今日、新番組のキャスト・スタッフで「討ち入りの会」があった。主旨は、これからキャスト・スタッフ一丸となって頑張ろうという事。お酒を飲み、料理を食べ、忌憚の無い話をして、チームワークを作っていく為だ。
しかし、番組のチーフ・プロデューサーがいつまで経っても来ない。やっと連絡がついて、どうも、「牡蠣の食中毒」で慶応病院に運ばれたらしい。いつもは健啖家の彼が「牡蠣」にやられるとは・・・
僕も二回、生牡蠣で当たっている。体中の水分がすべて抜けるくらい、上と下から一晩中、吐き、下痢をし続け、ヒドイ目にあった。朝には立ち上がれない状態。妹の旦那が医者なので、点滴を持ってきてくれて元気になった。それでも、生牡蠣は食べる。ネットで「牡蠣中毒」を調べてみた。
牡蠣に当たる原因としては以下の四点が挙げられる(他にもあったら教えてください)。
貝毒
腸炎ビブリオ
大腸菌
ノロウイルス
それぞれどのような性質を持つのか、拙いながら解説を試みよう。
●貝毒
貝毒とは、ある種のプランクトンの毒性が、それを摂取した貝に蓄えられた状態を指す。
原因プランクトンの種類により、病状は以下のとおりに分類される。
麻痺性貝毒
下痢性貝毒
記憶喪失性貝毒
この中で怖いのは麻痺性貝毒で、最速2時間で死亡した例もあり、広島を含む日本各地の沿岸で発生している。
しかし、貝毒の発生する時期は毎年ほぼ共通しており、3月から5月が警戒すべき時期とされる。
その次に危ないのが10月から11月。
よって、この時期の貝類を警戒すればいいわけだ。
牡蠣の場合はアサリなどと違い、一般の人たちが海で採ることがほとんどないため、養殖業者等がきっちり検査をしていれば、ほとんどの場合、防ぐことができる。
そして、そのセーフティネットはほぼ問題なく機能しており、広島県の場合だが、貝毒が発生する時期は、県内の各海域で、貝毒を引き起こすプランクトンの発生や、貝毒の検査が行われており、規制値を超えた場合は、直ちに出荷規制される仕組みになっている。
その仕組みや生態などもほぼ判明しているため、貝毒で事故を起こすのは、牡蠣の場合であれば、チェック体制のミスとしか言いようがない。
むしろ、貝毒を恐れるのであれば、潮干狩りのアサリのほうが怖い。
3月から5月といえば、貝類が最も旨い時期で、潮干狩りのシーズンに当たるからだ。
もちろん100%安全と述べるつもりはないが、牡蠣を食べる際には、貝毒を恐れる必要はほとんどないと考えても良いのではないかと思う。
●腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは好塩菌で、海中へ普通に存在している。
海水温が20度を超えると増殖するので、冬場の牡蠣であれば気にする必要はない。
地域にもよるだろうが、海水温が20度を超えるのは、5月から10月くらいまでだろう。
通常の腸炎ビブリオなら、当たっても生死に関わることは少ないが、さらに怖いのは、その一種「人食いバクテリア」の異名を持つビブリオ・ブルニフィカス(=ビブリオ・バルニフィカス)だ。
健康な人は摂取しても体調変化を起こさないが、肝硬変などの肝臓疾患を持つ人、糖尿病などの抵抗力が落ちている人に限って発病し、それらの人に対して「人食い化」するらしい。
人食いとは、分単位で進行する劇症性の筋肉壊死から名付けられた。
数時間から数日で死に至り、発病から三日後には、ほぼ手の施しようがなくなるという。
日本での発病はそれほど多くないようだが(単に知られていないだけで、被害は結構あるという指摘もある)、そういう細菌がいることは知っておいて損はないだろう。
よって、問題は夏の牡蠣ということになる。
しかし、この菌は貝毒とは違い、海に由来するものであれば、何にでも付着している可能性があるので、牡蠣だけを特別視して、腸炎ビブリオが怖いというのはナンセンスだ。
むしろ、夏は魚釣りのシーズンなので、そちらのほうがよほど怖いし、裸足で海岸を歩くことすら危険ということになる。
要は牡蠣に限らず、夏場の魚介類を生で食べる際は、腸炎ビブリオに気を付ける必要があるということだ。
なお、
夏には生の牡蠣なんて食べないじゃないか。
という意見もあるだろうが、確かにマガキは食べないが、イワガキは普通に生で食べられているし、実は後述するが、マガキだって食べられるのだ。
●大腸菌
大腸菌の中でも病原大腸菌、 腸炎をおこす大腸菌を指す。
ビフィズス菌だって大腸菌の一種ですが、身体に有益であることは周知の事実。
大腸菌にも善玉と悪玉がいるということなのだろう。
腸管組織侵入性大腸菌、腸管病原性大腸菌、 腸管毒素原性大腸菌、腸管凝集性大腸菌、腸管出血性大腸菌などがあり、有名なO157もこの中に含まれる。
しかし、養殖された牡蠣であれば、現在は大腸菌で中毒を起こすことはほとんどない。
というか、大腸菌の事故なんか起こしてはいけない。
