ようやく家にたどり着いた時、僕はくたびれ果てていて、まだ庭を見渡せるぐらいの明るさだったのに、眠くて仕方がなかった。二日ぶりに会うおば様は、僕が素っ裸のまま外から戻ってきたことに驚いていた。しかも、全身の肌が汚れ、擦り傷だらけだった。早速Y美に説明を求めるのだけれど、Y美も疲れていたらしく、いい加減にやり過ごそうとして生返事を連発。とうとうおば様を怒らせてしまった。
Y美の横に素っ裸のまま立っている僕をじろりと睨んだおば様は、おちんちんを隠している僕の手を力ずくで取って、何も言わずロープでぐるぐる巻き、両手首をくっ付けて縛ると、縁側の先の物干し竿を掛けるフックに僕を吊るした。あられもない素っ裸の僕の体をおば様が竹刀片手にじっくりと見回す。僕の体のあちこちにある擦り傷や痣や汚れを見つけては、Y美に訊ねる。Y美はしらばっくれた。
「知らないよ。この子、S子の先輩たちに苛められてたし、ルコの別荘でお泊りしてた時も粗相をしたとかで罰を受けてたからさ。このお尻の痣とか、背中の痣とかは彼女たちに踏まれたからだと思うけどね。擦り傷は素っ裸で野山を歩かされて、人が来ては草むらとか藪の中に隠れてたから、その時にできたものだよ。自業自得」
「この子の服はどうしたの? まさか、ずっと裸のままじゃないでしょうね?」
「終業式が終わって南川でみんなと昼食会をした時、チャコは素っ裸で参加することになってたから、途中で洋服とか靴とか着ている物は全部脱いでもらったの。脱いだ物はF田さんの幸ちゃんに家まで届けるように頼んだんだけど」
「知らない。私は見てない。すぐに電話して確認しなさい」
F田さんの家に電話をかけに行ったY美は、戻って来て、幸ちゃんが僕の衣類一式を預かっているとおば様に知らせた。おば様は僕を拘束するロープをフックから外し、両手を自由にしてくれた。でも、それは単純な解放を意味してはいなかった。おば様は、僕に四つん這いになってお尻を高く上げるように命じた。縁側の先のコンクリートの部分に四つん這いになった僕は、おば様の「もっと高く」という、Y美を叱っている時にも出さないような怒声を受けて、羞恥に火照る頬をコンクリートに着けた。思い切ってお尻を上げる。Y美とおば様の息や唾がお尻の穴やおちんちんの袋に感じられた。指がお尻の穴を広げる。
「こんなに柔らかくなってる。随分といじったでしょ」
「私は知らない。S子の先輩のアキさんとかいう人にお尻の穴をいじられてたから」
一旦指がお尻の穴から離れた。とすぐに別の指が入ってきた。荒々しい手つきだった。
「ちょっとY美、そんなに乱暴にしたら可哀想じゃないの」
「面白い。随分広がるようになったね。コケシとか入っちゃうんじゃいなの」
生暖かい息をお尻の穴に吹き込まれ、思わず膝を落としてしまう。すぐにY美に後ろ髪を掴まれ、姿勢を崩さないように注意された。お尻に強い平手打ちを受ける。蒸し蒸しした夏の空気の分厚い層のようなものが汗の滲んだ背中や乳首、お尻の穴、おちんちんの間をゆったりと流れて、自分が一糸まとわぬ格好のまま四つん這いになっていることを改めて自覚させられる。僕は、羞恥と痛みに耐えつつ、命じられた通り、股を開き、上体を下げるとともにお尻を上げた。屈服させられた証しのようにお尻の穴を差し出す。
「おちんちんの袋もロープで擦ったような痕があるよね」
「そうなの? お母さん鋭いね」
「よく見なさいよ、ここ、ほら。ここを見れば誰でも分かるでしょ」
「ほんとだ。指で触ると腫れ具合がよく分かるね。でも、お尻の穴とか、前よりも綺麗な色になったような気がする。おちんちんの袋だって、初めてこの家に来た時と比べると、ツルツル感が増してきた感じがしない?」
「いつも外界の空気に晒して、いろんな人に見られ、触られているからね。見られていると肌だって綺麗になるものなのよ」
「ふうん、そうなんだ。でも、この子ぐらい沢山の人におちんちんを見られたり触られたりしている中学一年生の男の子も珍しいんじゃないかな。これからも、いつも丸出しにしとこうか、男の子らしく」
「しようがない子ね。でも、裸のままバスに乗せるのは、やめて欲しかったな。お前も難しい時期でストレスが多いだろうから、居候の男の子を苛めたり、性的なことに関する好奇心を満たす道具に使ったりするのは、仕方がないと思っている。でも、素っ裸のままバスに乗せたのは、やり過ぎよ。私の仕事にも影響が出てくるじゃないの」
おば様によると、僕が全裸でバスに乗せられた件は、知り合いからの連絡で知ったらしい。たまたまおば様の知り合いがバスに同乗していて、ショッピングセンターからおば様に電話をしたと言う。その人は、「Y美ちゃんにそっくりな子だなと思ったけど、今思うと間違いなくそうよ。バスに丸裸の男の子を連れて乗ってきたので驚いたわ。私、竹竿で男の子のおちんちんを突いて遊んじゃった」と、面白おかしく付け加えたらしい。僕はすぐに、買い物袋から細長い竹竿を出していた銀縁眼鏡の女の人が頭に浮かんだ。あの女の人は妙に物言いたげな視線を僕の体に這わせ、竹竿でおちんちんを突いた。バスから降りる時には僕のお尻を平手打ちした。終始無言だった。
とにかく汚れた体を綺麗にしなくてはならないということで、僕はお風呂に入れられた。久しぶりのお風呂だった。おば様がY美に僕の体を洗うように言いつけたけど、Y美は塾の時間だからとこれを断り、さっさと出掛けてしまった。それで、おば様が僕の体を洗ってくれることになった。じっくりと時間をかけてごしごし洗っても、なかなか汚れがとれないようで、おば様は「酷い汚れね。土や泥が肌に浸みついているわよ」とこぼした。一通り洗い終えると、湯船にできるだけ長く浸かるように言いつけてから浴室を出た。薔薇の香りがするお風呂だった。
湯から上がると、おば様が真新しいタオルで僕の体を拭いてくれた。太腿の内側や腕、背中にある擦り傷には薬を丁寧に塗ってくれた。数日に渡って女の人たちに監禁されて苛められた僕におば様が同情して特別に優しくしてくれているのかと思うと、涙が出そうになった。もしかすると服を着させてくれるかもしれない。少なくともパンツは穿かせてもらえるだろう。もういい加減服を着たかったし、これ以上、全裸でいたくなかった。しかし、おば様はシャツやズボンはおろか、パンツ一枚すらなかなか出してくれなかった。
この家の敷地内では、僕は白いブリーフのパンツ一枚しか身に着けることが許されていない。それは、おば様によると、僕がおば様に無償で生活の面倒を見てもらっていること、僕だけでなく僕の母親までもがおば様に仕事をあてがってもらって生活していること、これらの恩義を一時も忘れないようにさせるためだった。学校から帰ってきたら、僕はいつでも家に上がる前に洋服を脱いでパンツ一枚にならなければならず、翌日、学校に行くぎりぎりの時間まで服を着させてもらえないのだった。
夏休みに入った今、僕はいつ着衣を認められるのか、全く不明だった。ずっと女の人たちに裸のまま苛められてきたことを思って、おば様が特別に服を着てもよいと言ってくれるかもしれない。そんな期待が先走って、つい「何か着る物が欲しいです」と言ってしまった僕に、おば様は先程とは打って変わった険しい表情を向けた。
「パンツは、僕のパンツはどこですか?」
「パンツはY美が管理してるから私は知らない。ただね、私思うんだけど」
そこまで言うと、おば様は僕の一糸まとわぬ体をじろじろと眺めた。僕は、これまで日常的におちんちんを見られてきた。にもかかわらず、両手が自由な時はなるべく人におちんちんを見られないようにしている。この時も僕はおちんちんをしっかりと手で隠していた。僕の恥ずかしがる様子を見て、おば様の口元が緩んだ。
「しばらくパンツも没収しようかな。素っ裸でいなさいよ」
脱衣所の戸を開けると、おば様は僕を廊下に押し出し、生まれたままの姿でいる僕に窓拭きや雑巾掛けをさせるのだった。
こうして、僕のパンツすら穿かせてもらえない素っ裸の生活が始まった。この家に来て、パンツ一丁になって過ごすことを命じられた当時の恥ずかしさが蘇り、あの時の女の人たちの視線が、今度はパンツすら取られた自分の体に再びまとわりつく。常時全裸でいる僕は、庭に設置されたトイレ小屋で用を足す時と言い付けられたことを果たす時以外は、家から一歩も外に出ることがなかった。家の中でも僕には制約があり、基本的に椅子に座ることは許されなかった。また、Y美とおば様から何か言い付けられるまでは、待機場所である居間のマットレスの上にいることが義務付けられた。
おば様は自宅で仕事をすることも少なくなかった。居間の食卓に書類の束を積み、電卓を叩いては書類に数字を打ち込んだり、原稿の校正をしたりする。僕はおば様のためにコーヒーを淹れ、茶菓子を出した。頼まれると、おば様の肩や首回りを揉んだ。持に用事がない時は、おば様の傍らで正座をさせられたり、起立させられたりした。食卓の下のおば様の足の指を舐めさせられることもあった。そういう時は、大抵おば様の欲望がエスカレートし、昼間から寝室に移動した。僕に口を使ってパンツを下ろさせる。口でブラジャーを外させ、揉み、舐めさせる。仰向けに寝かせた僕の顔におば様が股間を押し付け、腰を前後に激しく揺する。細やかな奉仕の強要が終わると、疲れて眠ってしまう。普段、マットレスの上で毛布もなしに寝る僕にとって、掛け布団付きのふかふかのベッドに身を横たえることのできる貴重な機会だった。
Y美が外出し、おば様が仕事に出掛ける。こんな時こそ衣類を探し出して普通の人間らしく服を着る絶好のチャンスなのだけど、Y美もおば様も僕の考えは読んでいるのか、最後に残った一人が必ず僕に勝手な真似はさせないようにしてから家を出るのだった。おば様の場合は、まず僕を家の外に締め出し、外からしか鍵の掛けられないトイレ小屋に僕を監禁してから出掛ける。Y美はもっと酷くて、僕の手足を縛って足の縄尻と背中に回した腕の縄尻を結んで居間のマットに放置したり、鴨居と柱に縄をかけて手足を存分に広げた形に拘束して、家を出る。夜になって帰宅したおば様が拘束を解いてくれるまで、僕はずっと不自由な格好で過ごした。尿意に苦しむことも度々だった。
両手足を縛られて、口にガムテープを貼られた状態で暗い押入れに閉じ込められたこともあった。その時は、おば様も僕の居場所に気づかず、何故かろくに探そうとしないまま長電話を始め、暗闇の中で尿意に悶える僕にどうでもよいような世間話と笑い声を延々と聞かせた。やっと夜遅くに帰ってきたY美が襖を開けた。膀胱が膨らんで走れない。緊急事態でも家の中のトイレは女性専用だから使用厳禁だと釘を刺され、汲み取り式和式便所に向かうべく、縁側から庭に出たのだけれど、先回りしていたY美に腕を取られ、縁側から玄関まで引き連れられた。玄関先では、おば様がF田さんのお母さんと立ち話の最中だった。幸ちゃんと雪ちゃんもいた。
「お前の衣類をわざわざ届けに来てくれたんだよ。お礼を言いなさいよ」
衣類の入った紙袋を僕に示して、Y美が命令する。夏休み前の最後の学校からの帰り道、僕は南川沿いの遊歩道でY美に着ている物を全て脱ぐように強制された。小学生の幸ちゃんと雪ちゃんがじっと見つめる中で一枚一枚脱ぎ、最後のパンツは、二人の姉妹の手で脱がされた。Y美に羽交い絞めにされて抵抗できない僕のパンツのゴムに手をかけ、ゆっくりと引き下げられたのだった。僕はおちんちんを手で隠しながら、姉妹の方を見ずに頭を下げてお礼を述べた。限界に近い尿意に膝ががくがく震える。
「やだ。チャコ兄ちゃん、また裸にされてるんだね」
雪ちゃんがあどけない顔をして、僕を指さす。
「違うのよ、雪ちゃん。チャコはね、また裸にされた訳じゃないの。あれからずっと裸のままなの」
Y美が優しく訂正すると、幸ちゃんが絶句した。
