思い出したくないことなど

成人向き。二十歳未満の閲覧禁止。家庭の事情でクラスメイトの女子の家に居候することになった僕の性的いじめ体験。

脱がされる危機

2009-03-07 15:16:37 | 7.夏は恥辱の季節
 ようやくパンツ一枚、身に着けることができた僕は、先生に導かれて、教室に入った。そこには、10名の受講生が机を並べていた。
「みなさん、パンツ一枚の裸の男の子が出てきて、びっくりしてるかもしれませんが、この子が今日のモデルで、名前はナオス君です」
 白衣を翻して先生がそう紹介すると、拍手が沸いた。先生が目配せしたので、僕は急いで受講生たちに頭を下げた。受講生は、ほとんどが中年の女性で、男性は2人しかいなかった。
 時計の針は、10時20分を回っていた。先生が遅くなったことを受講生たちに丁重に詫びて、講習の終了時間も30分ほどずらしたいと思うと提案すると、受講生たちの間で特に反対の声は上がらなかった。と、スポーツ刈りの中年男性の受講者が、
「でも、質問があります。モデルさん、チラシでは女の人がオレンジの服を着てましたよね。なんで、男の子で、しかもパンツ一枚なんですか?」
 と、先生の横でもじもじしている僕を見つめながら、質問した。先生がモデル予定の若い女の人の都合が悪くなったこと、事務局の手違いで制服を用意できなかったことを告げると、その男の人は、
「うーん、残念。モデルさん、楽しみにしてたんだけどな」と、指を鳴らして悔しがり、みんなをどっと笑わせた。
 整体の心得、基本的な事柄について先生が説明し始めた。この間は、モデルの僕は特にすることがない。この教室にたどり着くまでは、このパンツすら穿かせてもらえない丸裸だったから、小さな白いブリーフパンツ、おば様が間違えて一回り小さいサイズを買ってきたぴちぴちのパンツだけでも、心細さはなくなるだろうと自分に言い聞かせていたが、やはり受講生たちの好奇に満ちた視線の中で所在なく立っているのは、新たに羞恥の念を呼び起こすに足るものだった。
 同じパンツ一枚でも、たとえば学校の体育の授業で使用する短パン一枚か、海水パンツ一枚ならば、もっと落ち着くことができるような気がする。白いブリーフのパンツは、下着なので、やはりこのような場でパンツいっちょうで立っているのは、何か変だし、恥ずかしい。先生は、制服がないというアクシデントに対して最良の対応を考えることで頭が一杯だった。僕が感じる恥ずかしさのことは、僕の問題であって、先生自身には関係がないというように、先生は、極めて事務的な口調で僕に服を脱ぐように命じたのだった。Y美の家ではいつもこの格好だし、このパンツすら脱がされていることも少なくないけど、場所や周りの人が違うだけで、こんなにも心細い気持になるのは、自分でも意外だった。
 四角形の台の上に僕を立たせると、先生は筋肉の名称を一つ一つ、指し棒を使って僕の体の部位を指しながら、細かく説明した。前向きの次は後ろ向きだった。この台に立つと、身長が恐らくY美を超え、S子と同じくらいの高さになる。先生のつむじが見えた。

 講習中は、いろいろな格好をさせられた。長テーブルの上に寝て、仰向けになったりうつ伏せになったり、横向きになったりした。先生に体じゅうのツボを押され、体がぽかぽかしてきた。実は教室に入った時、肌寒くて仕方なかった。先生に寒いと告げると、先生は受講生たちに向かって、
「みなさん、寒くないですか。多分寒くないでしょう。服を着てますものね。ところが、こちらのモデル君、パンツ一枚の裸です。だから、寒いんですって。冷房の設定温度、今23度ですが、これを25度に上げてもいいですか」と、確認した。
 受講生たちは笑いながら、口々に承諾したのだった。だから、今更暑いなどとは言えなかった。首、腕、肩、胸部、股関節などのツボをさんざんに刺激されて、一時的に体温が上がったのだろう。
 休憩時間になると、僕は自分の居場所がないことに気づいた。余分な椅子はなく、休むとすれば長テーブルにお尻をちょこっと乗せるしかないのだが、羽織る物も与えられず、パンツ一枚のままでいるほかない僕は、それもなんとなく落ち着かず、受講生たちの視線に晒される場所なので、窓側に行き、端に束ねたカーテンの間に隠れるようにして外の景色を眺めた。
