前回、ミニマリストはノマドか、と書いて、そういえば
「ノマドランド」(クロエ・ジャオ監督 2021年)
という映画が今年のアカデミー賞を受賞したんだった、と思い出して観てみました。
すごい映画でした!
今年見る映画の中の最高傑作になるんじゃないかと思う。
今アマゾンプライムで配信されているので、ぜひご覧になることをお勧めします。
アメリカネバダ州の企業城下町エンパイアが、リーマンショックによる企業倒産のあおりを受けて、町全体が消滅します。2011年頃の話です。
アメリカにはこうした企業城下町が多いのだとか。企業が倒産して町全体が消滅する、というようなことはけっこう起きているらしい。
主人公のファーン(フランシス・マクドーマンド)は企業の倒産及び夫の死により、この町を後にしてキャンピングカーで放浪の生活を始めます。
アメリカにはキャンピングカーで放浪する「ノマド」と呼ばれる人たちが多数存在し、年々増え続けているそうです。彼らは季節労働者として各地で短期的な仕事をしながらアメリカじゅうを放浪しています。
そんな人たちが集まる場所でファーンは様々なノマドたちと出会い、親しい友人もできます。
季節労働者であるノマドたちには高齢者が多く(60代~70代)、翌年彼らに再会したときには誰それが亡くなったという知らせを受けたりもします。
基本のストーリーはこのファーンのノマド生活を追う、というものですが、広大なアメリカの砂漠や荒野、そこに沈む太陽など、自然の描写が見事で、これは劇場で観た方が絶対いい映画です。
とにかく、自然が美しい。
けれども、アメリカの現実は厳しい。
ファーンたちは、クリスマスの前になるとアマゾンの倉庫で仕事をします。駐車場が確保されているし、賃金も割といいので。でも労働は過酷です。
アマゾンでモノを購入すると翌日配達されるシステムの裏には、彼らの過酷な労働がある、ということを肝に銘じたい。
その一方で、町を追われ家も金もなくどん底の暮らしをしている彼らが、実はとても豊かである、ということも描写されます。
もちろん社会の底辺で高齢にもかかわらず厳しい労働をしながら生きていくのは並大抵のことではないでしょう。でも、彼らを縛るものは何もない。
日々生きていくために多少のお金は稼がねばならないけれど、企業に勤めるサラリーマンのように縛られてはいない。彼らは実に自由なのですね。
自然と共に生きている。自然と共に生きることは、過酷でもある。
人生の何たるかを身をもって学んでいる人たち、それがノマドなのかもしれません。
これって、ミニマリストたちと共通する考え方ですね。自然体で生きる。自由が大事。
クロエ・ジャオ監督は中国系女性です。
原作は『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』(ジェシカ・ブルーダー著 ノンフィクション 2017年)
この映画は、フランシス・マクドーマンドとクロエ・ジャオ監督という二人の女性の快挙といえるでしょう。
アメリカっていう国は、本当に多様で様々な価値観があって実に面白い国だなあと、改めて思いました。
できれば劇場で観ることをお勧めします。
私も劇場でもう一度見ようと思っています。
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翻って、私がなぜミニマリストたちに魅力を感じるのか、ということを考えてみると、
潜在的にこのノマド性が私の中にもあるからかもしれないと、ふと気づきました。
一か所にずっといると落ち着かなくなる。
だから、いつでも引っ越せるように準備しておこう。
そういえばアメリカにはまだ行ったことないなあ。
若い頃、グランドキャニオンにあこがれたものですが、どうすればグランドキャニオンに行けるだろう・・
いつなら行けるか、費用はどれくらいかかるか、一人でも大丈夫か・・
というようなことを、ついに考え始めました。
グランドキャニオン、あるいはオーストラリアのグレートバリアリーフや、NZの南島のテカポ湖、カリブ海の島々なんかもいいなあ。
久しぶりに遠くへ行くという夢を思い出して、少し興奮しているところです。
それを考えたら、ちまちました我家のモノなんてぜーんぶ捨てちまってもいいよねえ。