kindle出版予定の長編小説『女神は受難を与えたまう 第1部』、いろいろとエピソードを加えたりして、難航しています。ごめんなさい。
このまま出せなくなる、ということはないとは思いますが、そうならないためにも、ここでひとつ、「予告編2」を公開することにしました。
いろいろなシーンを切り取っています。ちょっと覗いていただけると、嬉しいです。
~矢田部瑞樹、小学六年の頃、同級生女子にこらしめられたエピソードから
足の裏に無機質なコンクリートが冷たかった。ズボンばかりか、靴も靴下も脱がされパンツ一枚の裸にされてしまった。服を返すように頼んだけれど、女子たちは笑い声しか寄こさなかった。取り巻き女子の一人が脱がせた衣類一式を抱えると、「これ、しばらく没収ね」と言い残して、どこかへ持っていってしまった。
瑞樹は素早く女子たちへ目を走らせ、この場に多田さよりがいないのを改めて確認して、うつむいた。
どんなに哀願したところで服を返してもらえる見込みはなく、しばらくはパンツ一枚でいるしかなくなった瑞樹を女子たちはじっと見つめた。ちょっとだけ顔を横に向けているものの、目はしっかりパンツ一丁の瑞樹を捉え、口に手を当てて笑う。「いい気味だね」と囁く声が聞こえる。ひどい。人をパンツ一枚の裸に剥いて、なにをさせようというのだろう。
立って、と美玲に命じられ、仕方なく瑞樹は女子たちに背中を向けたまま、腰を上げた。もう下手に逆らえない、従順にならざるを得ない、と瑞樹は考えた。どんなことをさせられるのか、不安で目まいを覚えるほどだった。ちょっとしたためらい、いやだと思う気持ちが態度に出ると、たちまち美玲を中心とする女子たちにそれを反抗的だと見なされ、場合によってはそれが彼女たちの気に障り、もっと残酷な罰を受ける羽目になるかもしれない。考えたくないけれど、パンツを脱がされてしまう事態だってありうる。瑞樹のズボンと上履き、靴下をいとも簡単に脱がせたのだから、その気になればゴムで締めつけているだけの小さなブリーフを瑞樹の体から奪うのに彼女たちは十秒もかからないだろう。
立ち上がった瑞樹は、すぐに回れ右をさせられた。ざっと並ぶ同級生の女子たちと対面した形になる。彼女たちは、当たり前ながら全員、普通に服を着ている。一名は体操着姿だけれど、まあ、教室はもちろん、バス停や近所の野菜直売所にいても特に不思議ではない。つまり、周囲に受け入れられる格好だ。それにたいして瑞樹はどうか。わずかに白いブリーフのパンツを一枚まとっただけの裸。こんな格好では教室はもちろん、この体育館の倉庫から出るのも相当の勇気が必要になる。まず目撃した人が黙っていないだろう。思わず腕で胸や下腹部を覆い、女子たちの無遠慮な視線から肌やパンツの一部を守る。
脱がされる前から感じていた女子たちの醸す威圧感は、パンツ一丁に剥かれて倍加した。美玲は腕を組み、思案するような顔つきをして瑞樹に体を寄せてきた。横に並ぶ女子たちもそれに倣い、瑞樹を取り囲むように輪をぐんと狭めた。
「ねえミズキ、さっきの続きだよ。お前、エッちゃんに雑巾ぶつけたよな」
「……ぶつけた。だからそれについては、さっきから謝ってるだろ」
「もう一回謝っとこうか。せっかくパンツ一丁になったんだから、その格好で土下座」
意味が分からない。美玲はなにを考えているのか。
「……やだ。裸になったんだから、もう許してよ」
「だめ。土下座」
「だって、さっき謝ったのに。雑巾ぶつけたことについてはおれ、一度もごまかしてないよ。正直に認めて、申し訳ないと思って、ちゃんと謝ったよ」
なるべく刺激しないように言葉を選ぶ。でも、それで納得する相手ではなかった。
「いや、あのね、謝ったとか謝ってないとかって問題じゃないの。せっかくお前がパンツ一丁になったんだから、もう一度土下座して謝れって言ってんだよ」
「でも……」
「でも、じゃない」
瑞樹の口を閉じさせると、美玲は体操着姿のエッちゃんを呼び寄せ、瑞樹の真ん前に立たせた。エッちゃんの撫で肩に手を置く美玲の細長い指を見て、瑞樹は目を逸らした。長い爪が天井の蛍光灯を反射し、蛇の目のようだった。
瑞樹とほとんど同じ背丈のエッちゃんは、瑞樹の足の指に向けていた目を少しずつ上げた。ねちっこい視線だった。白いパンツのところで左右に動き、また上昇し、瑞樹の目の高さまで来ると、ぴたりと止まった。パンツ一丁の恥ずかしい姿を一方的に見つめられ、もじもじ体を揺らしながら羞恥に耐える瑞樹の様子をエッちゃんは少しはにかむような表情を浮かべて、じろじろと観察する。観察ついでに生唾をゴクッゴクッと、続けて二度飲み込んだ。
