Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

珍客来訪

2021年10月12日 14時49分31秒 | エッセイ


「あら、アマガエルさん、突然のお越し。いかがされました」
  
  「いや、ベランダの戸が少し開いていたものだから、
   ちょいと失礼させてもらいましたよ。
   お断りもせず、いきなりで誠に申し訳ない」

「気を付けて下さいね。フローリングの床は滑りますよ。
そんなにピョンピョン跳ねたら危ないですからね。
ほら、言わないこっちゃない。危ない、危ない。
それにしても、少しばかり驚きました。
それで、何かご用?」

            

   「いや、格別の用はないのだが、部屋の中から
   楽しそうな笑い声がしてたものだから……」

「ああ、今孫とLINEしていたのですよ。この子が70過ぎの、
このお婆ちゃんとLINEで遊んでくれるのですよ」
  
   「ほお、お幾つ?」

「大学4年生の男の子なんですよ」
   
   「その年齢の男の子が、お婆ちゃんの相手か。感心な子ですな」

「ちょっと失礼。アマガエルさんがお見えになったことをLINEしなくちゃ」
   
   「どうぞ、どうぞ。お構いなく」

「さっそく返信きました。あら、これ何」
   
   「何と?」

「『絶滅完了』ですって。意味不明だわ」
   
   「確かに、意味不明ですな」

「こんな子なんですよ」
   
   「確かに、面白そうなお孫さんだ」

「あらっ失礼しました。まだお茶、いやお水も出さずに」
   
   「いやいや、お構いなく」

「用意します間、ハナアナナスの花が咲いている鉢でお休みになっていてください」
   
   「心地良さそうですね」

「私の手にお乗りください。あそこまでお連れします」
   
   「そりゃ、ありがたい」



「では、お体に水をかけますよ。いかがですか」
   
   「結構、結構。良いあんばいです。
   ところで、厚かましいことながら
   今晩ここに泊めていただくわけにはいきませんかね」

「どうぞ、どうぞ、構いません。ゆっくりお休みください。
では電気消しますよ」

<翌朝>
「あら、お帰りになっているわ。
おかしいわね。戸を開けていた記憶はないのだけど……。
ベランダでゲロ、ゲロ泣いておられる。まあ、いいか。
お気に召したら、またのお越しを……」