【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

陸軍と海軍

2019-09-30 06:56:42 | Weblog

 明治政府は軍に関して「陸軍はフランス陸軍式」「海軍は英国海軍式」とまず決め、ついで「陸軍はプロイセン式」に変更しました。当時としては「最強」のものを選んだつもりなのでしょうが、問題は「軍事的にも政治的にも異なるシステム」が一つの国の中で上手く「日本のため」に機能できるかどうかをとことん考えなかったことでしょう。あまりに異なるシステムが並立するのは、たとえば一つの会社でウインドウズとマックとを併存させるのと似ていて、要らないトラブルが増えるだけのはずです。

【ただいま読書中】『仮装巡洋艦バシリスク(航空宇宙軍史・完全版(四))』谷甲州 著、 早川書房、2017年、1500円(税別)

 目次「星空のフロンティア」「砲戦距離12,000」「襲撃艦ヴァルキリー」「仮装巡洋艦バシリスク」

 時代は外惑星動乱より前に遡ります。航空宇宙軍は太陽系での警察業務とともに、外宇宙探査を行っていました。無人探査機によるダイダロス計画、有人探査機によるイカロス計画によって知見と技術は充実し、第三世代のオディセウス計画ではラムジェットエンジンによる最新鋭の探査艦が投入されました。
 顔さえ覚えていない母親が犯した罪の償いとして、(地球の暦での)170年間の兵役を課せられた「俺」は外宇宙探査の支援艦に配属されます。長期間の航宙のため、乗組員はお互いの臓器も融通し合うこと(人体パーツのバックアップであること)も前提となっていました。
 なるほど、人体のサイボーグ化が真剣に検討されるわけです。
 『へびつかい座ホットライン』(ジョン・ヴァーリイ)を思わせる存在も登場します。ただし、「ホットライン」の方は情報の流れだったのに対してこちらは情報だけではなくて空間そのものも(超光速で)流れているのですが。まるで宇宙の怪談話のようです。
 「砲戦距離12,000」では「宇宙での戦闘(爆雷、ミサイル、レーザー砲)」について、実に精密な議論が紹介されます。素人っぽい少尉を教育する体裁で、読者に宇宙での戦闘がいかに大変なものかがきっちりレクチャーされます。そしてこの時の体験は100年後に「襲撃艦ヴァルキリー」で“主題と変奏"として繰り返されます。
 本書ではちょっとした(繰り返される)生き抜きも用意されています。たとえば「代用コーヒーのまずさ」。これが100年以上も味が変わらない、というのですから航空宇宙軍も相当に頑固です。
 最後の短編は、外惑星動乱が終わってから150年も経って発見された仮装巡洋艦バシリスクの話です。当然“幽霊船"になっているのですが、これまた一種の怪談話仕立てとなっています。
 未来から過去の戦争を見ると、まるで他人事になってしまいます。ということは、今から数十年後、第二次世界大戦もまた「過去に戦争があったらしいね」と言われるようになるのでしょうか。




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