奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

午前中の散歩 ハエとかアリとか

2021-08-09 20:39:28 | 奈良散策
奈良散策 第170弾


8月1日の午前中に散歩に行きました。その時に撮った写真です。最近はマクロレンズを取り付けた一眼レフを持ち歩いているので、どうしても虫を中心に撮ってしまいます。そうすると、「奈良散策」なのか「奈良のむし探検」なのか分からなくなってきました。



マンションを出てすぐのところで虫を探し始めました。すると、こんなハエがいました。



たぶん、以前も撮ったイエバエ科のチャバネヒメクロバエ♀かなと思って翅脈を見てみました。以前は♂を調べたのですが(こちらこちら)、その時の翅脈とよく似ています。



特に△で示した翅脈の瘤のような特徴がよく似ています。これはたぶん、破線の部分で翅が折れる仕組みになっているのだと思います。



このハエは奇妙な止まり方をするのですが、名前は分かりません。



これはネコハエトリ







これはトビイロシワアリ





それからルリアリ。まだ、マンションの敷地を出て50 mほどしか歩いていません。





こんなコガネ2匹が葉っぱを食べていました。頭盾前縁が反りあがっていないので、ドウガネブイブイかなと思ったのですが、どうでしょう。



ここからアカメガシワの葉を見にいきました。葉の基部にはこんな丸い蜜腺があります。これが花外蜜腺です。これでアリを誘引して被食防御をするという話です。



実は、葉の縁にもこんな蜜腺が点在しています。



そこにアミメアリが来ていました。





でも、アリ以外にもこんな甲虫もやってきていました。これはトビイロマルハナノミ



ドウガネサルハムシみたいな甲虫の周りにクロヤマアリがいっぱいやってきていました。こんな風に被食防御をするのかなぁ。





最後はカマキリの幼虫です。前脚の付け根が撮れなかったので種までは分かりません。

雑談1)今日はキシュウスズメノヒエの顕微鏡写真を出したのですが、そのほかにもコツブキンエノコロ、イヌホタルイ、ノギナシセイバンモロコシ、テンツキの写真を撮ってあるので、少しずつ出していきたいと思います。実は、写真を入れて話をまとめるのが結構時間を取るので後回しになっていました。このほか、冷凍庫には小さなトビハムシやシロバナサクラタデについていたハエなどが入っているので、ぼちぼち調べていきたいと思います。

雑談2)クロスジチャイロテントウに関しては、昨日、市立図書館に行って、佐々治寛之著、「テントウムシの自然史」(東大出版、1998)を借りてきて読んでみました。クロスジチャイロテントウは「湿地に従属したチャイロテントウ属」として、比較的最近になってクロスジチャイロテントウが発見され(1960)、その後、ムナグロチャイロテントウ、ムモンチャイロテントウが記録されたそうです(1977)。クロスジチャイロテントウとチャイロテントウは交尾器を含む形態的差異によって明瞭に区別できるのですが、クロスジとムナグロは黒状の有無以外に明瞭な区別点がないそうです。両者を遺伝的な多型と考え、遺伝的に黒状種が優勢とすると、場所によってムナグロあるいはクロスジばかりが見いだされるのが説明できない、そんな問題を抱えているようですが、食性については何も書かれていませんでした。

植物を調べる キシュウスズメノヒエ

2021-08-09 16:39:03 | 植物を調べる
今回は7月5日にガマの生えている池のそばで見つけたイネ科の植物を調べてみました。





こんな二股になっているので、おそらく、キシュウスズメノヒエだろうなと思ったのですが、アメリカスズメノヒエも二股になっていたので、違いがよく分かりませんでした。見る限りはすべての花序が2個の総(穂状花序と総状花序を合わせて、[1] 長田氏の「日本産イネ科植物図譜」に倣って書いておきます)からなります。アメリカスズメノヒエの場合は3総もあるので、たぶん、キシュウスズメノヒエで間違いないだろうと思うのですが、一応、細部を調べてみることにしました。

「日本産イネ科植物図譜」に載っている群の検索表を使えば次のようになります。

①花序は頂生、特異な総包葉はない
②穂状花序または総状花序、あるいはそれらの花序が2個~多数集まってできた花序を持つ
③花軸は明らかに小穂より幅が狭い
④総は2個~多数、稈頂またはその近くにほぼ手のひら状または放射状に集まり、まれに枝を分けるものもある 第4群

ここまではまず間違いないのですが、「日本産イネ科植物図譜」では、ここからは絵と説明からどの属か判断しないといけません。

⑤a 小穂は披針形~長楕円形で、1小花のように見え、第1包頴は微小、外側の頴を取り除くと、厚い護頴が内頴を抱いた小花が出てくる。ほとんどの種類が農耕地や都市の空き地にはえる メヒシバ属 Digitaria
⑤b小穂は円形、楕円形、細い卵形で、1小花のように見え、第1包頴はふつうない。外側の頴を除くと、厚い護頴が内頴を抱いた小花が出てくる スズメノヒエ属 Paspalum

可能性がありそうなのはメヒシバ属とスズメノヒエ属なのですが、説明を読むと小穂の形だけの違いです。そこで、小穂を実体顕微鏡で調べてみました。





最初は総の拡大です。小穂は片側についていて、表側が平、裏側(花軸側)が湾曲しています。







小穂を拡大して見てみました。全体の形としては楕円形で先端が尖っています。表側にある小さな鱗片状のものが第1包頴です。裏側は有毛で、これが第2包頴です。ここまでは良かったのですが、表側にある膜と第2包頴をはがして出てきた膜が何なのかで迷ってしまいました。キシュウスズメノヒエの解剖図は、上記の本のほか、[2] 桑原義晴著の「日本産イネ科植物図譜」、[3] 長田武正著の「日本帰化植物圖鑑」にも載っていました。この記述から、表側にある鱗片状の第1包頴の内側にあるのが不稔の第1小花の護頴、裏側にある第2包頴の内側にあるのが稔性の第2小花の護頴のようです。

[4] 杉本順一著の「日本草本植物総検索誌 単子葉編」には種までの検索表が載っています。

①花序の枝は片側の実に小穂をつける
②花序枝2本は接しない
③小穂は前後に平たい
 ④a 護頴の辺はうすくて内へ巻かない メヒシバ属 Digitaria
 ④b 護頴の辺は厚くて、内へ巻く スズメノヒエ属 Paspalum
  ⑤小穂は長楕円形、鋭頭 2.5~4mm。幅の2倍より長い。花序は2枝だけ
  ⑥小穂は有毛、2.5~3mm キシュウスズメノヒエ

これによると、メヒシバ属とスズメノヒエ属の違いは護頴の辺が内へ巻くかどうかで見分けています。上の写真を見ると、内側に巻いているので、これはスズメノヒエ属ということになります。次は小穂の大きさと形状です。



それで、小穂の形を測定してみました。小穂の長さは3.1 mm、幅は1.5 mm。なかなか微妙な数字なのですが、一応、キシュウスズメノヒエの範疇には入っているようです。アメリカスズメノヒエの小穂は卵状楕円形で、無毛で光沢があるというので、これとは違うようです。







ついでに撮った写真も載せておきます。

それにしても、いろいろ図鑑を見ると、少しずつ書いてあることが異なり、意外に迷いました。例えば、第1包頴に関しては、[1]では「ないか、または退化して鱗片状」、[2]では「長さ0.6~1mm」、[3]では「消失」となっています。実際には小穂によって鱗片状のものがあるものとないものが混じっていました。これまでイネ科植物をいくつか調べてきたのですが、まだまだ分からないことが山ほどあります。これからも頑張って調べていきたいと思います。