もう謝ったのに、また土下座させられるのなんて真っ平御免。もし服を脱がされていなかったら、断固としてこの正当な理由のない二度目の謝罪を拒否しただろう。しかし、今のパンツ一枚の心もとない格好では、もう言いなりになって、女子たちの怒りの感情が燎原の火とならないようにするしかない。意地を張っている場合ではなかった。
「分かったよ。土下座すればいいんだろ」
瑞樹は吐き捨てるように言うと、正座の姿勢を取った。いつになったらこの場から解放されるのだろう。掃除のペナルティが終わったら帰宅してよい話だったのに、まだしばらくは自由になれそうもない。服を返してもらえそうにない。激怒した女子たちから一刻も早く逃れるには、彼女たちの求めに淡々と素直に応じるしかなさそうだった。
~同じく小学六年の頃、放課後、同級生の女子に呼び出された瑞樹
「分かったよ」
「分かったよ、じゃなくて、分かりました、でしょ」
「分かりました」
仕方がない、と瑞樹は観念した。この女子たちにはすでにパンツ一丁の姿をさんざん見られている。今さら恥ずかしがって、脱ぐのをためらっていると、美玲の手で本当に全裸に剥かれかねない。瑞樹は渋々立ち上がると、まず、シャツに手をかけた。
「ほー、すごい。いきなり上半身裸になったよ」と、取り巻き女子が感心する。「わたしはまたてっきり上履きと靴下から脱ぎ始めると思ったよ。シャツから脱ぐなんて、さすがに度胸がいいね」
「わたしたちに見られるのが好きだったりしてね」
もう一人の取り巻き女子、放送部長が破顔した。
――ちきしょう、こいつら調子に乗って……。抑えようとしても抑えきれない苛立ちがちょっと顔に出てしまった。そのムッとした、唇を尖らせた表情を美玲に見られてしまい、瑞樹の体は一瞬硬直した。慌てて目を逸らし、しずしずと上履きと靴下を脱ぐ。残るはこの長ズボンだけになったが、ここに来て、瑞樹は女子たちの視線を強く感じた。脱ぎたくない。どうしてもためらってしまう。
「早くそれも脱ぎなよ」「見ててあげるからさあ」と、取り巻き女子二人が囃す。
ちらりと美玲に目をやる。彼女は椅子に座ったまま背中を反らして伸びをした。瑞樹は息を一つ吐くと、ベルトのバックルを外し、恥ずかしさに顔を赤く染めながら、ズボンを下ろした。足首からズボンを取り、かたわらに置き、改めて正座の姿勢に戻る。
「あ、まだ座れなんて言ってないよ。勝手な真似しない。立って。気をつけ」
ポンと手を一つ打ち鳴らし、美玲が咎めた。瑞樹は不満たらたらだった。洋服を脱いでパンツ一丁で土下座するように命じられたから、こうして仕方なしに恥ずかしい格好になったのであって、言ってみれば土下座のために裸になったのだ。気をつけの姿勢を取って美玲たちにじろじろ見られるために洋服を脱いだのではない。それでも、瑞樹は逆らえなかった。下手に口答えしようものなら、「こいつ、反抗的だね」と美玲に見なされ、お仕置きされ、このパンツすら強引に剥ぎ取られてしまう恐れがある。
美玲と取り巻き女子の二人は、瑞樹に気をつけの姿勢を保たせ、じっくりと瑞樹の裸を眺めて、その肌のすべすべ、乳首の色などを誉めそやした。
「ね、この前と比べて、白いブリーフパンツのサイズが小さくなってないかな?」
「ほんとだ。ミズキくん、そのパンツ一回り小さいよ。ピッチピチじゃん」
取り巻き女子たちに指摘され、瑞樹は無意識のうちに気をつけの姿勢を崩し、パンツに手を当てた。すぐに美玲から「気をつけだろ、お前は」と注意され、慌ててパンツから手を放す。彼女たちの視線が痛いほどパンツに集まる。
~瑞樹の寮母、ミユキさんに起こされる朝
忘れ去りたい思い出がさらに苦しい思い出を呼び起こし、その翌日、学校を休みたかったけれど、寮母のミユキさんは許してくれなかった。風邪っぽいと訴えて体温計を咥えたものの、あいにく平熱だった。「だめよ。一回怠けると癖になるから」布団を剥がされる。「お風呂場に行ってシャワーを浴びてきなさい。目が覚めるから」鬼寮母、ミユキさん。ベッドで丸まっている瑞樹のシャツを引っ張り上げて脱がすと、続けてズボンにも手をかけた。いや、やめて、とむずがるあいだに白いブリーフのパンツ一枚に剥かれた瑞樹は、夕べなかなか寝つけなかった体をシーツから引き離して、ベッドの横に立った。「急がないと遅刻するわよ。わたし、遅刻は許さないからね」悩みの相談には親身になってくれるのに、寮生または生徒としての務めについては滅多に妥協してくれない。瑞樹は恨みがましい気持ちのまま、上目遣いで自分の担当寮母を見た。命令され、瑞樹は仕方なくパンツを脱ぐ。ミユキさんにはもうすっかりお馴染みになっているおちんちんながら、それでもやはり恥ずかしくて、そっと手を当てる。
