【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

2018-03-25 06:59:44 | Weblog

 「登校」「下校」「母校」「校庭」「校長」などを見ると、「校」だけで「まなびや」の意味があることがわかります。すると「学校」の「学」は絶対に必要ですか?

【ただいま読書中】『不思議の扉 ──午後の教室』大森望 編、角川書店(角川文庫)、2011年、514円(税別)

目次:「インコ先生」湊かなえ、「三時間目のまどか」古橋秀之、「迷走恋の裏路地」森見登美彦、「S理論」有川浩、「お召し」小松左京、「テロルの創世」平山夢明、「ポップ・アート」ジョー・ヒル(大森望 訳)、「保吉の手帳から」芥川龍之介

 「学校」を舞台にした短編ばかりを集めた本です。しかし編者が編者ですから、ちょいと(あるいは盛大に)捻った作品選びがされています。私が読んだことがあるのは、つい先日読んだ「三時間目のまどか」と高校の時に読んだ「お召し」だけですが、この二つを読んだ“時間差"は45年以上。しかし「お召し」は今読んでも全然古くなっていないのが本当にコワイ作品です。ところがこの“古い"作品どころか、芥川龍之介まで加えてあるのが、編者の“たくらみ"でしょう。「この世には、まだまだ面白い作品があるんだよ」と若い読者にちらっとサインを見せている、といった雰囲気です。
 「テロルの創世」はカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」と一見似た舞台設定ですが、「わたしを離さないで」が東洋的な諦念が底流となっているのに対し「テロルの創世」は疑いや怒りなどの否定的な感情が主人公を駆動しています(ついでですが、「テロルの創世」の方が5年早く発表されているそうです)。「ポップ・アート」の著者は、父がスティーヴン・キング、母はタビサ・キング。だけど「キング」じゃなくて「ヒル」を名乗るんですね。ものすごくぶっ飛んだ発想で、でも心にじんとくる作品です。この人の他の作品も読みたくなりました。