散歩途中に、松ぼっくりが、良く、芯の部分だけを残して、地上に、転がっているのをよく見かける。初めは、車の車輪に、轢かれて、砕け散ったのではないかと、思っていたが、よく観察すると、確かに、ご丁寧に、芯の固い部分だけが、どういう訳か、残っている。ある人に、それは、リスが、かじった残り滓ですよ、と説明された。数年前の夏、電線の上を、しっぽで、バランスをとりながら、軽業師のように、ツツツーと渡り終えて、赤松の梢に、飛び移ったかと思えば、スルスルッと、太い幹を駆け上り、姿を消してしまった。両耳の毛が、後ろに、長く延びていたのを、今でも、覚えている。ベランダや、庭先で、松ぼっくりの残滓を見る度に、姿は、見かけないが、元気に、きっと、梢を駆け回っているのだろうかと、想いを巡らせる。ドングリの実を、どこかに、貯蔵する忙しい季節も、程なく、やってくる今日この頃である。