昔は事故も多かったようだが、現在ではほとんどの業者が、三重県的矢の「佐藤養殖場」が1953年に確立した紫外線照射した殺菌海水による浄化を行っている。
この浄化法は、牡蠣が一日に100リットル近い海水を摂取し、鰓(えら)で珪藻類を漉すことにより、養分を摂取していることを逆手にとった浄化法だ。
つまり、殺菌した海水の中へ牡蠣を浸け、体液を循環させることにより、牡蠣の体内に残った大腸菌をすっかり洗い流してしまおうというものだ。
さらに、厚生省(現・厚生労働省)からは、1959年に生食用牡蠣の加工基準が示されている。
○生食用牡蠣の加工基準(抄録)
原料用生食用かきは、海水100ml当たり大腸菌群最確数が70以下の海域で採取されたものであるか、又はそれ以外の海域で採取されたものであつて100ml当たり大腸菌群最確数が70以下の海水又は塩分濃度3%の人工海水を用い、かつ、当該海水若しくは人工海水を随時換え、または殺菌しながら浄化したものでなければならない。
これらの浄化を行った上で、抽出による規定の検査を行い、輸送・保存方法まで定められており、通常であれば、牡蠣を食べて大腸菌に当たることはまずない。
もし、そんなことが起きたなら、よっぽど運が悪いか、生産から流通までのどこかに瑕疵があったと考えられる。
●ノロウイルス
実は牡蠣の食中毒で最も一般的なのはこのウイルスによるものだ。
少し前まで小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれていたが、2002年の国際ウイルス学会で正式に「ノロウイルス」と呼ばれるようになった。
細菌とは異なり、ウイルスの性質が悪いところは、牡蠣の中に存在していたとしても、その駆除が極めて難しいこと。
その上、このウイルスは気温が下がってから活発になるという、インフルエンザ・ウイルスと同じ性質を持つため、感染しても「風邪かな?」と思ってしまうのだ。
ウイルスとは最も単純な生物で、核酸(DNA又はRNA)がタンパク質で包まれている、ほぼ遺伝子だけの生物のこと。
そんな構造なので、単体で生きることはできず、動植物や細菌を宿主として生きている。
そして、ノロウイルスは人間を主な宿主として選定している。
牡蠣の中で増殖するのではなく、牡蠣の中ではおとなしくしていて、 それを食べた人間の中で増殖を始めるのだから、本当に性質が悪い。
#というか、そういうウイルスが増えているよね。自然界で最も繁栄している生物は人間なので、宿主としてターゲットにするのは、ウイルスとして自然な成り行きなのだろう。それにしても迷惑な話だ。
もっとも、食べれば全員が発病するというものではなく、インフルエンザと同じで、体力が弱っていると身体がウイルスに負けてしまい、発病することが多い。
元気な人は摂取しても大丈夫だったりするが、その排泄物にはノロウイルスが含まれている。
そのため、下水が流れ込む海域はノロウイルス生息の危険が高くなる傾向にある。
広島湾の場合、後背地に人口百数十万の大都市を抱えているため、どうしても一定のリスクを伴うことになる。
これは知っておいたほうがいいだろう。
ただし、ノロウイルスは空気感染することもあるため、インフルエンザと同じで、牡蠣だけを目の仇にしても仕方がない部分はある。
また、ノロウイルスに当たると、高熱が出るし、下痢はするし、悪寒は酷いし、ろくなもんじゃないものの、直接的に命を取られることはあまりない。
僕自身は、身体が弱っているときには、生牡蠣を食べないようにしている。
そして、これは貝毒以外に共通することだが、
しっかり熱を通せば当たることはないのだ。
腸炎ビブリオは中心温度が70度で一分以上、大腸菌は様々な菌がいるけれど、例えばO157なら中心温度75度で一分以上、ノロウイルスは中心温度85度で一分以上加熱すれば、ほぼ死滅又は不活性化する。
つまり、具体的には中心温度85度で一分以上加熱すれば安全なのだ。
また、大量に食べることも控えたほうがいい。
A型肝炎ウイルスが経口感染する可能性が高くなるからだ。
牡蠣の栄養素は肝臓に良いとされているが、生牡蠣をドカドカ食べて、A型肝炎になったのでは笑うに笑えない。
なお、A型肝炎はその他の肝炎に比べて重症化・慢性化することは少なく、たいていは完治するし 、15歳以上の日本人のほとんどはA型肝炎ウイルスに対する抗体(HA抗体)を持っているため、感染しても発病しないことが多い。
逆に考えれば、小さな子供に生牡蠣をたくさん食べさせてはならないということになるだろう。
さて、これでおおよその牡蠣に当たる原因は整理できたと思う。
結果として、牡蠣を生で食べるには、日頃の健康と、体調が良いときを選んで食べることが大切ということになる。
それが嫌なら、充分に加熱して食べることになるのだが、僕に言わせれば、
そんなに長時間加熱したら牡蠣が不味くなるわい!