「その格好でお風呂場まで行くのよ。丸裸なら少しはテキパキ行動できるでしょ」
やだ、またみんなに見られちゃう、と訴える瑞樹を無視して、ミユキさんは瑞樹の腕を取ると、指でおちんちんを扱いた。い、いや、と身をくねらせても、瑞樹の背中に回した腕を放さず、おちんちんに強力な刺激を一方的に与え続ける。
アウウ。喘ぐ瑞樹は、射精寸前だった。ミユキさんは手を止め、勃起状態の瑞樹を容赦なく部屋の外へ押し出した。ほかの寮生は朝食中、まだ食堂だ。急げば誰にも見られずに済む。自分の今のあられもない格好を意識し、体が震えた。素っ裸で、しかもおちんちんを硬化マックスにしたまま、廊下にいるのだ。閉められたドアが恨めしい。誰かに見つかったら、どう言い逃れをすればいいのか。
もうすぐ食事を済ませた寮生がぞろぞろ廊下に出てくるわよ、とドア越しに脅され、真っ裸の瑞樹は上向きのおちんちんをゆさゆさ揺すりながら、お風呂場へ向かった。人と鉢合わせになった際にもおちんちんを見られないように手で覆いたいところだけれど、勃起しているので剥き出しの敏感な亀頭に手のひらが触れやすい。だから、こうして隠さず、丸出しのまま、小さな角のようなおちんちんを上下に揺すって進むよりほかなかった。
階段を曲がったところで、バケツを提げた寮母、まん丸い体型の寮母とぶつかり、バケツの水をかぶってしまった。騒ぎを聞いて、近くにいた寮母が続々と集まってきた。一糸まとわぬ瑞樹の姿に驚き、呆れる。尻餅をついた瑞樹の前に出てきたのは、ミユキさんだった。
「よかったねえ。水を浴びて、おちんちんが元のサイズに戻ってる」
そう言って瑞樹の腕を取り、ひょいと立たせる。手慣れたものだ。ミユキさんの威厳に満ちた態度は瑞樹に抗議の暇も与えない。寮母たちの見守る中、微笑みを浮かべて、全裸の瑞樹を風呂場へ連行するのだった。
~駄菓子屋三ツ星の倉庫で瑞樹はパンツ一枚に剥かれ、松本るうな、蜂須賀美鈴(はちすかみれい)と二人の後輩から激しく問い詰められた末、パンツを脱ぐように言われ、たまらなくなって逃げ出すシーン
水に入って難を逃れる。こちらは裸で相手が服を着ている場合、この手は最高の切り札になる。(中略)
倉庫からすかさず後輩のタツキとレイナが追いかけてきた。絶対に捕まってはならなかった。これまで美鈴やその取り巻き連に見られたのはパンツ一枚の姿だけで、それでも十分に恥ずかしいのだけれど、まだ素っ裸にひん剥かれた経験はなかった。女子たちの前、しかも松本るうなのいるところでパンツを脱がされるなんて、考えるだけでも恐ろしい。
瑞樹は道路の向こう側の用水路に向かった。彼女たちの足は速く、さっきは簡単に捕まってしまった。今は裸足だから、さらに悪い条件である。一刻も早く有利な状況、水の中に身を投じるしかない。
「パンツ一丁のくせに、どこまで逃げるんですかあ」
タツキの余裕たっぷりな冷やかしを背中で聞きながら、瑞樹はフェンスをよじのぼった。道路沿いを流れる幅二メートルほどの用水路には水が満々と流れていた。振り返ると、二人の後輩女子、タツキとレイナがフェンスに身を寄せて、用水路の縁にいる瑞樹を見下ろしていた。二人の白いブラウスに格子縞の影が揺れた。
とにかく彼女たちから逃げることだけを考える瑞樹は、ためらわず用水路の中に足を突っ込んだ。服を着た彼女たちにはできない芸当だった。用水路は思いのほか深く、流れも速かった。彼女たちは驚きの声を上げて、用水路沿いの道路を走って追いかけた。
ぐんぐん彼女たちを引き離す。誤算だったのは、この用水路がどこまでも道路沿いにあることだった。途中でカーブして、道路から離れたところへ瑞樹を運んでくれたらよかったのだけれど、川と違って人工物なのであくまでも直線だった。
用水路にかかるコンクリートの橋は水面との差があまりなく、これを通過するために瑞樹は頭をうんと低くしなければならなかった。流れはいよいよ速くなり、タツキとレイナの足も追いつかなくなった。
トンネルの数が増えてきた。瑞樹は呼吸のとき以外は頭を水の中に沈めた。適当なところで用水路から上がらなければならないとは思ったけれど、川と違って岸はなく、左右のコンクリートはほとんど垂直だった。水中から顔を出し、つかまる物を探す。左右に迫るコンクリートの窪みはどれも浅かった。
