日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

岸田首相は安倍元首相の遺産を使いこなしているか

2023年08月12日 09時48分56秒 | 日々雑感
 安倍首相が長期政権を維持できたのは衆参の国政選挙に勝ち続けたからである。すなわち2012年9月に自民党総裁に就任してから19年7月の参院選まで6連勝した。その原因は、野党勢力のだらしなさもあるが、「3本の矢」「成長戦略」「地方創生」「人生100年時代構想」「1億総活躍社会」「人づくり革命」「働き方改革」「全世代型社会保障」等のスローガンを多発し、バラ色の将来を想像させて、選挙に上手に活用したことである。岸田首相も「新しい資本主義」や「異次元少子化対策」等のスローガンを掲げているが、中身がよく分からず、今総選挙をしたところで、人を魅了する効果は少なそうである。

 安倍長期政権を支えたもう一つの要因は官僚任命権である。第2次安倍内閣の下、2014年に「内閣人事局」を創設して、局長や審議官等の高級官僚の約600人について、人事局の承認を必要とした。と言っても、内閣人事局の職員が大勢集まって議論して決める訳ではないだろう。参考資料は作るかも知れないが、最終的に決めるのは首相であろう。従って昇格を人質にとられた官僚に首相の顔色をうかがう傾向が出てきた。その典型例が森友学園問題であり、加計学園問題である。

 内閣人事局ができて、族議員の介入や有力OBの露骨な介入は影を潜め、政権は官僚を思い通りに使いこなせるようになったと思われるが岸田政権はどうであろうか。安倍政権では1を聞いて10を知る官僚が増えたが、岸田政権下では防衛費や子育て支援の予算の確保にあたふたしている。秋までに明確にするとしているがどうも官僚達を充分使いこなしていない気がする。

 それと言うのも首相の人事権掌握の効果も政治の力関係に関係するようだ。現在岸田首相の求心力はあまり強く無いようだ。岸田内閣の閣僚交代は昨年10月以降4人目となるし、最近では女性議員のパリでの観光気分の研修旅行や、秋本議員の風力発電に関わる収賄事件等、岸田政権の足を引っ張る不祥事が相次いでいる。内閣が弱体化すれば、再び部外者の関与が激しくなり、それに伴い官僚も素直に言うことを聞かなくなる可能性が大きくなるのだそうだ。

 異次元金融緩和では大企業は外部に投資することなく内部留保を激増させ、自らの改革精神を失なった。現状に安泰していては、デフレから脱却できないし、経済は成長しない。安倍政権7年半の国内総生産(GDP)の実質成長率は年平均1.03%にすぎず、2009~12年の民主党政権の実質成長率の年平均1.84%を下回る。こうして失われた30年が作り出された。

 岸田政権は予算の財源に四苦八苦しているが、この500兆円を超す内部留保を活用する手を打つべきだ。安倍政権の負の遺産はいろいろあるが、ため込まれた内部留保は貴重な遺産と考えるべきだ。法律的な縛りは様々あるようだが、優秀な頭脳を有する筈の高級官僚に一喝すれば何か手を考え出すだろう。大企業も内部留保が無くなれば、必死に生き残るための手を考えるだろう。2023.08.12(犬賀 大好ー938)

大阪万博のパビリオン建設遅れの意味するもの

2023年08月09日 09時15分56秒 | 日々雑感
 本来の万国博覧会(万博)の開催意義は先端技術や文化を世界に知らしめることであろうが、インターネットの普及により世界のありとあらゆる情報はあっという間に拡がり、開催意義が薄くなってしまった。この代わり、人集めの為イルミネーションを華やかにする等でテーマパーク化しており、開催意義が問われている。

 1970年の日本で始めて開かれた大阪万博では”人類の進歩と調和”のテーマの下、宇宙船アポロ12号が持ち帰った月の石や、ソ連館の宇宙船ソユーズの展示で、人類初の偉業を目の当たりにし人気に沸いた。1985年のつくば万博では、”人間・居住・環境と科学技術”のテーマで先端技術のロボットや水耕栽培のトマトの木に驚ろかされた。

