日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

技術立国日本の巻き返しはなるか

2020年01月11日 14時34分31秒 | 日々雑感
 経済同友会代表幹事であった小林善光氏は、この30年間日本は敗北の時代だったと述べている。

 すなわち、新しいコンセプトの商品やサービスは全て米中の企業によるものであり、日本はデジタル化の波に乗り遅れてしまい、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)化といった新技術がどんどん登場し、革命期に入っているのに相変わらずハンコを使い、キャッシュレス化も進んでいない、との嘆き節である。

 確かに、30年位前に先端技術ともてはやされていた半導体製造技術、磁気ディスクや光ディスクのメモリー製品、太陽電池やリチウムイオン電池、ロボット技術等のハード技術では世界をリードしていたが、韓国、台湾、中国の猛追にあい、今ではすっかり席巻されてしまった感である。

 通産省の統計によれば、実質国内総生産(GDP)の成長率は2019年の日本は0.9%であるが、米国は2.7%、中国は6.4%であり、世界の主要国の伸び率は日本の2~3倍あることからして、小林氏の指摘は的を得ている。

 さて、安倍政権の経済政策の目玉、アベノミクスでは市中に金をばら撒き、土地の値上がりや株高を招き、一般市民には実感しないと揶揄された好景気が続いたが、飛躍や成長のタネは生まれず借金だけが増えた。

 安倍政権も手を打たなかった訳ではない。歴代の政権も同様であるが頻繁に成長戦略を出してはいるが、上手く育たなかった。30年前、ハードの面では世界1の技術レベルを誇っており、性能も行きつくところまで行った感であった。例えばロボット技術では工業用ロボットとして自動車工業を世界1に持ち上げた。しかし、世界の技術の流れはハードウエアからソフトウエアに移っていた。

 すなわち、情報技術(IT)が進歩し、インターネットの時代となったのだ。IT技術の主流はソフトウエア技術であり、この世界は、資源や資本が無くてもアイデアで勝負できる世界であり、個人の能力が発揮される世界である。

 ところが日本は聖徳太子の時代から”和をもって尊しとなす”の国であり、他人と違ったことをすることを避ける世界であり、人と違ったことをすることは村八分であった。そのため新しい概念である、携帯電話、人工知能(AI)、サイバーセキュリティ等の基幹的技術は日本から生まれず、外から手に入れなくてはならない時代となってしまった。

 このため、政府は慌てて昨年6月新たなIT戦略を閣議決定した。そこで本年より実用化が本格化すると言われている次世代通信規格5G対応の通信網を普及させる方針を掲げた。また、未来投資会議でポスト5Gと呼ばれる次々世代通信技術6Gで日本企業の競争力を挽回する方策を議論した。次世代の5Gでは中国勢に後れを取ったが、巻き返しのため政府として国家プロジェクトを立ち上げる方針を示したのだ。

 新しい概念は国家プロジェクトを立ち上げたところで簡単に発展生まれない。あくまで個人の資質による。日本人は集団で力を発揮する。国家プロジェクトでは光で動作する新しい原理の半導体、1回の充電で1年持つスマートフォンなどの実現等を目指すそうだ。具体的目標が決まれば力を発揮する日本、6Gの世界で使用されるであろうハードウエア面では日本の出番は必ずあるだろう。2020.01.11(犬賀 大好-565)

情報サービスは弱肉強食の世界

2020年01月08日 09時46分05秒 | 日々雑感
 情報技術(IT)の進歩がインターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)等の情報サービスの普及を促し、社会は急激に変化している。ITは情報の伝達を容易にする技術であり、知りたい情報がすぐに手に入る、誰とでもすぐに連絡が出来る、等のメリットが大きい。

 情報は単に受けるばかりでなく発信することも可能であり、発信の際に個人名を出す必要の無いことから信憑性の無い無責任情報を発信することも可能である。この匿名性を悪用した偽情報や他人への中傷や誹謗も可能であるためあらゆる情報が氾濫しており、受信する側は充分に注意が必要だ。

 また、公的機関、銀行や証券会社等をインターネットを介して利用することも可能であり、わざわざ外出する必要が無く非常に便利であるが、その利用のためには名前、年齢等の個人情報を登録しなければならない。

