議論が白熱したら論争になる、と考えることは可能ですが、むしろ引き算で考えることも可能かな、と思いつきました。ここでの“数式”はたとえばこうなります。
「議論 ー ユーモア = 論争」
【ただいま読書中】『数学大明神』森毅・安野光雅 対談、日本評論社、1982年、2400円
変った組み合わせに見えるお二人の対談です。しかし、語る語る、400字詰め原稿用紙で2000枚もの分量を、ぎゅっと400ページ足らずの単行本に圧縮したのが、本書です。
「ゼロ」「集合」など、いかにも数学の話題がメインですが、森さんはもちろん学者だけれど安野さんももとは教師だったそうで、数学の入試問題について「作る(採点する)側」からいろいろ話しているところなど、何度も噴き出しながら私は読みました。
章立ては「0の章」「1の章」、とその章のメインの話題を「この章では『0』について話します」「この章では『1』について」と規定しつつ「10の章」まで並んでいます。で、なぜか「10の章」のメインの話題は「パチンコ」。いやもう、笑うしかありません。
話題と発想力では折り紙付きの人が対話したら、これは面白くないわけがありません。分量の割には読みやすい本ですので、ぜひ一度手に取ってみてください。図書館にだったらあるんじゃないかな。もし「数学のコーナー」に置いてあったら不幸だなあ。「ノンジャンルのコーナー」がもしあったら、そこに置きたい本です。