 優に五百台は止まれる駐車場には、白い幹の樹木が植えられていて、濃さを増した青葉が青空に光を返していた。その向こうには田んぼが広がり、幹線道路が横たわっている。見渡す限りこの公民館に比するような建物は、なかった。目に付く建造物と言えば、倉庫か個人邸宅が並ぶ幹線道路沿いに、けばけばしい色合いのパチンコ店が一軒あるぐらいで、それがために、退屈な田舎町の退屈さ加減が一層強調されたような塩梅だった。
 そのはるか先には、山々が折り重なるようにして霞んでいる。断続的に流れるように山が流れてきて、西の方角には、なだらかな三角形を現して山が迫っていた。この山には、おば様お気に入りのハイキングコースがあり、Y美が幼い頃にはよく出掛けたと言う。渓流で水遊びもできるそうだ。いつか僕にも連れて行ってあげると話してくれた。ふと見上げると山の裏側、まさにその渓流の辺りの上空から、積乱雲がもくもくと沸き起こって、白い壁のようものを少しずつ広げていた。
 きみ、きみ、と声を掛けられ、振り向くと、太った男の人が人懐っこい笑顔を浮かべて立っていた。「君は小学何年生なんだい?」と、訊ねる。小学生ではなく、中学一年生であることを言うと、太った男の人は、驚いたようにぽっかりと口を開けた。
「そうか。中学一年生か。小学生かと思ったよ。でも、中学生だったら、パンツ一枚でモデルさせられるのは、恥ずかしいでしょ?」
「ええ、まあ」
「みんなの前でパンツ一枚の裸だもん。しかも、大半が女性だよ」
「はい。恥ずかしいです」
 恥ずかしいと思う気持ちをなんとか抑えているのに、煽るような質問ばかりする。僕が会話を早く打ち切りたい相手は、自分の顎を撫でながら頻りに感心している。
「恥ずかしいだろうね。ここのモデルさんは、いつもオレンジのユニフォーム着てるんだけど、手違いで用意できなかったってのは、酷いね。君はちっとも悪くないのに。でも、君が小学生の低学年みたいな体形だから、先生は、パンツ一枚の裸でもいいと思ったんだろうね。君にしてみれば、たまったもんじゃないよね。でも、仕事だから、文句は言っちゃいけないんだよ。がんばってね」
 パチンと僕の背中を叩いて、お腹を揺すって笑った。太った男の人が自分の席に向かうと、僕は再び視線を窓から見える景色に戻した。
何かお尻にひんやりした空気を感じて、慌てて振り向くと、パンツのゴムを引っ張られていた。女の受講生がにこにこしながら、パンツのゴムをパチンと弾いた。休憩時間の終わりをおどけた調子で告げる。それから、「お尻見ちゃった」と言って笑った。
 整体マッサージのモデルは、想像していたよりもしんどく、何度も足を一杯に広げさせられたまま、上半身を前に倒された。先生は、僕の体の柔軟性を誉めてくれたけど、心なしか、だんだん加圧の力が増してきたような気がする。うつ伏せで長テーブルに寝た僕の両足をぐっと持ち上げて、海老のように曲げられた時は、呻き声を発し、体を横に動かしてしまった。先生は、ツボの位置をみんなに正確に示しているのだから大人しくしなさいと、僕の背中を軽く叩いた。
 太った男の人が申し出て、先生の代わりに僕の両足を抱えることになった時、気がかりなことが起こった。海老のように反ったまま体を前後に揺すられたので、パンツが少しずり下がったのだった。パンツのゴムはお臍の下のはるか後方に移動し、わずかでもずれると、おちんちんが出てしまう。お尻も割れ目が顔を出してしまっているようで、生々しい空気を感じた。このままでは、おちんちんがぽろっと皆の前に飛び出してしまうのは、時間の問題だった。
 お臍から上だけで長テーブルに接している不自由な状態のまま、僕は懸命に思案した。なんとかしてパンツのゴムを引き上げなくてはならない。そのためには一刻も早く、太った男の人に抱えられた両足を下ろしてもらわなければならないのだが、先生をツボの位置を説明している間は、それも適わない。先生の講義を邪魔すれば、それだけ今の危機的な状況が長引くだけなので、ここはじっと我慢して、先生のツボ講義が速やかに終わることを祈るしかない。
