【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

納豆

2011-08-18 19:03:49 | Weblog

 私は西日本で育ったせいか、子供時代に納豆が身近にありませんでした。東京や宇都宮で食べたのはそれほど美味くなくて「こんなものか」と思っていましたが、水戸のユースホステルで食べた納豆が美味くて“目覚め”てしまいました。今は好物です。ユースホステルでそんなすごいモノが出るわけはないでしょうが、やっぱり本場の力かな?

【ただいま読書中】『納豆の研究法』木内幹 監修、糸井利郎・木村啓太郎・小高要・村松芳多子・渡辺杉夫 編、恒星社厚生閣、2010年、2850円(税別)

 「ご使用に際して」という注意書きが最初にあります。「本書は実験・操作のマニュアルとして企画されたものである。実際に実験台において使用されることを目指している」のだそうで、すると私の“使用法(座学で読む)”のは“邪道”ということになります。ただ、今から実験道具を揃えるのは大変なので勘弁してもらうことにします。
 「納豆の研究」と言ったら、素材(大豆や納豆菌、ワラなど)・菌の培養・納豆の製造方法・納豆の品質管理・納豆の利用法・新製品の開発、などを思いつきます。素人がぱっと思ってもこれだけ出てくるのですから、プロが本気で研究したら、さて、どんなものが登場するのか、ワクワクします。
 第1章は「納豆菌の研究法」で「分離法」「生理学的同定法」「分子遺伝学的同定法」「突然変異法」「スターター調整」「遺伝子組み換え実験法」「挿入配列実験法」「形質導入法」が並んでいます。
 第2章は「外国での納豆様食品の採集法」。ここで参照するべきガイドになるのは「生物多様性条約」。遺伝資源に関しては原産国の権利を重んじる必要があるのです。そしていよいよ現地調査ですが、ここではきわめて具体的に、旅行会社の選定のコツまで披露されています。中国では行政や共産党委員会とのコネが重要、というところでは笑ってしまいました。
 納豆には豆を煮る工程があるため食中毒はほとんど起きません。ただ、まれに大腸菌やセレウス菌による汚染が生じるそうです。対策は、作業環境・作業員・害虫対策。さらに、納豆菌へのバクテリオファージの寄生についても対策が必要だそうです。たしかに納豆菌が汚染されて「別のもの」になったら困りますよねえ。
 異物も結構混入するので、その除去対策も重要です。製造ラインにX線異物検査装置を置くところも増えているそうです。まるで空港でのチェックみたい。遺伝子組み換え大豆の検出は、組み替えられたDNAの検出法と遺伝子組み換えの結果作られるタンパク質の検出法とがあるそうです。ちなみに、本書でまず紹介されている分析方法は、JAS分析試験ハンドブックの方法とは違うそうで、一応お上御用達の方法も書いてあります。もちろん残留農薬の検出も行なわれます。それで検出される農薬の一覧表がありますが、なんだかポケモンの名前リストを見ているような気がしてきました。数の多さもありますし、私にとってはほとんど無意味文字列なんだもの。
 大変失礼な言い方ですが「たかが納豆」にここまで詳しい科学の目と手が入っていることに、私は感動しました。こんど納豆を食べるときには、口に入れる前に拝んでからにします。