オリエント美術館にイコン画家の白石孝子さんを紹介して
私はすごく後悔しました。
彼女は自ら新聞社に自分を売り込み
「イコンの正統な伝承者」と記事になっていましたし
私もイコンを習いたかったので
オリエント美術館の学芸員に頼んだのです。
イコン教室ですぐに違和感があったのは
洋金箔のシールを
「私にしか売らないっていう金箔よ」と自慢したことです。
私はとりあえず、そのシール金箔を使いましたが、
次の毎日新聞社のイコン教室では
白石さんからシール金箔は買わずに
自分で純金箔を貼りました。
仏画をされた方ならわかると思いますが、
洋金箔なんて、すぐに変色する金箔など使いません。
まして、シール金箔など、もってのほかでした。
白石さんからもらったイコンは2枚で
1枚は手元にあり、
もう1枚は母の聖人を間違えて描いてきたものでした。
母の聖人アンナも、1年に渡り、
「母のアンナは神生女マリアのお母さんですよ。
そのアンナではありません。
神父様から聞きました」と何度言っても聞きませんでした。
「あの神父は東京で勉強していないから、よくわかってないのよ。
美和さんのお母さんはお婆さんだから
お婆さんのアンナに決まってるわよ」と言い張ります。
これは、その翌年の柳井原正教会の会報に
神父様が母のアンナについて書いてくださり、
やっと白石孝子さんは自分がおかしかったことを認めました。
その間違えて描いたイコンは
年末に、母が白石さんに送り返しました。
違う聖人のイコンをもらったことを
母は気持ち悪がっていました。
私にくれたイコンですが、
はっきりとシール金箔が変色してきました。
白い隙間があり、シールだとわかります。
足りないところをついであり、
その継ぎ目から右が黒くなってきました。
写真の真ん中あたりです。
普通の洋金箔は2年くらいで黒くなります。
安いアクセサリーと同じ真鍮だからです。
もっと安物は1年で真っ黒です。
シール金箔は加工してありますから
黒くなるのが遅いですが、必ず変色します。
これはもらって6年のイコンです。
アクリル絵具もペリペリ剥がれてきました。
一般のアクリル絵具はマニキュアのようなものですから
人吉のイコノスタスも同じアクリル絵具ですから、
30年どころか、6年で剥がれてくると予測できます。
なぜ、一般のアクリル絵具を
イコノスタスに使ったのでしょうか?
アクリルのみのイコンは、
ぬらぬらして気持ち悪いと言われる方が多いです。
「イコンの正統な伝承者」と自分でも言われていて
ギャラリーでも3万から10万円くらいでイコンを販売していましたから、
まさか、
シール金箔を使うとは、
しかも「私にしか売らないのよ」と言われて
私はガクガクしました。
ギャラリーで販売したイコンにも
このシール金箔を使ったのでしょうか?
白石さんは吝嗇だからでしょうか?
「別にアジア美術なんか知らなくても
イコンだけ描いていればいいの」と言われていましたから
日本絵画のことも、洋金箔のことも
なーんにも知らないんだな、
と初めてわかったわけです。
エッグテンペラも描いたことがなく
オリエント美術館の学芸員が「エッグテンペラでイコン教室を」と言われて
初めて描いたのだそうです。
こういう人から私たちは習っていたわけです。
どこが「イコンの正統な伝承者」なんでしょうか?
神父の娘だからでしょうか?
他のイコン教室の生徒さんも
いろんな絵を習っていましたから
「ちょっと、おかしいよ」と話題になり、
私がニコライ堂に確かめたところ
「白石さんのイコン教室は
日本正教会とは全く関係ない」との返事でした。
新聞に「正統なイコンの伝承者」と書かれているので
みな日本正教会のイコン画家だと信じたわけです。
白石孝子さんに悪気はないのだと思いますが
結果、「詐欺ではないか?」と言う人もたくさん出てきたので
私はオリエント美術館や新聞社各社に
「イコンについて記事にするときには
ニコライ堂に聞いて確かめて書いて欲しい」と頼みました。
メディアを使って宣伝するのも芸術家の活動ですが
「私は神父の娘だから、私のイコンはすごいのよ」と言って
新聞社の記者をアトリエに呼び、
記事にさせたわけです。
イコン教室の生徒からも
「自分の利益を求めるわけだから
宗教画、イコンの真の定義から全く離れているし、
神父の娘という立場を売り文句にしている」と言われました。
白石さんご夫婦で制作していたセラミックイコンも
「勝手にセラミックイコンというジャンルを作ってはいけない」とニコライ堂に叱られたと
白石孝子さんから聞いていました。
セラミックに描いたイコンはもっと剥がれ安いだろうと思います。
一般のアクリル絵具は、
焼き物用の絵具ではないですから。
シール金箔を「私にしか売らないのよ」とオリエント美術館で何度も自慢したとき、
「この人、懲りてないんだな。
金は独占販売禁止だということさえ知らないんだ」
と思いました。
そのあとも、人吉のイコノスタスも
いろいろおかしなことがありました。
私は高松八栗寺の多宝塔の内陣壁画制作をお手伝いしましたから
イコノスタスの白石さんの描き方と比べることができました。
このブログにも書いてあります。
あれは、ひどい指導でした。
イコンは、ただの絵ですから
神父の娘でなくても、聖職者でなくても描けます。
描いていい絵です。
ただ、正教徒がお祈りするイコンは
正教会の神父様が成聖、お祈りをして
初めて正教徒が祈る対象のイコンになるのです。
私は仏画は、西村公朝先生や林司馬先生に習いましたが
寺の娘で仏画を描いている画家にも会いましたが
「寺の娘だから私の仏画はすごいのよ」なんて人には
一度も会ったことがありません。
仏画家から自慢話を聞いたことなど私は一度もありません。
私の会った仏画家や仏師たちは
みなさん、謙虚で仏様に仕える技術者でした。
母が「非常に珍しいイコン画家に出会ったものだね
私も初めて会ったよ」と
呆れていました。
母の母も日本画家で、
鎌倉や東京のお寺で仏画を描いていた画家です。
シール金箔は必ず変色します。
黒く汚くなります。
神様、仏様の世界をお描きになるのであれば
必ず、純金箔をお使いください。
金は金ですから。
なぜ純金箔を使うかと言うと
神様、仏様の世界は不変だからです。
色の変わる洋金箔を使うなんて、とんでもない話でした。
追記
イコンや仏画を
ご自分で楽しんで描かれたり
お友達に差し上げたりする場合は
安く描くために
アクリルのゴールドや
ゴールドフィンガーを使われたらいいと思います。
ただ差し上げる方には
「神様や仏様の世界は変わらないから、本当は純金なんだよ」と
話してあげてください。
それで描いた方の気持ちはしっかり伝わると思います。
洋金箔が当たり前だと思われるのが
仏画家や仏師は困るのです。
仏画家や仏師にとって
純金箔でなくてはなりません。
洋金箔を使うなど、恥です。
私は純金箔しか使いたくありません。
イコン画家はどうかは、私は知りません。
私はイコン画家ではないので
イコン画家が洋金を多用しようと
関わりありません。