長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ポライト・ソサエティ』

2024-08-04 | 映画レビュー(ほ)

 ニダ・マンズール監督の長編デビュー作『ポライト・ソサエティ』は、あなたがロンドンに暮らすパキスタン系ムスリムのZ世代でなくても、笑みがこぼれ、愛さずにはいられなくなる1本だ。

 リア・カーンはロンドンに暮らす10代の女の子。将来の夢はスタントウーマンになること!日々、中二病をこじらせたセリフを言い放ち、自慢のスタント技を動画撮影している。当然、両親は気乗りしない表情で、学校(女子校)でも周囲から浮きまくっている。そんな彼女の唯一の理解者が芸大に進学した姉リーナだ。ところが、リーナは学校を休学してからというもの、ふさぎ込みがち。そんなある比、母が縁談を持ち込んで…。

 女の子だってカンフー映画もおバカコメディも大好き!『ポライト・ソサエティ』はありとあらゆるポップカルチャーをごった煮した楽しさがあり、BGMにはなんと日本歌謡まで出てくる。本作が映画初主演となるプリヤ・カンサラは立ち回りも凛々しく、映画のチャームを一手に担う好演だ。MCUのTVシリーズ『ミズ・マーベル』でも活躍したベテラン女優ニムラ・ブチャが、ここでも憎々しげにヴィランを演じているのが楽しい。

 パキンスタン系の移民2世を描いた作品には近年、NetflixのTVシリーズ『私の“初めて”日記』や先述の『ミズ・マーベル』、そしてマンズールが手掛けた『絶叫パンクスレディパーツ!』などがある。祖国を離れた両親とは違い、異国で産まれた彼女たちの日常には幾つもの文化のミックスがあり、カンフー、シスターフッド、ダンス・ミュージカルまであらゆるジャンルを横断する『ポライト・ソサエティ』にはそんな彼女たちのバイタリティが反映されているのだ。筆者のような遠い島国に暮らす不惑の中年には何とも心強く、活気づけられた映画である。


『ポライト・ソサエティ』23・英
監督 ニダ・マンズール
出演 プリヤ・カンサラ、リトウ・アリヤ、アクシャイ・カンナ、ニムラ・ブチャ、セラフィーナ・ベー、エラ・ブルッコレリ、ショナ・ババエミ
※8月23日(金)新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷、ほか全国公開

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【ポッドキャスト更新】第60... | トップ | 【ポッドキャスト更新】第61... »

コメントを投稿

映画レビュー(ほ)」カテゴリの最新記事