 丁度お尻の上、仙骨のツボについて説明している時だった。ツボの位置が分かりにくいという受講生の声を受けて、足を抱えている男の人がパンツのゴムを更に少し引いた。あせった僕は、慌てて腕の力で後方に下がろうともがいたが、あまり意味はなかった。かてて加えて僕のパンツは小さい。サイズを間違えて買ったおば様を恨めしく思った。もしかするとおば様は、わざと小さめのサイズを選んだのかもしれない。僕にぴちぴちのパンツを穿かせて、内心ほくそ笑んでいるのかもしれない。お尻の割れ目が半分以上露出してしまった。男の人が僕の足をぎゅっと持ち上げ、つま先が背中に着くぐらいに曲げられた。
 おちんちんの付け根辺りが見られてしまう。逆さにされた下半身に腕を伸ばしたが、先生や男の人に邪魔されて、届かない。こうしている間にも、パンツはずりずりと下がっていた。受講生たちは、そんな僕のあせりも知らず、先生の説明に聞き入っている。ぽろりとおちんちんがこぼれ出るアクシデントを期待しているのか、先生は、ゆっくりとねちっこく仙骨から下にかけてのツボについて、詳しい説明を加えた。割れ目が丸出しになったお尻に唾が飛んだ。女の受講生が早口で質問の許しを乞う。
「ごめんなさい、質問じゃないかもしれませんけど、一つだけ言いたくて。モデル君のパンツ下がりすぎです。おちんちんの付け根が見えてます」
 教室がざわついた。笑い声と僕に同情する声が半分くらいずつ占めた。足を抱えていた男の人が体を曲げるようして見て「ほんとだ」と言った。さすがに僕を気の毒に思ったのか、女の受講生たちが素早く前に移動して来ると、すぐに足を放してくれた。僕はうつ伏せの姿勢のまま、急いでパンツのゴムを引っ張り上げた。「惜しい、もう少しだったね」と、悔しがる女の人の声が聞こえた。

 時報が鳴った。昼食時間だ。黒いカーディガンを羽織ったヌケ子さんが忙しなく入ってきて、僕の肩を叩いた。1階の控え室に仕出し弁当が届いているから、運ぶのを手伝ってほしいと言う。受講生の分も用意してあるそうだ。
「そんなに重くないわよ」
 反応がよろしくない僕の様子を見て心配したのか、ヌケ子さんは励ますようににっこりと笑った。僕の反応がよくない理由は、説明しないと分からないのかもしれない。
「分かりました。運ぶのを手伝いますから、何か着る物を貸してください」
「あらやだ。着る物」
 素っ頓狂な声を上げて、手を口に当てる。他の受講生たちが何事かと、振り向いた。
「ごめんなさい、ここにはないの。あなたのお洋服は、1階の控え室、今朝脱いだところね、そこにあるから。お弁当と同じ場所なの。そしたら、お洋服着て運べばいいから。ね、行く時だけ、裸だけど、我慢してね。ほんとに私のせいでパンツ一枚にさせられてしまって、ごめんなさい」
 発作のように何度も頭を下げるヌケ子さんだが、やることは強引だった。僕の手首を掴んで教室の外に出すと、すごい力で僕を引いて、廊下を進むのだった。観念した僕は、ヌケ子さんから手首を放してもらい、ヌケ子さんと一緒に小走りで廊下を行き、階段をおりた。朝と違って、館内にはたくさんの人がいる。
 パンツ一枚で通り過ぎると、多くの人は会話が止め、何事だろうかとまじまじと見る。笑い声を上げる人や眉をひそめる人、無関心そうに眺める人など、様々な反応があった。ヌケ子さんが階段や廊下にあふれる人をかき分け、ぐいぐい進むので、後ろを行く僕は素足でぺたぺた床を鳴らしながら遅れないように追いかける。
 ざわめきの中を揉まれるようにして、なんとか1階の控え室にたどり着いた。長テーブルに段ボールが2箱あった。「お弁当」とマジックで大書してある。隅のテーブルに紙袋があって、中に僕のワイシャツが見えた。急いで駆け寄り、紙袋を手に取る。早く服を着てお弁当を運ぼうと思った僕がワイシャツやズボンを取り出すと、ドアが開いて、おば様が入ってきた。
「お疲れ様です」
 両手を膝に揃えたヌケ子さんがおば様に頭を下げる。
「どうしてまだお弁当がここにあるのよ。お昼になる前に運びなさいって言ったわよね」
「申し訳ありません。すぐ運びます。一人じゃ重たくて運べないから、ナオス君に手伝ってもらおうかと思ってたんです。ほんとにごめんなさい」
