車道沿いに真っ裸で立つ僕は、取り残された気分だった。長い時間、激しく降る雨に打たれているのに、体が火照っている。僕のおちんちんを弄び、このように大きくさせるだけさせておいて、アベックの二人は車を発進させてしまった。
しばらく手を振りながら追いかけて、停まるように呼びかけたのだが、女の人と男の人のアベックは、無視して走り去った。恐らく、僕がおちんちんをもっといじってもらいたくて呼び止めているのだと思ったのだろう。しかし、それは料簡違いだ。僕はただ、去り際に女の人が僕から取り上げた緑色のゴムボールを返してもらいたかっただけだった。
そもそも、僕は、興味本位でおちんちんを勃起させられることについては、心理的に非常な苦痛を覚えるのだった。性的に感じてしまう自分に対しても嫌悪感がある。これまでY美やおば様などに恥ずかしい思いを数えきれないくらい経験させられてきたけど、ちっとも慣れることができない。
もう少し慣れることができたら、あるいは喜びを感じることができたら、僕ももっと毎日が過ごしやすくなるのかもしれない。とにかく、日々が精神的な苦行の連続であることに変わりはない。Y美やおば様は、僕が彼女たちの家から逃げ出そうとしないので、いじめられることについて僕が性的な喜びを覚えるようになったと思っている節があるかもしれないが、そうではなくて、僕自身の中に苦行そのものを拒否したり、その運命から下手に逃れようとしたりせず、一つの与えられた物として、それを素直に受け取る性格的な特徴があり、他ならぬその特徴が僕をあの恐ろしい家に留めているのだった。しかし、こんなことはY美やおば様にうまく説明できないし、そんな説明を試みようものなら、きっと屁理屈を申し立てたとして、こっぴどく叱られ、罰せられるだけだと思う。
与えられた運命を運命として生きる、そこに苦があろうとも楽があろうとも、まるごと一つの運命として一杯の水を飲み干すように受け取る。それが13歳の僕の生き方だった。僕はそれ以外の生き方を知らなかった。母が莫大な借金のために住み込みで働かざるを得なくなり、僕は母の雇い主の家で生活させられるというのであれば、それに従う以外、他にどんな生き方があったというのだろう。単にそれに従っているというだけで、決してその受け取ったものについて、満足を覚えたり喜びを覚えたりしている訳ではない。
いじめる側は、いじめる相手にマゾの性質を見出したがる。そう思うことで、なるほど、支配者と被支配者の関係が確かになるのだろう。でも、僕にマゾの性質はないと思う。みんなの前で射精させられたのも、おちんちんをはじめとする僕の体の部位に物理的な刺激が加えられたがためなのであって、いじめられるというシチュエーションが僕を性的な快楽へ導いたのではない。でも、そのようなマゾの性質がなくても、僕は被支配者としての自分を普通に受け止めることができる。
こんなことを漠然と考えて、しかしそのように運命を丸ごと受け止めることができるのも、僕自身の性格に被虐的な傾向があるからかもしれないと、不意に思い至った。Y美やおば様が「だからお前はマゾなんだよ」と指さして嘲笑する光景が目に浮かんだ。
勃起させられたおちんちんは、豪雨を打ち返して、未だに最大の硬度を保っていた。僕はおちんちんに手を当て、前方から人や車が来てもすぐには気づかれないようにして、路肩を急いだ。
左側に僕がゴムボールを取るために泳いだ池があり、池が終わると、駐車場のフェンスが現れる。ここで車道を左に反れてフェンス沿いに行くのが近道なんだけど、そこには僕の背丈以上に伸びた雑草が密集していて、かき分けて進むのは難しく、ついに諦めた。大回りでも駐車場の入口から回り込むしかないのだった。
途中、前と後ろから1台ずつ車が通過して、隠れる場所が見つからず、路肩に正座して背中を丸め顔を伏せた。全裸の僕に気づいたかどうかは分からない。とにかく、車は、何事もなかったかのように通過してくれた。
泥の中を這いずり回った時の泥は、雨が洗い流してくれた。それでもまだ、胸や足、お尻などに泥の汚れが残っている。雨は少しだけ弱くなったような気がした。おちんちんに手を当て、中腰のまま、駐車場の中を横切る。僕が池の中から投げたパンツがフェンスに掛かっている筈だった。が、雨に叩かれて草の中の水溜りに落ちていた。僕は急いでフェンスを越え、たっぷり水を吸い取って重くなったパンツを拾い上げた。いくら絞っても絞り切れるものではない。びしょ濡れだけども、真っ裸でいたくないので我慢してパンツに足を通した。
結局取り戻すことができなかった緑のゴムボールのせいで、非常に時間を浪費してしまった。ヌケ子さんは苛々しているだろう。走って少しでも早く戻らなければならない。途中で車に鍵がさしっ放しであることに気づき、取りに戻った。大雨でずぶ濡れになりなから公民館の入口にたどり着いた時には、誰もいなかった。
初めから裸足なので玄関の足拭きマットで足の裏を拭うと、そのまま白いリノリウムの床へ上がった。ふと、スリッパの箱が目に入った。「ご自由にお使いください」と書かれている。履きたかったが、裸足のまま外を歩き回った僕の足の裏は汚れているし、勝手にスリッパを使ったらヌケ子さんや、ヌケ子さんの報告を受けたおば様から、またうんと叱られる。何せ控え室でパンツ一枚の裸にさせられた後、3階の教室までそのままの格好で移動させられたのだが、その時もスリッパを履かせてもらえなかったのだった。体じゅうから水滴を滴らせたパンツ一枚の僕は、スリッパを諦め、受付に向かった。
楽しそうに笑う声が聞こえた。事務室の中では、ヌケ子さん、先生、N川さんまでもが事務のおじさんとテーブルを囲み、菓子をつまんでいた。N川さん以外は、ビールを飲んで顔がうっすらと赤かった。
「何してんのよ。ずいぶん遅かったじゃないの」
アルコールの作用で少し人格を変えたようなヌケ子さんが受付の窓を覗き込んだ僕を見つけて立ち上がり、ドアを開けると僕の手を引っ張り、中へ引きずり込んだ。