「え、私たちの前で裸にされたあの日からずっと?」
「そうよ。あれからずっと裸んぼのままなの。もう十日以上、パンツ一枚穿かせてもらえないのよ」
Y美が僕のお尻をぴしゃりと叩いて、にっこりと笑った。すぐに僕のおちんちんを隠している手を取って背中に回す。F田さんのお母さんまでおば様との話を中断してこちらを見ている。Y美が露わになったおちんちんの皮を引っ張り、太腿に挟ませる。
「どうしたの? 足が震えているみたいだけど」
正午前から一度もトイレに行かせてもらっていない僕の苦しみに気づかぬ振りをして、Y美が不思議そうに僕に問いかける。と、Y美が腰を落として、下腹部に手のひらを押し当て、ぎゅっと押した。
「やめて、やめてください」
最後までに言い終わらぬうちに生暖かい液体が太腿の内側を濡らした。一度、おしっこをし出すと、もう止めることができない。
「いやだ。チャコ兄ちゃん、おしっこ漏らしてる」
雪ちゃんが声を張り上げる。F田さんのお母さんも軽蔑の眼差しでおしっこを垂らし続ける僕を睨んでいる。我慢に我慢を重ねたおしっこはなかなか終わりそうにない。
「ね、こんな風に粗相をするから、パンツも穿かせられないのよ」
Y美が困ったような顔をすると、F田さんのお母さんが大きく頷いた。幸ちゃんが僕の足元に出来た水溜りの大きさを指摘する。おしっこのせいで僕の両足を置く地面がぐちゃぐちゃになっていた。
僕を全裸のまま公共のバスに乗せたことで、たっぷりとおば様に叱られたY美は、さすがに懲りたのか、しばらく僕を外に連れ出すことを控えるようになったけれども、僕に対する苛めは、このように相変わらずだった。Y美とおば様が夕食を終えてくつろいでいる時など、僕の体が柔軟だからと言って、関節をいっぱいに広げる姿勢を強要することがあった。例えば、足を目いっぱい広げてから上体をフローリングの床に付ける。その状態でお尻を上げる。または、僕を床に仰向けに寝かせてから、広げた両足を持ち上げ、自分のお臍が舐められるほどに腰を曲げさせる。恥ずかしいのは、こういう姿勢を保った状態でおちんちんを扱かれることだった。
でも、それにも増してY美が残酷になるのは、夜の呼び出しの時だった。寝る準備を整え、あてがわれた部屋に入る。この部屋にはマットレスが一枚敷いてあるだけで、他には何もない。窓にはカーテンもない。それでも、窓から差し込む月明かりの中、マットレスの上で横になって体を丸めていると、心が落ち着いてくる。ここで生活するようになってから、この場所以外では滅多に感じることのできない安らぎを感じて、昼間に受けた性的ないじめとそれに伴う激しい羞恥の念を完全に忘れるというか、意識の遠いところに追いやることができるのだけど、その平安を突然打ち破るのがドアのノックだった。これはY美の呼び出しの合図であり、ノックがしたら僕は一分以内にY美の部屋の前で正座して待たなければならない。
夏だから寒くないのに、廊下に正座すると、ひんやりとした空気がどこからともなく流れて、全身の肌を冷たく撫でるように過ぎるので、自分が改めて素っ裸であることを意識させられるとともに、これから受ける仕打ちを思って身震いしてしまう。Y美がドアを開けると、「お待たせしました」と言って頭を下げる。Y美がいつドアを開けるかは、その時のY美の気分次第だった。一分ジャストで開けることもあるし、二十分くらいドアの前に僕を放置することもある。とにかく、Y美がドアを開けた時に僕が正座して待機していないと、お仕置きを受けることになる。
どんな時に呼び出しを受けるかは、全く分からない。Y美の「入りなさい」の一言でおずおずと部屋に入り、再び正座する。机で雑誌を広げていたY美の椅子がくるりと僕の方へ回って、組んだ足の先が僕の目の前でちらちらと動く。
「立って」
細長くて白い足が正座する僕の額を小突く。
アイドル歌手の歌に合わせて踊らされることがある。僕はアイドルの歌も踊りもほとんど知らないので、全てはY美に教えられる通りにやる。踊っている最中、Y美がおちんちんに手を伸ばすことがあった。それでも中断することは許されない。気持ち良くなってしまっても、何事もなかったかのように踊り続けなければ、Y美にやり直しを命じられる。
僕がなかなか振りつけを覚えなかったり、うまくできなかったりすると、Y美は僕に仰向けに寝るように命じた。お仕置きをするためだ。僕のお腹にY美が足を乗せ、体重をかける。腹筋に力を入れていればなんとか凌げるけれど、Y美は僕が力を抜いた瞬間を計ってぐっと足の裏をお腹に落とす。これを何度も繰り返された。足でおちんちんをいじられても、じっとしていなくてはならない。Y美は、僕を射精寸前まで追い詰めると足を放して、再びお腹の上に落とす。
全てはY美の気分次第だった。一通り踊れるようになると、もうY美は僕の踊りを面白がらなくなった。Y美に満足してもらおうとして羞恥も忘れて必死に踊る素っ裸の僕に、別の苛めが待っていた。いきなり両手両足を縛られ、二階のベランダに面した部屋の鴨居に縄尻を結ばれる。Y美は、身動きできない僕の体を洗濯ばさみで責めるのだった。二十個ほど用意されたそれを一つずつ、僕の体のあらゆる部分に付けていく。頬、耳たぶ、口、舌から順に下がってきて、きりきりと体の部位を個別に緊縛するように責める。乳首に付けられた時は痛みに悲鳴を上げてしまい、慌てたY美によって急いでタオルを噛まされた。おちんちんの袋、おちんちんの皮など、皮の薄い部分も容赦なかった。痛くて、呻き声を漏らしながらずっと悶え続ける。猿轡の間から必死に声を出して、「そこだけは駄目、許して」と訴えるものの、まるで通じることなく、とうとうY美の手によっておちんちんに洗濯ばさみが付けられた。全て付け終わると、Y美は、頬から足の指まで、三十もの洗濯ばさみが体のあらゆる部分にぎっしり付けられた僕の惨めな素っ裸を満足したように眺め回した。
朝、また眠いのにドアが開いてY美に叩き起こされる。生理的な現象によって、性的な欲望とはなんの関係もなくおちんちんが硬くなっているのだけれど、Y美はそれを見るのが目的で起こしに来ているような節があった。何せいつもおちんちんを丸出しの素っ裸だから、朝の生理現象を隠すことができない。髪の毛を引っ張られて立たされる。反射的におちんちんに手を当ててしまう。しかし、すぐにその手をY美に後ろに回され、腰を引いて階段を降りる。寝室から出てきたおば様の前で、Y美が僕の大きくなったおちんちんを根元から摘まんで揺すり、おはようの挨拶をする。
全裸生活で最も辛いのは来客時だった。おば様は、近所の人が採れたての野菜や回覧板を届けに来た時は、僕に外へ出て門扉を開けるように命じた。愚図愚図していると、「早くしなさい」と一喝される。服を着ている女の人たち、Y美か、或いはおば様が出ればいいのに、なんでわざわざこの家で唯一着衣を許されていない裸の僕が出なければいけないのか、それが不服で、ついついテレビを見ているY美へ恨み顔を向けてしまうのだけれど、目が合うと、Y美はびっくりする程優しく微笑んで、行ってらっしゃいと言うように軽く手を振ってくれたりする。
おちんちんをしっかり手で隠して、恐る恐る玄関のドアを開ける。門扉の向こうで割烹着姿の奥さんが待っていた。胡瓜のどっさり入った袋を渡しながら、「いつも裸で御苦労様」と変な挨拶をして、僕の体に無遠慮な視線を這わせる。近所の特定の人たちの間では、僕がここ何日か素っ裸で生活させられていることが知れ渡っていた。来訪者が若い女の人や男の人の場合は、恥ずかしがる僕に遠慮して、ちらりと視線を向けるだけですぐに帰ってくれることが多いけれど、中年以上の女の人の場合は、なんだかんだと僕を引き留めて、おちんちんを見ようとすることが多い。
割烹着姿の奥さんは、まだ中年の域には達していないのに、僕の体をじろじろ見たり、いじったりすることにかけては、異常な興味を示した。一刻も早く家の中に入りたい僕に奥さんはいろいろと話し掛けてくる。
奥さんの話に適当に相槌を打ちながら、受け取った胡瓜の入った袋でおちんちんを隠していると、Y美が来て奥さんに明るい声で挨拶をし、僕の手から胡瓜を袋ごともぎ取る。一瞬丸見えになったおちんちんを慌てて手で隠すのだけど、すぐにY美はその手を背中に回して、割烹着姿の奥さんに正面を向けた。
「やだ。まだ子供のおちんちんね。毛も生えてないし皮かむりだし。ほんとにこんなおちんちんでも精液出すの?」
恥ずかしさで体がかっと熱くなる。奥さんの低い鼻がおちんちんに接触しそうだった。そんなにも顔を近づけなくてもよいのに、と思いながら、もじもじしていると、Y美にお尻を抓られた。じっとしていなさい、という意味だ。
「よく分からないです。男の子って、こんなちっちゃいおちんちんでも出すんですか?」
「あら、あなた知らないの?」
「知らないですよ」
これまで何度もY美に強制的に射精させられてきた僕にとって、このY美の空っとぼけた言い方は、かなり憎らしく感じられた。Y美は、僕が少しでも彼女に対してマイナスの感情を抱いてしまうと、電光石火でそれを感じ取った。慌ててY美への憎しみを忘れることにしたけれど、時すでに遅く、結局僕は奥さんの見ている前でオナニーをさせられることになった。「ほんとに出るかどうか、とりあえずやってみなよ」と、無邪気を装って僕に罰を与えるのだった。
真っ裸のままの生活を強いられるようになってからの僕は、必ずしも毎日射精させられるとは限らなかった。それでもY美やおば様の見ていないところで精液を出すことはなく、いつも僕の射精は見られ、管理されていた。この日は二日間ほど出していなかったので、Y美は僕がすぐに射精するだろうと思っていたようだった。ところが、おちんちんは、なかなか大きくならなかった。奥さんがじっと見つめるので、羞恥と緊張が一緒くたになって、おちんちんをうまく扱くことができない。
「何やってんのよ。真面目にやりなさいよ」
苛立ったY美が膝頭で僕のお尻を蹴り上げた。つんのめって、奥さんに正面からぶつかる。外見からは今一つ分からなかった豊かな胸に顔を埋めてしまった僕は、女の人特有の柔らかい体を味わう間もなく、頬をしたたか平手打ちされた。
「生意気な真似しないで。いつもおちんちん丸出しのくせに」
顔面蒼白になった奥さんが震える声で僕を責めた。振り下ろした奥さんの手の先がぴくぴくと震えている。体に触れられたのが相当なショックだったらしい。大きく潤んだ瞳から涙がこぼれるかと思ったら、いきなり僕の肩をどんと押した。すごい力で地面に簡単に倒されてしまった僕の腰や太腿を奥さんが容赦なく蹴りまくる。顔を踏まれ、敷石と敷石の間の土が口に入ってくる。痛みに悶えながら、土を吐き出して許しを乞う。と、奥さんはいきなり向きを変えて走り去ってしまった。
翌日の午後、また奥さんが訪ねて来た。食卓で書類をめくりながら電卓を叩いているおば様が僕に応対するように指示する。玄関のドアを開ける直前、Y美に呼びとめられた。土間のサンダルを引っ掛けて、僕に近づく。Y美の半袖のシャツが僕の剥き出しの肌に触れるくらい、ぴったりと体を寄せて、僕の耳元に息を吹きかける。
「そんなに慌てて出なくてもいいのよ」
こう言って、おちんちんを袋ごと撫ぜ回し始めた。突然のことに声も出ない僕は裸の背中をぴったりとドアに貼り付けて、Y美の為すがままになった。三日間精液を出していなかったので、すぐにおちんちんが膨らむ。五本の指が一本一本独立して硬くなったおちんちんを軽く叩くように撫で、一回ごとに叩く位置を微妙にずらす。おちんちんの袋からじんじんと快楽の波が伝わってきて、放射状に体に広がってゆく。しゃがみ込んで、おちんちんの我知らず射精を求める様子をじっと観察していたY美が、「こんの辺でいいかな」と呟いて、あっさりと手をおちんちんから離した。呼吸の乱れた僕を横目で見ながらドアを開け、「あんまり待たせるもんじゃないよ」と言って、僕を外に押し出した。