 両手を腰に当てて、部屋の周囲を見回すおば様は、下着のシャツを広げている僕を目に留めて、「待ちなさい」と、ヌケ子さんを叱ったような厳しい声を放った。僕はその声に射られたかのように、体がビクっとして動けなくなる。
「何してるのよ、あなたは?」
「お弁当を運ぶから、急いで服を着ようとして・・・」
「必要ない」
 言下におば様が禁じた。
「あなたね、自分の仕事が分かってるの? モデルなのよ。教室に入ったら裸にならなくてはいけないの。いちいち脱いだり着てたりしてたら、時間の無駄じゃないの」
 顎でしゃくって、紙袋から取り出した僕の衣類一式を戻すように命じる。僕は、着ようとしていた下着のシャツから紙袋に入れて、溜息をついた。もうどんなに足掻いてたところで、僕がパンツ一枚の裸で弁当を運ばされるのは確実だった。おば様に急かされ、ヌケ子さんと段ボールを一つずつ抱えると、おば様がドアを押さえてくれた。一礼してドアを通るヌケ子さんに続いて、頭を下げたまま廊下に出た。
「ほんとに申し訳ないわね、そんな格のままお弁当まで運ばせてしまって。すごく恥ずかしいでしょうね。その気持ちよく分かるわ」
 大きな黒い瞳をきらきら輝かせて、ヌケ子さんが詫びた。廊下は女の人のおしゃべりで非常に騒がしかった。前を行くヌケ子さんの背中が立ち話している人の中に消える。その速度は、行きと違ってかなり遅くなっていた。
 1階の階段にさしかかった頃、僕の背後で男の子の奇声が聞こえた。足音でぐんぐんと近づいているのが分かった。今朝の絵本読み聞かせ教室に参加していた未就学の男の子だと気付いた時には、遅かった。男の子が僕のパンツのゴムに手を掛けた。振り向くと、廊下に落ちたパンツを受付まで蹴りながら運んだ男の子の一人だった。
「やめて」
 叫んだが、一気に引き下ろされてしまった。手を叩いて喜びながら、男の子がUターンして去った。大きく目を見開いて、僕の下半身を指さした女の人がいて、立ち話の輪の中にいた人たちが一斉に僕の方を見た。前に段ボールを抱えているから、直接見ることはできなかったけども、冷房で冷やされた空気が股間を通るのを感じるよりも早く、自分がおちんちんもお尻も丸出しにしていることに気づく。
 段ボールを床に下ろし、急いでパンツを引き上げると、安心感が漲ってきた。パンツの布に下半身を覆われる心地よさに全身を委ねたいような気持ちだった。弁当の入った段ボールを持ち上げ、今の出来事に気づかず背中を向けたまま進むヌケ子さんを見失わないよう、さきほどばっちりおちんちんを見られてしまった立ち話の輪を抜けて、追いかけた。
 ヌケ子さんとの距離が縮まったのは、1階の階段踊り場を過ぎて2階に着いた時だったが、ここで又しても、パンツのゴムに手を掛ける指が腰に当たった。今度はリュックを背負った若い男の人で、だらしなく笑っていた。僕が「やめてください」と言っても、表情を変えずパンツのゴムから手を放さない。僕は前に進むことができなくなった。
 もう一度パンツから手を放すようにお願いすると、若い男の人は返事をする代わりにいきなりパンツを引き下げた。僕の足首にパンツが足枷のように嵌る。折しも2階の廊下は、リュックの男性と同じくらいの若い男女であふれていた。パンツを引き上げようとして段ボールを下ろすと、黄色い悲鳴のような歓声を聞きつけたヌケ子さんが3階から戻ってきた。ヌケ子さんが目を丸くしている。ついにヌケ子さんにまで、おちんちんを見られた。
「どうしたのかな。大丈夫かしら?」
「はい。あの、リュックの男の人にパンツを下ろされたんです」
 心配そうに尋ねるヌケ子さんに事情を話すと、ヌケ子さんは「ふうん」と答えたまま、2階の廊下に群がる人々を見回している。いきなりパンツを脱がされた一部始終を見て、笑いが止まらなくなっている女の人が、身ぶりを交えてその時の様子を他の仲間たちに伝えていた。僕はパンツを引き上げた今も、恥ずかしさで全身が火照っていて、段ボールを抱える両腕にうっすらと汗が滲んでいた。
「ここは、いろんな人が利用しているから、変な人もいます。気を付けてください」
