寒風に 悔いもかねつる 身を抱き 今さら憎き 乱声の日々
*これは大火の作ですね。古風に真面目に詠んでいてもなんとなくわかる。自分らしさというのはどうしても隠せません。
乱声(らんじょう)というのは、前にも言ったが、鉦や太鼓を激しく打ち鳴らして鬨の声をあげることだ。まあ言わずともわかるでしょうが、要するに、馬鹿が何も知らずに影から激しくかのじょへの悪口を言っていた、あのことを意味します。
まさに乱声というのがぴったりなことでしたね。言うにことかいて何を言ったのか。恐ろしいことを言った。まさか、自分の言ったことが自分にそのまま返ってくるとは思っていなかったからです。無知とは恐ろしい。
地獄に落ちて、みんなに犯されてしまえ。そこをみんなに見られて、世界中にあざ笑われるがいい。
まあ、そういうことを言いましたね。言葉は違えども大意は変わらないことを、みんなが口々に言いましたね。あまりにも、あの美人が憎かったからです。どんなに高い罠をはってもかからない。思うように馬鹿なことをやって不幸になってくれない。それなのに、自分より美しいのだ。
だからと言ってそこまでやるかということをした。そこまで言うかということを言った。憎悪と嫉妬に狂って人間の境を越えた。もはや神もあきれ果てるほど。
もうわかりますね。そろそろ、法則の風がもろに来ている。かのじょを呪ったその自分の言葉が、自分に返って来て、自分に現れたのです。
奈落に落ちて、みんなに犯された上、世界中の笑いものになったのは、自分の方だったのです。
逃げられない現実は、これからもたくさん起こるでしょう。もうだれも助けてはくれない。神でさえも同情してくれない。
たったひとりで、あらゆる難に向かっていかねばなりません。自分の言ったことの、すべてに責任をとらねばなりません。