 また、スマートフォンやパソコンを通した個人の位置情報や、ホームページやテレビの閲覧等に関する情報もサービス運営者には筒抜けであり、このように得られる膨大なデータはビックデータと呼ばれ、その活用法はアイデア次第であり、使い方によって非常に価値の高いものになる。登録時に好みの情報は入力されなくても、どんな情報を検索したかが分かれば趣味や好みを立ちどころに知ることが出来る訳だ。

 例えば、個人の趣味を集め、年齢別、性別に分類すれば世の中今後どんなものが流行るかを予想することが可能になり、先手を打って商品等を開発することも可能になる。また、就職情報サイトを運営する企業が学生個人の就職活動状況を把握することも出来る為、内定辞退の可能性を予測することも可能になる。このようなデータは採用する側の企業にとって是非知りたい情報であるが、この行為は学生の個人情報を他人に明らかにすることにもなるため、国からの注意勧告が行なわれたそうだ。

 ITの世界における各種のサービスは概してデータ数が大きいほど正確な情報となるため、多数の顧客を抱えた方がより優位な立場に立つことが出来る。少ないデータしか扱えない企業は自然に淘汰される運命だ。すなわち大きいことが有利な弱肉強食の世界であり、主導権争いは熾烈である。現在GAFAと呼ばれる情報サービス企業が世界に君臨しているのが典型だ。

 GAFAとは、「Google」は検索エンジンで、「Apple」はデジタルデバイスで、「Facebook」はSNSで、「Amazon」はネットショップで世界断トツあり、それぞれの頭文字を取った呼び方である。これらの企業は世界中の膨大な数の顧客を抱える為、各顧客の国籍、性別、年齢や好み等のあらゆる個人情報を知ることが出来る。

 膨大なデータを統計処理すると言っても機械的な計算後のまとめは人のすること、そこに作為が働く恐れが十分にある。すなわち、サービス企業は情報を独り占めして、自分に都合がよいように情報を細工できることになり、世の中を自分に利する方向に導くことも出来る危険性がある訳だ。

 このような背景の下、様々な規制が必要とされているが、変化が急な上、概してIT企業は一国内に留まらず世界的な活動規模であるため、その規制の難しさが思い知らされる。2020.01.018(犬賀 大好-564)

米国民主党大統領の誕生で世界は変わるか

2020年01月04日 09時57分07秒 | 日々雑感
 2020年11月予定の米大統領選の与党・共和党候補として、トランプ大統領の他に、サンフォード前下院議員とウェルド元知事が名乗りを上げている。しかし、近代のアメリカでは自分の所属政党の候補者指名争いに敗れた現職の大統領は存在していないとのことで、トランプ氏は間違いなく指名されることになるだろう。

 トランプ氏はいろいろ物議を醸す人物であるが、共和党の先述の2候補は無名である上、トランプ氏の共和党員の間の人気は相変わらず高く、前例に寄らずとも指名されること確実である。しかし、大統領の本選で民主党の候補に勝って、大統領になれるかとなると五分五分とのようであるため、成果を上げようと焦っているが逆風も強いようだ。

 目下最大の逆風は、ウクライナ疑惑をめぐる弾劾訴追決議案が米下院本会議で可決されたことで、トランプ米大統領は米政治史上3人目の弾劾訴追された大統領という不面目な称号を授けられたことである。

 しかし、大方の予想に反し、直後の世論調査でも弾劾訴追で支持率急落とまではならなかったようだ。また、大統領を罷免するには上院の3分の2以上の賛成が必要だが、上院の共和党は結お束が固く、現状では罷免はほぼ不可能とのことであり、罷免が無理と知りながら弾劾訴追にこだわった民主党への風当たりが逆に強まるとの予想もあり、米国国内事情は複雑だ。

 さて、民主党の大統領候補は10名以上が争っており、この春には指名争いが本格化するとのことだ。トランプ大統領は問題多い人物であるが、トランプ大統領の政策にとって代わる魅力的な政策が残念ながら誰からも聞こえてこない。

 すなわち、トランプ大統領は、米国第1主義に基づく中国との貿易戦争開始、地球温暖化に対するパリ協定からの離脱、イランとの核合意離脱、更にロシアとの中距離核戦力全廃条約(INF)破棄等、国際協調を乱しているが、これらの問題にどのように向き合うか全く聞こえてこない。

