「あら、アマガエルさん、突然のお越し。いかがされました」
「いや、ベランダの戸が少し開いていたものだから、
ちょいと失礼させてもらいましたよ。
お断りもせず、いきなりで誠に申し訳ない」
「気を付けて下さいね。フローリングの床は滑りますよ。
そんなにピョンピョン跳ねたら危ないですからね。
ほら、言わないこっちゃない。危ない、危ない。
それにしても、少しばかり驚きました。
それで、何かご用?」

「いや、格別の用はないのだが、部屋の中から
楽しそうな笑い声がしてたものだから……」
「ああ、今孫とLINEしていたのですよ。この子が70過ぎの、
このお婆ちゃんとLINEで遊んでくれるのですよ」
「ほお、お幾つ?」
「大学4年生の男の子なんですよ」
「その年齢の男の子が、お婆ちゃんの相手か。感心な子ですな」
「ちょっと失礼。アマガエルさんがお見えになったことをLINEしなくちゃ」
「どうぞ、どうぞ。お構いなく」
「さっそく返信きました。あら、これ何」
「何と?」
「『絶滅完了』ですって。意味不明だわ」
「確かに、意味不明ですな」
「こんな子なんですよ」
「確かに、面白そうなお孫さんだ」
「あらっ失礼しました。まだお茶、いやお水も出さずに」
「いやいや、お構いなく」
「用意します間、ハナアナナスの花が咲いている鉢でお休みになっていてください」
「心地良さそうですね」
「私の手にお乗りください。あそこまでお連れします」
「そりゃ、ありがたい」

「では、お体に水をかけますよ。いかがですか」
「結構、結構。良いあんばいです。
ところで、厚かましいことながら
今晩ここに泊めていただくわけにはいきませんかね」
「どうぞ、どうぞ、構いません。ゆっくりお休みください。
では電気消しますよ」
<翌朝>
「あら、お帰りになっているわ。
おかしいわね。戸を開けていた記憶はないのだけど……。
ベランダでゲロ、ゲロ泣いておられる。まあ、いいか。
お気に召したら、またのお越しを……」