第94回アカデミー短編ドキュメンタリー賞ノミネート作。アフガニスタンはカブールの難民キャンプに暮らす年端もいかない夫婦を追った22分間の作品だ。間もなく第一子を迎えようとする彼らの生活は困窮しており、夫は確かな収入を求めて国防軍の採用面接を受ける。しかし入隊には近親者の同意が必要で、彼が戦地に赴くことを良しとする者は誰もいない。
土を固めただけの住居、土を掘っただけの用水路という過酷な生活環境はもとより、映画のほとんどの場面で上空に監視気球、ドローン、軍用ヘリが見切れている事に彼らの現実を見る。そして国防軍の仕事が得られなければ、後はケシ畑の収穫しか職はない。少しでも幸せになれたらと願った夫の4年後の末路はあまりにも苦しい。しかし、本作の真のエンディングは映画の外にある。2021年、米軍のアフガニスタン撤退によるタリバンの復権という現実を僕達は忘れてはならない。
『ベナジルに捧げる3つの歌』22・アフガニスタン
監督 エリザベス・ミルザイ、グリスタン・ミルザイ
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