一週間目の夜（その１）

　僕は中学一年の夏、クラスメイトのＹ美の家に居候することになった。とてもいやだったけど、父が残した借金のこととかあって、母に我慢してくれと泣きながら言われたから、我慢するしかなかった。
　Ｙ美はおとなしい子でクラスで目立つ存在ではなかった。でも、ほんとはとても意地の悪い子で、家庭環境も複雑だった。僕はそういう事情を知っていたから、彼女の家で暮らすのは、気が重かった。
　１０月になったら、また母と一緒に生活ができることになっていた。それまでの辛抱、たった三ヶ月だと自分に言い聞かせて、Ｙ美の家で生活させてもらうことにした。
　
　あの時の三ヶ月の体験のせいで、僕は今も女の人と性交することができない。性欲がゆがんでしまった。とても悔しいけど、Ｙ美や彼女の母や周囲にいた人たちを恨んではいない。こういう風につらい体験を回想するのはしんどいけど、僕だって普通に女の人と性交して家庭を持ちたい。このゆがんでしまった性欲を治療するためにはその体験を書き綴ってみたらと、ある人がすすめてくれたので、今これを書いている。

　居候して一週間目の夜、夕飯を終えて自室でくつろいでいると、Ｙ美がドアをノックした。ドア越しに「すぐ私の部屋に来て」と言った。命令口調だった。
　Ｙ美の部屋に入ると、彼女は椅子に座って腕を組んでいた。表情がとても険しかった。僕はＹ美の前に立った。Ｙ美はすぐに口をひらかなかった。訳がわからず立っている僕を上から下までじろじろと眺めていた。