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賢治の父

2018年03月01日 | 美術展・本
「銀河鉄道の父」 門井慶喜(よしのぶ)
童話作家・詩人の宮沢賢治の父、政次郎さんを描いた作品である。

初めて賢治に触れたのは「風の又三郎」の映像だった。
子どもの頃に観た”どっどどどう・・・”から始まる歌いだしのインパクトが強烈に残る。
あの少年の普通ながら不思議な佇まいのワクワク感は何十年を経た今でも想い出せる。
そして、独特の語彙(当時はもっと斬新に響いたはず)でハッと打たれた「銀河鉄道の夜」。
賢治の豊穣な世界感が煌々とちりばめられている。
「よだかの星」は切ない、子どもだった私はズシンと胸に応えた(今でも思い出すと切ない)
賢治の作品に共通するのは綺麗な情景だ。場面設定がどうあれ作者の”綺麗”な心情が見える。
そこにユーモアと知恵が加わわり揺るぎない独自路線を展開する。

揺るぎない独自路線の創作活動の源にあるのは賢治の父(政次郎)だったのか。
この作品を読み終えてそう思う。
賢治へ放つ愛情が溢れている。資産家の長たるものの威厳を保ちつつ、内面はあれやこれやと
賢治の動向をつぶさに気にかけている。気にしつつ子どもを断じていない。言葉を慎む加減が良い。
政次郎さんの心配の有り様が、喜びの気持ちが恐らく世の母親たちの心情と同質なのではないか。
そこへ子どもの本質を見抜き先を冷静に分析できる父親の目が加わる。
このあたりの情景を上質のユーモアで描いている。読んでいてにんまり笑える可笑しみがある。
読了後、この本に出合えた喜びをじんまり噛みしめていた
たしか?満場一致で直木賞を受賞したのかな。

もう一つ
「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子 
芥川賞受賞作で目に止まった作品。
読みだして間もなく「え、同じ心情だ・・そうそう、分かる分かる」という気持ちがくる。
62才で書きだした方の描く心情は、やけに素直にスっとこちらに入りこんできた。
自分の気持ちを代弁してくれているようだ。
他の方のレビューを読んでみればそういう方がたくさんいる。ということは・・・
そんな心情を持たれている方が大勢いたということだ。軽い驚き。
これはベストセラー文句なし




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