 と、ヌケ子さんが言うと、背中を向けて歩き出した。しかし、僕は3歩も進まない内に、またしてもパンツのゴムに食い込んだ指を感じ、瞬く間に引き下ろされた。あまり乱暴なので、パンツのゴムが伸びてしまう恐れがある程だった。階段をおりようとしていた人たちが立ち止まり、全裸に剥かれた僕をぎょっとした目で見ている。
 リュックの男の人の荒い息遣いが耳元で聞こえた。血走った目で僕の下半身を舐めるように見回している。僕は、怒りを覚えつつ、すぐに段ボールを床に置いて、パンツを引き上げた。そして、リュックの男の人を見た。
 非常な長身で痩せていて、細長い顔から赤い舌を覗かせている。ヌケ子さんが階段の踊り場で立ち止まって、僕が来るのを待っていたので、リュックの男の人を相手にするのはやめて、階段をのぼり始めた。ヌケ子さんの横を、リュックの男の人と同じくらいの年齢の女の人が3人おりてきて、下にいるリュックの男の人に向かって、何か話し掛けた。リュックの男の人は答える代りに、後ろから僕のパンツを引き下ろした。キャッと短い悲鳴を上げて女の人たちが駆け足で僕の元に来た。
「お前ら、毛のない、皮をかぶったおちんちんを見るのは初めてだろ」
「やめなよ。可哀想じゃないの」
 パンツを引き上げようとした僕は、背後から男の人に手首を掴まれ、3人の大学生らしい女の人たちからおちんちんを隠す術を奪われた。男の人は、僕の抵抗を楽しんでいるようだった。
「見ろよ、ほら。ぷるんぷるん、揺れてる揺れてる」
 万歳させられたまま、体を上下に揺さぶられた。リュックの男の人は非常に長身なので、胸のあたりで手を振るだけで、充分目的が達せられるようだった。僕の足首に絡まっていたパンツが抜けて、床に落ちた。僕は「やめて、見ないで」と声を上げ、腰を捻って隠そうとしたが、隠し切れるものではなかった。
「もういい加減にしなよ。男の子、いやがってるでしょ」
 体格差が激しいので、女の人たちもあまり強い調子で注意するのはできかねるようだった。3人とも僕に対して気の毒そうな顔をしていたが、視線はしばしば、揺さぶられて動くおちんちんの上に止まった。一人の女の人が床に落ちた僕のパンツを拾い、広げて見せた。「小さいね」「ハンドタオルみたい」などと言い合う。
 さっきから階段の踊り場で立ち止まって様子を眺めていたヌケ子さんが、ようやく下りの段に足を向けたのが見えた時、僕はくるりと向きを替えられた。目の前に男のポロシャツのボタンが現れた。男の人は、自分も揺れるおちんちんが見たいから向きを変えたのだと言い、女の人たちには、お尻の間からおちんちんの袋がぶらぶら揺れているからよく見てみろ、と勧めた。女の人たちの男への非難は、すっかり力を失っていて、気のない声で「やめなよ」「可哀想だよ」を繰り返すばかりだった。
 ずっと揺さぶられていて腕が痛くなっていた。僕がいくら解放するように哀訴しても、男の人は一向に聞き入れてくれない。男の人の背後にも、僕が素っ裸で晒し者にされている状態を立ち止まって見ている大学生のような人たちが軽蔑の眼差しを向けているのだった。眼鏡をかけた神経質そうな男の人は、遅れてきた一人に訊ねられ、あろうことか、次のように答えた。「知らない。どうせ裸で走り回っていたんだろ。非常識な子どもにはお仕置きが必要だよ」
「あのう、すみませんけど・・・」
 待ちかねていたヌケ子さんの助けがようやく来た。リュックの男の人は、意外な闖入者に驚いたように顔を上げ、それと同時に、僕の裸体の向きを戻した。ずっと腕を引っ張り上げられている僕は、腕の痛みと疲れで中途半端にしか腰を捻ることができず、ヌケ子さんと3人の若い女性の前で、すっぽり皮を被ったまま揺れているおちんちんを現わしてしまった。
「なんですか」
 つっけんどんに応じる男の人に怖気づいたのか、ヌケ子さんはたちまち顔を伏せた。ヌケ子さんの視線の先には、僕の丸出しにさせられたおちんちんがある。ヌケ子さんがそこに視線を定めたのは、男の人の目を見る勇気がないからか、単におちんちんを見ていたいからなのかは分からない。いずれにせよ僕には有り難くなく、疲れた足を無理して交互に交わしながら、少しでもおちんちんを隠そうと努めた。
「この子、放してあげてください」
「なんでですか。この子、おばさんの知り合いですか?」