限界まで大きく張ったおちんちんは、射精でもしない限り、すぐには元通りにならない。門扉の向こうでは、奥さんか昨日とは打って変わった晴れやかな笑顔で手を振っている。素っ裸で訪問客の相手をさせられる恥かしさはなかなか慣れるものではなかったけれど、それにしても今回の羞恥は、いつもの比ではない。勃起状態のおちんちんを手で押え、なんとかして隠そうとして、腰を横に捻りながら、敷石へ素足を踏み出す。
「昨日はごめんなさい。私、いきなり抱きつかれたりすると、過去の厭なこと思い出しちゃって、どうしょうもなくなるの。君のこと、ぶったり蹴ったりしてごめんなさい。裸んぼなのに、力いっぱい蹴っちゃったわ。痛かったでしょ?」
門扉を閉める僕の背中に向かって奥さんがまくし立てた。振り返ると、奥さんが僕の目の前に大きな紙袋を差し出した。昨日のお詫びだと言う。中には1リットルサイズの瓶が三本入っていた。
「お中元で貰ったんだけど、うちはジュースとかあまり飲まないから」
おちんちんを隠すのにぴったりの大きさの紙袋だった。お礼もそこそこにすぐに受け取ろうとすると、奥さんは不意に紙袋を引っ込めて、黄色い声を上げた。
「やだ。どうしたのよ、そのおちんちん。昨日と全然大きさが違うじゃないの」
しまった、気づかれてしまった、という苦い思いで腰を捻り、おちんちんに手を当てたけれど、Y美にいじられて大きくなったそれは、とても隠し覆せるものではない。しどろもどろになってあたふたしていると、玄関からY美が出てきた。何食わぬ顔をして奥さんに挨拶をし、僕のおちんちんに初めて気づいたような驚きの声を上げると、おちんちんを硬くしたまま応対する僕の非礼を詰った。
昨日オナニーを見てもらえなかったから欲求不満になっているみたいなの、とY美が僕のお尻をぴしゃりと叩いて、奥さんに説明した。奥さんは瓶ジュースの入った紙袋をY美に渡しながら、上品に笑った。
こうして僕は再び奥さんの前でオナニーをさせられることになった。今度は初めから勃起状態だから扱く手数がかからなくていいわね、とY美が冷やかす。僕としても、どうせこの強制オナニーから逃れられないのであれば、とっとと出して終わらせたかった。ところが不思議なことに、自分でおちんちんを扱いているところを改めて奥さんにじろじろと見つめられると、緊張が走り、思うように手が動かなくなった。
門の外を人が通り過ぎる。花の盛りがとうに過ぎて、虫歯が進行し尽くしてぼろぼろになったような色のアジサイの側に奥さんが立つので、僕の恥ずかしい姿が外から丸見えになった。通りかかった人に奥さんの知り合いがいたらしく、門越しにニ三の言葉を交わした。Y美が「どうぞお入りください」と声を掛け、奥さんが門扉を開けると、奥さんよりも年上と思われる女の人たちが賑やかに話をしながらぞろぞろと入ってきた。婦人会の人たちだ、とY美が言い、おば様を呼びに向かった。その間、僕は一人、女の人たちの間に取り残されることになった。アジサイの後ろに回って隠れようとしたけれど、すぐに腕を取られ、婦人会の人たちから「素っ裸で何をしているのか」「洋服はどうしたのか」と質問を受けた。手でおちんちんを隠し、もう片方の手で胸の辺りを覆い、やや前屈みになって腰を捻るなどして、なるべく裸を見られないようにしながら、「なんでもないんです、あんまり見ないでください」と質問をはぐらかすのだけれど、婦人会の人たちの無遠慮な視線が至近距離から体のあちこちに刺さった。
男の子がオナニーするところをみんなで見てあげるところなのよ、と奥さんが楽しくて仕方がないような声で説明した。婦人会の人たちは一斉に笑い、自分たちも立ち会いたいものだと言った。Y美がおば様を連れて出てきた。話が済むと、公開オナニーの刑が再開された。
「ギャラリーが増えて良かったじゃないの。頑張ってね」
Y美が囁き、僕のお尻を撫で回していた手を股間に伸ばした。少し萎えかかっていたおちんちんに再び電流のような快楽の波がツーンと押し寄せてきた。
いろんなことを言う声がいやでも耳に入ってくる。一所懸命おちんちんを扱いている、と僕のことを評したかと思うと、男の子はいつもこんな風にオナニーをするのか、と感嘆まじりの質問をしたり、すごい、を連発したりする。僕の集中力が途切れる。ふと顔を上げると、すぐ目の前で奥さんや婦人会の人たちが僕のおちんちんを扱く様をじっと見つめている。皆、意外なほど真面目な表情だった。
一度家に引っ込んだおば様がもう一度玄関から出てきて、みんなに見つめられながら強制オナニーをさせられている僕に冷たい視線を投げかけた。Y美を呼び、そろそろ塾の時間だと告げる。と、門扉が開いて、白いソフト帽を被った女の人が入ってきた。婦人会の人たちよりは若く、奥さんと同じくらいの年代だった。ごてごてとビーンズで飾り立てた大きな手提げ鞄を肘の窪んだところに提げている。女の人たちの前でオナニーを強制されているという異常な状況の只中にいる素っ裸の僕にも、まるで普通に道ですれ違った時のように会釈すると、おば様のところへ真っすぐに向かった。
おば様がすっと前へ出て、仕事の時の声を出した。
「あら、ごめんなさいね。こちらからご挨拶に伺おうと思っておりましたのに」
「いいんですよ。ちょっとお宅を覗いたら、面白いことやられている最中だったんで、丁度良い機会だと思いまして」
女の人は振り返り、もう一度僕の方を見てから、にっこりと笑った。
帽子を取ると、パーマした髪が露わになった。そこで僕は初めてこの女の人が高齢者の介護をなりわいとするヘルパーのIさんだと気づいた。みなみ川教という、地元で興った新興宗教の関係者であり、信者に高齢者が多いことから、信者たちの共同宿舎でヘルパーの仕事をしながら、信者たちの言う「命を生き生きとさせる活動」も行っている。
おば様とIさんが立ち話を始めると、すぐにY美も加わった。その間、僕の強制オナニーショーは中断になった。庭の隅に行って一糸まとわぬ体を隠そうとした僕は、奥さんと婦人会の人たちに体を掴まれ、そのまま敷石の上に立ち続けるように命じられた。とても逆らえない状況だった。おちんちんを隠す僕の手の甲を奥さんがぴしゃりと叩いた。
「気をつけ」
恥ずかしくてろくに目を合わせようとしない僕の頬を掴んで、奥さんが睨みつける。僕はこの奥さんから受けた昨日の暴行を思い出し、膝を震わせながら指示に従った。体の側面に両手を添えて、指先を伸ばす。
奥さんと婦人会の人たちは、中腰になっておちんちんに顔を近づけた。そのうち、奥さんが手を伸ばし、急速に元に大きさに戻りつつあるおちんちんを上に引っ張って、その裏側を白日に晒した。婦人会の一人がおちんちんの袋を揉み、柔らかくて触り心地が良いことを告げる。すると、争うように次から次へと手がおちんちんの袋を揉みしだいた。痛くなって思わず腰を屈め、手で払おうとしたら奥さんに頭髪を掴まれ、揺さぶられた。お尻を抓られて痛みに呻く僕に「少し我慢してね」と明るい声で諭す。
服を着た女の人たちの前で一人だけ素っ裸のまま射精を強制されている。あまりに恥ずかしくて、ろくに前を見ることができなかった僕の視界に、ふとF田さんちの幸ちゃんと雪ちゃんの姉妹が混じっていた。彼女たちの母親であるF田さんも婦人会の一人と親しげに話をしている。
「チャコ兄ちゃん、また面白いことさせられてるんだね」
僕よりも背が高い小学六年生の幸ちゃんが大人びた口調で言った。軽蔑の眼差しで敷石の上に裸足で立つ僕の一糸まとわぬ姿をじろじろと眺める。隣の小学四年生の妹である雪ちゃんは、あとげなく笑っている。F田さんたちは、習字教室の申し込みをしに行った帰りで、たまたまこの家の前を通りかかったところ、庭先に知り合いの婦人会の人がいて、中に入れてくれたと言う。雪ちゃんは、筆や硯の入った真新しいピンクの鞄を手にぶら下げていた。
後ろから肩をぽんぽんと叩かれ、振り向くとヘルパーのIさんは僕の前に移動した。紺のミニスカートがぴったり膝に貼り付いている。相変わらずにこにこしながら、僕にくっ付くようにして立って、おちんちんに手を伸ばした。
「あなたの精液を採取することになったの。おば様の許可はもらったわ」
プラスチックの丸い容器をちらつかせながら、Iさんが僕の耳元で囁いた。ゆっくりとおちんちんを撫で、扱く。Y美とおば様がそばに来た。Y美がおちんちんを弄られて恥ずかしがっている僕に気をつけの姿勢を取るように命じる。
婦人会の人たちに隠れて見えない門扉の方から、若い女の人たちの声高な話し声が聞こえた。いつの間にか婦人会の人数が増えている。友達が友達を呼び、次から次へと入ってきたようだった。おば様がそれを容認し、知り合いが通りかかったら遠慮なく誘ってほしいと奥さんに伝えた時は、おば様自身もまさかこんなに増えるとは思っていなかったに違いない。最初四人だった婦人会の人たちは、今では十人以上だった。おば様は、自宅の庭先にたくさんの人が集まっているのを珍しそうに眺めていた。それぞれにお喋りする婦人会の人たちがさっと二手に分かれた。その空隙を通って前へ出てきたのは、雪ちゃんと同い年くらいの小学生の女の子たちだった。皆、手に雪ちゃんが持っているような習字道具の入った色とりどりの鞄を提げている。手招きする雪ちゃんの方へぞろぞろと寄って来てひとしきり言葉を交わした後、素っ裸のまま立たされ、Iさんにおちんちんを扱かれている僕に視線を向ける。彼女たちは一瞬ぎょっとしたようだったけれど、雪ちゃんの説明を聞くと、すぐに雪ちゃんの落ち着き払って楽しそうに見学する態度に倣って、うっすらと微笑みのようなものを浮かべるのだった。
女の子たちは、雪ちゃんと一緒に習字教室に通うことになった友達とのことだった。今日初めて口をきいた人もいるとは思われない程、親密な間柄を忍ばせる言葉がぽんぽんと彼女たちの中を飛び交っている。雪ちゃんと同学年であれば僕よりも三つ年下だけれど、背丈は僕と変わらず、中には僕よりも高い子もいた。彼女たちにしてみれば、自分たちと年の変わらない男の子が素っ裸でお仕置きされているのは、滅多にお目にかかれない、楽しい見せ物なのだろう。
Iさんの愛撫、扱きは、丹念にじわじわと刺激を与え続ける。僕の耳元や首筋に息を吹きかけながら、乳首やお尻も撫でる。おちんちんの袋を揉むこともある。その間、もう片方の手はおちんちんを離れず、柔らかい生き物のようにまつわる。硬くなってこれ以上大きくならないところまで勃起させられたおちんちんは、しかし射精寸前まで追い込まれながら、突然堰き止められ、ぬるぬるした亀頭を膨張させたまま、行き場を失って透明な壁にむなしく頭を打ち付ける。精液を採取するのならとっとと採取して、一刻も早く僕をこの羞恥地獄から解放して欲しかったけれど、Iさんは何か思惑があるらしく、だらだらと愛撫を長引かせた。この単調な責めに飽きて、一人二人と帰ってくれれば、と淡い願いを抱いたものの、見物する人たちは減るどころか、増える一方だった。
女の子だけでなく、男の子も数人混じっていた。雪ちゃんの習字仲間の関係で誘われたようだった。服を着た女の人に素っ裸で性的にいたぶられている僕を見て、男の子たちも最初は恐怖に似た感情を覚えたかのように顔を強張らせたけれど、女の子たちの手前、あからさまに怖がろうものなら女の人たちは敏感にそれを察して、自分たちもまた僕のような目に遭わせるとも限らないから細心の注意が必要と判断したのか、女の子たちに混じって、まさに女の子の立場から、恥ずかしい試練に耐える僕を冷やかしたり、笑ったりする。女の人たちに苛められている姿を同性に見られるのは、例え相手が年下の小学生であっても、耐え難い辛さだった。屈辱感と無力感が嵐になって頭の中を駆け巡る。男性は目の前の小学生だけでなかった。郵便局の配達員である若い男の人も婦人会の女の人たちに混じって、呆けたような表情でこちらを見ている。婦人会の人の知り合いとおぼしきおじさんは、女の人たちのお喋りに耳を傾け、ふんふんと頷きながらも、視線は僕の一糸まとわぬ体にじっと注がれている。険しい、軽蔑しきったような冷たい目だった。
