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七曜工房みかん島

18年間の大三島暮らしに区切りをつけ、
滋賀大津湖西で、新たに木のクラフトと笛の工房
七曜工房を楽しみます

一人で建てる木組みの家~⑤木組み~

2006年09月15日 | 『一人で建てる木組みの家』
1.金物類は使わない 
 “安心して住める家”は地震や台風に強くて丈夫でなければならない。そのためには、軸組みの家では骨組がしっかりしている必要がある。骨組をしっかりさせるためには、どのように木を組むのかが重要になってくる。
 木と木を長手方向に継ぐのを継手、十字や丁字に組み合わせるのを組手といい、両方をあわせて仕口と呼ぶ。この仕口の補強に現在では、ボルトや金物が使われているのが大半である。ボルトや金物の使用を前提とした仕口ではなく、もう少し高度な仕口構造とし、ボルトや金物の替わりに込栓や楔を使えば現在の金物重視の家よりも丈夫な家ができるようだ。釘を一本も使っていない家という言われ方をすることがあるが、これがそうだ。一昔前の家は皆そうだった。大工技量の低下や施工のスピードアップを図るために金物重視に変わってしまったと本には書かれているがそうは思わない。金物を使えば仕口は少しは低ランクの仕口でよいだろうが、ボルトや金物を取り付ける手間が追加されればそれ程スピードアップが図れるわけでもない。大工技量は金物を使うようになって低下したのであって因果が逆である。
 実際に自分で材木を刻んでみて、加工が難しくて困ったということはなかったし、楔や込栓を作る手間はかかったが、これだって大工ならまたたく間に作りあげるだろう。全体的にも刻みにかかった時間は大変長かったが、熟練した大工なら私の半分の時間で仕上げることだろう。
ボルトや金物は木が乾燥すれば必ず緩んでくるし、錆びにも弱い。木だけで組む方が、断然丈夫で長持ちするようである。

垂木までの骨組が完了したところ(2006年5月9日)


木組みに使った込栓と楔の総て(2006年4月3日)
金物類に替わるこれらの小さな接続木具類が家の強度を高めてくれるはず


2.土台
土台は地表面近くで木を横に寝かすことから腐朽に注意しなければならない。この土台方式は、城を石垣の上に建てる頃から使われたらしく、工期短縮を図るための方式だったようだ。木の本来の使い方からすれば、独立基礎の上に直接柱を建てる方がずっと良いに決まっている。だがこの方式は手間や技術の点から私には適わないと、土台方式を採ることにした。土台と柱の組手は、長柄差しの込栓打ち又は片鎌長柄差し楔止めとした。

土台の仕上がり ネコ土台も見えている (2006年4月18日)


3.折置組
 柱と梁と桁が組み合さる場合、大きく分けて京呂組と折置組という二つの方法がある。
京呂組が一般的であるが、ここでは折置組とした。
金物類に頼らないとしたら、柱のてっぺんに加工した重ね柄で梁と桁を貫く折置組が明らかに強いと思ったからだ。間取りの自由度から選ぶなら京呂組らしいが、私は強さを求めた。また引き抜き対策として重ね柄それぞれに割楔を打った。

柱の頂部の重ね枘 (2005年11月13日) 
30㎜角の先の方はいかにも細くて心もとないが、がっちりと組まれれば一体となって十分に強度を発揮してくれるようだ


折置組 柱の重ね枘に一段目の梁が載ったところ。この上に桁が載ってくる (2006年4月22日)


柱に梁を載せて楔を打ち込んだところ (2006年4月22日)



4,渡り顎
 梁と桁が十字に組み合さる時は渡り顎とした。一種の相欠き組みである。緊結度を高めるために柱のないところには雇い太枘(ダボ)を打った。下の梁側は地獄枘とし上の桁側は割楔打ちとした。

渡り顎 桁と頭つなぎの渡り顎 (2006年1月6日)



