任期満了に伴う横浜市長選(8月22日投開票)が行われるが、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致の是非が主な争点になると予想される。
横浜市の現在の林市長は、人口減少社会の到来や超高齢社会の進展などによる社会経済状況の変化においても、将来にわたり成長・発展を続けていくための一つの手段として山下ふ頭におけるIRの実現に向けて、検討・準備を推進している。
他方、IRの誘致に対し、横浜市民の71%が反対していることが7月始めに神奈川新聞社とJX通信社が合同で実施した市民意向調査で分かった。今回の調査では71%の反対の内、「強く反対」が53%を占めており、また2019年の調査では64%、2020年では66%と漸増し、今回71%に達したことも、単に一時的なムードでない民意の強さを物語っている。
さて、市長選への立候補者は8名と過去最多となった。この内2氏がIR誘致に賛成、6氏が反対の立場であり、これも世論に便乗している感である。現職の林文子氏はIR実現を望む地元経済界などからの要請に応えて出馬した。住民の大半がIR反対であり、数的には林氏は不利であるが、他の候補の多くが反対の立場であることから、票が分散される可能性が大きい点で有利となるかも知れない。
さて、驚くべきことに、菅首相が前国家公安委員長で元衆院議員の小此木氏への支援を表明したのだ。小此木氏は首相が推進してきたIR誘致について”地域の理解、市民の理解が十分に得られていない”として取り止め表明していたが、首相は林氏ではなく小此木氏を支持したのだ。いつの間にか、首相は誘致反対派に豹変したのか。
この裏には、横浜市の事業者公募に対し、2グループの事業者が参加資格審査を通過したと明らかにされているが、いずれも中華系の企業だそうで、この参入を拒絶する目的があるのだそうだ。政府は米国の意向からラスベガス系のカジノ業者の参入を目論んでいたが、規制の厳しさ等から撤退を決めたそうで、それならば一層のことIRを止めてしまえとなったと勘ぐる事が出来る。
また世論は当てにならないとの判断があるのでは無いだろうか。当面世論に便乗して誘致反対で当選し、時間が経てば熱も冷め、財政問題の現実に直面し、IR誘致に方向転換出来るとの読みがあるのでは無いだろうか。この間に規制を緩め米国系企業の参入をし易くすれば良いと。
菅首相はIR推進の立場から、現職の林文子市長を支持するのが当然であろうが、林氏では当選できないとの判断でもあろう。当面の不利益を我慢して、将来の利を得るための高度な政治的な判断かも知れない。選挙民も馬鹿にされたものだ。
IR誘致とは別次元の話として、少子高齢化社会の中で財政の健全化問題がある。財源確保の手っ取り早い方法がIRであろうが、IRは利権の巣窟であり、負の側面も大きい。誘致反対の立場の候補者の財政健全化の方法を是非聞きたい。2021.08.11(犬賀 大好ー736)