 さて2025年4月開幕の第2回目の大阪万博は ”いのち輝く未来社会のデザイン”がテーマであるが、現在、地球温暖化や少子高齢化社会への課題が山積し、明るい未来社会が描けるか懸念される。新しい技術としてドローン技術を利用した空飛ぶ自動車が会場と大阪市街の間で利用されるとの噂であるが、ドローン技術はロシアのウクライナ侵攻で活用されており、戦争を思い起こさせるマイナスイメージが強い。

 ところで、開幕まで1年とチョットとなった今、パビリオンの建設遅れが話題となっている。遅れの理由は資材の高騰や人手不足の問題、開幕までの工期の短さ等から、海外パビリオンの建設を引き受ける建設業者がいないことらしい。前回のドバイの万博がコロナ感染の為1年遅れで開催されそれより、4年しか経過しておらず参加各国の本気度が高まっていないことや、ロシアのウクライナ侵攻が影響しているとの声もある。

 大阪万博には約150の国と地域が参加を表明していて、各国が文化や技術を紹介するパビリオンを建設する予定になっている。今、建設の遅れが問題となっているのが約50の国が予定しているパビリオンで、各国が趣向を凝らした豪華な外観のものが多く、まさに万国博覧会の目玉とも言えるが、それだけに工期の短さが心配になる。

 前回のドバイの場合と同様に1年延期を主張する人もいるがあり得ないだろう。前回の延期はコロナの為であったが、今回の遅れは日本の運営上の問題であり、延期の適当な口実が見当たらない。しかも万博の開催以上にIRの同時開始に本命があるからだ。IRとはIntegrated Resort(IR)統合型リゾートであり、万博会場の夢洲はカジノのほかホテルや劇場、国際会議場や展示会場、ショッピングモールなどが集まった複合的な施設予定地であり、政治団体大阪維新の会は大阪経済の起爆剤としてIRの開設に力を注いでおり、短期開催の万博より永続的なIRの方が本命と考えているであろう。

 万博の本来の開催意義が問われている一方、開催地元における開催目的は税金の投入によるインフラ整備であることは一貫している。特にIRは、万博との相乗効果を狙って同時開業が目標とされている。IRはカジノで儲ける仕組みであることから批判も大きいが、国としても力を入れていることから、万博の開催遅れが心配になり支援に乗り出したが、後れを取り戻せるであろうか。2023.08.09(犬賀 大好ー937)

失われた30年の元凶は異次元金融緩和

2023年08月05日 09時30分24秒 | 日々雑感
 7月28日金融政策決定会合で植田総裁は、これまで用いてきた異次元金融緩和の目安であるイールドカーブ・コントロール(YCC)の修正を決定したそうだが、経済素人には何のことか理解できない。多分これに関係するのであろう、長期金利の上限を引き上げる決定をした。しかし、この修正は金融政策の正常化を目指すものではないと強調をしたが、その理由は正常化の一歩だと受け止められると市場が混乱するからだそうだ。異常状態を続けるのが市場の安心材料になると言うのも理解できない話だが、異次元金融緩和の副作用が如何に大きいかを暗示している。

 異次元金融緩和は市場の国債を買い上げて市中にお金を溢れさせ景気を良くしようとする考えであり、これまでに発行された国債の約半分を日銀が保有する異常状態となっている。しかもこの行為は、財政法第5条により原則として禁止されている財務ファイナンス行為そのものである。これは、財政規律を失い悪性のインフレを引き起こす恐れがあるため、特別の事由が無い限り禁止されており、国会の議決を経た金額の範囲内で許されるとされている。

 財務ファイナンスの禁止は戦後のハイパーインフレの反省から生まれたが、バブル崩壊後のデフレ状態から脱出する為と称し、安倍元首相と黒田前日銀総裁の異次元金融緩和政策により簡単に破られた。特別の事由とはデフレ状態からの脱却することとなろうが、国債の現金化により、デフレ状態は簡単に脱却できると思われ、黒田前総裁も2年程度で物価上昇率2%は実現できると豪語していた。筆者も簡単に信じ込んでいたが、それ以上にインフレが進行する方が心配であり、その意味から異次元金融緩和には否定的であった。

