ぬばたまの 闇はかはりて むらさめの 音もかなしき あかつきのまへ
*「むらさめ(村雨、叢雨)」はにわか雨のことです。言葉はよく知っていても意味は知らない言葉っていうのはよくありますね。これなどそのひとつではないでしょうか。
闇が変わって、にわか雨の音も悲しい、夜明けの前である。
今は、馬鹿ばかりが栄えている悲しい世の中ですが、その闇も変わり始めている。いろいろなことが起こり始めているのです。にわか雨のように、かつてないような事件が起こり、深い印象を人々に残して過ぎ去ってゆく。
にわか雨が降るように、不安を呼び起こす何かが起こる。それを見つつも、人々は恐れを感じるだけで何もできない。何かが起こる予感はするのだが。
もうすぐ夜明けがくるのだ。こんな、馬鹿ばかりが栄える時代が、終わるのだ。
闇は真っ黒一色であるように見えて、複雑な色を秘しているものだ。その闇の色が今変わり始めている。人間の、見ることができる力が伸びて、闇の中に隠れているものの姿が見えるようになったのです。
形だけきれいな美女の心が見えるようになった。あれらが陰でどのような恥知らずの所業をしているかが、あからさまにわかるようになった。
そうなればもう、元と同じではいられない。嫌な男も、馬鹿な女はいやだと言って逃げていく。
人々は気付く、何もかもは、女がいいものだと思っていたから、できていたことなのだと。馬鹿でもきれいな女がいて、そっちにもいいものがあると信じていたからできていたことなのだと。
その女が馬鹿なものであったのなら、男は何をするのも馬鹿らしい。
きつい女はもういやだ。考えていることが汚すぎる。女は馬鹿の方がいいと言いながら、本当に馬鹿だったらいやなのが、男というものだ。
闇の色がこうして変わり始めている。見える景色が違い始めている。さて、人間はどうするべきか。
いまだにわからない。だが、夜明けは確実に近づいているのだ。