5.厚貫
 壁補強には筋違いを入れずに厚貫の貫構造とした。粘りのある構造で、一挙に倒壊はしないようである。当初、壁は落し板壁工法を検討していたが、壁の強度を出すためには、落し板を金物の長ボルトで締め付けねばならないし、柱への溝加工が大変そうなのでとりやめた。
 貫はごく普通に使われているが、厚貫(t=30㎜)ではなく12~15㎜の薄い貫材を使用し、構造材というよりは壁の下地材的な役割を果たしている。 
 構造材としての貫板は柱との緊結法として、下げ鎌や掛け子彫りをして楔で止めることにしている。
 この上に壁材としては、外壁は下見板張り、内壁は羽目板か木摺りへのしっくい塗りを考えており、竹小舞下地の壁塗りではない。厚板と土壁とで強い壁となることからすれば、今回の厚板+板壁の構造は強度的に不安が残る。軸組算定という計算式で建物の強さを確かめようとした時、厚貫そのものには倍率が算定されていないため、この計算式には厚貫の強度が反映されない。それでも無理矢理木摺り板の壁として計算すれば、地震力にはOKだが、風圧力に対しては梁間方向で少し強度不足と出ている。
 四隅だけでも筋違いを入れようかと考えたが、柔の貫構造と剛の筋違い構造がミックスされても良いだろうかとやはり疑問が湧いた。結局厚貫の強度やその他の組手の強度を期待することにして、このままとした。

貫板を4段設けている。柱の中では下げ鎌などの加工をして楔で留めている 
(2006年4月26日)


6、小屋組の組手
 小屋組を物置として利用し空間を広くとるために小屋束を高くした。そのため二重梁やつなぎ梁を入れた。また小屋束の桁行方向の補強のために貫板を通した。(これは組み上げてから、不安になり、組み上げた小屋束をとり下ろして加工し直して再び組んだ。1日のロスであったが気持ちはスッキリした。)
 小屋組も1階と同じく、小屋束と梁とは長枘差し込栓打ち、小屋束と二重梁と母屋とは重ね枘割楔打ちとした。

小屋組が完了したところ 二重梁とつなぎ梁で背の高い小屋束をつないでいる。
(2006年5月1日)


7,継手
 継手は一般的に行われている方法よりも1ランク上とされる方法をとった。

 *土台・母屋・棟木 ~ 腰掛け目違い鎌継ぎ
 *梁         ~ 台持ち継ぎ
 当初は追掛大栓継ぎの持ち出し継ぎを考えていたが、大きい梁材を見ていて持  ち出し継ぎがとても不安に思え、柱の上でしっかりと継ぐ台持ち継ぎへ変更した 
 *桁         ~ 追掛大栓継ぎ


桁の追掛大栓継ぎの調整をしているところ (2006年3月22日)


柱に梁を載せているところ 梁を柱の上で継ぐ台持ち継ぎが見えている
(2006年4月21日)


付記 妻・ひろより

大三島の人たちは、誰でも、家作り全般に詳しい。
昔は、自分や近所の家を建てる時は、大工さんの手元として、の人たちが総出で下働きしたそうである。
女子衆も、「○○さんの家の瓦を載せる手伝いの時、屋根に上って怖かった」などと話してくれる。

だから、夫が家を建てていると、「道具を貸すで」「手伝うで」と親切に声をかけてくれる。
いろいろアドバイスもしてくれる。
夫は、「コレコレ、シカジカ、ウンヌン、従って大丈夫」と自分流の建築方法を、講釈する。
聞いた人は、「なるほど、それなら、丈夫じゃ」と感服する。
(多分、自分の家じゃないからかも

しかし、たった今、私は、夫の『⑤木組み』の文字打ちをして、初めて知ったが 
夫自身も、この家が台風や地震に対して絶対大丈夫であるという確固たる自信や確証がある訳でもなさそうだ 

ここは、特別に風の強いところである。
私は、「台風大丈夫?」「風で屋根飛ばへん?」
と、夫に詰め寄った。
講釈タレの夫は、
「それは、解らへん。、いろいろ調べて建ててはいるから、大丈夫だろうとは思うが。夫の建てた家で、二人で死んだら、本望やろ」
と無責任にも言い放つではないか 

台風13号が、日本に近づきつつある。
新築中の家には、まだ戸がない
柱や見せ梁、敷居が、ビシャビシャになるだろう。
それどころか、屋根が、強風で、吹き上げられないだろうか

台風シーズンの我家は、あっちもこっちも、スリリング


コメント (8)
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