思い出したくないことなど

成人向き。二十歳未満の閲覧禁止。家庭の事情でクラスメイトの女子の家に居候することになった僕の性的いじめ体験。

びしょ濡れのパンツ

2009-03-19 01:47:39 | 7.夏は恥辱の季節
 階段の途中で、再びパンツを脱がされ、一糸まとわぬ裸になった僕は、周囲の冷たい視線に射すくめられながら、抱えた段ボールでおちんちんを隠した。パンツの返却を求めたが、ヌケ子さんは首を横に振るばかりだった。
「パンツを穿いたって、どうせ又あの男の人に脱がされると思います。これ以上遅れると、私ひどく叱られてしまう。初めからパンツを脱いでいれば邪魔されないでしょ」
 なおも納得できないで愚図愚図していると、ヌケ子さんは、頬を膨らませてヒステリックな声を張り上げた。
「さんざん見られたくせに、今更恥ずかしがらないで。そんな小さなおちんちん、隠すほどでもないじゃない。男の子なんだから、きっぱり諦めなさい」
 そう言うと背中を向けて、速いペースで階段をのぼって行ってしまった。置いてけぼりにされた僕は、粘り付くような好奇の視線を振り払うには、前進するしかないのだと思い、そう実行した。抱えた段ボールをわずかに下げておちんちんを見られないようにしたが、お尻は隠しようがなかった。僕に同情的だった3人の若い女の人たちは、階段をのぼる僕の丸出しになったお尻を見て、先ほどとは打って変わった黄色い笑い声を浴びせた。恐ろしいのは、リュックの男の人が僕に付いて来たことだった。
「お前がパンツを穿いたら、いつでも脱がしてやる」
 低い声で僕を脅すと、男の人は、僕のお尻をぎゅっと抓った。この人のせいで僕は全裸で歩かされているのだと思うと、腹立たしい思いが頻りにした。でも、到底腕力で敵う相手ではないので、このようにお尻を抓られて痛い思いをしても、抵抗しないで、じっと我慢するしかない。
 前方からすれ違う人は、すれ違ってから振り返らない限り、僕が裸なのはともかく、パンツまで穿いていないとはすぐには気がつかない。問題は、後ろから追い越して来る人だった。駆け足でのぼってきた中年の女の人は、僕と肩を並べながら、「なんで素っ裸なのか」と、無遠慮に訊ねた。
 仕事だからとかなんとか適当に茶を濁すと、抓られているお尻を指さして、
「お尻を抓るというよりも開かされているから、お尻の穴まで丸見えよ」
 と、顔を赤らめながら教えて、急いで階段を駆け上がった。リュックの男は苦笑して、ようやくお尻から指を放してくれた。
 3階までたどり着くと、後は長い廊下があるばかりだった。ヌケ子さんは、どんどん先を進んでいる。この階の廊下には、中年の女性がたくさん行き来していた。ピアノを鳴らす音が聞こえた。
 弁当の入ったこの段ボールはそれほど重くないとはいえ、腰まで下げると腕への負荷が相当かかるので、廊下を歩く時はおちんちんを見られるのを覚悟したが、僕の背の低さが幸いして、人がよほど腰を屈めない限り、見られる心配はないことに気づいた。とはいえ、僕が真っ裸なのは一目瞭然なので、人々の視線が吸い寄せられるようにこの体に集まるのは、避け得ない。
 途中まで僕に付き添い、折々お尻を抓ったり、叩いたりしていたリュックの男の人が、彼の仲間たちに呼ばれ、「帰る時間か」と呟いて引き返した。ほっとして改めて前を向いた時、廊下の端で立ち話していた中年女性たちが凍りついたような笑顔で、僕を見ていた。わざわざ体を横向きに曲げて、段ボールの下を覗き込んでいる人も見受けられた。
 前方の少し離れたところからは、特に腰を屈めなくてもしっかり段ボールの下のおちんちんが見えてしまうも、予想外だった。開け放たれた教室のドアから溢れた太陽の光の中で、口に手を当てて驚いている中年女性の姿が見えた。