今まで僕の横にいて、Iさんに扱かれて悶える僕を黙って見つめていたY美が集まった人たちをかき分けて門扉に向かった。押し寄せる理不尽な快楽に揉まれて、もういっそのこと現実のことは全て忘れたいと願っている僕に冷や水を浴びせたのは、聞き覚えのある笑い声だった。はっとして目を開けると、そこに同じクラスの女子、仲好し三人組がいた。いつも三人で行動を共にするから、クラスの人から三人組と呼ばれている。Y美とは付き合いがない筈なのに、Y美が学習塾へ通うようになってから、少しずつ交友するようになったようで、塾へ一緒に行く約束をしたのにY美がなかなか待ち合わせ場所に来ないから誘いに来たとのことだった。
三人組は、真っ裸で皆の前に立たされている僕をじろじろと見つめながら、Y美にこの異常な事態の説明を求めた。僕は、彼女たちに裸を見られるのは初めてだったから、恥ずかしくて急いでおちんちんを手で隠した。その手を取って背中にねじ曲げながら、Y美が僕の公開オナニーのことを話す。三人がキャッキャッと笑いながら拍手をすると、拍手がこの場に居合わせた人たちに連鎖的に広がり、僕はステージの上に立たされているような気分になった。
同級生の男子も四人いた。同じ学習塾に通う間柄なのか、三人組のそばに来て、僕のあられもない姿を軽蔑の眼差しで見つめながら、彼女たちとひそひそ話に興じている。これまで数えきれないくらいの多くの人たちに裸を見られ、おちんちんを観察されてきたけれど、そのほとんどは通りすがりで顔も名前も知らなかった。でも、今僕の前にいるのは、単に僕が知っているだけではなく、僕が普通に服を着て、普通の人としての体面を保っている時に交流してきた人たちだ。当然着衣を許されぬ裸の奴隷状態に置かれた僕と対面するのは初めてであり、僕の方でも、服を着た僕しか知らない筈のこの人たちに素っ裸を晒しているという意識がいやでも上がってきて、至近距離でおちんちんを観察される精神的な苦痛がY美とIさんにしっかり押さえ込まれた裸身をいたずらに悶えさせる。
「恥ずかしいわよね。こんなに多くの人の前でオナニーさせられるんだもの。同じクラスの子もいるんでしょ? 彼女たち、可愛いわね。食い入るように見つめて、顔を真っ赤にしてる。男の子は、ぽかんとしてて、お馬鹿な動物みたいね。小学生の女の子たちの方がよっぽどしっかりした顔をして見ているじゃないの」
硬くなったおちんちんに五本の指を絡ませ、小刻みに振動させ、Iさんが言った。羞恥の念とそれとは明らかに異質なところから生まれた性的な快楽、この二つが合流して下腹部から体の隅々まで広がる快楽の流れの幅を広げ、全身をかっと熱くさせる。剥き出しの肌という肌が汗でぬるぬるして、ほんのりと血色を浮かび上がらせる。最前列で見ていた三人組の一人が「きれいな体だよね」と感嘆したように漏らした時は、変に嬉しくて泣けそうになった。彼女たちによると、西に傾いた淡い日差しを受けて、僕の体は女の人のようにも、男の子のようにも見えるという。
「ここまでやれば充分でしょ。あとは自分でやりなさい」
背中に回されていた僕の手を取って、おちんちんに触れさせる。Iさんは僕の横にいて、おちんちんに自ら触れることをためらっている僕に鋭い視線を向けた。
「いやだ。許してください」
上ずった声で最後の哀訴を試みるも、あっさりと聞き捨てられる。おば様が僕の耳に口を寄せて、これだけ多くの人が集まったのに期待を裏切るような真似をしたらどうなるか想像できるかしら、これは社会的責任なの、と言った。この社会的責任を果たせなかった場合、当然のように社会的制裁が加えられる。それは僕だけでなく、男性ばかりの独身寮に住み込みで長時間労働を強いられている僕の母にも及ぶとのことだった。母は、おば様への借金を返済するため、休日も取らずに働かされている。僕が居候先でこのような激しい性的ないじめを受けていると知ったら、母のおば様に対する感情は百八十度変わるに違いない。実家を抵当に入れてもまだ足りない借金を肩代わりしてくれた上、仕事を斡旋してくれ、更には住み込みで働くために離れて暮らさざるを得なくなった僕の世話をしようと申し出てくれたおば様は、母にとって菩薩のような人だった。僕がおば様のところへ移る前夜、母は僕におば様やY美に逆らわないこと、彼女たちに嫌われないようにすることを口を酸っぱくして言い聞かせた。
僕がおちんちんを自ら扱き始めた時、見物する人たちからどよめきがが起こった。もう何を考えても無駄だった。すでに性的刺激がしっかり高められてあったので、すぐに射精の時が近づいた。黙って精液を出したら、また激しく叱られ、やり直しを命じられるから、僕はもうすぐ逝きそうであることを、喘ぐようにして知らせた。小学生の間からくすくす笑う声が聞こえた。三人組がおちんちんの膨らみを指して、すごいすごいと感心している。Iさんが丸い容器をおちんちんの前に差し出した。奥さんが目を輝かせ、両手を胸の前で組み合わせながら、
「すごいわ。男の子のオナニー、一度見たかったの」
と絶叫し、周りの人たちをどっと笑わせた。
勢いよく放出した白い液体をIさんは一滴もこぼさずに丸い容器で受け止めた。透明な容器の底に溜まった液体を下から眺めながらIさんがほくそ笑む。容器は三人組の手に渡された。生まれて初めて見る精液のようだった。指先で軽く触れ、ねばねばした感触を味わっている。Iさんが精液の採取に来たのだから絞れるだけ絞るつもりだと言うと、三人組は少し憐れむような目で僕を見た。日差しを受けてよりもむしろ自分の体温で熱くなった敷石を素足の裏で感じる。おちんちんをしっかり手で隠している僕は、まだ解放されそうもない空気を剥き出しの全身の肌で感じて、膝に力が入らない。
雪ちゃんとその友達たちにも精液を入れた容器が回った。僕は皆に背中を向け、頭の後ろで手を組まされた。Iさんによると、僕の精液にはパワーあり、幸福をもたらすのだそうだ。それはIさんの信じる宗教の中での特殊な考え、価値観であり、そういう価値観を持たない人にはなんの効果もない筈なのに、ここに集まった人たちは、幸福が得られるのであれば精液を強制的にでも採取することは正しいと考えるようになっていた。僕自身は当然のことながらこの精液採取がいやでいやでたまらず、ましてや皆の見ている前で射精させられるのは、どうしても慣れることのできない苛めにほかならないけれど、ここにいる人たちにとっては、僕のそういう気持ちは全く取るに足りない、なんら配慮に値しないものなのだった。Iさんが皆の見ている前で僕のお尻を打つ。細長い板がびしりとお尻に当たると、痛くて呻き声を漏らしてしまう。これでも加減しているとIさんは言った。
「すごい、真っ赤になってゆくね」
「白いお尻が赤くなったね」
雪ちゃんたちの無邪気な声が聞こえる。僕は恥ずかしさと悔しさで涙をこぼしそうになった。こうしてお尻を叩くと精液にいっそうのパワーが宿るのよ、とIさんが皆に聞こえるように言った。意味不明だった。それでも僕は逆らうことが許されていない。おば様にとってもIさんの行為は理解できないようだけど、とりあえず僕にそっと近づき、男の子として耐えるしかないこと、我慢することを耳元で囁くのだった。
二回目の精液採取は、Iさんの手で行われることになった。僕は見物人たちの方へ体の向きを変え、気をつけの姿勢を取らされた。恥ずかしがって腰を捻るだけでも、横にいるY美にお尻を抓られる。精液採取の実務で頭がいっぱいのIさんは、先の扱き方とはおのずから異なり、ひたすら一定の速度で扱き続けた。じらしや緩急はなかった。僕は程なくして二度目の射精をまたしても皆の見つめる中でさせられた。Iさんは二つ目の容器にそれを収めた。鞄から三つ目の容器を取り出す。
「さあ、もうちょっと頑張ろうか」
「いやです。もう許してください」
必死に訴える僕の頬が濡れているので、雪ちゃんの友達が「可哀想。泣いてるよ」と言った。無情に事を進めるIさんによって僕は四つん這いの姿勢を強制され、奥さんや婦人会の人たちにお尻の穴までじっくり観察されながら、お尻を再び何度も叩かれた。それが終わると精液採取が始まる。今度はY美に背後から羽交い絞めにされた。Iさんが高速で扱き始める。
精液の量が二回目と比べて著しく減少した。僕は、一糸まとわぬ裸のまま、集まった人たちの中に投げ込まれた。この子は出し惜しみをしている、罰を与えなければならない、とIさんが宣言した。すると、人々が憑かれたように僕の体に被さって来て押さえ付けた。何人もの手がおちんちんを代わる代わる扱く。乳首や首を撫でる。体じゅうで誰かの手が触れていない場所はないと思われた。お尻の穴まで広げられ、何か得体の知れない堅い物体を挿入された。僕があまり泣き叫ぶので紐の付いたボールを噛まされた。恐怖を感じながらも体は外的な刺激に反応を示し、おちんちんが硬くなる。女の人たちの歓声が耳をつんざいた。こうして四回目の射精が終わり、僕の精液が新たな容器に収められた。
皆は、地面に横たわって泣きじゃくる僕から一旦離れた。ふと見上げるとIさんが大きな手提げ鞄をごそごそ掻き回している。五つ目の容器を取り出し、僕を見て目を細めた。堪らなくなった僕は首を横に振って膝を立てると、中腰のまま家の中へ逃げようとした。しかし、すぐに捕まってしまった。僕は地面の上に仰向けに大の字で押さえ付けられた。Iさんがしゃがみ込み、「まだいけるでしょう。男の子なんだから頑張りなさいよ」と言って、ミニスカートの裾を揃えて膝を横にずらし、スカートの中が僕から見えないようにした。素っ裸の僕を寄ってたかって弄びながら、自分はスカートの中のパンツすら一瞬たりとも見せようとしない。
雪ちゃんとその習字仲間たちが習字道具を取り出した。硯に墨汁を入れ、筆を浸す。
「さあ、今度は君たちが射精させる番だからね」
Iさんが筆を握った小学生たちに優しく声を掛けた。
婦人会の人たちに四肢を大きく広げた状態で固定された僕は、「いやだ、やめて」と叫びながら必死に抵抗したけれど、全く空しかった。雪ちゃんをはじめ、同じ習字教室に通うことになった仲間たちが僕の裸身のあちこちに筆を走らせた。首から乳首、脇腹を墨を含んだ筆が撫でる。乳首の周りをぐるぐる回り、半径を狭めてゆき、最後に乳首が黒く染められる。おちんちんには墨を含んだ筆の他に硯に浸していない乾いた筆が併用され、おちんちんのぴくんという動きに応じて使い分けられる。開いたまま両足を持ち上げられた。女の子たちの筆がおちんちんの袋を裏側まで墨で塗り始めた。
おちんちんに毛が生えていないから塗ってあげようよ、と雪ちゃんが提案し、早速下腹部の辺りに筆を走らせる。墨で塗られて黒くなると、無毛のおちんちんに毛が生えたみたいだと言って、婦人会の人たちが笑った。だんだんと気持ちが良くなってくる。
Y美と仲好し三人組は塾へ行った。僕の射精ショーが楽しくて途中で抜けられず、最初の授業はさぼることになった。おば様にこっぴどく叱られ、Y美は「お前のせいだからね」と、皆の前でおちんちんを蹴ってから三人組ともども急いで家を出た。
四つん這いにされ、背中やお尻も筆で撫でられる。体じゅうが墨で黒くなる。最後は仰向けだった。硬くなったおちんちんを何本もの筆が撫でる。亀頭の敏感な部分に筆が触れるたびに僕は悲鳴を上げた。ほどなくして五回目の射精を迎えた。仰向けでは採取しづらいので、僕の脇の下に腕を入れた奥さんに無理矢理立たされた。Iさんは見事に容器で精液を受け止めた。
