9月27日(木)、気仙沼市民会館での、風間杜夫のひとり芝居「カラオケマン」について、ひとこと、勝手なことを言わせてもらえば、風邪で声が出ないという状況は、返す返すも残念だった。もんたよしのりをもっとひどくしたような声。本当に力を入れて努力して発声し、立っているみたいな。見ているだけで、こちらも疲れてしまうような。こんな体調でも、舞台は務めなくてはならないという役者稼業の宿命というか。
まずは、 . . . 本文を読む
宮沢賢治の時代に
アイスクリームは
天上の菓子だったに違いない
食べることはおろか
滅多に目にすることもできない
ぼくらには
ありふれた菓子
コンビニの冷凍ケースに
あふれる駄菓子
いやときおり
極上のデザートでもありうるが
賢治の時代には
科学は
明るい
希望に満ちた未来の夢
天国のような暮らしをもたらす魔法の杖
ぼくらには
限界の明らかな道具
汚れを吸い取りきれない掃除機
でも
頼らざ . . . 本文を読む
空から降った雪が
アイスクリームであることが
詩でありえた幸福な時代
があった
今は
アイスクリームが
大空から降ってきた雪のようだ
と言うほうが詩になる時代
自然と人工との位置が
逆転した時代
. . . 本文を読む
古川日出男、菅啓次郎、小島ケイタニーラブ、柴田元幸というラインナップの朗読劇「銀河鉄道の夜」を見てきた。23日(日)南三陸町ベイサイドアリーナ。
翻訳家柴田元幸氏はもちろん知っていた(村上春樹との対話その他)が、菅啓次郎氏は、昨年8月に出た「ろうそくの炎がささやく言葉」(勁草書房)の編者として記憶していた。
冒頭の谷川俊太郎の詩「ろうそくがともされた」に付された谷川のコメントによれば、この本 . . . 本文を読む
しあわせ
幸せ
仕合わせ
する
に
合わせる
をくつけて
し合わせ
だから
幸せって
めぐり合わせ
みたいなこと
仕合わせがいい
とか
仕合わせが悪い
とか
言うらしい
人間
なすべきことをして
そのしたことの成り行きが良い
ということが幸せ
なるほど
そういえば
しごと
仕事
も
する
に
こと
をくっつけて
しごと
人間
することがあるって
幸せなこと
だ
参照
川島秀一「津 . . . 本文を読む
カモシカが通る
夜
庭を通って降りていく
鼻を鳴らす音がする
夜
帰宅するときに
出くわすこともある
ふさふさした毛の
不均一な灰色の
しばらくにらみ合う
ここは山地が近い
海も近いが山も近い
カモシカが降りていく
今夜は
星が大きい
少し赤っぽく
大気層でゆらめく
熱の冷めない大気層で
星がゆらめく
多少は涼しい風が出ている
涼しい風が多少吹いている
なま暖かいというわけではな . . . 本文を読む
都会では
若者が増えている
田舎では
老人が増えている
都会のニュータウンも
老人が増えている
いま
六十歳で
いかにも老人
という風体のひとは少ない
六十五歳になれば
老人ふうにも見えてくる人もちらほら
だろうか
六十一歳でスポーツカーのオーナー
というひとは
もちろん大人ではあり中高年ではあるけれども
高齢者とか
老人とかには
決して見えない
高齢ドライバーでは全然ない
二十代三十代の . . . 本文を読む
道が曲がる
それていくわけではない
進むべき道がまっすぐではない
ということだ
カーブを描いて
ほぼ90度に曲がっていく
曲がった先が行き止まり
ではない
曲がった先が海
でもない
曲がった先が砂漠
というわけでもない
そのまま道が続いている
舗装されたスムーズな路面が
続いている
舗装されたばかりなので
いささかの段差もない
水たまりもない
穴ぼこなど
ひとつもない
しかし
それはまっ . . . 本文を読む
夜のあたたかさ
親密な暗闇
生まれる前の
全てが満ち足りた
欠けるもののない
目をつぶって
体に触れる感覚のみで
汗ばむことのない
適度な乾きぐあいと湿り気
いや
夏が終わらないと
なかなか
適度な
とは
言いにくいな
. . . 本文を読む
夜明けを
いや
夕刻を
動き出すことを
いや
ゆっくりと休むことを
ひとがやってくることを
いや
ひとが帰っていくことを
ひとが帰ってくることを
いや
ひとが立ち去っていくことを
ぼくはひとり
いや
ぼくたちは一緒
ぼくは待っている
明るくなることを
暗くなることを
新しい空気を
親密なぬくもりを
ぼくは待っている
. . . 本文を読む