5月8日、神奈川県立近代美術館葉山へ「日韓近代美術家のまなざしー『朝鮮』で描く」展を
見に行ってきました。開催を知ったのが4月末と会期の終りに近く、野暮用多く行きそびれて
いるうちとうとう最終日になってしまっていました。
混雑するかもと若干の心配をしながら出かけましたが、数えるほどの来館者数でじっくり
みることができました。
韓国好きの私ですが、近現代の絵についてはごく最近まで興味の対象外でした。たまたま
相次いで、現代の画家2名について知る機会があり、そのうちの一人については折角知っ
たその機会を逃してしまったので、この展覧会にその画家の絵が出品されていると聞いて
一層見に行きたいと思ったのでした。
その機会とは、画家イ・ジュンソプのドキュメンタリー映画「ふたつの祖国、ひとつの愛~
イ・ジュンソプの妻~」でした。
映画の紹介文から二人について書かれた部分を引用してご紹介します。
第二次世界大戦のさなか、日本の美術学校で出会った朝鮮からの留学生イ・ジュンソプ
と日本女性山本方子は恋に落ち、空襲が激化し戦況が最終局面を迎えた1945年、方子
は命がけで海を渡り、先に故郷に戻っていたジュンソプと結婚した。幸せな時を過ごしたのも
つかの間、朝鮮戦争の戦火と貧困に追われ、1952年7月、母子は日本へ帰国。イ・ジュン
ソプは家族そろって暮らすことを目指したが、願いがかなうことなく1956年9月6日、誰にも
看取られずに息を引き取った。離れて暮らす家族の、唯一の通信手段だった手紙は200通
以上に及んだ。
この予備知識をもって展覧会に臨んだ私、冒頭の「夫婦」(写真はネットから借用)を
見た時は、画家の妻へのやさしく、あふれる愛に胸が詰りそうでした。
画家が多く描いている牛をテーマとした絵が力強く、荒々しくも感じられるのとはとても
対照的だと思いました。「旅立つ家族」という絵も、家族揃って幸せだったときの姿を
描いていて、とても優しいイメージがありました。
ほかに数点、紙切れに書かれたような線画のような絵があって、不思議に思っている
と貧困のため手に入れられない画材にかえて、手元にあるタバコの箱の中の銀紙など
に描いていたとあります。
描きたい絵が浮かぶと、その場ですぐ手に取ったものに描き始めないでは
いられなかったとか・・・
困難な時代状況の中で一心に絵を描き続けたイ・ジュンソプ、不遇であったことが
彼を ‘天才’‘国民画家’と呼ばれる位置に押し上げたのでしょうか?!