「やだ。あなた、びしょ濡れじゃないの。体も汚れているし」
じろじろと僕の体を見回してヌケ子さんが叫んだ。先生、N川さん、N川さんのお母さんと事務員のおじさんが会話を中断して、僕を見ている。ぽたぽたと足元に水滴が落ち続けていた。僕は自分だけがパンツ一枚の裸でいることが恥ずかしく、腕で胸やお腹、パンツを覆った。ヌケ子さんが僕にその場で回るように命じる。それに従うと、続いて「何でこんなに荷物運びに時間がかかったのか理由を説明して」と、言った。
池にはまったゴムボールを取りに行っていたために遅くなったと話すと、ヌケ子さんは納得してくれた。
「ほんとにこの子、そそっかしいのね」
そう言ってヌケ子さんが笑うと、みんなが釣られて笑う。僕だけがいたたまれぬ思いで突っ立っていた。
「でも、こんな雨の中をびしょ濡れになりながらお手伝いするんだから、偉いわよね」
と、N川さんのお母さんがビールを一口啜ってから、感心したように頷いた。
「あの、タオルか何か、体を拭くものを・・・」
勇気を出して僕がそこまで言うと、ヌケ子さんが間髪を入れず、
「何よ。タオルで裸を隠そうとしてるんでしょ。絶対に駄目。時間を浪費した罰なんだから、しばらくびしょ濡れのまま立ってなさい。体温ですぐ乾くわよ。ほんと、男の子のくせに恥ずかしがり屋なのね。パンツ一枚で見せ物になってなさいよ。ついでにその濡れたパンツも脱ぐ?」
と、まくし立てた。パンツを脱がされる恐怖に思わずパンツのゴムをしっかり掴む僕を見て、N川さんがためらいがちに言葉を発した。
「でも、ナオス君、やだな、その、パンツなんだけど、びっしょり濡れて、肌にぴったり付いて、お尻が透けて、見えてるんだけど」
あっと思って後ろを向くと、確かにN川さんの言う通り、お尻が白い布地を通してくっきりと浮かび上がっていた。クラスメイトのN川さんには、まだおちんちんを見られたことがない。僕はこれ以上N川さんに裸を見られたくなくて、一気に体温の上昇した体をすくめた。が、「どれどれ」とヌケ子さんが僕の肩を押して後ろを向かせ、無神経に「ほんとだ。お尻丸見えよ」と素っ頓狂な声を上げて笑った。
「ナオス君、それじゃ裸と変わらないと、思うんだけど」
N川さんが言葉を区切りながらそこまで言うと、皆「そうだよね」と頷く。
「すごい。濡れて、なんかセクシーなお尻じゃない?」
N川さんのお母さんが感想を漏らした。と、それに同感したヌケ子さんが、
「そうですね。男の子のお尻も、濡れたパンツで透かして見ると、妙に色っぽいものなんですね。おもしろい。しばらく後ろ向きに立ってなさい」
と、二本目の缶ビールのプルトップを引き抜きながら言った。
「ねえ、やめてください。同級生の女の子の前なんです」
後ろ向きに立たされながら首だけ横に回して抗議すると、ヌケ子さんが僕の頬を軽く叩くように撫でながら、
「我慢しなさいよ。素っ裸にされておちんちん見られるよりもましでしょ」
と、僕の耳にアルコール臭い息を吹きかけた。
「ねえ、緑のゴムボールだけど、ちゃんと片付けてくれたんだよね?」
今まで黙って僕を眺めていた先生が突然口をひらいた。ハッとして身を硬くした僕は、返答ができない。その様子にヌケ子さんが心配そうな顔を向けて、
「あれは、あなたのおば様の会社の大切な備品で、私たち社員が厳重に管理しているの。一つでもなくなったら、私たち、始末書を書かされるの。査定にも響くわ。ちゃんと池から取ってきたんでしょ? 返事なさいよ」
と、問い詰めた。
黙っていても調べればすぐにばれることだった。観念した僕は「紛失しました」とだけ告げて、前へ向き直った。ヌケ子さんの驚きようは大変なもので、テーブルをぐるぐる回りながら「どうしてどうして」と歌のリフレインのように何度も呟いていた。先生は、僕の表情の変化を一つでも見逃すまいとするかのような観察者の厳しい視線を僕に注いだ。ヌケ子さんと先生が質問し、僕は訊かれたことだけを答えた。
その結果、僕はみんなの前で、N川さんもじっと耳を傾けている中で、底なし沼にはまって死にそうになったこと、沼から出ようとしてパンツが脱げてしまったこと、素っ裸のまま通りを歩いたこと、その戻る姿をアベックに見られ、いじめられ、ゴムボールまで奪われたことなどを語らされる仕儀となった。
中でも先生の質問は執拗で、ゴムボールの紛失とは直接関係のないと思われることにも及んだ。車に乗ったアベックにどんなことをされたのか、訊かれたことだけを簡潔に申し上げたのだが、先生が問いを重ねるたびにN川さんが目を大きくして、信じられないとばかりに手を口に当てて、顔を紅く染める。僕はその場で適当にごまかすことができない自分の機転の無さを恨んだ。
「それで、女の人はあなたにおちんちんを見せるように言ったのね。断ることもできたのに、なぜ応じたの?」
「警察に連行すると脅かされたから」
「女の人は、あなたのおちんちんに何かしたの?」
「指で、その、いじられました」
「どんな風に?」
「根元から揺すられたり、撫でられたり」
「気持ち良かった?」
「ええ、でも早くやめてほしいと思いました」
「おちんちんは、どうなった?」
「どうなったって・・・」
「形が変わったんじゃないの? 根元から揺すられたりしている内に」
「まあ・・・はい」
「勃起したのよね?」
「・・・はい」
「恥ずかしかったでしょうね」
「はい」
ふと見るとN川さんは俯いて、膝の上で拳を握りしめていた。その手が静かに震えている。聞きたくもない話を聞かされ、N川さんもまたつらい思いをしているのかと思うと、やり切れなくなる。先生のねちねちと続いた尋問が終わると、それまでじっと宙の一点を見つめていたヌケ子さんが椅子から立ち上がり、僕の前に立った。
「ナオス君が災難に遭ったことは分かったし、それについては同情もする。でも、大切な品をなくしたのは事実だし、責められるのはそのことだけじゃない。なくしたらなくしたで、なぜすぐに知らせなかったのかが問題なの。黙っていれば気付かないだろうと思ってたんじゃないの?」