前方に橋が見えた。アーチ橋のように弓なりの形状であれば、用水路の流れに乗る身として大変にくぐりやすいのだけれど、これまでの橋と同様、コンクリート床板を通しただけのシンプルな構造だった。しかもよく見ると、今までの橋よりもコンクリートが分厚く、それだけ水面上の空間が狭い。
このままでは確実に橋桁に頭をぶつける。瑞樹は大きく息を吸い込み、潜った。
ずいぶんと長く水から頭を上げなかったのは、水の中がいつまでも暗かったからである。やっと明るくなって、つまり橋を通過して、水面へ顔を出す。しまった、と思ったときには、瑞樹の体は網にぶつかっていた。
用水路の幅が狭くなる手前のところに網がかけられ、その先へはよけいな物が流れないようになっていた。網のおかげで瑞樹はずっと先まで延々と流され続けなくて済んだ。ただ流れが相当に激しく、強い水圧により体勢を網に押しつけられた状態から体の向きを変え、コンクリート伝いに用水路を出るのはかなり難儀で、水面から顔を出しているのが精一杯だった。
早く出なくちゃ、と瑞樹は焦った。ぐずぐずできない。タツキとレイナに追いつかれてしまう。網に指をかけ、力を入れて用水路から体を引っ張り上げる。道路とは反対側のコンクリートの斜面へ体の向きを変えたところでバランスを崩し、背中から網に叩きつけられてしまった。もう一度、網に指を引っ掛け、よじのぼる。水面から体を上げた状態でコンクリートの斜面への移動を試みる。そこから金網のフェンスに手が届けば、用水路からの脱出は成功したも同然だった。
「なーにやってんすか、ミズキ先輩」
タツキとレイナだった。呆れた顔をして、網に打ちつけられてもがく瑞樹を見下ろしている。――ゲッ。もう追いついちゃった? 危うい姿勢のまま振り返った瑞樹は、バランスを崩して、水中に落ちてしまった。二人の女子中学生はフェンスを揺すって笑った。
パンツ越しにおちんちんが網に押しつけられ、上がろうとすると、こすれてしまう。この状態が続くと、意に反して性的な快感を催しかねない。それくらい背中に受ける水圧は強く、危険だった。網を掴んだ手に力を入れて、足の指を網から離し、体をゆっくり上げる。と、水流に負けて足の指が網から外れてしまった。指の力だけではとても体重を支え切れない。瑞樹はまたもや水中に落ち、凄まじい水圧を受けて全身を網にぶつけた。激しい水流がおちんちんの袋に当たって、美玲に膝蹴りされた痛みをよみがえらせる。瑞樹は水面から顔を出すや、「ヒイイ」と呻いた。
なんとか体勢を整えて、網の目に足の指を入れて、網をしっかり掴みながら、フェンスに手の届くところまで体を上げる。
「やだ、ねえ見て、タツキ、ミズキ先輩のパンツ……」
「ほんとだね。お尻丸見えだ。ほとんど素っ裸も同然だね」
しまった。水中を脱したと思ったら、いきなり膝までパンツが下がってしまった。急いで水中に身を隠し、水の中で宙返りするようにして、パンツを引き上げる。
網のあるところには鉄板が通してあって、彼女たちは簡単に向こう岸に渡れた。仮に瑞樹が道路の反対側に上がったとしても、たやすく捕まってしまうだろう。
「早く用水路から上がってくださいよ。いつまで水遊びしてんですか?」
「そんなところに入って逃げられると思ってんですか?」
用水路を覗き込む彼女たちがあまり楽しそうに騒ぐので、通りかかったサラリーマン風のおじさんに見つかってしまった。だぶだぶのワイシャツ、ズボンに身を包んだおじさんは弁当箱を思わせる四角い顔を真っ赤にして、フェンスから身を乗り出した。用水路は人がみだりに入るところではない、小学三年生でもそれくらい分かるはずだ、早く上がりなさい、と怒鳴りつける。
「おじさん、あの子、小学三年生じゃないですよ。あれでも中学二年生なんです」
タツキに教えられて、おじさんは「なに、中学二年生?」と、上ずった声を出した。履き古した革靴にべったりと土が付いている。踵がズボンの裾を踏むと、おじさんはタツキの顔と網をよじのぼるパンツ一丁の瑞樹を交互に見た。フェンスを越え、髪から水滴をポタポタ垂らす瑞樹は、またひとしきりおじさんから説教された。
エッチな話だけでなく、妖怪が出てきたり、ちょっと超常現象が起きたりもします。
ベースにあるのは昭和時代の世界観。スマホとかは出てきません。電話には必ずコードがあります。
リリースの準備が整いましたら、最初に当ブログでご案内させていただきます。
パンツ一丁にされた瑞樹くんのイメージ画像です。