 僕が通りかかると皆静かになることも僕を苦しめた。そのまま会話を続けてくれたら、僕の存在を無視してくれたら、少しは気が楽になるのに。それでも、自分の同年代がいないだけ、まだましなのかもしれないなどと思いつつ、冷たい床を粛々と歩いた。周囲のクスクス笑いをシャットアウトするため、素足がぴかぴかに磨かれた床に着く感覚に意識を集中した。
 教室は廊下の端の右側だった。先を歩いていたヌケ子さんは、教室に入って弁当を配り始めていた。ドアをあけて僕も同じことをしたいところだが、パンツがないことにはそれもできない。そこで、ドアの隙間からヌケ子さんを呼んだ。ところがヌケ子さんは弁当配付に夢中でなかなか気づいてくれない。受講生の一人がドアの隙間から顔だけ出している僕を認めて、不審そうな顔をしながらヌケ子さんを呼んでくれた。
 受講生には誰一人、素っ裸を見られたくなかったし、素っ裸でいることに気づかれたくもなかった。それなのにヌケ子さんは開口一番、「なんで中に入らないの」と僕を非難した。僕が小声で「パンツ、パンツ」と催促すると、ヌケ子さんは手を打って、「ああ、パンツね」と、初めて僕が教室に入れないでいる理由が分かったとばかりに、嬉しそうな声を出した。僕のためにヌケ子さんを呼んでくれた受講生は、その声を聞いて、ドアの隙間から顔だけ出している僕をもう一度見た。
 それだけではない。教卓に置いた段ボールまで戻り、中から白いブリーフパンツを取り出したヌケ子さんは、手の中に丸めて隠してくれればよいのに、それをわざわざ振り回しながら渡しに来たので、先生や受講生たちにもそれが僕の穿いていたパンツであることがばれてしまった。唖然とした表情、にやにや笑った表情がドアの隙間から顔だけ出している僕に向けられた。もう僕がどんな格好で教室の外にいるのか、気づいたに違いない。いたたまれなくなった僕は、慌ててドアから顔を引っ込めた。
 段ボールを床に置き、両手でおちんちんを隠しながらヌケ子さんが来るのを待っていた僕は、ひったくるようにその手からパンツを取った。中年の女性たちが話しながら廊下を歩いていた。急に話し声がやんだと思ったら3人とも立ち止まって、僕が慌ててパンツを穿くのを見ていた。
 とにかくなんとかパンツを穿いて教室に入り、ヌケ子さんに倣ってお弁当を配る。教室の隅では、ヌケ子さんが先生に、お弁当を取りに行くだけでなぜこんなに時間がかかったのか、その理由を説明していた。立腹気味の先生が僕の方へちらちらと視線を向ける。と、後ろから太った男の人が僕に話し掛けてきた。
「君、あのお姉さんにパンツを脱がされてたでしょ」
「はい」
 てきぱきと机に弁当を並べながら答える。殊更に忙しい振りをして質問をかわそうとしたが、太った男の人は、何で脱がされたのか教えてほしいとせがむ。駄々っ子のようだと思った。答えたくないので黙っていると、不意に手首を掴まれ、色をなした男の人が僕の態度をなじった。大人の質問を茶化すなと叱られた。
 危うく弁当を落とすところだった。僕は冷や汗をかきながら、弁当の配布を中断し、男の人の正面に向き直った。
「パンツ一枚の裸のくせに、俺をなめるなよ」
 両手で僕の顔を挟んで、パンパンと叩いた。怖い。僕はすぐさま頭を下げて非礼を詫び、廊下でヌケ子さんにパンツを脱がされた事情を洗いざらい話した。と、男の人は今までの柔和な笑みを浮かべて、満足そうに僕の裸の肩をさすった。
「それは災難だったね。いろんな人に見られちゃったんだね」
「ええ、まあ」
「廊下でパンツを穿いた時、よほど慌てていたでしょ。パンツが前後逆で、裏返しだよ」
 あっと思ってパンツを見ると、その通りだった。おちんちんの通し穴が後ろにある。更に縫い目がはっきりと出ている。男の人の指摘を聞き、何人かの受講生が振り返った。恥ずかしくてたまらないので、逃げるようにその場を去ったものの、この教室内にいる限り、穿き直せない。とにかく、早く弁当を配り終えるしかない。その後にトイレに駆け込めばいいだけの話だ。
