日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本の農業を若者に託すためには6次産業化か

2018年12月12日 08時37分29秒 | 日々雑感
 日本農業は今瀕死の状態である。TPP等グローバル化に伴う競争激化も背景にあるが、少子高齢化で後継ぎがいないことが最大の原因である。

 日本の若者が農業を避ける理由は、所得が低い、土作業は汚い、仕事は天気に左右され好きな時に休めない、成果は天気次第で努力が報われないことが多い、等様々である。片や労働基準法に守られた、小綺麗な働き口はいくらでもあり、わざわざ苦労することは無いと判断するのは当然だ。

 NHKが国勢調査をもとに割り出した計算によれば、首都圏の野菜供給を担う茨城県での20代農業従者のおよそ2人に1人は外国人技能実習生だという。

 高齢化が進み、もはや外国人がいなければ続けていけないほど日本農業は外国人労働に依存している。もちろん、外国人実習生は農業技能の習得を目的とした就労であるが、労働力の担い手として期待されていることも紛れもない事実である。現在政府が推し進めている出入国管理法の改正により、この傾向は一層進むであろう。

 日本の農業は崖っぷちに立たされている感もするが農業に対する明るい見通しも若干ある。

 2009年7月設立されたイオンアグリ創造株式会社は、2015年に大卒の定期採用を始めた。その際数十人の採用枠に4千人の応募があったとのことであり、農業が大人気だったとは大変な驚きだ。

 農業を継ぐ人材は少なくても、働く条件さえ整えば、農業に従事したいと考える人材は少なからずいるということがはっきりし、日本農業の明るい出口の一つが示された感である。

 イオンアグリ創造株式会社の目的は、農業を一つの産業として確立させることだそうだ。このようなシステムが可能になるためには農業の第6次産業化であるとしている。6次産業化とは、1次産業としての農業、2次産業としての製造業、そして3次産業としての小売業を一体化することであり、そこから新たな付加価値を生み出す取組であるが、個人のレベルでは難しいことが難点である。

 その中で、農業の実態に合う働き方を追求し、普通の企業並みに時間外給与の支給、出産・育児休業、雨続きで農作業が出来ない日が続くときには休日を多くして、別の日に就業時間を振り分ける等のシステムを工夫し導入しているとのことだ。正に農業の会社化だ。

 当会社は、イオングループの一員として2009年7月、第1号農場となる茨城牛久農場を開場し、現在は北海道から九州にかけて21箇所、計350ヘクタールの直営農場と約70箇所のパートナー農場から、年間およそ100品目目の農産物を生産し、国内外のイオングループ各店舗に供給・販売している大組織の一角を占めているそうだ。

 そして、2017年6月、埼玉県の久喜市に大玉トマトの生産に特化した次世代施設園芸埼玉拠点を稼働させ始めたそうだ。

 施設園芸ではオランダが有名である。トマト、パプリカ、きゅうり、花き等を大規模生産し、欧州各地に販売しているようだ。トマトやパプリカでは10ha以上の大型温室も一般的で、そこでは、IT技術を導入し、生産量、エネルギー使用量、従業員の労働状況を管理し、温室内の環境や植物の生育状況をモニタリングしながら、植物にとって最適な環境を作り出しているそうだ。その結果、トマトの生産性が年々向上し、世界最高水準の収量を誇っているそうだ。

 埼玉県での施設園芸も大消費地東京を控え、日本農業の一つの方向を示しているように思われる。

 今後、地域に根ざした昔ながらの個人経営の農業は残念ながら廃れていくであろうが、第6次産業化が若者に職業の1つとして憧れを抱くような産業に定着すれば、日本農業も安心できる。大いに期待したい。2018.12.12(犬賀 大好-502)

遺伝子操作は神の領域に踏み込むこと

2018年12月08日 09時44分27秒 | 日々雑感
 11月28日、中国・南方科技大の賀建奎副教授が、香港で開催中の国際会議で、ゲノム編集技術を使って遺伝子を改変した受精卵から双子が生まれたと明らかにした。

 賀氏は、エイズウイルス(HIV)感染を抑止するように受精卵の遺伝子を改変し、健康な双子の女児を誕生させたと言う。論文を近く投稿するとしたが、研究の妥当性も説得力のある説明もなく、会場から批判的な意見が相次いだそうだ。

 最近、ゲノム編集という技術が注目されている。遺伝子情報を変えるこの技術によって、病気の原因究明や治療の研究が急速に進むと期待されているが、HIV感染を抑止するための遺伝子操作もその一例のようだ。

 一方では、人間の受精卵の遺伝情報を編集して良いのかなど、難しい倫理的な問題を抱えている。受精卵の遺伝子に異常があった場合、ゲノム編集を行えば遺伝情報が書き換えられ、先天的な病気を治すことも可能になると考えられているが、このような大義名分の下、遺伝子を操作するとは、まさに神の領域に土足で踏み込むことだ。