「そ、そんなことないです」
「嘘ばっかり。黙ってやり過ごそうとしたんでしょ」
怒気を含んだ口調でヌケ子さんが迫った。先生も立ち上がって僕のすぐそばに来ていた。気がつくと、ヌケ子さんと先生に左右を挟まれていた。
「もう観念することね。あなたは罰を受けるのよ」
ヌケ子さんがいきなり僕のパンツのゴムに手を掛けると、示し合わせたかのように反対側からも先生がパンツを引っ張った。
「や、やめて。何するんですか」
悲鳴に似た僕の叫びを無視して、ヌケ子さんと先生が左右からパンツを引っ張る。さっきまで顔を俯けて膝の上で拳を震わせていたN川さんが、これから起こることをしっかり見守る義務でも発生したかのように、きちんと背筋を伸ばして、たった一枚しか身に着けていないパンツを左右から力いっぱい引っ張られ、泣きそうになっている僕の惨めな姿を見守っていた。
「お願いです。やめてください。やめて」
必死の歎願も全く聞き入れてもらえそうにない、理不尽で圧倒的な力がそこにあった。そして、ついに恐れていたことが起こった。ビリビリと布の破ける音がして、腰の辺りに空気が直に感じられるようになった。
一度破けると、後は土のようにもろかった。二つの布切れと化したパンツがヌケ子さんと先生の手から無残にもひらひらと床に落ちた。ついにN川さんの前で素っ裸に剥かれてしまった。
破れる前から予測して、すでに両手でおちんちんを隠していた僕は、パンツが僕の体から離れると同時にしゃがみ込んで横を向いた。すぐにヌケ子さんが僕の髪の毛を掴んで僕を中腰の姿勢のまま引きずり回す。アルコールの作用で気性が荒々しくなったヌケ子さんに恐怖を感じた僕は、髪の毛を引っ張られる痛みに悲鳴を上げながら、逃げ出す隙を窺った。そして、わずかにヌケ子さんの手が髪の毛を放した一瞬を突いて、僕はドアに体当たりするようにして事務室の外へ飛び出るのだった。
「待ちなさいよ。素っ裸のままどこに逃げる気? 観念してお仕置きを受けない」
ダッシュするヌケ子さんは速かった。両腕で抱きかかえられた僕の背中に、ヌケ子さんのブラウスの麻の布地を通して柔らかい肉体が感じられる。ヌケ子さんの腕が僕のお腹をぐっと締め付けると、胸の隆起が僕の頭にクッションの役割を果たした。
両腕も一緒に締め付けられているので、おちんちんを隠すことができない。足を上げて太腿で隠そうとすると、ヌケ子さんの足が巻き付いて、僕の足を封じてしまった。隠す術もない、何かも丸出しの僕の前に先生が来て、言った。
「怯えているわね。おちんちんが小さく縮こまってるもの。でも、逆らわない方がいい」
事務のおじさんもN川さんのお母さんも、そしてN川さんまでもが事務室が出て、すぐそこに居た。僕を背後から抱き抱え、両手両足の動きを完全に押さえ込んでいるヌケ子さんが、僕の脛に巻き付いている足を放さないように、トントンと軽くジャンプしながら、少しずつ、みんなの前へ向き直る。僕は身悶えしながら喚いた。
「いやだ。やめて。見ないで」
せめてN川さんが顔を両手で覆ってくれていたらよいのに、或いは恥ずかしがって俯いていてくれたら。でも、そんな願いは空しかった。N川さんは半開きの口にまん丸の目を見開いて、驚き、恥ずかしながらも、好奇心に押されるようにして、じっと僕の体に視線を注いでいた。その横では、N川さんのお母さんが穏やかな微笑を湛えて、娘がいずれは知らなければならない異性の体についての具体的な知識を、このような機会に得ることができて良かったとでも思っているのか、そっと娘の肩に手を置いていた。
「今更恥ずかしがるのも変よ。だって午後からはずっと素っ裸だったじゃないの。午前中もパンツを何度も脱がされていたし、ここにいるみんなは、とっくにあなたの素っ裸は見てるのよ。少しは大人しくなさい」
激しく身悶える僕をヌケ子さんが後ろから叱った。と、先生が、
「同級生の女の子がいるからね。N川さんだっけ? この子が見るのは初めてだし」
と、僕の恥ずかしがる理由を説明した。
「そうだっけ。あ、N川さんは、ナオス君の裸見るの初めて?」
「え、初めてって言うか、その、こんなにじっくりおちんちん見るのも・・・」
「え、もしかして、おちんちん、しっかり見たことないの? そうか。でも、毛も生えていない、皮被りの小さいおちんちんだから、しょうもないけどね。どう、初めてじっくりおちんちんを見た感想は?」
「え、いや、なんか別に、その、普通です」
そこまで言って、N川さんは初めて視線を床に落とした。N川さんの頬が紅潮している。雨に濡れた僕の体は、羞恥で熱を帯びた皮膚によって、ほとんど乾いていた。代わりに恥ずかしさと情けなさの辛い気持ちからこぼれた涙が、そっと頬を濡らした。
「何泣いてんのよ。泣いてる場合じゃないの。あなたは会社の大切な備品を紛失し、更にその報告を怠ったんだからね、今からお仕置きを受けるんでしょ。さあ、僕にお尻叩きを百お願いしますって頼みなさい」
理不尽なN子さんの命令に四肢が震えた。黙っていると、先生が近づいて、
「言ったじゃない、逆らっちゃ駄目って。拘束された素っ裸の身で、どんな抵抗ができるのよ。これ以上恥をかきたくなかったら素直に従いなさい」
と忠告し、それを聞き入れた僕はお尻叩きを願う言葉を口にした。ヌケ子さんに声が小さいと怒鳴られ、もう一度、今度は少し大きな声で繰り返すと、納得したヌケ子さんの手足が僕の体から放れた。と、すかさず髪の毛を掴まれ、中腰の姿勢のまま、階段まで引きずられた。
「床に足を着けて膝を立てなさい。階段の段のところに手をついて、お尻を私たちに向かって突き出すのよ、叩きやすいように。そうそう、そんな感じ」
ヌケ子さんの指示に従い、階段の段に手を掛けて上体を支える。お尻が入口を向いているので、おば様が公民館に到着したら、真っ先に目にするのは、お尻叩きされている僕の惨めな姿だろう。おば様は、ヌケ子さんの一存でこのお仕置きを受けることになった僕に同情してくれるだろうか。
「それじゃ始めるわよ。お尻叩き百ね。まず一発目」