 箱詰めの弁当は豪華な内容だった。西京焼き、筑前煮、海老フライ、一口ステーキ、サラダがぎっしり詰まっていた。いずれも選りすぐりの食材で、先生の知り合いの仕出し弁当屋から注文した高級幕の内弁当とのことだった。
 先生や受講生は食べ始めていたが、僕の分はなかった。1個余っていたから、僕のかと思っていたが、ヌケ子さんがこれはおば様用だと言って持って行ってしまった。ヌケ子さんに言いつけられて、僕は急須片手に受講生たちにお茶を注いで回っていたが、ほとんど全員から僕のパンツが前後逆で裏返しであることをからかわれた。明らかな嫌味で「どこで脱いだんですか」と問う人、パンツのゴムを引っ張る人までいた。
 モデルの時はともかく、事務方手伝いまでもパンツ一枚の裸でやらされるのは、これだからいやなのだとつくづく思った。お茶を注いで回る時ぐらいは服を着させてほしいが、おば様の息のかかったヌケ子さんは、それを認めてくれないだろう。
 一通りお茶を注いだ後は、することがない。呼ばれたら急須を持ってその人の元に行くだけだから、本来ならばこの空いた時間で食事を済ますべきなのに、肝心の弁当がなく、手持ち無沙汰なので、皆がおいしそうに食べているのを尻目に窓辺のカーテンの陰で外の景色を眺めていた。空腹だった。弁当のよい匂いが切ない。
 ほどなく教室に戻ったヌケ子さんが僕にサンドイッチを渡してくれた。野菜、ハム、卵の三切れ一セットで特価の値札が貼られてあり、賞味期限が切れていた。わざわざ近くのスーパーまで車を出して買い出しに行ったのだとヌケ子さんが言い、それがいかに大変だったか、途中道を間違えて大回りをしてしまったことなどを付け加える。僕は礼を述べて真空パックのオレンジジュースを受け取り、先生に勧められるまま、教室の正面に据えられた四角形の台に腰かけて、食事を始めた。
 目の前では、受講生たちが高級幕の内弁当に舌鼓を打っている。会話も弾んで、皆は西京焼きの品のよい味、一口ステーキの柔らかさ、海老フライのプリプリした食感などを賞美していた。
 それに引き換え、僕のサンドイッチはどうだろう。賞味期限切れのせいかもしれないが、パンがぱさぱさに乾いて硬く、サラダはしおれていた。噛んでもうまく噛めず、歯の裏側にレタスがこびり付いた。ハムは合成着色料そのものが浮かび上がったような濃い色で、脂身のべとべとがハム全体を覆ってい、口に入れるやガムのように粘ついて噛みちぎるのに一苦労だったし、卵サンドは腐ったような匂いがして、空腹にもかかわらず、息を止めなければ半分も食べられなかった。
 それでも勢いに任せて、甘いオレンジジュースでなんとか胃に流し込むと、一息つく間もなく、仕事が待っていた。受講生たちの弁当の片づけである。机に置かれた弁当の空き箱を集めて、段ボールに入れる。段ボールの前に腰を下ろして、僕から空き箱を受け取ったヌケ子さんが「まあ」と変に高い声を発した。僕のパンツが前後逆で裏返しなのに、今初めて気づいたようなのだった。
「恥ずかしいわ。みっともないから穿き直しなさいよ」
 両頬を赤く染めたヌケ子さんがパンツのゴムを掴んで、引き下ろそうとする。僕は慌ててパンツを押さえた。それでもヌケ子さんは引き下ろそうとする力を緩めない。お尻が半分露出してしまった。
「やめてください」
「いいから脱いで、直しなさいよ。恥ずかしいのは一瞬だけじゃないの」
「やめてください。トイレに行って直しますから」
 思わぬ展開に興味をそそられた受講生たちの視線が絡みついて、ヌケ子さんと僕を縛り付けた。パンツを脱がそうとする力と押さえる力が拮抗し、中腰の僕、膝を床に着けてパンツを下ろそうとするヌケ子さんは、彫刻のように動かない。
「もういいですよ。可哀想じゃないですか」
「こんなところで脱がされたら、この子だって恥ずかしいでしょ」
 見かねたらしい受講生たちの勧告にハッと目が覚めたかのように、ヌケ子さんがパンツから手を放した。しっかりパンツを引き上げた僕は、前にも増した速い動きで片づけに精を出した。