 今年11月の大統領選挙の争点は国際問題より国内の医療保険改革や移民問題であるそうだ。民主党の有力候補、サンダース上院議員はヨーロッパ型の社会福祉国家を志向し、ウォーレン上院議員は格差を是正するため、国民皆保険や富裕層への資産課税を主張しているそうだ。しかし、このような左派的な政策は、個人の自由を尊ぶ国民には評判がよくないとのことだ。

 穏健派のバイデン前副大統領が最有力候補とのことだが、2度にわたり大統領候補に名乗りを上げていることから、新鮮味に欠きまた魅力的な政策を打ち出していない。

 トランプ大統領の支持率は、40%を大幅に上回ることが無いが、米国経済の好調さを受けて再選されること間違いないとの声も聞かれる。日本はトランプ大統領に振り回され、世界もトランプ流自国第1主義が蔓延りつつあるが、民主党の誰かが大統領になっても国際情勢に余り変化が無いように思われる。
2020.01.04(犬賀 大好-563)

東京五輪後の経済立て直しに赤字国債発行は続けられない

2020年01月01日 10時22分31秒 | 日々雑感
 政府が昨年12月に閣議決定した来年度予算案は一般会計の総額で102.7兆円と昨年度を1.2兆円上回って過去最大となった。本年度の予算総額が100兆円を超えた時にはついに大台を超えたと驚きがあったが、今回はまたかと驚きは半減した。慣れとは恐ろしいものだ。

 さて肝心の歳入は税収が最も多く、19年度当初予算比1.6%増の63.5兆円を見込むが、税収だけでは賄いきれず赤字国債も発行する。税収の内訳は消費税を10%に引き上げた結果2.3兆円の増収予定で計21.7兆円、所得税は2.0%減の19.5兆円、法人税は6.2%減の12兆円の予想であるが、税収の前提となる20年度の政府経済見通しは国内総生産(GDP)の実質成長率1.4%と、民間エコノミスト予想実質0.5%を大幅に上回り、相変わらず能天気である。

 日経新聞の統計では2018年度の実質GDP成長率は0.7%、2019年度は0.5%とのことで、何処から1.4%が出てくるのであろうか。単につじつま合わせの数値であろうが、首相官邸関係者の中には中国の経済が低迷したまま、国内は五輪後の落ち込みも懸念される、と解説する常識人もいるようでちょっとは安心できる。

 歳出は社会保障費約36兆円で全体の35%だ。少子高齢化社会の真っただ中であり、高齢者対策費は黙っていても当面この額は増え続けるであろう。少子化対応では安倍政権の人気取りの目玉であり、低所得者世帯の高等教育の負担軽減、保育の受け皿整備、児童虐待の防止対策等、時代を反映した手当てが目を引く。

 子供を社会全体で育てるとの理念はもっともであるが、大学入試の共通試験のように理念が先行して具体的な施策が伴わないことにならないだろうかと心配だ。更に予算執行にあたり”桜を見る会”同様に予算はあってなきが如しの無駄使い等のいい加減さも予想される。

 さて、歳入において税収からの不足分を補うために今回も赤字国債を発行する。新規国債発行は32.6兆円で、これで国債発行残高は997.9兆円となるそうだ。この累積した借金分には当然利子等を払う必要があり、その額が23.3兆円となるようだ。何と新規発行の7割が過去のつけの為に費やされ、残りの3割しか有効に使用できず、自転車操業状態だ。

 安倍首相は12月19日、歳出・歳入両面での改革努力を継続した結果、「来年度予算も経済再生と財政健全化両立する予算とすることができた」と胸を張る。確かに赤字国債の発行額が10年連続で減っているとはいえ、歳入の3割を新規国債発行で補い、債務残高が膨れ上がっており、どこが財政健全化達成であろうか。

 財政改革はどこ吹く風の予算の大判振る舞いも現代貨幣理論(MMT)に悪乗りしているのであろうが、MMTは確立した理論では無く日本はMMTの単なる実験場であることを忘れてはならない。

 今年は東京五輪の年だ。猛暑が懸念されるが約1ヶ月間の話だ。それより五輪後の経済落ち込みが懸念される。1964年の東京五輪後の経済立て直しは赤字国債の発行で凌いで来たが、60年後にはおおよそ1000兆円にまでなり、これ以上赤字国債発行は続けられないだろう。

 黒田日銀総裁の異次元緩和でGDPの格別な上昇変化はなく、国内に金だけが溢れてインフレの下地が出来上がっており、五輪後に始まる日本の将来が危ぶまれる。2020.01.01(犬賀 大好-562)