言い終わるやいなや、ヌケ子さんが腕を振り下ろす。手のひらでお尻を力いっぱい叩かれた僕は、そのあまりの痛さに言葉にならぬ声を上げてしまった。
「大袈裟ねえ。まだ一発目じゃないの。はい、続けていくよ。2発目」
手のひらがお尻に当たった時の乾いた音は、ひと気のない廊下の奥まで響いたと思う。予想以上の痛さで、これを後98発も受けるなんて、考えるだけで気が遠くなる。みんなの見ている前でパンツを破かれ、丸裸のままお尻を差し出している今の恥ずかしさを忘れさせる痛みに、体をくねらせて耐える。
一呼吸置いてから、連続して8回叩かれた。僕の口から低い呻き声、甲高い叫び声、許しを乞う切ない声などが漏れて、階段に着いた手がわなわなと震える。ヌケ子さんの振り下ろす手のひらは、お尻の右半分を集中的に打った。次の10発は左側を打つとヌケ子さんが告げて、その通りにした。休みなく10回連続で打たれた僕は、半べそをかきながら、お尻の激痛を訴えた。
「馬鹿ね。お仕置きなんだから痛いのは当たり前じゃない。もっと股をひらいて、腕を伸ばしなさい」
ヌケ子さんが冷淡に言い放つ。手が痛くなったという理由で、ヌケ子さんと入れ替わりに先生が僕のお尻の横に腰を下ろした。先生は、僕の股をひらかせ、背筋をきちんと伸ばすように指示すると、早速高い位置から腕を振り下ろした。
臀部の肉を打つ短く鋭い音が走る。間断なく続く痛みに身悶えしながら呻き声を上げた。先生は、お尻の真ん中を狙って腕を振り下ろす。お尻を左右に叩き分けたヌケ子さんとはまた異なる叩き方だった。そして、この叩き方は、新たな激痛を誘因する危険性があった。打つ手が少しでも下方にずれると、その指先がおちんちんの袋に当たるのだった。
「痛い、痛いです。やめて」
何回か指先がかすった後、見事におちんちんの袋に先生の指先がヒットした。お尻とは別の激痛に思わず姿勢を崩してしまう。手でおちんちんの袋を撫でるように包み込んでいると、ヌケ子さんに髪の毛を掴まれた。
「誰が倒れていいって言ったの?」
「だって、おちんちんの袋に当たって・・・」
「そんなの関係ない。お仕置きの最中に勝手な真似したら、続けておちんちん叩きをしてもいいんだよ」
「申し訳ありません」
「私にじゃなくて、先生に謝りなよ」
髪の毛から手を放してヌケ子さんが命じる。僕は先生を向いて「申し訳ありませんでした」と謝って、手で涙を拭った。先生は微笑みを浮かべて頷いた。
「ねえ、おちんちんの袋って、あの、股の間にぶら下がって、打たれる度に揺れているものがそうなの?」
激痛に悶えながらお尻叩きのお仕置きを受ける僕の耳に、N川さんの声が聞こえた。素朴な好奇心から質問しているような口調だった。
「そうね。あれがおちんちんの袋で、中には睾丸が入ってるの。精液を作るところよ。このように裏側から見るとはっきり分かるわね、睾丸が二つ、左右にならんで揺れているのが。あれを打たれると相当に痛いらしいのよ」
ヌケ子さんの解説に、N川さんがふむふむと頷いている。
「でも、こうして見ると、犬のあれにそっくりだね。形といい、揺れ具合といい、裸の男の子って、犬と変わらないんじゃないの?」
「まあ、そこまで言うの? この子ったら」
娘の大胆な発言に、N川さんのお母さんが笑い声を立てた。
先生の次は、事務のおじさんが叩くことになった。先生が一人20発ずつ叩くことを提案したのだった。5人で計100発。この分だと、N川さんのお母さんやN川さんにまで、お尻を叩かれることになる。
事務のおじさんは男性だけあって、叩く力がすごかった。女の人たちに自分の腕力を見せつけてやるとばかりに、気合いを込めて打ちまくる。僕は今まで以上のお尻の激痛に悲鳴を上げた。上体を支えて伸ばしていた腕は曲がり、階段の段に額が着いた。
途中一度も手を休めることなく、おじさんは最後まで連続して20回、お尻を叩き抜いた。上下、左右、満遍なく叩かれ、しかも相変わらず広く股をひらかされているので、おちんちんの袋に何度も指が当たった。この激痛から逃れることができない。
「すごい。お尻がもっともっと真っ赤になったね」
まるで初めて気づいたみたいにおじさんが言って、叩いた僕のお尻を労わるように撫でた。
「お願いです。少し休憩させてください。痛くて痛くて」
「男の子のくせに、女の子の前で泣かないでよ。休憩なんか、しないからね」
泣いている僕を見下ろしながらヌケ子さんが言う。その手には缶ビールがあった。ビールを一口呷ったヌケ子さんは、次の叩き役にN川さんのお母さんを指名した。
「私、娘がうんと小さい頃にスカートの上からお尻を叩いたことはあります。でも、裸にされた男の子のお尻を叩くのは初めてなんですよ」
誰にともなくそう言って、N川さんのお母さんが恭しく僕の横に腰を下ろし、僕の裸の背中や腰にそっと手を当てた。
「お母さん、頑張って」
N川さんの元気な声が、束の間の中断にも激痛に苛まれている僕の耳に妖しく響いた。
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しばらく手を振りながら追いかけて、停まるように呼びかけたのだが、女の人と男の人のアベックは、無視して走り去った。恐らく、僕がおちんちんをもっといじってもらいたくて呼び止めているのだと思ったのだろう。しかし、それは料簡違いだ。僕はただ、去り際に女の人が僕から取り上げた緑色のゴムボールを返してもらいたかっただけだった。
そもそも、僕は、興味本位でおちんちんを勃起させられることについては、心理的に非常な苦痛を覚えるのだった。性的に感じてしまう自分に対しても嫌悪感がある。これまでY美やおば様などに恥ずかしい思いを数えきれないくらい経験させられてきたけど、ちっとも慣れることができない。
