『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞6部門を制したデミアン・チャゼル監督、ライアン・ゴズリングのコンビ第2弾。これまでとはガラリと趣を変え、人類初の月面着陸を果たしたニール・アームストロング船長を描く実録伝記映画だ。気鋭監督らしく彼の生涯をなぞる通り一遍のアプローチは行わず、ジェミニ計画からアポロ計画というアメリカ宇宙開発史をアームストロングの一人称で描く構成になっている。そこには愛国的イデオロギーもなければ、お決まりの家族愛ドラマもない。ゴズリング演じる船長は冷静沈着、感情を表に出さないクールガイで(そうでなければ宇宙飛行士は務まらない)、死と紙一重の訓練に挑み続ける姿は次第に狂気すら帯びていく。この常軌を逸していく情熱こそ『セッション』『ラ・ラ・ランド』とも共通するチャゼルのテーマである。ゴズリングも孤高と静かな狂気は『ドライヴ』『ブレードランナー2049』から続く演技的オブセッションだ。
アメリカ史を語る上で欠かせないエピソードながら、ひたすら内向的な平熱の低さが敬遠されたのか全米賞レースでは冷遇され、アカデミー賞では技術部門のノミネートに留まった(CGを排し、特撮にこだわった技術が視覚効果賞を受賞)。飛行シーンやロケット船内はアームストロングの目線から見える範囲、もしくは現実的にカメラが置ける位置からしか映されず、事故によって船体が無限に回転をするシーンは閉所恐怖症でなくとも卒倒必至の迫力だ。今回、チャゼルは場面に合わせてIMAX、35mm、65mmとカメラを使い分け、役者の毛穴が見える程に肉薄する。2018年のアメリカ映画は『スター誕生』しかり、人間ににじり寄ったミニマリズムの作品が相次いで興味深い。本作でゴールデングローブ賞に輝いたジャスティン・ハーウィッツの名スコアはアームストロング船長が月面で聞いたテルミン音楽に由来するという、同様にミニマルなアプローチである。
ここまでアームストロング個人に焦点が絞られるとジェイソン・クラーク、コリー・ストール、カイル・チャンドラーらイイ面構えの役者陣も見せ場に乏しい。とりわけ妻を演じたクレア・フォイは実力に見合った出番があるとは言い難く、加えて“耐え忍ぶ妻”という役柄は時代錯誤で残念だ。
アームストロングを支えた月への衝動は最後に明らかになる。幼くして死んだ娘への想い。それは地球(ここ)ではなく宇宙(そら)なら再び娘の魂に会えるのか?という切なるものだ。静寂の月面で訪れる平穏の時に僕は心打たれた。
アメリカ史を語る上で欠かせないエピソードながら、ひたすら内向的な平熱の低さが敬遠されたのか全米賞レースでは冷遇され、アカデミー賞では技術部門のノミネートに留まった(CGを排し、特撮にこだわった技術が視覚効果賞を受賞)。飛行シーンやロケット船内はアームストロングの目線から見える範囲、もしくは現実的にカメラが置ける位置からしか映されず、事故によって船体が無限に回転をするシーンは閉所恐怖症でなくとも卒倒必至の迫力だ。今回、チャゼルは場面に合わせてIMAX、35mm、65mmとカメラを使い分け、役者の毛穴が見える程に肉薄する。2018年のアメリカ映画は『スター誕生』しかり、人間ににじり寄ったミニマリズムの作品が相次いで興味深い。本作でゴールデングローブ賞に輝いたジャスティン・ハーウィッツの名スコアはアームストロング船長が月面で聞いたテルミン音楽に由来するという、同様にミニマルなアプローチである。
ここまでアームストロング個人に焦点が絞られるとジェイソン・クラーク、コリー・ストール、カイル・チャンドラーらイイ面構えの役者陣も見せ場に乏しい。とりわけ妻を演じたクレア・フォイは実力に見合った出番があるとは言い難く、加えて“耐え忍ぶ妻”という役柄は時代錯誤で残念だ。
アームストロングを支えた月への衝動は最後に明らかになる。幼くして死んだ娘への想い。それは地球(ここ)ではなく宇宙(そら)なら再び娘の魂に会えるのか?という切なるものだ。静寂の月面で訪れる平穏の時に僕は心打たれた。
『ファースト・マン』18・米
監督 デミアン・チャゼル
出演 ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、カイル・チャンドラー、ジェイソン・クラーク、コリー・ストール
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