鰻には「鰻丼」と「鰻重」があります。では親子には「親子丼」と「親子重」、牛には「牛丼」と「牛重」がありましたっけ?
【ただいま読書中】『盲導犬不合格物語』沢田俊子 著、 佐藤やゑ子 絵、講談社(青い鳥文庫)、2013年、620円(税別)
盲導犬に向いた性質の犬同士を繁殖犬として掛け合わせて生まれた子犬は、パピーウォーカーと呼ばれる一般家庭に預けられます。そこで人間との信頼関係を築き社会のルールの基礎を知った犬は、
1歳になると訓練所に入って訓練を受けます(犬の方は遊びと思っているフシもありますが)。しかし、盲導犬になれるのは3〜4割。つまり6〜7割の犬は「不合格」となってしまうのです。本書はその「盲導犬になれなかった犬たち」の物語です。
不合格になる理由は様々です。命令に従うのは当然ですが、危険な場面ではいくら「ゴー」と命令されてもそれに不服従にならなければなりません。その自己判断ができなければ不合格です。警戒心が強すぎたり喜びすぎたり吠え癖のあるのもダメです。では盲導犬になれなかったらそれでおしまいか、と言えば、そうではありません。その特性に合わせての人生、というか、犬生があるのです。
攻撃的な性格で不合格となったベンジーは、いじめられていた子の命を守りました。好奇心が旺盛すぎるラタンは人間不信となっていた人にもらわれていって、なんとマジシャンに。臆病すぎるオレンジとクエストは介助犬になりました。臆病だったはずなのに、泥棒が入ったら押さえ込み、体が不自由な主人が警報ベルを押す時間を稼いでいます。猫好きだったために不合格になったのはトゥリッシュ。街に出て猫に会うと嬉しそうに挨拶をしたりついていこうとするのです。トゥリッシュは「盲導犬のデモンストレーション」をしています。施設によっては「盲導犬お断り」のところがまだたくさんあります。そういった所に出かけていって「盲導犬がまわりに迷惑をかけない」ことを知らしめる役割を果たしているのです。レストランで盲導犬が嫌われる理由の一つが「抜け毛」ですが、抜け毛対策のコートを作るときにもトゥリッシュは何回もの試着を全然嫌がりませんでした。また「盲導犬に触りたい」という人のために触ってもらう役割も果たしています(街角での盲導犬は「お仕事中」ですから、触ったりして仕事の妨害をしてはいけません。皆さんは運転中の運転手や手術中の医者に話しかけに行ったりしないでしょ?)。
本書は、「犬の物語」のように見えますが、実は「犬と人の物語」の本です。様々な人生に様々な犬が寄り添っています。私は別に「犬派」ではありませんし、犬の躾をする能力も持っていませんが、すでに躾がすんでいる盲導犬不合格犬だったら、飼ってもいいかな、なんて魅力を感じました。犬の方もそう思ってくれる魅力が私にあるかどうか、が大きな問題ですが。