 片付けが済むと、ヌケ子さんは僕に段ボールを1階まで運ぶから手伝ってほしいと頼んだ。中身は空き箱だから軽くなったと屈託のない笑顔を向ける。またもやパンツ一枚の格好のまま1階の控え室まで往復させられるのかと思ってうんざりしていると、先生が手伝いを申し出た。控え室に行く用事があるからついでに運んであげると気さくに言って、ヌケ子さんを喜ばせ、2人は教室を出た。
 午後の講習が始まるまで、あと10分。僕は教室内を見回し、裸の身に何か羽織る物はないかともう一度探してみた。カーテンを外して体に巻き付けようかとも考えたが、外すだけで時間がかかりそうなので諦め、トイレがそう遠くない場所にあることを思い出し、思い切ってパンツ一枚のまま廊下へ出ることにした。
 廊下のざわめきを無視して走る。立ち話する中高年女性の間を駆け抜け、階段の手前にあるトイレへ。幸い、1つしかない個室は空いていた。中に入って鍵を閉め、パンツを脱いだ。ついでに和式便所にしゃがんで、おしっこをする。裏表、前後を確認してからパンツを穿き、個室を出ると、掃除のおばさんが水を張ったバケツにモップを突っ込んだまま、トイレのドアをあけた。 
 スリッパから突っ掛けに履き替えたおばさんを見て、僕も突っ掛けを使えばよかったと後悔した。急ぐ気持ちが優って、つい裸足のままトイレに入ってしまったのだ。タイルの感触が足の裏にひんやりと伝わってくる。
 モップを壁に立て掛け、流しまでバケツを持ち上げるおばさん。今にもバケツを落としてしまいそうな危なっかしい動きに注意を払いつつ、僕が隣りの蛇口で手を洗っていると、モップがおばさんに向かって倒れてきた。驚いたおばさんは、僕の方によけたと同時にバケツ内の汚れた水を僕の下半身に向かってぶちまけてしまった。
 やられた。内心大いに舌打ちした僕は、パンツの側面からお尻にかけて、びっしょりと濡れていることに気づいた。腿から脛を伝って水がこぼれ落ちる。床のタイルに小さな水溜りができて、足踏みすると、ピチャピチャと音がした。
「あらあら大変。ぼく、冷たかった?」
 倒れたモップを立て直しながら、おばさんが僕の濡れた下半身を見る。掃除後の汚い水だったらしく、パンツには埃や髪の毛のようなものが付着していた。
「あらやだ。パンツにゴミが付いてるわ」
「大丈夫です。すぐ取れますから」
 毛糸のからまったゴミを摘まみ取りながら、答える。パンツがびっしょり濡れて肌にべったり付いているせいで、お尻が透けて見えていた。
「大丈夫じゃないわ。せっかくの白いパンツが汚れてしまった。よくないことよ。洗ってあげるから、ぼく、脱いでちょうだい。早くしなさい」
「いや、いいですって」
 聞く耳を持たないおばさんは、一歩二歩後退する僕に大きな体を寄せて来た。
「何恥ずかしがってるのよ、ぼくちゃんは男の子でしょ。脱がなきゃ洗えないよ」
 後ずさりする僕を大きく見開いた目で見つめながら、おばさんが迫る。そのただならぬ気配に恐怖を覚えた僕は、どうしたらこの人から逃れられるか、考える余裕すらなかった。ひたすら後ろへ下がる一方で、とうとう頭が突き当りの窓ガラスに当たった。
「もう観念して脱ぎな。早くしないと染みが取れなくなるよ」
 薄ら笑いを浮かべて、おばさんが肉薄した。僕は首を横に振るばかりで、言葉が出ない。
 あっと短い声を上げる間もなく、おばさんの手でパンツを引き下ろされた。乱暴に足首からパンツを抜き取ると、くるりと背を向けて、手洗い場に向かう。
「返してください。やめてください」
 いきなり素っ裸に剥かれた僕は、両手でおちんちんを隠したまま、おばさんを追いかける。おばさんはポケットから青色の洗剤を取り出して、パンツに塗り付けていた。パンツに伸ばした僕の手をうるさそうに払うと、個室に向かって顎をしゃくった。