もう少し慣れることができたら、あるいは喜びを感じることができたら、僕ももっと毎日が過ごしやすくなるのかもしれない。とにかく、日々が精神的な苦行の連続であることに変わりはない。Y美やおば様は、僕が彼女たちの家から逃げ出そうとしないので、いじめられることについて僕が性的な喜びを覚えるようになったと思っている節があるかもしれないが、そうではなくて、僕自身の中に苦行そのものを拒否したり、その運命から下手に逃れようとしたりせず、一つの与えられた物として、それを素直に受け取る性格的な特徴があり、他ならぬその特徴が僕をあの恐ろしい家に留めているのだった。しかし、こんなことはY美やおば様にうまく説明できないし、そんな説明を試みようものなら、きっと屁理屈を申し立てたとして、こっぴどく叱られ、罰せられるだけだと思う。
与えられた運命を運命として生きる、そこに苦があろうとも楽があろうとも、まるごと一つの運命として一杯の水を飲み干すように受け取る。それが13歳の僕の生き方だった。僕はそれ以外の生き方を知らなかった。母が莫大な借金のために住み込みで働かざるを得なくなり、僕は母の雇い主の家で生活させられるというのであれば、それに従う以外、他にどんな生き方があったというのだろう。単にそれに従っているというだけで、決してその受け取ったものについて、満足を覚えたり喜びを覚えたりしている訳ではない。
いじめる側は、いじめる相手にマゾの性質を見出したがる。そう思うことで、なるほど、支配者と被支配者の関係が確かになるのだろう。でも、僕にマゾの性質はないと思う。みんなの前で射精させられたのも、おちんちんをはじめとする僕の体の部位に物理的な刺激が加えられたがためなのであって、いじめられるというシチュエーションが僕を性的な快楽へ導いたのではない。でも、そのようなマゾの性質がなくても、僕は被支配者としての自分を普通に受け止めることができる。
こんなことを漠然と考えて、しかしそのように運命を丸ごと受け止めることができるのも、僕自身の性格に被虐的な傾向があるからかもしれないと、不意に思い至った。Y美やおば様が「だからお前はマゾなんだよ」と指さして嘲笑する光景が目に浮かんだ。
勃起させられたおちんちんは、豪雨を打ち返して、未だに最大の硬度を保っていた。僕はおちんちんに手を当て、前方から人や車が来てもすぐには気づかれないようにして、路肩を急いだ。
左側に僕がゴムボールを取るために泳いだ池があり、池が終わると、駐車場のフェンスが現れる。ここで車道を左に反れてフェンス沿いに行くのが近道なんだけど、そこには僕の背丈以上に伸びた雑草が密集していて、かき分けて進むのは難しく、ついに諦めた。大回りでも駐車場の入口から回り込むしかないのだった。
途中、前と後ろから1台ずつ車が通過して、隠れる場所が見つからず、路肩に正座して背中を丸め顔を伏せた。全裸の僕に気づいたかどうかは分からない。とにかく、車は、何事もなかったかのように通過してくれた。
泥の中を這いずり回った時の泥は、雨が洗い流してくれた。それでもまだ、胸や足、お尻などに泥の汚れが残っている。雨は少しだけ弱くなったような気がした。おちんちんに手を当て、中腰のまま、駐車場の中を横切る。僕が池の中から投げたパンツがフェンスに掛かっている筈だった。が、雨に叩かれて草の中の水溜りに落ちていた。僕は急いでフェンスを越え、たっぷり水を吸い取って重くなったパンツを拾い上げた。いくら絞っても絞り切れるものではない。びしょ濡れだけども、真っ裸でいたくないので我慢してパンツに足を通した。
結局取り戻すことができなかった緑のゴムボールのせいで、非常に時間を浪費してしまった。ヌケ子さんは苛々しているだろう。走って少しでも早く戻らなければならない。途中で車に鍵がさしっ放しであることに気づき、取りに戻った。大雨でずぶ濡れになりなから公民館の入口にたどり着いた時には、誰もいなかった。
初めから裸足なので玄関の足拭きマットで足の裏を拭うと、そのまま白いリノリウムの床へ上がった。ふと、スリッパの箱が目に入った。「ご自由にお使いください」と書かれている。履きたかったが、裸足のまま外を歩き回った僕の足の裏は汚れているし、勝手にスリッパを使ったらヌケ子さんや、ヌケ子さんの報告を受けたおば様から、またうんと叱られる。何せ控え室でパンツ一枚の裸にさせられた後、3階の教室までそのままの格好で移動させられたのだが、その時もスリッパを履かせてもらえなかったのだった。体じゅうから水滴を滴らせたパンツ一枚の僕は、スリッパを諦め、受付に向かった。
楽しそうに笑う声が聞こえた。事務室の中では、ヌケ子さん、先生、N川さんまでもが事務のおじさんとテーブルを囲み、菓子をつまんでいた。N川さん以外は、ビールを飲んで顔がうっすらと赤かった。
「何してんのよ。ずいぶん遅かったじゃないの」
アルコールの作用で少し人格を変えたようなヌケ子さんが受付の窓を覗き込んだ僕を見つけて立ち上がり、ドアを開けると僕の手を引っ張り、中へ引きずり込んだ。
「やだ。あなた、びしょ濡れじゃないの。体も汚れているし」
じろじろと僕の体を見回してヌケ子さんが叫んだ。先生、N川さん、N川さんのお母さんと事務員のおじさんが会話を中断して、僕を見ている。ぽたぽたと足元に水滴が落ち続けていた。僕は自分だけがパンツ一枚の裸でいることが恥ずかしく、腕で胸やお腹、パンツを覆った。ヌケ子さんが僕にその場で回るように命じる。それに従うと、続いて「何でこんなに荷物運びに時間がかかったのか理由を説明して」と、言った。
池にはまったゴムボールを取りに行っていたために遅くなったと話すと、ヌケ子さんは納得してくれた。
「ほんとにこの子、そそっかしいのね」
そう言ってヌケ子さんが笑うと、みんなが釣られて笑う。僕だけがいたたまれぬ思いで突っ立っていた。
「でも、こんな雨の中をびしょ濡れになりながらお手伝いするんだから、偉いわよね」
と、N川さんのお母さんがビールを一口啜ってから、感心したように頷いた。
「あの、タオルか何か、体を拭くものを・・・」
勇気を出して僕がそこまで言うと、ヌケ子さんが間髪を入れず、