Y美の横に素っ裸のまま立っている僕をじろりと睨んだおば様は、おちんちんを隠している僕の手を力ずくで取って、何も言わずロープでぐるぐる巻き、両手首をくっ付けて縛ると、縁側の先の物干し竿を掛けるフックに僕を吊るした。あられもない素っ裸の僕の体をおば様が竹刀片手にじっくりと見回す。僕の体のあちこちにある擦り傷や痣や汚れを見つけては、Y美に訊ねる。Y美はしらばっくれた。
「知らないよ。この子、S子の先輩たちに苛められてたし、ルコの別荘でお泊りしてた時も粗相をしたとかで罰を受けてたからさ。このお尻の痣とか、背中の痣とかは彼女たちに踏まれたからだと思うけどね。擦り傷は素っ裸で野山を歩かされて、人が来ては草むらとか藪の中に隠れてたから、その時にできたものだよ。自業自得」
「この子の服はどうしたの? まさか、ずっと裸のままじゃないでしょうね?」
「終業式が終わって南川でみんなと昼食会をした時、チャコは素っ裸で参加することになってたから、途中で洋服とか靴とか着ている物は全部脱いでもらったの。脱いだ物はF田さんの幸ちゃんに家まで届けるように頼んだんだけど」
「知らない。私は見てない。すぐに電話して確認しなさい」
F田さんの家に電話をかけに行ったY美は、戻って来て、幸ちゃんが僕の衣類一式を預かっているとおば様に知らせた。おば様は僕を拘束するロープをフックから外し、両手を自由にしてくれた。でも、それは単純な解放を意味してはいなかった。おば様は、僕に四つん這いになってお尻を高く上げるように命じた。縁側の先のコンクリートの部分に四つん這いになった僕は、おば様の「もっと高く」という、Y美を叱っている時にも出さないような怒声を受けて、羞恥に火照る頬をコンクリートに着けた。思い切ってお尻を上げる。Y美とおば様の息や唾がお尻の穴やおちんちんの袋に感じられた。指がお尻の穴を広げる。
「こんなに柔らかくなってる。随分といじったでしょ」
「私は知らない。S子の先輩のアキさんとかいう人にお尻の穴をいじられてたから」
一旦指がお尻の穴から離れた。とすぐに別の指が入ってきた。荒々しい手つきだった。
「ちょっとY美、そんなに乱暴にしたら可哀想じゃないの」
「面白い。随分広がるようになったね。コケシとか入っちゃうんじゃいなの」
生暖かい息をお尻の穴に吹き込まれ、思わず膝を落としてしまう。すぐにY美に後ろ髪を掴まれ、姿勢を崩さないように注意された。お尻に強い平手打ちを受ける。蒸し蒸しした夏の空気の分厚い層のようなものが汗の滲んだ背中や乳首、お尻の穴、おちんちんの間をゆったりと流れて、自分が一糸まとわぬ格好のまま四つん這いになっていることを改めて自覚させられる。僕は、羞恥と痛みに耐えつつ、命じられた通り、股を開き、上体を下げるとともにお尻を上げた。屈服させられた証しのようにお尻の穴を差し出す。
「おちんちんの袋もロープで擦ったような痕があるよね」
「そうなの? お母さん鋭いね」
「よく見なさいよ、ここ、ほら。ここを見れば誰でも分かるでしょ」
「ほんとだ。指で触ると腫れ具合がよく分かるね。でも、お尻の穴とか、前よりも綺麗な色になったような気がする。おちんちんの袋だって、初めてこの家に来た時と比べると、ツルツル感が増してきた感じがしない?」
「いつも外界の空気に晒して、いろんな人に見られ、触られているからね。見られていると肌だって綺麗になるものなのよ」
「ふうん、そうなんだ。でも、この子ぐらい沢山の人におちんちんを見られたり触られたりしている中学一年生の男の子も珍しいんじゃないかな。これからも、いつも丸出しにしとこうか、男の子らしく」
「しようがない子ね。でも、裸のままバスに乗せるのは、やめて欲しかったな。お前も難しい時期でストレスが多いだろうから、居候の男の子を苛めたり、性的なことに関する好奇心を満たす道具に使ったりするのは、仕方がないと思っている。でも、素っ裸のままバスに乗せたのは、やり過ぎよ。私の仕事にも影響が出てくるじゃないの」
おば様によると、僕が全裸でバスに乗せられた件は、知り合いからの連絡で知ったらしい。たまたまおば様の知り合いがバスに同乗していて、ショッピングセンターからおば様に電話をしたと言う。その人は、「Y美ちゃんにそっくりな子だなと思ったけど、今思うと間違いなくそうよ。バスに丸裸の男の子を連れて乗ってきたので驚いたわ。私、竹竿で男の子のおちんちんを突いて遊んじゃった」と、面白おかしく付け加えたらしい。僕はすぐに、買い物袋から細長い竹竿を出していた銀縁眼鏡の女の人が頭に浮かんだ。あの女の人は妙に物言いたげな視線を僕の体に這わせ、竹竿でおちんちんを突いた。バスから降りる時には僕のお尻を平手打ちした。終始無言だった。
とにかく汚れた体を綺麗にしなくてはならないということで、僕はお風呂に入れられた。久しぶりのお風呂だった。おば様がY美に僕の体を洗うように言いつけたけど、Y美は塾の時間だからとこれを断り、さっさと出掛けてしまった。それで、おば様が僕の体を洗ってくれることになった。じっくりと時間をかけてごしごし洗っても、なかなか汚れがとれないようで、おば様は「酷い汚れね。土や泥が肌に浸みついているわよ」とこぼした。一通り洗い終えると、湯船にできるだけ長く浸かるように言いつけてから浴室を出た。薔薇の香りがするお風呂だった。
湯から上がると、おば様が真新しいタオルで僕の体を拭いてくれた。太腿の内側や腕、背中にある擦り傷には薬を丁寧に塗ってくれた。数日に渡って女の人たちに監禁されて苛められた僕におば様が同情して特別に優しくしてくれているのかと思うと、涙が出そうになった。もしかすると服を着させてくれるかもしれない。少なくともパンツは穿かせてもらえるだろう。もういい加減服を着たかったし、これ以上、全裸でいたくなかった。しかし、おば様はシャツやズボンはおろか、パンツ一枚すらなかなか出してくれなかった。
この家の敷地内では、僕は白いブリーフのパンツ一枚しか身に着けることが許されていない。それは、おば様によると、僕がおば様に無償で生活の面倒を見てもらっていること、僕だけでなく僕の母親までもがおば様に仕事をあてがってもらって生活していること、これらの恩義を一時も忘れないようにさせるためだった。学校から帰ってきたら、僕はいつでも家に上がる前に洋服を脱いでパンツ一枚にならなければならず、翌日、学校に行くぎりぎりの時間まで服を着させてもらえないのだった。
夏休みに入った今、僕はいつ着衣を認められるのか、全く不明だった。ずっと女の人たちに裸のまま苛められてきたことを思って、おば様が特別に服を着てもよいと言ってくれるかもしれない。そんな期待が先走って、つい「何か着る物が欲しいです」と言ってしまった僕に、おば様は先程とは打って変わった険しい表情を向けた。
「パンツは、僕のパンツはどこですか?」
「パンツはY美が管理してるから私は知らない。ただね、私思うんだけど」
そこまで言うと、おば様は僕の一糸まとわぬ体をじろじろと眺めた。僕は、これまで日常的におちんちんを見られてきた。にもかかわらず、両手が自由な時はなるべく人におちんちんを見られないようにしている。この時も僕はおちんちんをしっかりと手で隠していた。僕の恥ずかしがる様子を見て、おば様の口元が緩んだ。
「しばらくパンツも没収しようかな。素っ裸でいなさいよ」
脱衣所の戸を開けると、おば様は僕を廊下に押し出し、生まれたままの姿でいる僕に窓拭きや雑巾掛けをさせるのだった。
こうして、僕のパンツすら穿かせてもらえない素っ裸の生活が始まった。この家に来て、パンツ一丁になって過ごすことを命じられた当時の恥ずかしさが蘇り、あの時の女の人たちの視線が、今度はパンツすら取られた自分の体に再びまとわりつく。常時全裸でいる僕は、庭に設置されたトイレ小屋で用を足す時と言い付けられたことを果たす時以外は、家から一歩も外に出ることがなかった。家の中でも僕には制約があり、基本的に椅子に座ることは許されなかった。また、Y美とおば様から何か言い付けられるまでは、待機場所である居間のマットレスの上にいることが義務付けられた。
おば様は自宅で仕事をすることも少なくなかった。居間の食卓に書類の束を積み、電卓を叩いては書類に数字を打ち込んだり、原稿の校正をしたりする。僕はおば様のためにコーヒーを淹れ、茶菓子を出した。頼まれると、おば様の肩や首回りを揉んだ。持に用事がない時は、おば様の傍らで正座をさせられたり、起立させられたりした。食卓の下のおば様の足の指を舐めさせられることもあった。そういう時は、大抵おば様の欲望がエスカレートし、昼間から寝室に移動した。僕に口を使ってパンツを下ろさせる。口でブラジャーを外させ、揉み、舐めさせる。仰向けに寝かせた僕の顔におば様が股間を押し付け、腰を前後に激しく揺する。細やかな奉仕の強要が終わると、疲れて眠ってしまう。普段、マットレスの上で毛布もなしに寝る僕にとって、掛け布団付きのふかふかのベッドに身を横たえることのできる貴重な機会だった。
Y美が外出し、おば様が仕事に出掛ける。こんな時こそ衣類を探し出して普通の人間らしく服を着る絶好のチャンスなのだけど、Y美もおば様も僕の考えは読んでいるのか、最後に残った一人が必ず僕に勝手な真似はさせないようにしてから家を出るのだった。おば様の場合は、まず僕を家の外に締め出し、外からしか鍵の掛けられないトイレ小屋に僕を監禁してから出掛ける。Y美はもっと酷くて、僕の手足を縛って足の縄尻と背中に回した腕の縄尻を結んで居間のマットに放置したり、鴨居と柱に縄をかけて手足を存分に広げた形に拘束して、家を出る。夜になって帰宅したおば様が拘束を解いてくれるまで、僕はずっと不自由な格好で過ごした。尿意に苦しむことも度々だった。
両手足を縛られて、口にガムテープを貼られた状態で暗い押入れに閉じ込められたこともあった。その時は、おば様も僕の居場所に気づかず、何故かろくに探そうとしないまま長電話を始め、暗闇の中で尿意に悶える僕にどうでもよいような世間話と笑い声を延々と聞かせた。やっと夜遅くに帰ってきたY美が襖を開けた。膀胱が膨らんで走れない。緊急事態でも家の中のトイレは女性専用だから使用厳禁だと釘を刺され、汲み取り式和式便所に向かうべく、縁側から庭に出たのだけれど、先回りしていたY美に腕を取られ、縁側から玄関まで引き連れられた。玄関先では、おば様がF田さんのお母さんと立ち話の最中だった。幸ちゃんと雪ちゃんもいた。
「お前の衣類をわざわざ届けに来てくれたんだよ。お礼を言いなさいよ」
衣類の入った紙袋を僕に示して、Y美が命令する。夏休み前の最後の学校からの帰り道、僕は南川沿いの遊歩道でY美に着ている物を全て脱ぐように強制された。小学生の幸ちゃんと雪ちゃんがじっと見つめる中で一枚一枚脱ぎ、最後のパンツは、二人の姉妹の手で脱がされた。Y美に羽交い絞めにされて抵抗できない僕のパンツのゴムに手をかけ、ゆっくりと引き下げられたのだった。僕はおちんちんを手で隠しながら、姉妹の方を見ずに頭を下げてお礼を述べた。限界に近い尿意に膝ががくがく震える。
「やだ。チャコ兄ちゃん、また裸にされてるんだね」
雪ちゃんがあどけない顔をして、僕を指さす。
「違うのよ、雪ちゃん。チャコはね、また裸にされた訳じゃないの。あれからずっと裸のままなの」
Y美が優しく訂正すると、幸ちゃんが絶句した。
「え、私たちの前で裸にされたあの日からずっと?」
「そうよ。あれからずっと裸んぼのままなの。もう十日以上、パンツ一枚穿かせてもらえないのよ」
Y美が僕のお尻をぴしゃりと叩いて、にっこりと笑った。すぐに僕のおちんちんを隠している手を取って背中に回す。F田さんのお母さんまでおば様との話を中断してこちらを見ている。Y美が露わになったおちんちんの皮を引っ張り、太腿に挟ませる。