 少なくとも十分な安全性が確認されるまで、禁止されるべきである。

 遺伝子には人の一生を司るすべての情報が含まれているため、生まれてから死ぬまでに異常の無いことが確認され、更に生まれる子孫にまで異常の無いことが確認されて、始めて十分な安全性が確認されたことになろう。

 また、ゲノム編集の十分な安全が確認されても、更に懸念されるのが病気の治療という目的を越えて、親が子どもの身長や髪の毛の色などの遺伝情報を変えてデザインする危険があると指摘されている。こうしたことは、親子とは何か、更に人間とは何かに迫る問題であり、この問題が解決されない限り厳格に禁止されるべきである。

 賀副教授の発表に対し世界中が大騒ぎするのは、決して難しいゲノム編集を成し遂げた訳で無く、このような倫理上の大きな問題を無視した売名行為であるからである。

 一方近年、ゲノムを自在に改変できるゲノム編集技術が、急速に発展普及しているのだそうだ。この技術は簡便で、これまでゲノム改変が困難であった生物種においても利用でき、誰でも極めて広範囲に実験出来るようになっているのだそうだ。

 日本でも、ゲノム編集実験キットが150ドルの低価格で、ネットから誰でも購入できるようになっているようだ。この実験キットでどこまで出来るか知らないが、今や誰でも簡単に神の領域に踏み込むことが出来るようになったと感ずる。

 このキットでは人間の受精卵の異常を治療することは出来ないであろうが、適当なゲノム編集の結果どのような結果になるか面白半分でやる馬鹿な素人が必ず現れるであろう。あるいは、専門家であっても、世界で最初に行った人物と有名になるために仕出かす輩も出て来るであろう。

 賀副教授は双子の実在を示す具体情報は明らかにせず、出産の真偽は不明のままで、単なる売名行為であるかも知れない。

 11月29日には、中国の科学技術省は賀氏の研究を違法と認定し、研究活動停止を指示したそうだ。中国は人口が多い。政府のこの意向がどこまで浸透するか不明である。その内、思わぬところからデザインされた赤ちゃんの誕生が発表されるか分からない。あるいは、既に生まれているのかも知れない。2018.12.08(犬賀 大好-501)

韓国の最高裁は政府から完全に独立している

2018年12月05日 13時59分03秒 | 日々雑感
 日本の最高裁に相当する韓国大法院は、10月30日、第2次世界大戦中の強制徴用被害者4名に対して日本の新日鉄住金はそれぞれに約993万円を賠償するよう命じる判決を下した。

 更に、先月29日には、広島と名古屋の三菱重工業の軍需工場で働かされた韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身隊員らに、それぞれ約800万~1500万円を支払うよう命じた。

 これらの判決に対し日本のマスコミは、戦時中の賠償問題は1965年韓日請求権協定により解決済みであるとして、一斉に韓国を非難している。普通ネットでは賛否両論があるが、今回は韓国非難一色である。

 訴訟の核心争点は、1965年の協定により日本が韓国に提供した資金を強制徴用被害者に対する損害賠償金と見ることができるかどうかだった。賠償金は5億ドルだったとのことであるから500億円位であろうか。日韓協定の交渉段階で、韓国政府は日本政府に元徴用工らの補償に充てると説明していたが、当時韓国の財政状態は苦しく、その資金を道路やダムなどの経済開発に流用し、漢江の奇跡と呼ばれる経済復興の一助としたそうだ。

 もし、元徴用工等に支払われていたならば、一人当たりいくら位になっていただろうか。韓国世論が今回の判決を支持するする理由の一つは、この額が低すぎたとの背景もあるのではないだろうか。

 兎も角、請求権協定第二条では、韓国政府だけでなく韓国国民の対日賠償請求権も完全かつ最終的に解決されたと規定しているが、大法院はこの日、個人の賠償請求権は有効だと判断したわけだ。

 大法院長は国会の同意を得て大統領が任命し、任期は6年とされている。韓国でも日本と同様に司法の独立が憲法で保障されており、判事は政府の意向に関係なく独自の判断ができるようだ。

 また、韓国国内には”国民情緒法”と称する奇妙な法理論が展開されているとのことだ。これは、如何なる法律も国民情緒に合わなくてならないという憲法より上位にある法律が暗に存在するとの理屈である。韓国の司法はこの国民情緒法に従って判断したと揶揄されている。

 一方、韓国大統領は直接選挙により国民から選ばれるためか世論に敏感であるが、世論は一つではなく通常相反する世論が対立している。対日政策においても、歴代の政権は親日があったり反日があったり、時には途中で変わるなど一貫せずにぶれることが多い。これを国民は政府のふがいなさと感じ、これを司法が補なおうとする傾向が強いと指摘する声もある。