「何よ。タオルで裸を隠そうとしてるんでしょ。絶対に駄目。時間を浪費した罰なんだから、しばらくびしょ濡れのまま立ってなさい。体温ですぐ乾くわよ。ほんと、男の子のくせに恥ずかしがり屋なのね。パンツ一枚で見せ物になってなさいよ。ついでにその濡れたパンツも脱ぐ?」
と、まくし立てた。パンツを脱がされる恐怖に思わずパンツのゴムをしっかり掴む僕を見て、N川さんがためらいがちに言葉を発した。
「でも、ナオス君、やだな、その、パンツなんだけど、びっしょり濡れて、肌にぴったり付いて、お尻が透けて、見えてるんだけど」
あっと思って後ろを向くと、確かにN川さんの言う通り、お尻が白い布地を通してくっきりと浮かび上がっていた。クラスメイトのN川さんには、まだおちんちんを見られたことがない。僕はこれ以上N川さんに裸を見られたくなくて、一気に体温の上昇した体をすくめた。が、「どれどれ」とヌケ子さんが僕の肩を押して後ろを向かせ、無神経に「ほんとだ。お尻丸見えよ」と素っ頓狂な声を上げて笑った。
「ナオス君、それじゃ裸と変わらないと、思うんだけど」
N川さんが言葉を区切りながらそこまで言うと、皆「そうだよね」と頷く。
「すごい。濡れて、なんかセクシーなお尻じゃない?」
N川さんのお母さんが感想を漏らした。と、それに同感したヌケ子さんが、
「そうですね。男の子のお尻も、濡れたパンツで透かして見ると、妙に色っぽいものなんですね。おもしろい。しばらく後ろ向きに立ってなさい」
と、二本目の缶ビールのプルトップを引き抜きながら言った。
「ねえ、やめてください。同級生の女の子の前なんです」
後ろ向きに立たされながら首だけ横に回して抗議すると、ヌケ子さんが僕の頬を軽く叩くように撫でながら、
「我慢しなさいよ。素っ裸にされておちんちん見られるよりもましでしょ」
と、僕の耳にアルコール臭い息を吹きかけた。
「ねえ、緑のゴムボールだけど、ちゃんと片付けてくれたんだよね?」
今まで黙って僕を眺めていた先生が突然口をひらいた。ハッとして身を硬くした僕は、返答ができない。その様子にヌケ子さんが心配そうな顔を向けて、
「あれは、あなたのおば様の会社の大切な備品で、私たち社員が厳重に管理しているの。一つでもなくなったら、私たち、始末書を書かされるの。査定にも響くわ。ちゃんと池から取ってきたんでしょ? 返事なさいよ」
と、問い詰めた。
黙っていても調べればすぐにばれることだった。観念した僕は「紛失しました」とだけ告げて、前へ向き直った。ヌケ子さんの驚きようは大変なもので、テーブルをぐるぐる回りながら「どうしてどうして」と歌のリフレインのように何度も呟いていた。先生は、僕の表情の変化を一つでも見逃すまいとするかのような観察者の厳しい視線を僕に注いだ。ヌケ子さんと先生が質問し、僕は訊かれたことだけを答えた。
その結果、僕はみんなの前で、N川さんもじっと耳を傾けている中で、底なし沼にはまって死にそうになったこと、沼から出ようとしてパンツが脱げてしまったこと、素っ裸のまま通りを歩いたこと、その戻る姿をアベックに見られ、いじめられ、ゴムボールまで奪われたことなどを語らされる仕儀となった。
中でも先生の質問は執拗で、ゴムボールの紛失とは直接関係のないと思われることにも及んだ。車に乗ったアベックにどんなことをされたのか、訊かれたことだけを簡潔に申し上げたのだが、先生が問いを重ねるたびにN川さんが目を大きくして、信じられないとばかりに手を口に当てて、顔を紅く染める。僕はその場で適当にごまかすことができない自分の機転の無さを恨んだ。
「それで、女の人はあなたにおちんちんを見せるように言ったのね。断ることもできたのに、なぜ応じたの?」
「警察に連行すると脅かされたから」
「女の人は、あなたのおちんちんに何かしたの?」
「指で、その、いじられました」
「どんな風に?」
「根元から揺すられたり、撫でられたり」
「気持ち良かった?」
「ええ、でも早くやめてほしいと思いました」
「おちんちんは、どうなった?」
「どうなったって・・・」
「形が変わったんじゃないの? 根元から揺すられたりしている内に」
「まあ・・・はい」
「勃起したのよね?」
「・・・はい」
「恥ずかしかったでしょうね」
「はい」
ふと見るとN川さんは俯いて、膝の上で拳を握りしめていた。その手が静かに震えている。聞きたくもない話を聞かされ、N川さんもまたつらい思いをしているのかと思うと、やり切れなくなる。先生のねちねちと続いた尋問が終わると、それまでじっと宙の一点を見つめていたヌケ子さんが椅子から立ち上がり、僕の前に立った。
「ナオス君が災難に遭ったことは分かったし、それについては同情もする。でも、大切な品をなくしたのは事実だし、責められるのはそのことだけじゃない。なくしたらなくしたで、なぜすぐに知らせなかったのかが問題なの。黙っていれば気付かないだろうと思ってたんじゃないの?」
「そ、そんなことないです」
「嘘ばっかり。黙ってやり過ごそうとしたんでしょ」
怒気を含んだ口調でヌケ子さんが迫った。先生も立ち上がって僕のすぐそばに来ていた。気がつくと、ヌケ子さんと先生に左右を挟まれていた。
「もう観念することね。あなたは罰を受けるのよ」
ヌケ子さんがいきなり僕のパンツのゴムに手を掛けると、示し合わせたかのように反対側からも先生がパンツを引っ張った。
「や、やめて。何するんですか」
悲鳴に似た僕の叫びを無視して、ヌケ子さんと先生が左右からパンツを引っ張る。さっきまで顔を俯けて膝の上で拳を震わせていたN川さんが、これから起こることをしっかり見守る義務でも発生したかのように、きちんと背筋を伸ばして、たった一枚しか身に着けていないパンツを左右から力いっぱい引っ張られ、泣きそうになっている僕の惨めな姿を見守っていた。
「お願いです。やめてください。やめて」
必死の歎願も全く聞き入れてもらえそうにない、理不尽で圧倒的な力がそこにあった。そして、ついに恐れていたことが起こった。ビリビリと布の破ける音がして、腰の辺りに空気が直に感じられるようになった。