このまま出せなくなる、ということはないとは思いますが、そうならないためにも、ここでひとつ、「予告編2」を公開することにしました。
いろいろなシーンを切り取っています。ちょっと覗いていただけると、嬉しいです。
~矢田部瑞樹、小学六年の頃、同級生女子にこらしめられたエピソードから
足の裏に無機質なコンクリートが冷たかった。ズボンばかりか、靴も靴下も脱がされパンツ一枚の裸にされてしまった。服を返すように頼んだけれど、女子たちは笑い声しか寄こさなかった。取り巻き女子の一人が脱がせた衣類一式を抱えると、「これ、しばらく没収ね」と言い残して、どこかへ持っていってしまった。
瑞樹は素早く女子たちへ目を走らせ、この場に多田さよりがいないのを改めて確認して、うつむいた。
どんなに哀願したところで服を返してもらえる見込みはなく、しばらくはパンツ一枚でいるしかなくなった瑞樹を女子たちはじっと見つめた。ちょっとだけ顔を横に向けているものの、目はしっかりパンツ一丁の瑞樹を捉え、口に手を当てて笑う。「いい気味だね」と囁く声が聞こえる。ひどい。人をパンツ一枚の裸に剥いて、なにをさせようというのだろう。
立って、と美玲に命じられ、仕方なく瑞樹は女子たちに背中を向けたまま、腰を上げた。もう下手に逆らえない、従順にならざるを得ない、と瑞樹は考えた。どんなことをさせられるのか、不安で目まいを覚えるほどだった。ちょっとしたためらい、いやだと思う気持ちが態度に出ると、たちまち美玲を中心とする女子たちにそれを反抗的だと見なされ、場合によってはそれが彼女たちの気に障り、もっと残酷な罰を受ける羽目になるかもしれない。考えたくないけれど、パンツを脱がされてしまう事態だってありうる。瑞樹のズボンと上履き、靴下をいとも簡単に脱がせたのだから、その気になればゴムで締めつけているだけの小さなブリーフを瑞樹の体から奪うのに彼女たちは十秒もかからないだろう。
立ち上がった瑞樹は、すぐに回れ右をさせられた。ざっと並ぶ同級生の女子たちと対面した形になる。彼女たちは、当たり前ながら全員、普通に服を着ている。一名は体操着姿だけれど、まあ、教室はもちろん、バス停や近所の野菜直売所にいても特に不思議ではない。つまり、周囲に受け入れられる格好だ。それにたいして瑞樹はどうか。わずかに白いブリーフのパンツを一枚まとっただけの裸。こんな格好では教室はもちろん、この体育館の倉庫から出るのも相当の勇気が必要になる。まず目撃した人が黙っていないだろう。思わず腕で胸や下腹部を覆い、女子たちの無遠慮な視線から肌やパンツの一部を守る。
脱がされる前から感じていた女子たちの醸す威圧感は、パンツ一丁に剥かれて倍加した。美玲は腕を組み、思案するような顔つきをして瑞樹に体を寄せてきた。横に並ぶ女子たちもそれに倣い、瑞樹を取り囲むように輪をぐんと狭めた。
「ねえミズキ、さっきの続きだよ。お前、エッちゃんに雑巾ぶつけたよな」
「……ぶつけた。だからそれについては、さっきから謝ってるだろ」
「もう一回謝っとこうか。せっかくパンツ一丁になったんだから、その格好で土下座」
意味が分からない。美玲はなにを考えているのか。
「……やだ。裸になったんだから、もう許してよ」
「だめ。土下座」
「だって、さっき謝ったのに。雑巾ぶつけたことについてはおれ、一度もごまかしてないよ。正直に認めて、申し訳ないと思って、ちゃんと謝ったよ」
なるべく刺激しないように言葉を選ぶ。でも、それで納得する相手ではなかった。
「いや、あのね、謝ったとか謝ってないとかって問題じゃないの。せっかくお前がパンツ一丁になったんだから、もう一度土下座して謝れって言ってんだよ」
「でも……」
「でも、じゃない」
瑞樹の口を閉じさせると、美玲は体操着姿のエッちゃんを呼び寄せ、瑞樹の真ん前に立たせた。エッちゃんの撫で肩に手を置く美玲の細長い指を見て、瑞樹は目を逸らした。長い爪が天井の蛍光灯を反射し、蛇の目のようだった。
瑞樹とほとんど同じ背丈のエッちゃんは、瑞樹の足の指に向けていた目を少しずつ上げた。ねちっこい視線だった。白いパンツのところで左右に動き、また上昇し、瑞樹の目の高さまで来ると、ぴたりと止まった。パンツ一丁の恥ずかしい姿を一方的に見つめられ、もじもじ体を揺らしながら羞恥に耐える瑞樹の様子をエッちゃんは少しはにかむような表情を浮かべて、じろじろと観察する。観察ついでに生唾をゴクッゴクッと、続けて二度飲み込んだ。