「どうしたの? 足が震えているみたいだけど」
正午前から一度もトイレに行かせてもらっていない僕の苦しみに気づかぬ振りをして、Y美が不思議そうに僕に問いかける。と、Y美が腰を落として、下腹部に手のひらを押し当て、ぎゅっと押した。
「やめて、やめてください」
最後までに言い終わらぬうちに生暖かい液体が太腿の内側を濡らした。一度、おしっこをし出すと、もう止めることができない。
「いやだ。チャコ兄ちゃん、おしっこ漏らしてる」
雪ちゃんが声を張り上げる。F田さんのお母さんも軽蔑の眼差しでおしっこを垂らし続ける僕を睨んでいる。我慢に我慢を重ねたおしっこはなかなか終わりそうにない。
「ね、こんな風に粗相をするから、パンツも穿かせられないのよ」
Y美が困ったような顔をすると、F田さんのお母さんが大きく頷いた。幸ちゃんが僕の足元に出来た水溜りの大きさを指摘する。おしっこのせいで僕の両足を置く地面がぐちゃぐちゃになっていた。
僕を全裸のまま公共のバスに乗せたことで、たっぷりとおば様に叱られたY美は、さすがに懲りたのか、しばらく僕を外に連れ出すことを控えるようになったけれども、僕に対する苛めは、このように相変わらずだった。Y美とおば様が夕食を終えてくつろいでいる時など、僕の体が柔軟だからと言って、関節をいっぱいに広げる姿勢を強要することがあった。例えば、足を目いっぱい広げてから上体をフローリングの床に付ける。その状態でお尻を上げる。または、僕を床に仰向けに寝かせてから、広げた両足を持ち上げ、自分のお臍が舐められるほどに腰を曲げさせる。恥ずかしいのは、こういう姿勢を保った状態でおちんちんを扱かれることだった。
でも、それにも増してY美が残酷になるのは、夜の呼び出しの時だった。寝る準備を整え、あてがわれた部屋に入る。この部屋にはマットレスが一枚敷いてあるだけで、他には何もない。窓にはカーテンもない。それでも、窓から差し込む月明かりの中、マットレスの上で横になって体を丸めていると、心が落ち着いてくる。ここで生活するようになってから、この場所以外では滅多に感じることのできない安らぎを感じて、昼間に受けた性的ないじめとそれに伴う激しい羞恥の念を完全に忘れるというか、意識の遠いところに追いやることができるのだけど、その平安を突然打ち破るのがドアのノックだった。これはY美の呼び出しの合図であり、ノックがしたら僕は一分以内にY美の部屋の前で正座して待たなければならない。
夏だから寒くないのに、廊下に正座すると、ひんやりとした空気がどこからともなく流れて、全身の肌を冷たく撫でるように過ぎるので、自分が改めて素っ裸であることを意識させられるとともに、これから受ける仕打ちを思って身震いしてしまう。Y美がドアを開けると、「お待たせしました」と言って頭を下げる。Y美がいつドアを開けるかは、その時のY美の気分次第だった。一分ジャストで開けることもあるし、二十分くらいドアの前に僕を放置することもある。とにかく、Y美がドアを開けた時に僕が正座して待機していないと、お仕置きを受けることになる。
どんな時に呼び出しを受けるかは、全く分からない。Y美の「入りなさい」の一言でおずおずと部屋に入り、再び正座する。机で雑誌を広げていたY美の椅子がくるりと僕の方へ回って、組んだ足の先が僕の目の前でちらちらと動く。
「立って」
細長くて白い足が正座する僕の額を小突く。
アイドル歌手の歌に合わせて踊らされることがある。僕はアイドルの歌も踊りもほとんど知らないので、全てはY美に教えられる通りにやる。踊っている最中、Y美がおちんちんに手を伸ばすことがあった。それでも中断することは許されない。気持ち良くなってしまっても、何事もなかったかのように踊り続けなければ、Y美にやり直しを命じられる。
僕がなかなか振りつけを覚えなかったり、うまくできなかったりすると、Y美は僕に仰向けに寝るように命じた。お仕置きをするためだ。僕のお腹にY美が足を乗せ、体重をかける。腹筋に力を入れていればなんとか凌げるけれど、Y美は僕が力を抜いた瞬間を計ってぐっと足の裏をお腹に落とす。これを何度も繰り返された。足でおちんちんをいじられても、じっとしていなくてはならない。Y美は、僕を射精寸前まで追い詰めると足を放して、再びお腹の上に落とす。
全てはY美の気分次第だった。一通り踊れるようになると、もうY美は僕の踊りを面白がらなくなった。Y美に満足してもらおうとして羞恥も忘れて必死に踊る素っ裸の僕に、別の苛めが待っていた。いきなり両手両足を縛られ、二階のベランダに面した部屋の鴨居に縄尻を結ばれる。Y美は、身動きできない僕の体を洗濯ばさみで責めるのだった。二十個ほど用意されたそれを一つずつ、僕の体のあらゆる部分に付けていく。頬、耳たぶ、口、舌から順に下がってきて、きりきりと体の部位を個別に緊縛するように責める。乳首に付けられた時は痛みに悲鳴を上げてしまい、慌てたY美によって急いでタオルを噛まされた。おちんちんの袋、おちんちんの皮など、皮の薄い部分も容赦なかった。痛くて、呻き声を漏らしながらずっと悶え続ける。猿轡の間から必死に声を出して、「そこだけは駄目、許して」と訴えるものの、まるで通じることなく、とうとうY美の手によっておちんちんに洗濯ばさみが付けられた。全て付け終わると、Y美は、頬から足の指まで、三十もの洗濯ばさみが体のあらゆる部分にぎっしり付けられた僕の惨めな素っ裸を満足したように眺め回した。
朝、また眠いのにドアが開いてY美に叩き起こされる。生理的な現象によって、性的な欲望とはなんの関係もなくおちんちんが硬くなっているのだけれど、Y美はそれを見るのが目的で起こしに来ているような節があった。何せいつもおちんちんを丸出しの素っ裸だから、朝の生理現象を隠すことができない。髪の毛を引っ張られて立たされる。反射的におちんちんに手を当ててしまう。しかし、すぐにその手をY美に後ろに回され、腰を引いて階段を降りる。寝室から出てきたおば様の前で、Y美が僕の大きくなったおちんちんを根元から摘まんで揺すり、おはようの挨拶をする。
全裸生活で最も辛いのは来客時だった。おば様は、近所の人が採れたての野菜や回覧板を届けに来た時は、僕に外へ出て門扉を開けるように命じた。愚図愚図していると、「早くしなさい」と一喝される。服を着ている女の人たち、Y美か、或いはおば様が出ればいいのに、なんでわざわざこの家で唯一着衣を許されていない裸の僕が出なければいけないのか、それが不服で、ついついテレビを見ているY美へ恨み顔を向けてしまうのだけれど、目が合うと、Y美はびっくりする程優しく微笑んで、行ってらっしゃいと言うように軽く手を振ってくれたりする。
おちんちんをしっかり手で隠して、恐る恐る玄関のドアを開ける。門扉の向こうで割烹着姿の奥さんが待っていた。胡瓜のどっさり入った袋を渡しながら、「いつも裸で御苦労様」と変な挨拶をして、僕の体に無遠慮な視線を這わせる。近所の特定の人たちの間では、僕がここ何日か素っ裸で生活させられていることが知れ渡っていた。来訪者が若い女の人や男の人の場合は、恥ずかしがる僕に遠慮して、ちらりと視線を向けるだけですぐに帰ってくれることが多いけれど、中年以上の女の人の場合は、なんだかんだと僕を引き留めて、おちんちんを見ようとすることが多い。
割烹着姿の奥さんは、まだ中年の域には達していないのに、僕の体をじろじろ見たり、いじったりすることにかけては、異常な興味を示した。一刻も早く家の中に入りたい僕に奥さんはいろいろと話し掛けてくる。
奥さんの話に適当に相槌を打ちながら、受け取った胡瓜の入った袋でおちんちんを隠していると、Y美が来て奥さんに明るい声で挨拶をし、僕の手から胡瓜を袋ごともぎ取る。一瞬丸見えになったおちんちんを慌てて手で隠すのだけど、すぐにY美はその手を背中に回して、割烹着姿の奥さんに正面を向けた。
「やだ。まだ子供のおちんちんね。毛も生えてないし皮かむりだし。ほんとにこんなおちんちんでも精液出すの?」
恥ずかしさで体がかっと熱くなる。奥さんの低い鼻がおちんちんに接触しそうだった。そんなにも顔を近づけなくてもよいのに、と思いながら、もじもじしていると、Y美にお尻を抓られた。じっとしていなさい、という意味だ。
「よく分からないです。男の子って、こんなちっちゃいおちんちんでも出すんですか?」
「あら、あなた知らないの?」
「知らないですよ」
これまで何度もY美に強制的に射精させられてきた僕にとって、このY美の空っとぼけた言い方は、かなり憎らしく感じられた。Y美は、僕が少しでも彼女に対してマイナスの感情を抱いてしまうと、電光石火でそれを感じ取った。慌ててY美への憎しみを忘れることにしたけれど、時すでに遅く、結局僕は奥さんの見ている前でオナニーをさせられることになった。「ほんとに出るかどうか、とりあえずやってみなよ」と、無邪気を装って僕に罰を与えるのだった。
真っ裸のままの生活を強いられるようになってからの僕は、必ずしも毎日射精させられるとは限らなかった。それでもY美やおば様の見ていないところで精液を出すことはなく、いつも僕の射精は見られ、管理されていた。この日は二日間ほど出していなかったので、Y美は僕がすぐに射精するだろうと思っていたようだった。ところが、おちんちんは、なかなか大きくならなかった。奥さんがじっと見つめるので、羞恥と緊張が一緒くたになって、おちんちんをうまく扱くことができない。
「何やってんのよ。真面目にやりなさいよ」
苛立ったY美が膝頭で僕のお尻を蹴り上げた。つんのめって、奥さんに正面からぶつかる。外見からは今一つ分からなかった豊かな胸に顔を埋めてしまった僕は、女の人特有の柔らかい体を味わう間もなく、頬をしたたか平手打ちされた。
「生意気な真似しないで。いつもおちんちん丸出しのくせに」
顔面蒼白になった奥さんが震える声で僕を責めた。振り下ろした奥さんの手の先がぴくぴくと震えている。体に触れられたのが相当なショックだったらしい。大きく潤んだ瞳から涙がこぼれるかと思ったら、いきなり僕の肩をどんと押した。すごい力で地面に簡単に倒されてしまった僕の腰や太腿を奥さんが容赦なく蹴りまくる。顔を踏まれ、敷石と敷石の間の土が口に入ってくる。痛みに悶えながら、土を吐き出して許しを乞う。と、奥さんはいきなり向きを変えて走り去ってしまった。
翌日の午後、また奥さんが訪ねて来た。食卓で書類をめくりながら電卓を叩いているおば様が僕に応対するように指示する。玄関のドアを開ける直前、Y美に呼びとめられた。土間のサンダルを引っ掛けて、僕に近づく。Y美の半袖のシャツが僕の剥き出しの肌に触れるくらい、ぴったりと体を寄せて、僕の耳元に息を吹きかける。
「そんなに慌てて出なくてもいいのよ」
こう言って、おちんちんを袋ごと撫ぜ回し始めた。突然のことに声も出ない僕は裸の背中をぴったりとドアに貼り付けて、Y美の為すがままになった。三日間精液を出していなかったので、すぐにおちんちんが膨らむ。五本の指が一本一本独立して硬くなったおちんちんを軽く叩くように撫で、一回ごとに叩く位置を微妙にずらす。おちんちんの袋からじんじんと快楽の波が伝わってきて、放射状に体に広がってゆく。しゃがみ込んで、おちんちんの我知らず射精を求める様子をじっと観察していたY美が、「こんの辺でいいかな」と呟いて、あっさりと手をおちんちんから離した。呼吸の乱れた僕を横目で見ながらドアを開け、「あんまり待たせるもんじゃないよ」と言って、僕を外に押し出した。
