竹内英典氏は、書物のなかに住まう人、というべきであろう。 あるいは、薄暗い図書館の書棚をめぐって、読み親しんだ本を手に取って、その一行から詩を編み出す人である。書物のなかの、大方の人々からは「見捨てられたままの一行」(冒頭の「伝記1」より)を拾い集め、書きとめる司書であり、書記である。 この『伝記』という詩集は、竹内氏に先立って、人間の歴史の中で書物のなかに身を隠していた人々の紡ぐ物語を掬いとっ . . . 本文を読む
村上靖彦氏は、大阪大学大学院人間科学研究科教授、東京大学教養学部から大学院、パリ第七大学で、現象学、精神分析などを修められたようである。 現象学は、フッサールが興した哲学の一派で、デカルトの懐疑を基底に、大雑把に言えば、ハイデガー、メルロ=ポンティ、サルトルなど後の実存主義につながるものである。 ちくまプリマー新書は、学問、教養への入門編というか、高校から大学一般教養レベルということになるのだろ . . . 本文を読む
バフチンは、ロシアの、というかソ連の、と言った方がしっくりくるだろうか、文芸学者。ブックカバーに「革命後の混乱の中、匿名の学者として活動。スターリン時代に逮捕され流刑に処された後、モルドヴァ大学の教師として半生を過ごした」とある。旧ソ連の西端に位置し、ルーマニアと接するモルドヴァ共和国の大学である。ソ連の辺境にひっそりと余生を過ごした学者、ということになるのだろうか。【ベイトソン、バフチンとの再 . . . 本文を読む