一度破けると、後は土のようにもろかった。二つの布切れと化したパンツがヌケ子さんと先生の手から無残にもひらひらと床に落ちた。ついにN川さんの前で素っ裸に剥かれてしまった。
破れる前から予測して、すでに両手でおちんちんを隠していた僕は、パンツが僕の体から離れると同時にしゃがみ込んで横を向いた。すぐにヌケ子さんが僕の髪の毛を掴んで僕を中腰の姿勢のまま引きずり回す。アルコールの作用で気性が荒々しくなったヌケ子さんに恐怖を感じた僕は、髪の毛を引っ張られる痛みに悲鳴を上げながら、逃げ出す隙を窺った。そして、わずかにヌケ子さんの手が髪の毛を放した一瞬を突いて、僕はドアに体当たりするようにして事務室の外へ飛び出るのだった。
「待ちなさいよ。素っ裸のままどこに逃げる気? 観念してお仕置きを受けない」
ダッシュするヌケ子さんは速かった。両腕で抱きかかえられた僕の背中に、ヌケ子さんのブラウスの麻の布地を通して柔らかい肉体が感じられる。ヌケ子さんの腕が僕のお腹をぐっと締め付けると、胸の隆起が僕の頭にクッションの役割を果たした。
両腕も一緒に締め付けられているので、おちんちんを隠すことができない。足を上げて太腿で隠そうとすると、ヌケ子さんの足が巻き付いて、僕の足を封じてしまった。隠す術もない、何かも丸出しの僕の前に先生が来て、言った。
「怯えているわね。おちんちんが小さく縮こまってるもの。でも、逆らわない方がいい」
事務のおじさんもN川さんのお母さんも、そしてN川さんまでもが事務室が出て、すぐそこに居た。僕を背後から抱き抱え、両手両足の動きを完全に押さえ込んでいるヌケ子さんが、僕の脛に巻き付いている足を放さないように、トントンと軽くジャンプしながら、少しずつ、みんなの前へ向き直る。僕は身悶えしながら喚いた。
「いやだ。やめて。見ないで」
せめてN川さんが顔を両手で覆ってくれていたらよいのに、或いは恥ずかしがって俯いていてくれたら。でも、そんな願いは空しかった。N川さんは半開きの口にまん丸の目を見開いて、驚き、恥ずかしながらも、好奇心に押されるようにして、じっと僕の体に視線を注いでいた。その横では、N川さんのお母さんが穏やかな微笑を湛えて、娘がいずれは知らなければならない異性の体についての具体的な知識を、このような機会に得ることができて良かったとでも思っているのか、そっと娘の肩に手を置いていた。
「今更恥ずかしがるのも変よ。だって午後からはずっと素っ裸だったじゃないの。午前中もパンツを何度も脱がされていたし、ここにいるみんなは、とっくにあなたの素っ裸は見てるのよ。少しは大人しくなさい」
激しく身悶える僕をヌケ子さんが後ろから叱った。と、先生が、
「同級生の女の子がいるからね。N川さんだっけ? この子が見るのは初めてだし」
と、僕の恥ずかしがる理由を説明した。
「そうだっけ。あ、N川さんは、ナオス君の裸見るの初めて?」
「え、初めてって言うか、その、こんなにじっくりおちんちん見るのも・・・」
「え、もしかして、おちんちん、しっかり見たことないの? そうか。でも、毛も生えていない、皮被りの小さいおちんちんだから、しょうもないけどね。どう、初めてじっくりおちんちんを見た感想は?」
「え、いや、なんか別に、その、普通です」
そこまで言って、N川さんは初めて視線を床に落とした。N川さんの頬が紅潮している。雨に濡れた僕の体は、羞恥で熱を帯びた皮膚によって、ほとんど乾いていた。代わりに恥ずかしさと情けなさの辛い気持ちからこぼれた涙が、そっと頬を濡らした。
「何泣いてんのよ。泣いてる場合じゃないの。あなたは会社の大切な備品を紛失し、更にその報告を怠ったんだからね、今からお仕置きを受けるんでしょ。さあ、僕にお尻叩きを百お願いしますって頼みなさい」
理不尽なN子さんの命令に四肢が震えた。黙っていると、先生が近づいて、
「言ったじゃない、逆らっちゃ駄目って。拘束された素っ裸の身で、どんな抵抗ができるのよ。これ以上恥をかきたくなかったら素直に従いなさい」
と忠告し、それを聞き入れた僕はお尻叩きを願う言葉を口にした。ヌケ子さんに声が小さいと怒鳴られ、もう一度、今度は少し大きな声で繰り返すと、納得したヌケ子さんの手足が僕の体から放れた。と、すかさず髪の毛を掴まれ、中腰の姿勢のまま、階段まで引きずられた。
「床に足を着けて膝を立てなさい。階段の段のところに手をついて、お尻を私たちに向かって突き出すのよ、叩きやすいように。そうそう、そんな感じ」
ヌケ子さんの指示に従い、階段の段に手を掛けて上体を支える。お尻が入口を向いているので、おば様が公民館に到着したら、真っ先に目にするのは、お尻叩きされている僕の惨めな姿だろう。おば様は、ヌケ子さんの一存でこのお仕置きを受けることになった僕に同情してくれるだろうか。
「それじゃ始めるわよ。お尻叩き百ね。まず一発目」
言い終わるやいなや、ヌケ子さんが腕を振り下ろす。手のひらでお尻を力いっぱい叩かれた僕は、そのあまりの痛さに言葉にならぬ声を上げてしまった。
「大袈裟ねえ。まだ一発目じゃないの。はい、続けていくよ。2発目」
手のひらがお尻に当たった時の乾いた音は、ひと気のない廊下の奥まで響いたと思う。予想以上の痛さで、これを後98発も受けるなんて、考えるだけで気が遠くなる。みんなの見ている前でパンツを破かれ、丸裸のままお尻を差し出している今の恥ずかしさを忘れさせる痛みに、体をくねらせて耐える。
一呼吸置いてから、連続して8回叩かれた。僕の口から低い呻き声、甲高い叫び声、許しを乞う切ない声などが漏れて、階段に着いた手がわなわなと震える。ヌケ子さんの振り下ろす手のひらは、お尻の右半分を集中的に打った。次の10発は左側を打つとヌケ子さんが告げて、その通りにした。休みなく10回連続で打たれた僕は、半べそをかきながら、お尻の激痛を訴えた。
「馬鹿ね。お仕置きなんだから痛いのは当たり前じゃない。もっと股をひらいて、腕を伸ばしなさい」