 おばさんと呼ばれ、ヌケ子さんは少しムッとしたように顔を上気させ、唾を飲み込んだ。しかし、視線は、僕のおちんちんに固定したままだ。
「この子、仕事中なんです」
「仕事? なんだそれ。裸で仕事してるの?」
 男の人が笑うと、釣られたようにみんなが、女の人たちまでもがどっと笑った。男の人は腹を波打たせて笑うので、手首を掴まれたままの僕も上下に揺さぶられた。ヌケ子さんだけはじっと動かず、床に置いた段ボールの横で腰を屈め、僕の揺れているおちんちんに視線を注ぎながら、丁寧に言葉を選んで、事情を説明した。
「そういうことなら、俺も理解できる」
 リュックの男の人が自分の行為を恥じるように、大きく息をついた。そして、なぜ自分がこんなことをしてしまうのか、ぼそぼそと語り出すのだった。それによると、この男の人は、1階で僕が未就学の男の子にパンツを引き下げられた場面に遭遇したらしい。大勢の人がいる中で無理矢理下半身を露出させられた僕を見て、不意に昔のある出来事を思い出したと言う。母親に親戚みんなの前でパンツを下ろされ、お尻を叩かれた、その辛い体験がリアルに蘇ると、心拍数が上昇し、じっとしていられなくなり、僕のパンツを下げずには収まらなくなった。僕にうんと恥をかかせて、男自身の忌々しい過去を洗い落したかったのだと話した。
 説明を聞き終ると、女の人たちの男を見る目が変わった。労わりの言葉を次々とかけられた男の人は、照れたように笑った。両腕を引っ張り上げられた宙ぶらりんのままの僕は、小さい声で解放を要求し、ヌケ子さんにも助けを求めた。男の人は、初めて気づいたかのように手首を放してくれた。足の裏が冷たい床に着地した。僕は両手でおちんちんを隠しながら、階段の手すりに置かれたパンツを取った。
「遅くなったわ。急ぎましょう」
 段ボールを抱えたヌケ子さんは、僕がパンツを穿くのを見届けると、床に置かれた段ボールを顎で指し、促した。ところが、段ボールを抱えて階段をのぼり始めると、すぐにパンツのゴムを掴まれ、引き下ろされてしまった。リュックの男の人が唇をぶるぶる震わせて、パンツから手を放した。僕はしゃがんで、すぐにパンツを引き上げる。階段へ一歩足を踏み出すと、又すぐにパンツを引き下ろされる。
「駄目だ。俺は自分を抑えられない。パンツ一枚の男の子を見ると、脱がしたくなるんだ」
 苦悩の滲んだ顔で男が叫んだ。その目には、うっすらと涙のようものが光っていた。パンツを引き下ろされる度に足をとめるので、少しも前に進むことができない。
「悪いけどナオス君、時間がないの。これ以上パンツを脱がされないためには、素っ裸で運ぶしかなさそうね」
 階段を引き返してきたヌケ子さんは、引き上げたばかりの僕のパンツに手を掛け、一気に引き下ろすと、足首から抜き取ってしまった。

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6 コメント

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Unknown (Gio)
2009-03-07 20:37:39
最近更新はやくてうれしいです。マイペースに頑張ってください。
返信する
Unknown (Unknown)
2009-03-08 02:23:30
うほっ♪
もう更新されてる~
返信する
いや~ (Unknown)
2009-03-08 14:48:17
おかげでおかずに困らず助かってます
返信する
期待 (Unknown)
2009-03-09 23:21:49
また幸ちゃん出てこないかな
返信する
Gioさま (naosu)
2009-03-19 01:32:48
ご無沙汰しております。
まもなく更新します。
返信する
コメントくださったみなさま (naosu)
2009-03-19 01:36:33
みなさま、励ましのお言葉、ありがとうございます。
大変に嬉しく思います。

幸ちゃん雪ちゃんは、また登場します。
しかしながら、すぐにではありません。
どうぞ気長に、末長くお付き合いくださいませ。
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