この五羽のカモメたちは群れであるというよりおのおの気儘に存在している
だが共にあることを止める気配がない
四隻の船は停泊していたり座礁していたり横転していたり航行していたり別のカテゴリーのなかで行動しておりおのおのお互いに存在していないもののようだ
うみがそらであり
そらがうみである
陸はうみでなく
そらは陸でない
近くの半島は遠く
遠くの岬は近い
放置されたワイセツな枯れ木が無人の築港 . . . 本文を読む
体内の代謝が円滑に進まず
老廃物質が蓄積される感覚
胆力が回復しない
肝腎の機能が順調でない
血液の循環が滞り
酸素が充分に取り込まれない
核心は
内臓の感覚
四肢・筋肉ではなく
眼力でもない
むしろ
眼力だけは研ぎ澄まされ
減らない口が滑る
煙草は増える
脳力は不明
かと言って
早寝はせず
※
とそのとき
詩神〈ミューズ―死神にあらず)は宣告する
詩ナド書カズニ
早ヨ床ニ . . . 本文を読む
土砂降りの雨と
照りつける日差しが
秋の
豊かな稔りをもたらす
穏やかなここちよい気候は
ひとを養うだけの食料を与えない
烈しさが
人間には必要だ
やさしいだけでは
人間は生きていけない
もちろん
やさしくなければ
人間は
生きていけない
穏やかにここちよい眠りなしに
人間は
成長しない
ああ
真夏の浜辺の
照りつける太陽
爽快な微風
冷たい海水
重力から一時解き放たれた運動
時 . . . 本文を読む
地の利を得て
海の恵を収穫する
時満ちて
海の恩恵を捕獲する
それはわたしの功績ではない
それはあなたの功績ではない
祈りがある
祈りがあるだけだ
祈りは眠りではない
祈りは瞑想ではない
祈りは行動だ
川を遡ると
柞の森
ロブレの森があった
河口の湾には
プランクトンがいて
牡蠣が生きていた
そして
ひとがいた
港があった
. . . 本文を読む
港に
霧が深い
夜霧よ
今夜も有難う
今夜も有り難く存ずる
今宵は存在の困難を深く思い患う
ふたりの恋を全うする困難を
忍びあう恋を抱擁するやさしさ
目隠しする思い遣りよ
夜霧よ
瓦斯灯のほの暗さ
波止場の沖の霧笛
島へ渡る連絡船の
最終便が出たあとの
うら淋しい
夜の波止場
瓦斯灯のほの暗さ
遙かな灯台の霧笛
夜の霧
マッチ擦る暇なく
うらぶれたホテルのドアを押すと
ベースが唸りドラム . . . 本文を読む
坂道を下ると
風の音がする
良く晴れた空
みなとの光景
函館や小樽や神戸の坂
長崎は未だ見たことがない
横浜の坂はちょっと違う気がする
神戸を見たのは
震災の前
ちょうど、一年ほど前だった
トリエステなどという東地中海のみなとまちは
想像するほかない
想像するにも術がない
どんな坂道がそこにあるのか
どんな人々がその坂を下るのか
ヨーロッパの美しいまちを
そのかたちを真似するのでな . . . 本文を読む
気仙沼の港の空には
天旗が良く似合う
二月の港の青空に程よい風が吹いて
幾百枚の連凧が伸びて
十数組の連凧たちが開花し
季節外れの暖かな
午前の無風の
広大な商港岸壁荷揚場が
舞い上がろうとする大小の天旗と
走りまわるひとびとと
で埋め尽くされ
岸壁の一隻の新造漁船のマストや
港湾道路沿いの電信柱と電線さえ
邪魔にされ
あるものは海に落ち
海からの日の出を
単純で力強い絵柄と色彩で表現した . . . 本文を読む
ぼくたち人間は太陽のエネルギーが地球上に燦々とふりそそぐことによって造られ生かされている
父なる太陽母なる大地
土は無機的な石の破砕された粉ではなく生きている細菌の集合だ
植物は土に生かされている
動物は植物に生かされている
動物と植物は土に還える
言うまでもなく人間は一種の動物だ
いつの間に労働が価値に姿を代えるのだろう
いつから交換が利潤を生んだのだろう
なぜぼくたちは米をつくったり自動車 . . . 本文を読む
空の色は青
と決まっている
シャボン玉の色は空を映す
ものだ
亜鉛のように重たく暗い灰色の空は存在しない
ことになっている
世の中はすべからく明るい
はずだ
この原則に例外はない
と思われる
落ちた天使が海にドボン!
海の色は青
と決まっている
黒い海などあってはならない
土色の海はもってのほか
紺碧の海は青くなくてはならない
そうであってもそうでなくともそうでな
くてはならない . . . 本文を読む