべきものがある。更に山中教授のIPSを活用した再生医療等の発展により、平均寿命は更に延びるであろう。年齢構成上の問題として高齢化は進行しているが、平均寿命の延びによる高齢化の進展も同時進行中なのだ。

 少子高齢化社会で、生産人口は減るが扶養すべき老人はどんどん増える。2015 年度の社会保障関係予算は 31.5兆億円で国家予算の約1/3を占め、国家予算を圧迫している。医学の進歩により、元気に天寿を全うできる社会の到来は喜ばしいことであるが、衣・食・住があっての話である。

 安倍首相は、消費増税を再び先送りし、これまで約束していた社会保障の充実は満足されないかも知れないと表明した。いよいよ、社会保障費の削減が始まり、老人の姨捨山行きが勧められる世の中に突入して来たのだ。社会保障費が不足し死者がでるような社会の到来、あるいは金のある者だけが生き残れるような社会の到来もまじかに迫っている。医が国を亡ぼす一因を作っているのだ。

 吉村仁氏は、30年以上前の1983年に「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方」というレポートをまとめている。同レポートに「このまま医療費が増え続ければ、国家がつぶれるという発想さえ出てきている。これは仮に医療費亡国論と称しておこう」と著している。いよいよその予言が実現味を帯びてきた。
2016.06.08(犬賀 大好-240)

政治不信に拍車をかける政治家

2016年06月04日 09時31分49秒 | 日々雑感
 ついに安倍首相は消費税の10%化を2019年10月に再延期することを表明した。安倍首相は、15年10月予定の消費税10%の引き上げを1年半延長すると宣言して、14年11月衆院解散に踏み切った。その際、「2017年4月には、消費税を断固引き上げる」と断言した。当時、アベノミクスの成功により、デフレを脱却し、景気が回復することを夢見ていたのであろう。そのため、景気付帯条項の無い法律まで作り、自信のほどを示していた。 

 先日、6月1日、再延期の理由を説明した。アベノミクスは成功しているが、それをより確かなものにするために、更に2年半先送りする、との内容である。聞けば聞くほど腹が立ってくる。 

 今回の発言で一番大きな問題は、政治不信を一段と高めたことである。それは、14年当時からつい先日まで、あれほど自信たっぷりに再延期はしないと言っていたのに、手のひらを反すが如く、前言を翻したことである。いろいろ理由はつけているが、要は夏の参院選で勝つためであることが、誰の目にも明らかであるからである。これまで、増税を宣言して選挙に勝った例は皆無である。今回、アベノミクスの成功を謳っても、誰も信用しないと悟り、再延期を決めたのであろう。

 増税の話は、民主党政権から税と社会保障の一体改革として三党合意まであった。三党合意を前面に出せば、増税を前提とした選挙でも勝てないまでも、善戦したであろうが、その機会も自ら捨ててしまった。安倍首相の断固たる決意表明も単なるパフォーマンスであった。今後、20年度までに[基礎的財政収支」を黒字化する目標堅持といくら叫んだところで、誰も信用しないだろう。人は何度も騙されない。

 また、舛添東京都知事のパフォーマンスも政治不信を増長させている。それは、海外出張でのスイートルーム宿泊等の高額の支出や、毎週湯河原の別荘の往復に公用車を使用していた公私混同問題だ。

 2010年に出版された舛添著「舛添要一39の毒舌」という本の中には「大臣になったんだからファーストクラスで海外に、というさもしい根性が気に喰わない。」とあるそうだ。これは当時農水大臣であった赤松氏への酷評である。しかし、舛添氏が都知事に就任してから約2年間で海外出張が9回、そのうち6回がファーストクラスを利用しているとはどういうことだろうか。二枚舌、言行不一致、”他人に厳しく、自分に甘く”の典型である。政治家としての資質に疑問を抱かざるを得ない。

 舛添氏のパフォーマンスは以前から有名であったようだ。消えた年金問題で社会保険庁職員が袋叩きにあう中、厚労大臣であった舛添氏だけは、一貫して人気を維持してきた。それは、世の中の風向きを見てバッシングに同調し、批判されている当事者を情け容赦なくこき下ろすというパフォーマンスが巧みだったからだとそうだ。舛添氏の政治的な手腕を買って、一票を入れた私が浅はかだった。

 今回の公私混同問題を受けて、舛添氏は公用車の厳格運用、海外旅行の際のファーストクラスは止めと表明した。あれほど、公務の重要性を主張していたのに、ころっと変えるとは普段の発言も信念に基づくものでは無く、口から出まかせと思われる。