もう謝ったのに、また土下座させられるのなんて真っ平御免。もし服を脱がされていなかったら、断固としてこの正当な理由のない二度目の謝罪を拒否しただろう。しかし、今のパンツ一枚の心もとない格好では、もう言いなりになって、女子たちの怒りの感情が燎原の火とならないようにするしかない。意地を張っている場合ではなかった。
「分かったよ。土下座すればいいんだろ」
瑞樹は吐き捨てるように言うと、正座の姿勢を取った。いつになったらこの場から解放されるのだろう。掃除のペナルティが終わったら帰宅してよい話だったのに、まだしばらくは自由になれそうもない。服を返してもらえそうにない。激怒した女子たちから一刻も早く逃れるには、彼女たちの求めに淡々と素直に応じるしかなさそうだった。
~同じく小学六年の頃、放課後、同級生の女子に呼び出された瑞樹
「分かったよ」
「分かったよ、じゃなくて、分かりました、でしょ」
「分かりました」
仕方がない、と瑞樹は観念した。この女子たちにはすでにパンツ一丁の姿をさんざん見られている。今さら恥ずかしがって、脱ぐのをためらっていると、美玲の手で本当に全裸に剥かれかねない。瑞樹は渋々立ち上がると、まず、シャツに手をかけた。
「ほー、すごい。いきなり上半身裸になったよ」と、取り巻き女子が感心する。「わたしはまたてっきり上履きと靴下から脱ぎ始めると思ったよ。シャツから脱ぐなんて、さすがに度胸がいいね」
「わたしたちに見られるのが好きだったりしてね」
もう一人の取り巻き女子、放送部長が破顔した。
――ちきしょう、こいつら調子に乗って……。抑えようとしても抑えきれない苛立ちがちょっと顔に出てしまった。そのムッとした、唇を尖らせた表情を美玲に見られてしまい、瑞樹の体は一瞬硬直した。慌てて目を逸らし、しずしずと上履きと靴下を脱ぐ。残るはこの長ズボンだけになったが、ここに来て、瑞樹は女子たちの視線を強く感じた。脱ぎたくない。どうしてもためらってしまう。
「早くそれも脱ぎなよ」「見ててあげるからさあ」と、取り巻き女子二人が囃す。
ちらりと美玲に目をやる。彼女は椅子に座ったまま背中を反らして伸びをした。瑞樹は息を一つ吐くと、ベルトのバックルを外し、恥ずかしさに顔を赤く染めながら、ズボンを下ろした。足首からズボンを取り、かたわらに置き、改めて正座の姿勢に戻る。
「あ、まだ座れなんて言ってないよ。勝手な真似しない。立って。気をつけ」
ポンと手を一つ打ち鳴らし、美玲が咎めた。瑞樹は不満たらたらだった。洋服を脱いでパンツ一丁で土下座するように命じられたから、こうして仕方なしに恥ずかしい格好になったのであって、言ってみれば土下座のために裸になったのだ。気をつけの姿勢を取って美玲たちにじろじろ見られるために洋服を脱いだのではない。それでも、瑞樹は逆らえなかった。下手に口答えしようものなら、「こいつ、反抗的だね」と美玲に見なされ、お仕置きされ、このパンツすら強引に剥ぎ取られてしまう恐れがある。
美玲と取り巻き女子の二人は、瑞樹に気をつけの姿勢を保たせ、じっくりと瑞樹の裸を眺めて、その肌のすべすべ、乳首の色などを誉めそやした。
「ね、この前と比べて、白いブリーフパンツのサイズが小さくなってないかな?」
「ほんとだ。ミズキくん、そのパンツ一回り小さいよ。ピッチピチじゃん」
取り巻き女子たちに指摘され、瑞樹は無意識のうちに気をつけの姿勢を崩し、パンツに手を当てた。すぐに美玲から「気をつけだろ、お前は」と注意され、慌ててパンツから手を放す。彼女たちの視線が痛いほどパンツに集まる。
~瑞樹の寮母、ミユキさんに起こされる朝
忘れ去りたい思い出がさらに苦しい思い出を呼び起こし、その翌日、学校を休みたかったけれど、寮母のミユキさんは許してくれなかった。風邪っぽいと訴えて体温計を咥えたものの、あいにく平熱だった。「だめよ。一回怠けると癖になるから」布団を剥がされる。「お風呂場に行ってシャワーを浴びてきなさい。目が覚めるから」鬼寮母、ミユキさん。ベッドで丸まっている瑞樹のシャツを引っ張り上げて脱がすと、続けてズボンにも手をかけた。いや、やめて、とむずがるあいだに白いブリーフのパンツ一枚に剥かれた瑞樹は、夕べなかなか寝つけなかった体をシーツから引き離して、ベッドの横に立った。「急がないと遅刻するわよ。わたし、遅刻は許さないからね」悩みの相談には親身になってくれるのに、寮生または生徒としての務めについては滅多に妥協してくれない。瑞樹は恨みがましい気持ちのまま、上目遣いで自分の担当寮母を見た。命令され、瑞樹は仕方なくパンツを脱ぐ。ミユキさんにはもうすっかりお馴染みになっているおちんちんながら、それでもやはり恥ずかしくて、そっと手を当てる。