 さて、先述のYCC修正発表後、市場は一時円安に動いたがすぐに円高に戻ったそうだ。これも政策修正の分かり難さにあり、市場の混乱はしばらく続くのであろう。異次元金融緩和では市場の国債を買い上げてお金を溢れさせ、銀行は投資を盛んにして経済を回す目論みであったが、企業は有り余る現金を手にしたが、投資先が見つけられず内部留保として蓄積されただけだ。他の先進国に比べてGDPの伸びは低く、失われた30年と言われている。何故経済成長が実現出来なかったのであろうか。

 原因に関しては論評がいくつか見られるがすっきりしない。失われた30年の間も、多くの企業は日本型雇用の修正に挑戦してきたが、年功序列・終身雇用・企業別組合という慣習を崩すには至らず、日本企業の・古い体質、変われない空気・組織風土、あきらめ感、を打破することが必要だというが、なぜそうならないのかの分析はない。

 コロナが蔓延していた時中小企業の存続のために政府は助成金を出した。この為、本来は倒産する筈の企業が生き延び、それをゾンビ企業と称するとの主張があった。それと同様に、異次元金融緩和で金に潤った大企業が新規事業に投資する挑戦をせずに、しこたま内部留保しただけで、現状に満足し胡坐をかいてしまったのでは無かろうか。そのように考えると、失われた30年の元凶は異次元金融緩和だと断定できる。2023.08.05(犬賀 大好ー936)

財政健全化に増税は避けて通れない道

2023年08月02日 10時39分01秒 | 日々雑感
 6月の政府税制調査会の答申の中で、個人所得課税の項目で非課税となる手当について、必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要があると記し、現在は非課税である通勤手当などを列挙したことで、一部メディアなどが「サラリーマン増税になるのではないか」と報じていた。

 これに対し岸田首相は今月25日、自民党の税制調査会長と首相官邸で会談した際、税制を巡る一部報道について不満をあらわにしたそうだ。マイナンバー問題などの影響で内閣支持率が下落している中で、さらに世論の反発を招きかねない報道に、いらだちを募らせていたようだ。岸田首相は総選挙の実施時期を内閣支持率を見ながら探っていると思われ、世論の動きを非常に気にしているようだ。

 7月~8月、来年度の予算編成が本格化するが、各省庁は毎年8月末までに翌年度の予算案に盛り込みたい事業を一覧にして財務省に提出する。日本の財政は厳しい筈であるが予算額が膨大になる見込みのようだ。防衛費や子育て支援の安定した財源も確保されていない背景もある。

 現在異常な円安状態であるが、財務省の発表によると昨年度の国の税収は、一般会計で前年度よりも約4兆円増えて過去最高を更新したそうだ。しかし一般会計の歳出は139兆円を超える水準に膨らんだことから、国は50兆円規模の新たな借金を背負ったことになるそうだ。

 国の借金は既にGDPの2倍以上の約1200兆円であり、税収が過去最高となっても国の借金はさらに増えているのだ。この状態を政府は建前上正常では無いと判断し2025度プライマリーバランス(PB)黒字化目標を維持している。しかし、目標達成はほぼ不可能であっても、政府は達成可能であると言い張り、政府の財政健全化姿勢が維持されていることを国民にアピールして訳だ。

 ここでPB黒字化の目標を先送りすれば、それに乗じて財政拡張を主張する自民党内の勢力が勢いづき、まだ確定していない防衛費や少子化対策の財源を含め歳出拡大と国債発行の増発につながることを警戒している背景もあるのだ。
国の借金が果てしなく膨らむ状況はどう見ても正常ではないが、昨今のばらまき行政や国費の無駄使いを見ても、政府は真剣に心配している様子はない。岸田首相は異次元少子化対策を掲げているが、日本の将来を考えると安心して子育てできる状況ではない。

 国の税収が過去最大となっても頼っているのは赤字国債だ。日本のGDPの伸びは、失われた30年と同様に今後も期待できない。財政健全化の道は歳出削減は当然であるが増税しかない。消費税等の増税を言い出すと選挙では間違いなく負けるであろうが、日本の将来を考えると増税は財政健全化の政策と言えるが、岸田首相にはその度胸はありそうにない。
2023.08.02(犬賀 大好ー935)