とこしへに 逃れ逃れて われになき ものとならむと ねがふ馬鹿かな
*わかりやすい作ですね。訳す必要もないかもしれませんが一応やっておきましょう。
永遠に自分から逃げつづけて、自分ではないものとなろうと願う、馬鹿であることよ。
実際馬鹿な人間はこういうことを考えています。自分が嫌でたまらないのです。自分は嫌なことをしているとても嫌なやつだからです。だからこんな自分であることが嫌で、人から盗んだもので自分を作り変え、それを生きようとします。しかしそのためには、他人からいいものを盗まねばならず、そんなことをしている自分がまた汚くて、逃げたくなる。
何度もここで教えましたね。馬鹿者の負のスパイラル。自分を嫌がってそれから逃げようとしている限り、苦悩は終わらないのです。
馬鹿者というのは、永遠に逃げられはしない自分からずっと逃げようともがいている。それだからこそ自分が苦しむのだということが、わかっているようで、わかっていない。理屈ではわかっていても、とにかく自分が嫌なのです。自分をよくするために、汚いことをしている自分がつらくてしょうがないのです。
それを解決するためには、もう嘘をすっぱりと脱いで、本当の自分に戻り、本当の自分を生きていくしかないのだが、馬鹿者はそれだけは嫌だというのです。なぜなら、馬鹿者は本当の自分を生きたことがほとんどないので、本当の自分がとても苦しいものになっているからです。
嘘でもきれいな自分がいい。だからほかの美しい人から顔やいろいろなものを盗んで、自分をきれいにするのですが。
どんなに表面をきれいにしても、漏れ見えてくる心が全然違うことを言っている。それを感じる人の心をもうごまかせない。
それなのに馬鹿者はまだ逃げ続ける。永遠に逃げて逃げ続けていけば、とうとうほかのものになれると思い込んでいるかのように。
馬鹿はその結果がどんなものか、まるでわかっていないのです。