「その格好でお風呂場まで行くのよ。丸裸なら少しはテキパキ行動できるでしょ」
やだ、またみんなに見られちゃう、と訴える瑞樹を無視して、ミユキさんは瑞樹の腕を取ると、指でおちんちんを扱いた。い、いや、と身をくねらせても、瑞樹の背中に回した腕を放さず、おちんちんに強力な刺激を一方的に与え続ける。
アウウ。喘ぐ瑞樹は、射精寸前だった。ミユキさんは手を止め、勃起状態の瑞樹を容赦なく部屋の外へ押し出した。ほかの寮生は朝食中、まだ食堂だ。急げば誰にも見られずに済む。自分の今のあられもない格好を意識し、体が震えた。素っ裸で、しかもおちんちんを硬化マックスにしたまま、廊下にいるのだ。閉められたドアが恨めしい。誰かに見つかったら、どう言い逃れをすればいいのか。
もうすぐ食事を済ませた寮生がぞろぞろ廊下に出てくるわよ、とドア越しに脅され、真っ裸の瑞樹は上向きのおちんちんをゆさゆさ揺すりながら、お風呂場へ向かった。人と鉢合わせになった際にもおちんちんを見られないように手で覆いたいところだけれど、勃起しているので剥き出しの敏感な亀頭に手のひらが触れやすい。だから、こうして隠さず、丸出しのまま、小さな角のようなおちんちんを上下に揺すって進むよりほかなかった。
階段を曲がったところで、バケツを提げた寮母、まん丸い体型の寮母とぶつかり、バケツの水をかぶってしまった。騒ぎを聞いて、近くにいた寮母が続々と集まってきた。一糸まとわぬ瑞樹の姿に驚き、呆れる。尻餅をついた瑞樹の前に出てきたのは、ミユキさんだった。
「よかったねえ。水を浴びて、おちんちんが元のサイズに戻ってる」
そう言って瑞樹の腕を取り、ひょいと立たせる。手慣れたものだ。ミユキさんの威厳に満ちた態度は瑞樹に抗議の暇も与えない。寮母たちの見守る中、微笑みを浮かべて、全裸の瑞樹を風呂場へ連行するのだった。
~駄菓子屋三ツ星の倉庫で瑞樹はパンツ一枚に剥かれ、松本るうな、蜂須賀美鈴(はちすかみれい)と二人の後輩から激しく問い詰められた末、パンツを脱ぐように言われ、たまらなくなって逃げ出すシーン
水に入って難を逃れる。こちらは裸で相手が服を着ている場合、この手は最高の切り札になる。(中略)
倉庫からすかさず後輩のタツキとレイナが追いかけてきた。絶対に捕まってはならなかった。これまで美鈴やその取り巻き連に見られたのはパンツ一枚の姿だけで、それでも十分に恥ずかしいのだけれど、まだ素っ裸にひん剥かれた経験はなかった。女子たちの前、しかも松本るうなのいるところでパンツを脱がされるなんて、考えるだけでも恐ろしい。
瑞樹は道路の向こう側の用水路に向かった。彼女たちの足は速く、さっきは簡単に捕まってしまった。今は裸足だから、さらに悪い条件である。一刻も早く有利な状況、水の中に身を投じるしかない。
「パンツ一丁のくせに、どこまで逃げるんですかあ」
タツキの余裕たっぷりな冷やかしを背中で聞きながら、瑞樹はフェンスをよじのぼった。道路沿いを流れる幅二メートルほどの用水路には水が満々と流れていた。振り返ると、二人の後輩女子、タツキとレイナがフェンスに身を寄せて、用水路の縁にいる瑞樹を見下ろしていた。二人の白いブラウスに格子縞の影が揺れた。
とにかく彼女たちから逃げることだけを考える瑞樹は、ためらわず用水路の中に足を突っ込んだ。服を着た彼女たちにはできない芸当だった。用水路は思いのほか深く、流れも速かった。彼女たちは驚きの声を上げて、用水路沿いの道路を走って追いかけた。
ぐんぐん彼女たちを引き離す。誤算だったのは、この用水路がどこまでも道路沿いにあることだった。途中でカーブして、道路から離れたところへ瑞樹を運んでくれたらよかったのだけれど、川と違って人工物なのであくまでも直線だった。
用水路にかかるコンクリートの橋は水面との差があまりなく、これを通過するために瑞樹は頭をうんと低くしなければならなかった。流れはいよいよ速くなり、タツキとレイナの足も追いつかなくなった。
トンネルの数が増えてきた。瑞樹は呼吸のとき以外は頭を水の中に沈めた。適当なところで用水路から上がらなければならないとは思ったけれど、川と違って岸はなく、左右のコンクリートはほとんど垂直だった。水中から顔を出し、つかまる物を探す。左右に迫るコンクリートの窪みはどれも浅かった。
前方に橋が見えた。アーチ橋のように弓なりの形状であれば、用水路の流れに乗る身として大変にくぐりやすいのだけれど、これまでの橋と同様、コンクリート床板を通しただけのシンプルな構造だった。しかもよく見ると、今までの橋よりもコンクリートが分厚く、それだけ水面上の空間が狭い。