ヌケ子さんが冷淡に言い放つ。手が痛くなったという理由で、ヌケ子さんと入れ替わりに先生が僕のお尻の横に腰を下ろした。先生は、僕の股をひらかせ、背筋をきちんと伸ばすように指示すると、早速高い位置から腕を振り下ろした。
臀部の肉を打つ短く鋭い音が走る。間断なく続く痛みに身悶えしながら呻き声を上げた。先生は、お尻の真ん中を狙って腕を振り下ろす。お尻を左右に叩き分けたヌケ子さんとはまた異なる叩き方だった。そして、この叩き方は、新たな激痛を誘因する危険性があった。打つ手が少しでも下方にずれると、その指先がおちんちんの袋に当たるのだった。
「痛い、痛いです。やめて」
何回か指先がかすった後、見事におちんちんの袋に先生の指先がヒットした。お尻とは別の激痛に思わず姿勢を崩してしまう。手でおちんちんの袋を撫でるように包み込んでいると、ヌケ子さんに髪の毛を掴まれた。
「誰が倒れていいって言ったの?」
「だって、おちんちんの袋に当たって・・・」
「そんなの関係ない。お仕置きの最中に勝手な真似したら、続けておちんちん叩きをしてもいいんだよ」
「申し訳ありません」
「私にじゃなくて、先生に謝りなよ」
髪の毛から手を放してヌケ子さんが命じる。僕は先生を向いて「申し訳ありませんでした」と謝って、手で涙を拭った。先生は微笑みを浮かべて頷いた。
「ねえ、おちんちんの袋って、あの、股の間にぶら下がって、打たれる度に揺れているものがそうなの?」
激痛に悶えながらお尻叩きのお仕置きを受ける僕の耳に、N川さんの声が聞こえた。素朴な好奇心から質問しているような口調だった。
「そうね。あれがおちんちんの袋で、中には睾丸が入ってるの。精液を作るところよ。このように裏側から見るとはっきり分かるわね、睾丸が二つ、左右にならんで揺れているのが。あれを打たれると相当に痛いらしいのよ」
ヌケ子さんの解説に、N川さんがふむふむと頷いている。
「でも、こうして見ると、犬のあれにそっくりだね。形といい、揺れ具合といい、裸の男の子って、犬と変わらないんじゃないの?」
「まあ、そこまで言うの? この子ったら」
娘の大胆な発言に、N川さんのお母さんが笑い声を立てた。
先生の次は、事務のおじさんが叩くことになった。先生が一人20発ずつ叩くことを提案したのだった。5人で計100発。この分だと、N川さんのお母さんやN川さんにまで、お尻を叩かれることになる。
事務のおじさんは男性だけあって、叩く力がすごかった。女の人たちに自分の腕力を見せつけてやるとばかりに、気合いを込めて打ちまくる。僕は今まで以上のお尻の激痛に悲鳴を上げた。上体を支えて伸ばしていた腕は曲がり、階段の段に額が着いた。
途中一度も手を休めることなく、おじさんは最後まで連続して20回、お尻を叩き抜いた。上下、左右、満遍なく叩かれ、しかも相変わらず広く股をひらかされているので、おちんちんの袋に何度も指が当たった。この激痛から逃れることができない。
「すごい。お尻がもっともっと真っ赤になったね」
まるで初めて気づいたみたいにおじさんが言って、叩いた僕のお尻を労わるように撫でた。
「お願いです。少し休憩させてください。痛くて痛くて」
「男の子のくせに、女の子の前で泣かないでよ。休憩なんか、しないからね」
泣いている僕を見下ろしながらヌケ子さんが言う。その手には缶ビールがあった。ビールを一口呷ったヌケ子さんは、次の叩き役にN川さんのお母さんを指名した。
「私、娘がうんと小さい頃にスカートの上からお尻を叩いたことはあります。でも、裸にされた男の子のお尻を叩くのは初めてなんですよ」
誰にともなくそう言って、N川さんのお母さんが恭しく僕の横に腰を下ろし、僕の裸の背中や腰にそっと手を当てた。
「お母さん、頑張って」
N川さんの元気な声が、束の間の中断にも激痛に苛まれている僕の耳に妖しく響いた。
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いろいろな人物が出てきますが、同級生は、何回も出すようにしたいと思っています。
一回のエピソードが長くなると、どうも忘れてしまいそうになりますが、一度出て、ほとんど消えかかっているメライちゃんとかは、この次のエピソードでメインになる予定です。が、今回のエピソードは少し長くなりそうです。
心のこもったコメントをいただき、感謝しております。これからも、続けていきます。これは相当に長い話になる予定です。
どうぞよろしくお願いします。
また、お尻叩きをお褒めくださった方にも感謝しております。
続きを更新いたしました。ご想像通りの結果となっています。
同級生のN川さんにも叩かれることになるんでしょうか。
Naosu's happenings who is your Story's hero are very thriling and exciting.
I'm very impressed like that a mount of your experience.
I've been many areas but i couldn't find this kind of writings.
I Think that was exciting O_O;;
one thing is missing, i hope that series' quick offered to me, but it's my only wish,
anyway, ^^;;
please forward to a good Story!!
嬉しい限りです。
N川さんは無知のようで少しムカムカとした感じ
がありましたが、遂に本性をあらわしたというか…。
叩いた後、パンツ無しの状態でどうなるのかが
気になるところです。
今後も頑張ってください。
ありがとうございます。
とても嬉しく思いました。
これからもお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
I hope you will keep going your Story^^.