3月11日講演会へ行くついでに上野の森を少し散歩し、引き続き旧岩崎邸へと足を
のばした日の記録です。
旧岩崎邸は、今はもうビルに遮られて見えないと思いますが、往時なら不忍池が
見下ろせそうな小高い所にあります。池が昔もあったかどうかわかりませんが、いずれ
にしろ眼下は上野の森(寛永寺の森)緑豊かな絶好のロケィションだったことでしょう。
門を入ると緩やかなスロープが敷地沿いにつづきます。そろりそろり登って行くと
登りきった管理事務所の脇に大木がありました。幹にも枝にも瘤のような不思議な
ものが垂れ下がるようにできています。一体何でしょう?
こんな現象は初めて目にしました。これは銀杏で、銀杏は樹齢が長くなると木から乳が
滴るような、こうした現象が起きるのだそうです。この木は樹齢400年以上だとか。
旧岩崎邸のあるこの庭園は元大名屋敷を三菱創業者の岩崎家が購入したもので
庭園内には古くからの日本庭園の名残が見られます。他にも大木がたくさん.
洋館
旧岩崎邸は洋館・和館・撞球室(ビリヤード場)の三棟が、往時の3分の一ほどになったという
敷地の中に公開されています。洋館は現存する所では御茶ノ水のニコライ堂を設計した
英国人ジョサイア・コンドルの設計で、晩年の作品に比べると装飾性が強く、全体のスタイルや
装飾は英国17世紀のジャコビアン様式を基調としつつ、南面のベランダはコロニアル様式
天井や暖炉などの細部にイスラム風のデザインが施されるなど様々な様式が織り交ぜられ
ているのだそうです。この洋館は迎賓館として利用され、岩崎家の通常の生活は和館の方で
営まれたといいますが、建て坪550坪のうち大広間と呼ばれる現存部分を残し、大部分は
国有化の段階で取り壊されてしまいました。明治時代に大工棟梁として数多くの住宅を
手がけた、大河喜十郎施工と伝えられています。現存していれば洋館よりもその文化財としての
価値は高かったと惜しまれているそうです。
内部は写真撮影禁止なのでご紹介できないのが残念です。ご興味が湧いたら検索で
ご覧になってくださいね。
洋館では驚嘆したものが2点あります。一階女性客の為のお部屋の天井に施された
刺繍の装飾と壁紙です。
天井の刺繍は、天井という目立たない所にまで手の込んだ素晴らしい工芸品で装飾
されていることにびっくりしました。色はさすがに永い年月を経た日焼けで退色して
いますが、糸を重ねて刺されたその質感のやさしい感じは、ここにたたずむ人を幸せな
心地に包んだろうと思われます。
修復の時だかに天井から外され、裏側から写した写真が展示されていて、退色前の
色の名残を見ることができます。
天井の刺繍装飾(ネットより)
もう一点は金唐革紙の壁紙です。伝来の素晴らしい工芸品に想を得て、本家に劣らない
素晴らしい物作りを、創意工夫でやってのけるのは日本人の腕の冴えるところですが
この壁紙の製作においても、そうした力がいかんなく発揮されたようです。
金唐革紙
欧米の宮殿や市庁舎などの室内を飾る「金唐革(きんからかわ)」という高級壁装材が
17世紀半ばに日本に伝えられた。唐草や花鳥などの文様を、型を使って革の表面に
浮き上がらせ、金泥その他で彩色された皮革工芸品で人気を博した。鎖国で入手困難で
きわめて貴重だったため和紙を素材に代用品が考案されたのが「金唐革紙」だった。
金唐革紙(金唐紙)は和紙に金属箔(金箔・銀箔・錫箔等)をはり、文様を彫った版木棒に
当てて凹凸をつけ、彩色する。その全ての工程は手作りで製作され、金属箔の光沢と華麗な
色彩が豪華絢爛である。
明治の洋風建築に用いられたが、その多くは消滅し、現存するのは数ヶ所だけという貴重な
文化財になっている。昭和初期には徐々に衰退し、昭和中期以降その製作技術は完全に
途絶えていた。旧日本郵船小樽支店(重文))の復元事業で、現代版「金唐革紙」の復元製作も
行われるようになり、旧岩崎邸公開にあたっても2室だけ復元された。
建物の南側は一・二階とも全面バルコニーとなっています。一階の床はタイル貼り
ミントン社のタイルだそうです。二階は木製でした。このベランダや東側の、後から
増築された部分だというサンルームは、室内から外の気配を感じられる中間的な
空間として、そこに居るとなんだか時間までもゆったり流れて行きそうな気がします。
和館からは前庭に手水鉢、芝庭の向うに灯篭が目に入りその丸みに何だかとても
心が和みます。
和館の見どころは、橋本雅邦(がほう)下絵と云われる壁絵や襖、そして岩崎家家紋
三階菱の意匠による釘隠しや書院組子等。
広い芝庭では野外コンサートも行われているようですから、ここはまた度々来たい
場所になりました。
観覧時間終了の放送に外に出ると、撞球室脇の花壇にこの間各ブログでよく話題に
なっていたクリスマスローズらしき花があったので、各色写してみましたが・・・
かろうじて暈けていなかったのはたった一枚、トホホです^^;