このままでは確実に橋桁に頭をぶつける。瑞樹は大きく息を吸い込み、潜った。
ずいぶんと長く水から頭を上げなかったのは、水の中がいつまでも暗かったからである。やっと明るくなって、つまり橋を通過して、水面へ顔を出す。しまった、と思ったときには、瑞樹の体は網にぶつかっていた。
用水路の幅が狭くなる手前のところに網がかけられ、その先へはよけいな物が流れないようになっていた。網のおかげで瑞樹はずっと先まで延々と流され続けなくて済んだ。ただ流れが相当に激しく、強い水圧により体勢を網に押しつけられた状態から体の向きを変え、コンクリート伝いに用水路を出るのはかなり難儀で、水面から顔を出しているのが精一杯だった。
早く出なくちゃ、と瑞樹は焦った。ぐずぐずできない。タツキとレイナに追いつかれてしまう。網に指をかけ、力を入れて用水路から体を引っ張り上げる。道路とは反対側のコンクリートの斜面へ体の向きを変えたところでバランスを崩し、背中から網に叩きつけられてしまった。もう一度、網に指を引っ掛け、よじのぼる。水面から体を上げた状態でコンクリートの斜面への移動を試みる。そこから金網のフェンスに手が届けば、用水路からの脱出は成功したも同然だった。
「なーにやってんすか、ミズキ先輩」
タツキとレイナだった。呆れた顔をして、網に打ちつけられてもがく瑞樹を見下ろしている。――ゲッ。もう追いついちゃった? 危うい姿勢のまま振り返った瑞樹は、バランスを崩して、水中に落ちてしまった。二人の女子中学生はフェンスを揺すって笑った。
パンツ越しにおちんちんが網に押しつけられ、上がろうとすると、こすれてしまう。この状態が続くと、意に反して性的な快感を催しかねない。それくらい背中に受ける水圧は強く、危険だった。網を掴んだ手に力を入れて、足の指を網から離し、体をゆっくり上げる。と、水流に負けて足の指が網から外れてしまった。指の力だけではとても体重を支え切れない。瑞樹はまたもや水中に落ち、凄まじい水圧を受けて全身を網にぶつけた。激しい水流がおちんちんの袋に当たって、美玲に膝蹴りされた痛みをよみがえらせる。瑞樹は水面から顔を出すや、「ヒイイ」と呻いた。
なんとか体勢を整えて、網の目に足の指を入れて、網をしっかり掴みながら、フェンスに手の届くところまで体を上げる。
「やだ、ねえ見て、タツキ、ミズキ先輩のパンツ……」
「ほんとだね。お尻丸見えだ。ほとんど素っ裸も同然だね」
しまった。水中を脱したと思ったら、いきなり膝までパンツが下がってしまった。急いで水中に身を隠し、水の中で宙返りするようにして、パンツを引き上げる。
網のあるところには鉄板が通してあって、彼女たちは簡単に向こう岸に渡れた。仮に瑞樹が道路の反対側に上がったとしても、たやすく捕まってしまうだろう。
「早く用水路から上がってくださいよ。いつまで水遊びしてんですか?」
「そんなところに入って逃げられると思ってんですか?」
用水路を覗き込む彼女たちがあまり楽しそうに騒ぐので、通りかかったサラリーマン風のおじさんに見つかってしまった。だぶだぶのワイシャツ、ズボンに身を包んだおじさんは弁当箱を思わせる四角い顔を真っ赤にして、フェンスから身を乗り出した。用水路は人がみだりに入るところではない、小学三年生でもそれくらい分かるはずだ、早く上がりなさい、と怒鳴りつける。
「おじさん、あの子、小学三年生じゃないですよ。あれでも中学二年生なんです」
タツキに教えられて、おじさんは「なに、中学二年生?」と、上ずった声を出した。履き古した革靴にべったりと土が付いている。踵がズボンの裾を踏むと、おじさんはタツキの顔と網をよじのぼるパンツ一丁の瑞樹を交互に見た。フェンスを越え、髪から水滴をポタポタ垂らす瑞樹は、またひとしきりおじさんから説教された。
エッチな話だけでなく、妖怪が出てきたり、ちょっと超常現象が起きたりもします。
ベースにあるのは昭和時代の世界観。スマホとかは出てきません。電話には必ずコードがあります。
リリースの準備が整いましたら、最初に当ブログでご案内させていただきます。
パンツ一丁にされた瑞樹くんのイメージ画像です。
ナオス君もそうですが、裸で川を流されたりする話が好きなので新作でも類似の場面があってうれしいですね。
発売を楽しみにしておりますので、是非思うがままにお書きいただければと思います。
完成が楽しみです。