本を並べる
あいうえお順に
本を並べ替える
著者名の
一音目では分けてあるが
二音目以降はばらばらの配置を
順番に
並べ替える
小説とエッセイが混在しているところから
エッセイを抜き出して
別に並べる
ごく単純な作業
結構な肉体労働
一冊二冊と動かす
二〇冊以上を
まとめてはさんで手に持って
下の段から上の段に動かす
頭より高い段から
床面の段まで
抜き出す
動かす
並べる
抜き出す
動かす . . . 本文を読む
お金は神である
一神教の神である
そうだ
お金は糞である
とも言われる
お金というより
黄金か
しかし
となると
神は糞である
とも言えることになる
糞もまたひとつの神である
ことは
日本人としては
自明のこと
あえて再発見するまでもない
しかし
お金も
せいぜいが一つの神
というくらいだと程良い
のだろうな
. . . 本文を読む
サーチライトが夜空を照らす
来たぞ来たぞ
入港したぞと知らせるように
凱旋するように
丘の木立の向こうの
ここからは見えない
奥深い
細長い湾を
サンマ船が
凱旋する
大漁だ
満船だ
おいらの船がお通りだ
と
無言で
声高らかに宣言するように
例年は
この季節
毎晩のことだが
今年は
今夜初めて見かけた
サーチライトが
曇り空の雲を照らして
サンマ船が
港に入る
明日の朝一番に入札だ
水揚 . . . 本文を読む
しばらく「嫌いだ嫌いだ」シリーズで続けてきたが、途中から、あんまり「嫌い」なもの書くことなくなっていた。内容にそぐわないものになってきていた。
それで、新シリーズとして「ご挨拶」シリーズを始めようと思う。「ひと」に限らず、「もの、こと」に出会った時のご挨拶。
ふむ、このほうが、基本的に私の趣味に合うな。
でも、「嫌い…」も、最近の私には必要な経過だった。
ま、そういうことでよろしく。 . . . 本文を読む
祭り
だったらしい
秋祭り
収穫祭
村の鎮守のお祭り
二か所ほど
とはいっても
参加した
見た
わけではなく
通勤帰りに
外縁を通り過ぎただけ
提灯が吊ってあったり
祭りに向うひとびとを見かけたりしたが
(ひとの波とまでは行かない)
ぼくは
家路を急ぎ
ひたすら日常の通勤路を
走らせただけ
車を止めて
さて神社の境内をのぞいてみよう
とも思わず
ひたすら車を
走らせただけ
地域のことだし . . . 本文を読む
ギターをぽろろんと鳴らし
何ごとの哀しみもないが
(いやなにごとか哀しみはあるが)
ぽろろんぽろろん
ギターをじゃかじゃかと鳴らし
特別の歓びもないが
(いやいかほどかの歓びはあるが)
じゃかじゃかと
蒼い夏の夕暮れ
小路伝いに
と歌い出す
麦に刺されながら
草踏みに行く
と続ける
夢見ながらその冷たさを
足下に感じ
帽子のないこの頭
吹く風にさらし
とギター弾き語る
. . . 本文を読む
大きな無意味
小さな意味
ひとが
大きな無意味に打ちのめされても
小さな意味に癒される
小さな意味は小さな関係の環の中にある
小さな関係の環が小さな意味を生みだす
小さな関係が意味の破壊に使われると
ひとの
居場所がなくなる
小さな関係は小さな意味を守り育む
守り育むよう大切にされなければならない
優しくあろう
関係を傷つけないように努めよう
環をつなげよう
環と環をつなげよう
環と環をつ . . . 本文を読む
眠い日は
早く寝るのが一番
宿題や何かやるべきことがあるのであれば別
それも
明日に回せるなら回して
早く寝る
薬は飲んだか
サプリは飲んだか
ヨーグルトは食べたか
一通り
毎夜の習慣はこなして
読書中の本を抱え
眼鏡も(老眼鏡)忘れず
寝床へいそいそと
眠い日は
早く寝るのが一番
年相応に
体を休めて
ああ
眠い!(あくび)
. . . 本文を読む
白水社から出ている「ベストセレクション初版グリム童話集」(1998年)を読んだ。四巻本の全集から、「初版でしか読めない話など三十六話を選び、翻訳したもの」とのこと。
河合隼雄か中沢新一あたりの本で、実は、かなり残酷、ということは読んでいたが、実際、そうだった。
「灰かぶり」(シンデレラ)では、義理の姉たちは、王子様の持ってきた金の靴に足が合わないと、かかとを削ったり、足のつま先を切り取った . . . 本文を読む
これでいいのかもしれない
と男は言った
これでいいのかもしれない
とおまえは思う
のだね
と私は言った
男はしばらく無言で
無言の後
どうなんだろうね
と答えた
人間は皆一番幸せになるように生きているんだ
と男は言った
そう思うよ
そうかもしれないな
と私は言った
うん
そうなんだと思うよ
と男は言った
男は言いながら
ポケットに手を突っ込み
私の周りを歩いた
そして
私たちは
し . . . 本文を読む
昨夜の「テールランプが」を推敲して、「嫌いだ嫌いだ」シリーズでないほうのバージョンで載せるとすると、たとえば以下のようになる。哀しいという形容詞がなくなる。
テールランプが
橋を渡って右折
ヘッドライトが二台
少しの間をおいて直進
橋を渡ってくる
何ごとの不思議もない
夜の街を
テールランプとヘッドライトが往来する
ま、どちらがいいかは、読者のお好み次第。
「嫌いだ嫌いだ」シリー . . . 本文を読む
テールランプが
橋を渡って右折
ヘッドライトが二台並んで直進
橋を渡ってくる
何ごとの不思議もない
夜の街を
テールランプとヘッドライトが往来する
何かもの哀しい
のはなぜなんだろう
. . . 本文を読む
彼岸花が咲いている
十月ももう五日
彼岸の中日から
既に半月も過ぎている
家の周囲に
あそこに五~六株
そこに五~六株
ここにも
濃い真っ赤な曼珠沙華
例年は
ぴったりと
彼岸の中日に咲いている
今年は
半月も遅れ
暑かった夏の証しとして
今
咲き乱れている
仏様たちは
月遅れ盆から
ひと月ほどで
秋の彼岸
春の彼岸は少し間を置くが
あちらの世から
こちらの世へと
行ったり来たり
忙しいこと . . . 本文を読む
今日は妻が風邪ひいて
仕事休んで寝てたので
夕食は
夕べ妻が作った野菜カレーの残りと
冷蔵庫開けたら
キュウリが半分あったので
薄く切って塩でもみ
卵を3個出して
フライパンにごま油引き
煎り卵
味は塩ひとつまみのみ
後は袋に入った金時豆
息子と義母と食卓囲んで
ふと気が向いて
カレーにいり卵載せたら
これがまた美味
やがて
妻が起きだしてきて
ご飯が少ないので
トースト焼いて
それにカレー . . . 本文を読む
理路は
空無に通じて終わる
それに対して
感情は
果てがない
行き着く先は似ているが違う
理路は
直線のようにやせ細っていく
感情は
楽しい嬉しいばかりでなく
苦しかったり悲しかったりしても
豊饒に実る
生きるエネルギーを供給してくれる
ただし
理路のない感情は形がない
表現できない
伝わらない
コミュニケートできない
孤立する
感情のない理路は
居場所がない
この世界に存在する場所がな . . . 本文を読む