 日本を代表する二人の政治家の言動がかくも簡単に変わり、国会や都議会で特に問題とならないのは、皆同じ穴の貉と言われてもしょうがない。”武士に二言はない”の精神はどこへ行ったのか。

 政治家が信用できないことは、前から言われていたが、これでまた一層深まった。夏の参院選の投票率もまたまた下がるであろう。
2016.06.04(犬賀 大好-239)

TPPの行く末を考える

2016年06月01日 09時38分03秒 | 日々雑感
 G7では自由貿易の重要さを改めて確認し合ったとのことである。議長の安倍首相は冒頭、[多くの国で自由貿易に反対する意見が高まっている。G7で自由貿易の恩恵を力強く発信していくことが重要である」と主張し、各国の首脳は「低価格の輸入品が入ってこないなど、保護主義の危険要素も説明した方が良い」などと発言したとのことである。

 自由貿易になぜ反対する意見が高まっているかに関して、議論は無かったようだ。自由貿易すなわち自由経済主義の行き過ぎによる経済格差の拡大が世界的に問題となっているはずであるが、それに対する議論が是非欲しかったが、議長の頭には問題意識が無かったのであろう。残念である。

 さて、日本やアメリカなど12か国が参加した環太平洋経済連携協定(TPP)の署名式が、2月4日、行われた。TPPは、今後、協定の早期発効に向けて各国で議会の承認を求めるなど国内手続きが本格化する。協定は、2年以内に12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効すると決められている。

 日本政府は3月8日の閣議で、TPP協定の国会承認を求める議案と、関連する11本の法律の改正事項を1本にまとめた関連法案を決定し、国会に提出した。しかし、4月14日の熊本地震発生等の影響により、4月26日、与党側は、今の国会での承認を断念すると決定した。

 米国においても、オバマ政権は年内の議会承認を目指しているが、次期大統領候補、民主党のクリントン氏、共和党のトランプ氏、共にTPPに疑問を呈しており、TPP承認をめぐる議会審議は11月の大統領選後に持ち越される可能性が高いとのことである。

 TPPは、発効されればその経済効果は極めて大きいとのことである。内閣官房TPP政府対策本部は、昨年12月に我が国のマクロ経済に与える経済効果を分析した結果を公表した。TPPが発効し、その効果により我が国が新たな成長経路(均衡状態)に移行した時点において、実質GDP水準は+2.6%増、2014年度のGDPを用いて換算すると、約14 兆円の拡大効果が見込まれ、また、その際、労働供給は約80万人増と見込まれる、との内容である。この試算を信じれば確かに大きい。

 米国においても、米国際貿易委員会(ITC)は今年5月、TPPの米国経済への影響分析の報告書を公表した。2032年の実質国内総生産(GDP)を427億ドル(約4.7兆円)、0.15%押し上げるとの内容である。

 GDPに与える影響は、日本に比べ米国においては小さい。これは、TPP参加国12か国のうち、米国は既に豪州、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、シンガポール、6か国と自由貿易協定を結んでいるのも一因であろう。米国においては、日本ほどTPPへの期待は大きくないと思われる。

 2月4日の署名から2年以内に全12カ国が国内手続きを終えればその60日後に発効する。それまでに手続きが終わらない国があっても、6カ国以上が手続きを終え、手続きを終えた国の国内総生産の合計が全体の85%を超えれば発効となるとのこと。特に米国の比率が高く、60.4%とのこと。米国を除く国すべてが批准しても、39.6%で、85%に届かない。米国の批准無くしてTPPは発効されない。日本がどう頑張っても、米国次第だ。

 米国においては、自由貿易は「国内製造業を衰退させ、雇用を失わせた」と、自由貿易への疑問が広がっている。民主党においては、「反TPP」を旗印とするサンダース上院議員が若者を中心に人気を集めている。クリントン氏は当初TPPに賛成であったが、この流れに押され、TPP反対の姿勢を強めたとのことだ。推進派は「クリントン氏は、大統領選に勝てば、賛成に転じる」と楽観視しているが、サンダース氏の意見を完全無視するわけにはいかないだろう。一方共和党のトランプ候補は、米国から利益をはく奪するTPPには署名しないと断言している。米国におけるTPPの行方は真っ暗である。さて、日本はどうするだろうか。
20016.06.01(犬賀 大好-238)