限界まで大きく張ったおちんちんは、射精でもしない限り、すぐには元通りにならない。門扉の向こうでは、奥さんか昨日とは打って変わった晴れやかな笑顔で手を振っている。素っ裸で訪問客の相手をさせられる恥かしさはなかなか慣れるものではなかったけれど、それにしても今回の羞恥は、いつもの比ではない。勃起状態のおちんちんを手で押え、なんとかして隠そうとして、腰を横に捻りながら、敷石へ素足を踏み出す。
「昨日はごめんなさい。私、いきなり抱きつかれたりすると、過去の厭なこと思い出しちゃって、どうしょうもなくなるの。君のこと、ぶったり蹴ったりしてごめんなさい。裸んぼなのに、力いっぱい蹴っちゃったわ。痛かったでしょ?」
門扉を閉める僕の背中に向かって奥さんがまくし立てた。振り返ると、奥さんが僕の目の前に大きな紙袋を差し出した。昨日のお詫びだと言う。中には1リットルサイズの瓶が三本入っていた。
「お中元で貰ったんだけど、うちはジュースとかあまり飲まないから」
おちんちんを隠すのにぴったりの大きさの紙袋だった。お礼もそこそこにすぐに受け取ろうとすると、奥さんは不意に紙袋を引っ込めて、黄色い声を上げた。
「やだ。どうしたのよ、そのおちんちん。昨日と全然大きさが違うじゃないの」
しまった、気づかれてしまった、という苦い思いで腰を捻り、おちんちんに手を当てたけれど、Y美にいじられて大きくなったそれは、とても隠し覆せるものではない。しどろもどろになってあたふたしていると、玄関からY美が出てきた。何食わぬ顔をして奥さんに挨拶をし、僕のおちんちんに初めて気づいたような驚きの声を上げると、おちんちんを硬くしたまま応対する僕の非礼を詰った。
昨日オナニーを見てもらえなかったから欲求不満になっているみたいなの、とY美が僕のお尻をぴしゃりと叩いて、奥さんに説明した。奥さんは瓶ジュースの入った紙袋をY美に渡しながら、上品に笑った。
こうして僕は再び奥さんの前でオナニーをさせられることになった。今度は初めから勃起状態だから扱く手数がかからなくていいわね、とY美が冷やかす。僕としても、どうせこの強制オナニーから逃れられないのであれば、とっとと出して終わらせたかった。ところが不思議なことに、自分でおちんちんを扱いているところを改めて奥さんにじろじろと見つめられると、緊張が走り、思うように手が動かなくなった。
門の外を人が通り過ぎる。花の盛りがとうに過ぎて、虫歯が進行し尽くしてぼろぼろになったような色のアジサイの側に奥さんが立つので、僕の恥ずかしい姿が外から丸見えになった。通りかかった人に奥さんの知り合いがいたらしく、門越しにニ三の言葉を交わした。Y美が「どうぞお入りください」と声を掛け、奥さんが門扉を開けると、奥さんよりも年上と思われる女の人たちが賑やかに話をしながらぞろぞろと入ってきた。婦人会の人たちだ、とY美が言い、おば様を呼びに向かった。その間、僕は一人、女の人たちの間に取り残されることになった。アジサイの後ろに回って隠れようとしたけれど、すぐに腕を取られ、婦人会の人たちから「素っ裸で何をしているのか」「洋服はどうしたのか」と質問を受けた。手でおちんちんを隠し、もう片方の手で胸の辺りを覆い、やや前屈みになって腰を捻るなどして、なるべく裸を見られないようにしながら、「なんでもないんです、あんまり見ないでください」と質問をはぐらかすのだけれど、婦人会の人たちの無遠慮な視線が至近距離から体のあちこちに刺さった。
男の子がオナニーするところをみんなで見てあげるところなのよ、と奥さんが楽しくて仕方がないような声で説明した。婦人会の人たちは一斉に笑い、自分たちも立ち会いたいものだと言った。Y美がおば様を連れて出てきた。話が済むと、公開オナニーの刑が再開された。
「ギャラリーが増えて良かったじゃないの。頑張ってね」
Y美が囁き、僕のお尻を撫で回していた手を股間に伸ばした。少し萎えかかっていたおちんちんに再び電流のような快楽の波がツーンと押し寄せてきた。
いろんなことを言う声がいやでも耳に入ってくる。一所懸命おちんちんを扱いている、と僕のことを評したかと思うと、男の子はいつもこんな風にオナニーをするのか、と感嘆まじりの質問をしたり、すごい、を連発したりする。僕の集中力が途切れる。ふと顔を上げると、すぐ目の前で奥さんや婦人会の人たちが僕のおちんちんを扱く様をじっと見つめている。皆、意外なほど真面目な表情だった。
一度家に引っ込んだおば様がもう一度玄関から出てきて、みんなに見つめられながら強制オナニーをさせられている僕に冷たい視線を投げかけた。Y美を呼び、そろそろ塾の時間だと告げる。と、門扉が開いて、白いソフト帽を被った女の人が入ってきた。婦人会の人たちよりは若く、奥さんと同じくらいの年代だった。ごてごてとビーンズで飾り立てた大きな手提げ鞄を肘の窪んだところに提げている。女の人たちの前でオナニーを強制されているという異常な状況の只中にいる素っ裸の僕にも、まるで普通に道ですれ違った時のように会釈すると、おば様のところへ真っすぐに向かった。
おば様がすっと前へ出て、仕事の時の声を出した。
「あら、ごめんなさいね。こちらからご挨拶に伺おうと思っておりましたのに」
「いいんですよ。ちょっとお宅を覗いたら、面白いことやられている最中だったんで、丁度良い機会だと思いまして」
女の人は振り返り、もう一度僕の方を見てから、にっこりと笑った。
帽子を取ると、パーマした髪が露わになった。そこで僕は初めてこの女の人が高齢者の介護をなりわいとするヘルパーのIさんだと気づいた。みなみ川教という、地元で興った新興宗教の関係者であり、信者に高齢者が多いことから、信者たちの共同宿舎でヘルパーの仕事をしながら、信者たちの言う「命を生き生きとさせる活動」も行っている。
おば様とIさんが立ち話を始めると、すぐにY美も加わった。その間、僕の強制オナニーショーは中断になった。庭の隅に行って一糸まとわぬ体を隠そうとした僕は、奥さんと婦人会の人たちに体を掴まれ、そのまま敷石の上に立ち続けるように命じられた。とても逆らえない状況だった。おちんちんを隠す僕の手の甲を奥さんがぴしゃりと叩いた。
「気をつけ」
恥ずかしくてろくに目を合わせようとしない僕の頬を掴んで、奥さんが睨みつける。僕はこの奥さんから受けた昨日の暴行を思い出し、膝を震わせながら指示に従った。体の側面に両手を添えて、指先を伸ばす。
奥さんと婦人会の人たちは、中腰になっておちんちんに顔を近づけた。そのうち、奥さんが手を伸ばし、急速に元に大きさに戻りつつあるおちんちんを上に引っ張って、その裏側を白日に晒した。婦人会の一人がおちんちんの袋を揉み、柔らかくて触り心地が良いことを告げる。すると、争うように次から次へと手がおちんちんの袋を揉みしだいた。痛くなって思わず腰を屈め、手で払おうとしたら奥さんに頭髪を掴まれ、揺さぶられた。お尻を抓られて痛みに呻く僕に「少し我慢してね」と明るい声で諭す。
服を着た女の人たちの前で一人だけ素っ裸のまま射精を強制されている。あまりに恥ずかしくて、ろくに前を見ることができなかった僕の視界に、ふとF田さんちの幸ちゃんと雪ちゃんの姉妹が混じっていた。彼女たちの母親であるF田さんも婦人会の一人と親しげに話をしている。
「チャコ兄ちゃん、また面白いことさせられてるんだね」
僕よりも背が高い小学六年生の幸ちゃんが大人びた口調で言った。軽蔑の眼差しで敷石の上に裸足で立つ僕の一糸まとわぬ姿をじろじろと眺める。隣の小学四年生の妹である雪ちゃんは、あとげなく笑っている。F田さんたちは、習字教室の申し込みをしに行った帰りで、たまたまこの家の前を通りかかったところ、庭先に知り合いの婦人会の人がいて、中に入れてくれたと言う。雪ちゃんは、筆や硯の入った真新しいピンクの鞄を手にぶら下げていた。
後ろから肩をぽんぽんと叩かれ、振り向くとヘルパーのIさんは僕の前に移動した。紺のミニスカートがぴったり膝に貼り付いている。相変わらずにこにこしながら、僕にくっ付くようにして立って、おちんちんに手を伸ばした。
「あなたの精液を採取することになったの。おば様の許可はもらったわ」
プラスチックの丸い容器をちらつかせながら、Iさんが僕の耳元で囁いた。ゆっくりとおちんちんを撫で、扱く。Y美とおば様がそばに来た。Y美がおちんちんを弄られて恥ずかしがっている僕に気をつけの姿勢を取るように命じる。
婦人会の人たちに隠れて見えない門扉の方から、若い女の人たちの声高な話し声が聞こえた。いつの間にか婦人会の人数が増えている。友達が友達を呼び、次から次へと入ってきたようだった。おば様がそれを容認し、知り合いが通りかかったら遠慮なく誘ってほしいと奥さんに伝えた時は、おば様自身もまさかこんなに増えるとは思っていなかったに違いない。最初四人だった婦人会の人たちは、今では十人以上だった。おば様は、自宅の庭先にたくさんの人が集まっているのを珍しそうに眺めていた。それぞれにお喋りする婦人会の人たちがさっと二手に分かれた。その空隙を通って前へ出てきたのは、雪ちゃんと同い年くらいの小学生の女の子たちだった。皆、手に雪ちゃんが持っているような習字道具の入った色とりどりの鞄を提げている。手招きする雪ちゃんの方へぞろぞろと寄って来てひとしきり言葉を交わした後、素っ裸のまま立たされ、Iさんにおちんちんを扱かれている僕に視線を向ける。彼女たちは一瞬ぎょっとしたようだったけれど、雪ちゃんの説明を聞くと、すぐに雪ちゃんの落ち着き払って楽しそうに見学する態度に倣って、うっすらと微笑みのようなものを浮かべるのだった。
女の子たちは、雪ちゃんと一緒に習字教室に通うことになった友達とのことだった。今日初めて口をきいた人もいるとは思われない程、親密な間柄を忍ばせる言葉がぽんぽんと彼女たちの中を飛び交っている。雪ちゃんと同学年であれば僕よりも三つ年下だけれど、背丈は僕と変わらず、中には僕よりも高い子もいた。彼女たちにしてみれば、自分たちと年の変わらない男の子が素っ裸でお仕置きされているのは、滅多にお目にかかれない、楽しい見せ物なのだろう。
Iさんの愛撫、扱きは、丹念にじわじわと刺激を与え続ける。僕の耳元や首筋に息を吹きかけながら、乳首やお尻も撫でる。おちんちんの袋を揉むこともある。その間、もう片方の手はおちんちんを離れず、柔らかい生き物のようにまつわる。硬くなってこれ以上大きくならないところまで勃起させられたおちんちんは、しかし射精寸前まで追い込まれながら、突然堰き止められ、ぬるぬるした亀頭を膨張させたまま、行き場を失って透明な壁にむなしく頭を打ち付ける。精液を採取するのならとっとと採取して、一刻も早く僕をこの羞恥地獄から解放して欲しかったけれど、Iさんは何か思惑があるらしく、だらだらと愛撫を長引かせた。この単調な責めに飽きて、一人二人と帰ってくれれば、と淡い願いを抱いたものの、見物する人たちは減るどころか、増える一方だった。
女の子だけでなく、男の子も数人混じっていた。雪ちゃんの習字仲間の関係で誘われたようだった。服を着た女の人に素っ裸で性的にいたぶられている僕を見て、男の子たちも最初は恐怖に似た感情を覚えたかのように顔を強張らせたけれど、女の子たちの手前、あからさまに怖がろうものなら女の人たちは敏感にそれを察して、自分たちもまた僕のような目に遭わせるとも限らないから細心の注意が必要と判断したのか、女の子たちに混じって、まさに女の子の立場から、恥ずかしい試練に耐える僕を冷やかしたり、笑ったりする。女の人たちに苛められている姿を同性に見られるのは、例え相手が年下の小学生であっても、耐え難い辛さだった。屈辱感と無力感が嵐になって頭の中を駆け巡る。男性は目の前の小学生だけでなかった。郵便局の配達員である若い男の人も婦人会の女の人たちに混じって、呆けたような表情でこちらを見ている。婦人会の人の知り合いとおぼしきおじさんは、女の人たちのお喋りに耳を傾け、ふんふんと頷きながらも、視線は僕の一糸まとわぬ体にじっと注がれている。険しい、軽蔑しきったような冷たい目だった。
