「じゃ、僕は行くよ」貴男は冷たく背を向ける。
「待って」消え入りそうな私の涙声。
「だけど、僕の誘いを拒んだのは君じゃないか」
「……」
「ああ、分かっているよ。僕は心から君を愛しているし、
君もきっと僕のことを……。
だから、もう泣かないでほしい。さあ、こちらへおいで」
貴男は優し気に言う。それがまた私の胸に刺さる。

貴男のその純白の装いは、世の邪気を払う神の化身か。
見まがうほどに高貴で神々しい。あらゆるものが貴男にひざまずく。
貴男が大きく腕を広げれば、その腕に抱かれようと女たちが
先を競ってやって来る。
貴男を拒むなど、どうして出来ようか。
幸運にも貴男の目に留まった私。気持ちは宙を舞っていた。
そして貴男の腕が、柔らかく、温かく包み込こんでくれる。
そんな幸せは束の間のことだった。
私が初めて貴男の腕の中で胸をときめかせた時、
貴男の視線の先にはもう別の女性がいた。
貴男の素敵な顔は確かに私の方を向いていたけれど、目は違っていた。
そんなことがその後も。私は気づかない振りをした。
「何て移り気な」と詰りもしなかった。
貴男が離れていくのが怖かったから。
でももうダメ。これ以上貴男の移り気には耐えられそうもない。
貴男は私の目を盗んで次から次へと、
貴男の温もりを欲しがる女たちを迎え入れる。
私が知らなかったとでも……。
私は泣き続けていた。
貴男の移り気は自分ではどうしようもない貴男たちの
性(さが)なのだと分かっていても、
やっぱり許せない。今日限り、きっぱりと……。
泣きながら貴男を見つめる。
ああ、何と美しい。
腕をいっぱいに広げ、そして王者のように気取って歩く、
その物腰の柔らかさ。私をまた惑わせる。
仕方がない。貴男がどこへも行かぬよう、
どこかに閉じ込めておくことにしよう。
──見慣れた青や緑など鮮やかな色彩のインド孔雀。この白孔雀はその白変種だという。
尾羽をプルプルプルと震わせ、そして背から尾の先までの純白の長い羽を
おもむろに扇 のように丸く広げていく。
そして睥睨するかのように周囲を見回す。その神秘的で優雅な姿。
だが、いつも見られるわけではない。繁殖期の1~3月、その暖かい午後、
それも周囲に人が多くない平日にラッキーな日が多いのだそうだ。
その幸運に大牟田動物園で巡り合った。
白孔雀はどうやらここに幽閉されたらしい
と思っていたら(≧▽≦)
最後に見事にやられました。
といういうか、私も女性ですので「やったね!」でした。
たまには、こんな遊び方もしてみよう、まあ出来心みたいなものです。
これから時々やってみようと思っています。