「そんなに恥ずかしいなら、そこに隠れていなさいよ。そんなちっちゃなおちんちん、隠すほどのもんでもないと思うけどね」
 仕方なく、僕は個室に入ってドアを閉めた。真っ裸では、なす術がない。勢いよく蛇口から水の流れる音が聞こえた。トイレットペーパーで濡れた太腿の辺りを拭く僕は、不安な気持ちでいっぱいだった。
「あの、洗うのは適当でいいですから」
「駄目よ。しっかり洗わなくちゃ。廊下や階段の掃除で大活躍したモップとか雑巾が浸った水だからね、汚いんだよ。今はよくても、後で染みになるから」
 トイレにおばさんの元気な声が響き渡る。水を流す音がしたかと思うと、またバケツに水を入れ始める。かなり念入りに洗っているようだ。
「ぼくちゃんは、なんで裸なの?」
 たった今おばさんに脱がされたからだと答えると、おばさんは陽気に笑って、「そういう意味じゃないよ」と、言った。なんでパンツ一枚の裸でトイレにいるのか、というのがおばさんの質問だった。整体マッサージのモデル用の制服が手違いから間に合わなかったからだと伝えると、おばさんは、「それはそれは」と僕に同情の言葉を投げかけた。
「それは大変よねえ。休み時間の間も、ずっとパンツ一枚のままなんてねえ。私もね、トイレに入ったら、いきなり裸の男の子がいるから、びっくりしたのよ」
 蛇口のコックを捻り水を止める音、続いて、バケツの中でパンツをごしごし洗う音が聞こえる。僕は一刻も早くパンツを返してもらいたくて、気が気ではなかった。おばさんは鼻歌を歌っている。
 どれくらいの時間が過ぎたのか、分からない。とにかくおばさんが洗い終わるのを待つしかないと思って、ひたすら忍の一字であせる気持ちを抑えてきたけど、さすがに少し長すぎる気がして、おばさんに時計を持っているか訊いた。持っているとの答えだ。1時5分だと言う。
 びっくりした僕は、慌てて個室から出ると、「時間だからパンツを返してください」と、悠長にパンツを洗い続けるおばさんに頼んだ。おばさんは笑って、
「仕方ないわね。おちんちん丸出じゃ恥ずかしいもんね」
 と、指でおちんちんを軽く突きながら、パンツが沈んでいるバケツを僕の方にずらした。バケツに手を突っ込み、パンツを取り出す。その間もおばさんは、おちんちんを指で挟み、左右に揺らして遊んでいる。
「やめてください」
 腰を引いて抵抗しながら、パンツをぎゅっと絞った。水がどっと水がこぼれたが、たっぷり水を吸い込んだパンツは重く、とても一回で絞り切れるものではない。それでも、午後の講習が始まっている時間であるから、構っている暇はない。冷たいパンツを穿いて、トイレを出た。
 人がいない廊下を走って、教室の前まで来た。ドアを隔てて先生の声が聞こえた。呼吸を整えてから、ドアをあけた。先生と受講生の視線が一斉に僕に集まる。
「遅い。何時だと思ってるの?」
 教壇の先生が怒りを露わに僕を睨んだ。
「申し訳ありません」
 頭を下げつつ、先生に近づく。先生は、受講生たちがお金で買っている時間をモデルの怠惰で無駄にすることは許されない、たとえ6分でも、と僕を叱責した。トイレに行っていたために遅れたのだと理由を話すと、先生は、僕の濡れて下がり気味のパンツに手を触れ、「何これ?」と訊ねた。
「びしょ濡れじゃないのよ。どうしたの、これ?」
 パンツの前や後ろを触って、どこも均等にびっしょり濡れていることを確かめながら、先生が不思議そうな目で僕を見る。僕がトイレで起こったことを説明すると、先生が白衣の裾をふわりと舞わせて、向きを受講生たちに変えた。そして、僕に四角形の台に上がるように指示した。
「そんな濡れたパンツのままじゃ、あなた風邪ひくし、ツボを押す受講者の皆さんにも失礼じゃない。脱ぎなさい」
 予想外の命令に聞き返すと、先生は顎を上向けて、僕に侮蔑の視線を投げた。
「そのびしょ濡れのパンツを脱ぎなさいと言ってるの。これからは真っ裸になってモデルをしてもらう。真っ裸になって、まず皆さんに講習を遅らせたことをお詫びしなさい」
