長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ロッキー5 最後のドラマ』

2019-02-26 | 映画レビュー(ろ)

第1作目のジョン・G・アビルドセン監督を招聘し、シリーズ最終作として製作された第5弾。批評、興行共に惨敗を喫し、スタローンのキャリア衰退のきっかけとなってしまった(この後、93年の『クリフハンガー』を最後にスタローンは長い低迷期へと入ってしまう)。

悪徳税理士に騙されてロッキーは破産、故郷フィラデルフィアへと引き上げる。荒廃したスラムが続くロケーションは77年の第1作を彷彿とさせ、ロッキーが指導者として新たな人生を歩む姿に相応しいシチェーションだ。しかし目をかけた弟子には裏切られ、年頃の息子とは上手くいかず、何とボクシングシーンも出てこないのである。弟子トミー・ガン役トミー・モリソンはカリスマ不足、悪役トニー・バートンもヒステリックにがなるばかりで魅力に乏しい。

 だがここにある慎ましさこそシリーズが標榜する本質があるように僕は思うのだ。後の『クリード』はむしろ駄作と一笑に付された4、5の上に成り立っているではないか。ストーリーの連続性はもちろん、自らの過ちによって全てを失ったロッキーの喪失感、諦観が描かれた本作があってこそ『クリード』での老境が際立つのだ(4、5にこそスタローンが築いてきたユニバースの本質を見出している所にライアン・クーグラーの愛が感じられる)。

 もちろん、当時のスタローンには後にそんなドラマが待ち受けているとは知る由もなく、次作『ロッキー・ザ・ファイナル』まで16年の歳月を要することになる。


『ロッキー5 最後のドラマ』90・米
監督 ジョン・G・アビルドセン
出演 シルヴェスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング、トミー・モリソン、セイジ・スタローン、バージェス・メレディス、トニー・バートン

 

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