 韓国最高裁の先の判決に対し、文在寅大統領は沈黙を続けている。日本の河野外相は、国際法違反と厳重な抗議をしているとのことだが、韓国政府は日本が騒ぎ過ぎであると鎮静化に躍起であるようだ。

 今回の判決は、従来の韓国政府の立場とは異なり、苦しい立場に追い込まれているのだ。政府は1965年韓日請求権協定の重さを十分認識しているが、韓国世論は判決を支持しているようだ。さて文大統領はこの苦境を打開するために、対北朝鮮への融和政策を前面に出すと思われるが、金委員長はこの焦りを利用しない筈が無い。そこで融和政策は一気に進むと思われるが、北朝鮮の核放棄は絶望的となるだろう。

 しかし、これらの混乱は韓国の司法府が立法府や行政府に対する独立性が確保されているという証であるのかも知れない。これに対し、日本の司法府は政府に気兼ねをして独立性が欠けている。例えば、選挙における定数問題である。憲法違反状態であると微妙な言い回しが用いられるのが典型例である。

 さて、民主主義の三権分立の原則からは韓国司法の方が正しいと思われるが、日本の最高裁は政府の意向を忖度し過ぎである。2018.12.05(犬賀 大好-500)

大阪万博でいのち輝く未来社会がデザイン出来るか?

2018年12月01日 09時38分34秒 | 日々雑感
 去る11月24日の未明、2025年の万博開催が大阪に決まった。大阪万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、健康や医療分野における人工知能(AI)や仮想現実(VR)など先端技術の発展を紹介する予定だそうだが、情けないことに具体案はこれからだそうだ。

 今回の大阪万博は、2020年の東京五輪後の日本経済の落ち込みを懸念した振興策との位置づけだそうで、政府や経済界を総動員した誘致活動があったとの話だ。また、発展途上国には経済支援を約束し、票の取りまとめを依頼したそうだ。

 なんせ経済最優先で、先述のテーマも中身は無いが取り敢えず夢を持たせるためのキャッチコピーに過ぎない。

 ロシアのエカテリンブルグも競争相手であったが、大差をつけて大阪に決まった。プーチン大統領は、ロシアで初めての開催に意欲を示していたようであるが、日本の宣伝活動や経済力に負けた。これで、北方4島の領土問題に関する経済的な要求も一層厳しくなるであろう。

 48年前に開催された1970年の大阪万博は、その6年前の東京五輪の経済落ち込みを防ぐためでもあり、今回の開催と全く同じ構造である。

 そこでは、「人類の進歩と調和」をテーマに掲げ、高度経済成長を成し遂げて経済大国となった日本の象徴的なイベントとして開催された。77ヵ国が参加し、入所者数は予定の人数を大幅に越え大成功であったとのことである。今回も二匹目の泥鰌を狙った計画である。

 大阪万博では、月から持ち帰った岩石の他、色々な先端技術が展示された。現在一般的になっている携帯電話やリニア式乗り物などその原型が示された。人間洗濯機もあり、現在商品化には至っていないが、何が商品となり得るかを考える上で、大いに参考となる出品であった。

 私も新入社員として、出張の帰りに参加させてもらったが、余りの人数の多さに、碌に見学もせず引き上げたことを覚えている。

 しかし、その3年後、第一次オイルショックを機に日本は混迷の中に突入していく契機にもなり、日本が最後の繁栄を謳歌した盛大なお祭りだったとも言える。正に”お祭りマンボ”の歌通りになった。

 さて、今回AIやVRなど先端技術の発展を紹介する予定だそうだが、現在世界は様々な問題を抱えている。世界規模では地球温暖化、経済のグローバル化と保護主義貿易の衝突、移民・難民問題等、国内問題では、少子高齢化問題、財政規律問題、年金問題、外国人労働者問題、等目白押しである。

 高齢化問題の一つとして健康や医療分野において、AIやVRを駆使した発展が著しい先端技術、すなわち、検査技術や手術技術、遠隔診断等の先端技術が十中八九取り上げられるだろう。人生100歳も当たり前の時代になっているが、これらの技術はそれを単に推し進める技術となろう。

 しかし、人生100年になっても、かって人生60年の頃と比べて、生き甲斐、尊厳死や安楽死等の哲学的な問題に進歩があったとは思えない。生や死に関する宗教上の教えも変化しているようには思えない。しかもAIやVRをどのように駆使したところでその答えが見つかるとは思えない。

 AIやVRは、既存の技術の整理や取りまとめ、効率化等には威力を発揮するが、新たな概念を生み出すことは出来ない。先端技術により生命を伸ばすことは出来ても、心の問題の解決には何ら貢献できない。従って、「いのち輝く未来社会のデザイン」への答えはほとんど期待できない。2018.12.01(犬賀 大好-499)