「いやです。許してください」
「許さないよ。早く真っ裸になって、皆さんに土下座しなさいよ」
 怒りで紅潮した顔の先生が、台の上でもじもじしている僕を怒鳴り付けている。勝手にパンツを洗った掃除のおばさんが恨めしい。パンツ一枚でも恥ずかしいのに、そのパンツすら脱いで素っ裸のまま、夕方までモデルをさせられるのかと思うと、辛かった。僕はパンツのゴムに手をかけた状態で、ためらっていた。
「ほら、さっさと脱ぎなさいよ。さもないと、私としても、あなたの大好きなおば様にクレームすることになるわ。時間を守らない、指示に従わないモデルだったってね。あの人、仕事にすごくプライドお持ちだから、あなたのせいで恥をかかせられたと知ったら、あなたは、どうなるかしら。おちんちん、ちょん切られるかもよ。楽しみだわ」
「いやです。それだけは、許してください」
「だったら、早く脱ぐこと。これ以上、時間を無駄にしないで」
「分かりました」
 もはやこれまでかもしれない。一列目に4人、2列目、3列目に3人ずつ着座する10名の受講生たちの水を打ったような静けさが不気味だった。みな神妙な顔で、パンツを脱ごうとする僕を注視している。
 あることに思い至り、脱ぎかけた僕の手が止まった。そして、急いでパンツの中に手を入れ、そっと皮を剥くと、覚悟を決めてするするとパンツを脱ぎ、片手でおちんちんを隠しながら足首から抜き取った。股間が教室の空気に触れる。
 先生がパンツをひったくり、教室の一番後ろの席にいるヌケ子さんを呼び付けた。ヌケ子さんは座って一心に文庫本を読んでいた。僕が台の上に素っ裸でいることに気づくと、驚きの声を上げて駆け寄ってきた。両手でおちんちんを隠したまま、体を震わせている僕を横目に見やりながら、先生から濡れたパンツを受け取る。「ま、びしょ濡れじゃない」と呟くヌケ子さんに先生が「干して」と頼んだ。
 サッシ戸をあけ、ヌケ子さんがベランダに出ると、先生が僕の前に回り、おちんちんを隠している手を叩き、気をつけの姿勢を命じた。泣きたい気持ちを堪えて両手を体の側面に添える。受講生たちの頭がボーリングのピンのように見える。先生がおちんちんを手に取った。
「脱ぐ前にパンツに手を入れたでしょ。ありのままを見せなさいよ」
 ひりひりする過敏な亀頭を指で突っついたかと思うと、皮をつまみ出して、ぐっと引っ張った。たちまちおちんちんが皮の中に包まれる。僕は痛みのあまり声を上げた。皮かむりを笑われたくない僕の浅はかな企みは見事に覆され、だらりと皮の垂れたおちんちんをみなの目に晒してしまった。
「じゃ、土下座してね。午後の講習に遅れたことをお詫びするのよ」
 素っ裸にされて恥ずかしがっている僕を見て、満足そうに先生が言いつける。
 気がつけば僕は半分べそをかいていた。台から下りると、教壇に正座して両手を床について、深々と頭を下げる。
「講習を遅らせてしまい、申し訳ありませんでした」
 小さな声を叱られ、何度もやり直しさせられた。最後には廊下にまで聞こえるような大きな声を出していた。素っ裸のまま、涙を流しながら土下座する僕を、先生が微笑して見下ろしている。

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2 コメント

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更新しました (naosu)
2009-03-31 07:23:16
コメントありがとうございます。
更新しました。
幸ちゃんは、まだ出てきませんけども・・・
返信する
週1更新に期待 (Unknown)
2009-03-20 00:26:42
一番乗り~ 
幸ちゃん 楽しみにしてます
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