長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ラスト・ターゲット』

2020-04-01 | 映画レビュー(ら)

 『コントロール』で映画監督としての才能を発揮したアントン・コービンを当代きっての名プロデューサーであるジョージ・クルーニーが放っておくワケもなく、マーティン・ブース原作『時間の蝶』の映画化に招聘したのが本作(原題The American)だ。
いわば雇われ監督となったコービンは主人公の潜伏先となるイタリア寒村を美しいショットで構成し、その美学を炸裂させている。静かにディテールを積み重ねていく筆致はまるで劇中のクルーニーが組み立てるサブプレッサー付きショートレンジライフルのような異貌であり、映画に独特の魅力もたらしているが『コントロール』にあった題材への思い入れは感じられず、映画としての熱量には乏しい。

 任務に失敗した殺し屋クルーニーがほとぼりを冷ますため、イタリアの山村にやって来る。その間、在宅勤務とばかりに他の殺し屋の銃をカスタマイズする。職人気質の作業、夜は親しくなった牧師とワインを酌み交わし、たまに娼婦を買う。登場する女優は美女ばかりだ。

 やがて彼を狙って刺客が送られてくる。足を洗うと決めた男はホレた娼婦を守るため戦いを挑む。ハードボイルドのクリシェが的確に韻を踏まれるが、映画の体温は上がらない。クルーニーはもう少し粋を発揮してもコービンに泥を塗る事にはならなかっただろう。


『ラスト・ターゲット』10・米
監督 アントン・コービン
出演 ジョージ・クルーニー、ビオランテ・ブランド、テクラ・ルーテン
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『コントロール』 | トップ | 『アンオーソドックス』 »

コメントを投稿

映画レビュー(ら)」カテゴリの最新記事