黄金町ロマンス
約20年ほど前、横浜黄金町は風俗の巣窟だった。
風俗店はもちろんのこと、夜になると裏通りはロシア系白人や東欧系白人が立ちんぼで埋め尽くされた。
片言の日本語で「オニイサン、ニマンデドウ」と通りすがりの男性に声をかけていた。
黄金町駅への細い通路には、バラックでできたちょんの間が夜になると賑やかだった。
店内はショッキングピンクの電灯が煌々と照らされ、バーのカウンタには東南アジア系の女性が水割りを置いて座っていた。
店に入れば、二階で事致す仕組みになっていた。皆、売られてきた女性だった。
伊勢佐木町モールには白塗りで顔を塗り、黒いシャドーで化粧し、派手な衣装で歩き回る老女の売春婦がいた。
その名はメリー。
その後、警察の一掃摘発により、黄金町は空っ風の吹く荒涼とした何もないただの町になった。
全ては夢想の出来事だったかのように。