今まで僕の横にいて、Iさんに扱かれて悶える僕を黙って見つめていたY美が集まった人たちをかき分けて門扉に向かった。押し寄せる理不尽な快楽に揉まれて、もういっそのこと現実のことは全て忘れたいと願っている僕に冷や水を浴びせたのは、聞き覚えのある笑い声だった。はっとして目を開けると、そこに同じクラスの女子、仲好し三人組がいた。いつも三人で行動を共にするから、クラスの人から三人組と呼ばれている。Y美とは付き合いがない筈なのに、Y美が学習塾へ通うようになってから、少しずつ交友するようになったようで、塾へ一緒に行く約束をしたのにY美がなかなか待ち合わせ場所に来ないから誘いに来たとのことだった。
三人組は、真っ裸で皆の前に立たされている僕をじろじろと見つめながら、Y美にこの異常な事態の説明を求めた。僕は、彼女たちに裸を見られるのは初めてだったから、恥ずかしくて急いでおちんちんを手で隠した。その手を取って背中にねじ曲げながら、Y美が僕の公開オナニーのことを話す。三人がキャッキャッと笑いながら拍手をすると、拍手がこの場に居合わせた人たちに連鎖的に広がり、僕はステージの上に立たされているような気分になった。
同級生の男子も四人いた。同じ学習塾に通う間柄なのか、三人組のそばに来て、僕のあられもない姿を軽蔑の眼差しで見つめながら、彼女たちとひそひそ話に興じている。これまで数えきれないくらいの多くの人たちに裸を見られ、おちんちんを観察されてきたけれど、そのほとんどは通りすがりで顔も名前も知らなかった。でも、今僕の前にいるのは、単に僕が知っているだけではなく、僕が普通に服を着て、普通の人としての体面を保っている時に交流してきた人たちだ。当然着衣を許されぬ裸の奴隷状態に置かれた僕と対面するのは初めてであり、僕の方でも、服を着た僕しか知らない筈のこの人たちに素っ裸を晒しているという意識がいやでも上がってきて、至近距離でおちんちんを観察される精神的な苦痛がY美とIさんにしっかり押さえ込まれた裸身をいたずらに悶えさせる。
「恥ずかしいわよね。こんなに多くの人の前でオナニーさせられるんだもの。同じクラスの子もいるんでしょ? 彼女たち、可愛いわね。食い入るように見つめて、顔を真っ赤にしてる。男の子は、ぽかんとしてて、お馬鹿な動物みたいね。小学生の女の子たちの方がよっぽどしっかりした顔をして見ているじゃないの」
硬くなったおちんちんに五本の指を絡ませ、小刻みに振動させ、Iさんが言った。羞恥の念とそれとは明らかに異質なところから生まれた性的な快楽、この二つが合流して下腹部から体の隅々まで広がる快楽の流れの幅を広げ、全身をかっと熱くさせる。剥き出しの肌という肌が汗でぬるぬるして、ほんのりと血色を浮かび上がらせる。最前列で見ていた三人組の一人が「きれいな体だよね」と感嘆したように漏らした時は、変に嬉しくて泣けそうになった。彼女たちによると、西に傾いた淡い日差しを受けて、僕の体は女の人のようにも、男の子のようにも見えるという。
「ここまでやれば充分でしょ。あとは自分でやりなさい」
背中に回されていた僕の手を取って、おちんちんに触れさせる。Iさんは僕の横にいて、おちんちんに自ら触れることをためらっている僕に鋭い視線を向けた。
「いやだ。許してください」
上ずった声で最後の哀訴を試みるも、あっさりと聞き捨てられる。おば様が僕の耳に口を寄せて、これだけ多くの人が集まったのに期待を裏切るような真似をしたらどうなるか想像できるかしら、これは社会的責任なの、と言った。この社会的責任を果たせなかった場合、当然のように社会的制裁が加えられる。それは僕だけでなく、男性ばかりの独身寮に住み込みで長時間労働を強いられている僕の母にも及ぶとのことだった。母は、おば様への借金を返済するため、休日も取らずに働かされている。僕が居候先でこのような激しい性的ないじめを受けていると知ったら、母のおば様に対する感情は百八十度変わるに違いない。実家を抵当に入れてもまだ足りない借金を肩代わりしてくれた上、仕事を斡旋してくれ、更には住み込みで働くために離れて暮らさざるを得なくなった僕の世話をしようと申し出てくれたおば様は、母にとって菩薩のような人だった。僕がおば様のところへ移る前夜、母は僕におば様やY美に逆らわないこと、彼女たちに嫌われないようにすることを口を酸っぱくして言い聞かせた。
僕がおちんちんを自ら扱き始めた時、見物する人たちからどよめきがが起こった。もう何を考えても無駄だった。すでに性的刺激がしっかり高められてあったので、すぐに射精の時が近づいた。黙って精液を出したら、また激しく叱られ、やり直しを命じられるから、僕はもうすぐ逝きそうであることを、喘ぐようにして知らせた。小学生の間からくすくす笑う声が聞こえた。三人組がおちんちんの膨らみを指して、すごいすごいと感心している。Iさんが丸い容器をおちんちんの前に差し出した。奥さんが目を輝かせ、両手を胸の前で組み合わせながら、
「すごいわ。男の子のオナニー、一度見たかったの」
と絶叫し、周りの人たちをどっと笑わせた。
勢いよく放出した白い液体をIさんは一滴もこぼさずに丸い容器で受け止めた。透明な容器の底に溜まった液体を下から眺めながらIさんがほくそ笑む。容器は三人組の手に渡された。生まれて初めて見る精液のようだった。指先で軽く触れ、ねばねばした感触を味わっている。Iさんが精液の採取に来たのだから絞れるだけ絞るつもりだと言うと、三人組は少し憐れむような目で僕を見た。日差しを受けてよりもむしろ自分の体温で熱くなった敷石を素足の裏で感じる。おちんちんをしっかり手で隠している僕は、まだ解放されそうもない空気を剥き出しの全身の肌で感じて、膝に力が入らない。
雪ちゃんとその友達たちにも精液を入れた容器が回った。僕は皆に背中を向け、頭の後ろで手を組まされた。Iさんによると、僕の精液にはパワーあり、幸福をもたらすのだそうだ。それはIさんの信じる宗教の中での特殊な考え、価値観であり、そういう価値観を持たない人にはなんの効果もない筈なのに、ここに集まった人たちは、幸福が得られるのであれば精液を強制的にでも採取することは正しいと考えるようになっていた。僕自身は当然のことながらこの精液採取がいやでいやでたまらず、ましてや皆の見ている前で射精させられるのは、どうしても慣れることのできない苛めにほかならないけれど、ここにいる人たちにとっては、僕のそういう気持ちは全く取るに足りない、なんら配慮に値しないものなのだった。Iさんが皆の見ている前で僕のお尻を打つ。細長い板がびしりとお尻に当たると、痛くて呻き声を漏らしてしまう。これでも加減しているとIさんは言った。
「すごい、真っ赤になってゆくね」
「白いお尻が赤くなったね」
雪ちゃんたちの無邪気な声が聞こえる。僕は恥ずかしさと悔しさで涙をこぼしそうになった。こうしてお尻を叩くと精液にいっそうのパワーが宿るのよ、とIさんが皆に聞こえるように言った。意味不明だった。それでも僕は逆らうことが許されていない。おば様にとってもIさんの行為は理解できないようだけど、とりあえず僕にそっと近づき、男の子として耐えるしかないこと、我慢することを耳元で囁くのだった。
二回目の精液採取は、Iさんの手で行われることになった。僕は見物人たちの方へ体の向きを変え、気をつけの姿勢を取らされた。恥ずかしがって腰を捻るだけでも、横にいるY美にお尻を抓られる。精液採取の実務で頭がいっぱいのIさんは、先の扱き方とはおのずから異なり、ひたすら一定の速度で扱き続けた。じらしや緩急はなかった。僕は程なくして二度目の射精をまたしても皆の見つめる中でさせられた。Iさんは二つ目の容器にそれを収めた。鞄から三つ目の容器を取り出す。
「さあ、もうちょっと頑張ろうか」
「いやです。もう許してください」
必死に訴える僕の頬が濡れているので、雪ちゃんの友達が「可哀想。泣いてるよ」と言った。無情に事を進めるIさんによって僕は四つん這いの姿勢を強制され、奥さんや婦人会の人たちにお尻の穴までじっくり観察されながら、お尻を再び何度も叩かれた。それが終わると精液採取が始まる。今度はY美に背後から羽交い絞めにされた。Iさんが高速で扱き始める。
精液の量が二回目と比べて著しく減少した。僕は、一糸まとわぬ裸のまま、集まった人たちの中に投げ込まれた。この子は出し惜しみをしている、罰を与えなければならない、とIさんが宣言した。すると、人々が憑かれたように僕の体に被さって来て押さえ付けた。何人もの手がおちんちんを代わる代わる扱く。乳首や首を撫でる。体じゅうで誰かの手が触れていない場所はないと思われた。お尻の穴まで広げられ、何か得体の知れない堅い物体を挿入された。僕があまり泣き叫ぶので紐の付いたボールを噛まされた。恐怖を感じながらも体は外的な刺激に反応を示し、おちんちんが硬くなる。女の人たちの歓声が耳をつんざいた。こうして四回目の射精が終わり、僕の精液が新たな容器に収められた。
皆は、地面に横たわって泣きじゃくる僕から一旦離れた。ふと見上げるとIさんが大きな手提げ鞄をごそごそ掻き回している。五つ目の容器を取り出し、僕を見て目を細めた。堪らなくなった僕は首を横に振って膝を立てると、中腰のまま家の中へ逃げようとした。しかし、すぐに捕まってしまった。僕は地面の上に仰向けに大の字で押さえ付けられた。Iさんがしゃがみ込み、「まだいけるでしょう。男の子なんだから頑張りなさいよ」と言って、ミニスカートの裾を揃えて膝を横にずらし、スカートの中が僕から見えないようにした。素っ裸の僕を寄ってたかって弄びながら、自分はスカートの中のパンツすら一瞬たりとも見せようとしない。
雪ちゃんとその習字仲間たちが習字道具を取り出した。硯に墨汁を入れ、筆を浸す。
「さあ、今度は君たちが射精させる番だからね」
Iさんが筆を握った小学生たちに優しく声を掛けた。
婦人会の人たちに四肢を大きく広げた状態で固定された僕は、「いやだ、やめて」と叫びながら必死に抵抗したけれど、全く空しかった。雪ちゃんをはじめ、同じ習字教室に通うことになった仲間たちが僕の裸身のあちこちに筆を走らせた。首から乳首、脇腹を墨を含んだ筆が撫でる。乳首の周りをぐるぐる回り、半径を狭めてゆき、最後に乳首が黒く染められる。おちんちんには墨を含んだ筆の他に硯に浸していない乾いた筆が併用され、おちんちんのぴくんという動きに応じて使い分けられる。開いたまま両足を持ち上げられた。女の子たちの筆がおちんちんの袋を裏側まで墨で塗り始めた。
おちんちんに毛が生えていないから塗ってあげようよ、と雪ちゃんが提案し、早速下腹部の辺りに筆を走らせる。墨で塗られて黒くなると、無毛のおちんちんに毛が生えたみたいだと言って、婦人会の人たちが笑った。だんだんと気持ちが良くなってくる。
Y美と仲好し三人組は塾へ行った。僕の射精ショーが楽しくて途中で抜けられず、最初の授業はさぼることになった。おば様にこっぴどく叱られ、Y美は「お前のせいだからね」と、皆の前でおちんちんを蹴ってから三人組ともども急いで家を出た。
四つん這いにされ、背中やお尻も筆で撫でられる。体じゅうが墨で黒くなる。最後は仰向けだった。硬くなったおちんちんを何本もの筆が撫でる。亀頭の敏感な部分に筆が触れるたびに僕は悲鳴を上げた。ほどなくして五回目の射精を迎えた。仰向けでは採取しづらいので、僕の脇の下に腕を入れた奥さんに無理矢理立たされた。Iさんは見事に容器で精液を受け止めた。
続けておられて何よりです。
今後も無理せずお続け下さい。
祭りや海水浴を控え、今後の進展を心待ちにしています。
今後も無理せずにマイペースにお書きください。
続きが楽しみです