専制君主が月を見上げる
月は三日月
専制君主がつぶやく
月よ我が宮殿へ参れ
謁見を許す
月がにやりと笑う
月が地上に近づき語る
王よ
青い髭の王よ
おまえの甘言が処女を誘い
甘い夜が
おまえのみに甘い夜になる
繰り返されるその夜が絶えるとき
私は
おまえを訪問しよう
そしてまた
かすかに笑う
専制君主が月を見上げる
何も語らず
ふいと
寝室にとって返す
月の重力が耐えきれぬ
というように
寝 . . . 本文を読む
ホンワカホンワカ
ホンソワカ
正面の
ガラスのドアから白い壁を廻り込んで
冷たい風を避け
ホンワカと陽を浴びて
陽だまりに佇んで
ホンワカホンワカ
ホンソワカ
タップタップタップ
ランランラン
ギャーテ
ギャーテ
ハラソギャーテ
ボジソワカ
マカハンニャララ
ランラララン
冷たい一月の
陽だまりに佇んで
風を避けて
暖かく
ホンワカホンワカ
ホンソワカ
何も考えず
のんびりと
何も . . . 本文を読む
夜空が晴れわたって
上天に月が光っている
そばの南向きの高い空に
オリオン座が
くっきりと見える
冷えている
晴れわたった空のもと
地上は
しんしんと
冷えている
まちのネオンサインが
透明な空気の向こうに
くっきりと
浮かび上がる
遠くの大島の稜線が
暗い世界に
ぼんやりと
沈んでいる
橋から連なる旧国道を
ぽつりぽつりと
車が往来する
冷えている
雪は
降っていない
雨も
降っていな . . . 本文を読む
私はクールだ
ホットでない
ネクタイを緩めたままで
斜に構えて
行動したくない
行動できない
じっと
見つめている
眺めている
掴み取らない
見て
聞いている
触らない
味うことをしない
漂う匂いは覚える
記憶する
行動しない
覚醒したまま
眠っている
夢を見て
語らない
黙ったまま
座っている
. . . 本文を読む
もうひとつの世界が
笑う
この世界は
見えない
もうひとつの世界が
泣く
この世界は
冷たい
暖かな温もり
肉体の実在
あなたがいるから
リアルは暖かい
屋外は
冷たい
この世界は
ない
この世界は冷たく
意味がない
もうひとつの世界が
ある
豊かな意味を育んで
もうひとつの世界が
ある
実在に虚構が重なって
はじめて
社会は暖かい
ストーブで灯油が燃焼するから
この部屋は暖かい
服 . . . 本文を読む
クジラが笑う
ウヒョーウガー
ウガガー
ウガー
沖では
オキアミが大漁だ
大きな口を開けて
オキアミを掬いこむ
飲み込む
クジラが笑う
ウヒョーウガー
ウガガー
ウガー
沖では
オキアミの葬式だ
悲しく
悲しく
オキアミが
仲間を弔う
チ チ チ チ
オキアミが
仲間を弔う
クジラが泣く
キァーキァー
キゥーンキゥーン
キィー
太平洋の
向こう岸の母と
こちらの岸の
遥かな距離を測っ . . . 本文を読む
新年だ
新年である
新年です
新年であります
さて
新年にあたって
新年だから何が目出度いか
よくわからないのでありますが
まあ
新年
目出度し目出度し
であり
明けましておめでとうございます
とまずは
型どおり
ご挨拶を申し上げるわけであります
とはいっても
暦の上で年が改めっても
去年も良きことはあったわけで
今年も良きことばかりあるわけでもないでしょう
目出度い目出度いと
浮かれてばかり . . . 本文を読む