今年のアカデミー賞でドキュメンタリー賞候補のリストに目をやると、批評家賞で善戦した有力作が軒並み落選していることに驚く。そんな大番狂わせの中、短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた『ラスト・リペア・ショップ』は受賞の最有力かもしれない。舞台はハリウッドのお膝元LA。小中高学校から送られてきた楽器を無償修理する職人たちが主人公だ。人には歴史がある。音楽や楽器との出会いを紐解けば、ある者は性的マイノリティであり、ある者は移民だ。ランニングタイム40分の本作は自ずとアメリカの成り立ち、かつてあった寛大さを浮かび上がらせる。一心不乱に楽器と向き合う子どもたちと織りなす合奏に、ブラスバンド出身の僕は胸熱くならずにはいられなかった。
『ラスト・リペア・ショップ』23・米
監督 ベン・プラウドフット、クリス・パワーズ
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