長内那由多のMovie Note

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『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』

2019-03-29 | 海外ドラマ(ろ)



今日は36歳の誕生日。今さら浮かれるような歳でもないが、友達みんなが集まってバースデーパーティを開いてくれた。ダベって、酒飲んで、ちょっとマリファナを決める。良いも悪いも一通り経験した歳だ。何てことはない。よく知らない男といいカンジになったんで、これから家に“お持ち帰り”だ。パーティー会場を出てふらふら歩けば、そこへ車が突っ込んできて…。

ふと、気付けばパーティー会場のトイレにいる。夢か?ラリってたのか?ともあれデジャブに心ざわついて車は避けたが、今度は下水溝に落ちてしまう。するとまたトイレで気が付いた。あれ、あたし今死んだの??

『ロシアン・ドール』はその魅力を伝えるのが難しい奇妙奇天烈なドラマだ。主人公ナディアは死の無限ループに陥り、何度も36歳の誕生日をやり直す。車は避けれても階段から落ちたり、ガス爆発に巻き込まれたり、路上で凍死したりと思いがけない形で死は何度も襲ってくる。きっかけも原因もさっぱりわからない。ドラマのジャンルもブラックコメディからホラー、ラブストーリーまでコロコロと転調し、さっぱり予想がつかない。

主人公が同じ1日を何度も繰り返すといえば『恋はデジャブ』はじめ数々の名作が頭をよぎるが、いずれもテーマとしているのは”人生の生き直し”だ。ナディアの職業がゲームプログラマーである事に注目して欲しい。彼女は死に直面する度にそれを回避する方法を探し、人生の別ルートを見つけていく。まるでデバック(プログラムのバグを見つけ、修正する作業)のような繰り返しを行っていく中で、彼女もまた人生の意味を見出していくのだ。

製作総指揮と主演を兼任するのはナターシャ・リオン。ガスガスの酒やけボイスは酸いも甘いも知った人生の年輪か、サバサバした歯切れの良さが心地良い。若い頃から活躍してきた彼女も2005年以降は病魔に苦しめられる人生を送ったらしく、”生き直す”というテーマを持った本作にはそんな実体験も反映されているのではないだろうか。変化球のストーリーテリングの後には不思議な多幸感が拡がっていた。

好評を受けてシーズン2の製作が発表された。無限ループの理由は謎のまま、果たしてナディアにはどんな人生のフローチャートが待ち受けているのか?リオンの新たな代表作の誕生である。




『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』19・米
出演 ナターシャ・リオン、チャーリー・バーネット、クロエ・セヴィニー
※Netflixで独占配信中※


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