ということになる。
僕はこれまで、大量の生牡蠣を食べてきたが、当たったのは前述の一回のみ。
しかも、冬期には地元、広島産の牡蠣をかなり頻繁に食べている。
それでも大丈夫なので、個人的にはほとんど心配していない。
大切なことは、きっちりした説明もせずにウチの牡蠣は大丈夫ですよ!とPRすることではなく、
牡蠣って危ない素材なんだぁと、漠然とした根拠のない不安から毛嫌いするのでもなく、
牡蠣を取り扱う人たちは、正確な情報伝達と、可能な限りの安全確保に努め、
消費者はそのことを理解した上で、料理法等を検討することではないだろうか。
牡蠣というのは、それだけの努力を払っても食べる価値のある、旨さと栄養分を兼ね備えた素材だと僕は思う。
早く元気になってネ・・・







しかし、番組のチーフ・プロデューサーがいつまで経っても来ない。やっと連絡がついて、どうも、「牡蠣の食中毒」で慶応病院に運ばれたらしい。いつもは健啖家の彼が「牡蠣」にやられるとは・・・
僕も二回、生牡蠣で当たっている。体中の水分がすべて抜けるくらい、上と下から一晩中、吐き、下痢をし続け、ヒドイ目にあった。朝には立ち上がれない状態。妹の旦那が医者なので、点滴を持ってきてくれて元気になった。それでも、生牡蠣は食べる。ネットで「牡蠣中毒」を調べてみた。
牡蠣に当たる原因としては以下の四点が挙げられる(他にもあったら教えてください)。
貝毒
腸炎ビブリオ
大腸菌
ノロウイルス
それぞれどのような性質を持つのか、拙いながら解説を試みよう。
●貝毒
貝毒とは、ある種のプランクトンの毒性が、それを摂取した貝に蓄えられた状態を指す。
原因プランクトンの種類により、病状は以下のとおりに分類される。
麻痺性貝毒
下痢性貝毒
記憶喪失性貝毒
この中で怖いのは麻痺性貝毒で、最速2時間で死亡した例もあり、広島を含む日本各地の沿岸で発生している。
しかし、貝毒の発生する時期は毎年ほぼ共通しており、3月から5月が警戒すべき時期とされる。
その次に危ないのが10月から11月。
よって、この時期の貝類を警戒すればいいわけだ。
牡蠣の場合はアサリなどと違い、一般の人たちが海で採ることがほとんどないため、養殖業者等がきっちり検査をしていれば、ほとんどの場合、防ぐことができる。
そして、そのセーフティネットはほぼ問題なく機能しており、広島県の場合だが、貝毒が発生する時期は、県内の各海域で、貝毒を引き起こすプランクトンの発生や、貝毒の検査が行われており、規制値を超えた場合は、直ちに出荷規制される仕組みになっている。
その仕組みや生態などもほぼ判明しているため、貝毒で事故を起こすのは、牡蠣の場合であれば、チェック体制のミスとしか言いようがない。
むしろ、貝毒を恐れるのであれば、潮干狩りのアサリのほうが怖い。
3月から5月といえば、貝類が最も旨い時期で、潮干狩りのシーズンに当たるからだ。
もちろん100%安全と述べるつもりはないが、牡蠣を食べる際には、貝毒を恐れる必要はほとんどないと考えても良いのではないかと思う。
●腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは好塩菌で、海中へ普通に存在している。
海水温が20度を超えると増殖するので、冬場の牡蠣であれば気にする必要はない。
地域にもよるだろうが、海水温が20度を超えるのは、5月から10月くらいまでだろう。
通常の腸炎ビブリオなら、当たっても生死に関わることは少ないが、さらに怖いのは、その一種「人食いバクテリア」の異名を持つビブリオ・ブルニフィカス(=ビブリオ・バルニフィカス)だ。
健康な人は摂取しても体調変化を起こさないが、肝硬変などの肝臓疾患を持つ人、糖尿病などの抵抗力が落ちている人に限って発病し、それらの人に対して「人食い化」するらしい。
人食いとは、分単位で進行する劇症性の筋肉壊死から名付けられた。
数時間から数日で死に至り、発病から三日後には、ほぼ手の施しようがなくなるという。
日本での発病はそれほど多くないようだが(単に知られていないだけで、被害は結構あるという指摘もある)、そういう細菌がいることは知っておいて損はないだろう。
よって、問題は夏の牡蠣ということになる。
しかし、この菌は貝毒とは違い、海に由来するものであれば、何にでも付着している可能性があるので、牡蠣だけを特別視して、腸炎ビブリオが怖いというのはナンセンスだ。
むしろ、夏は魚釣りのシーズンなので、そちらのほうがよほど怖いし、裸足で海岸を歩くことすら危険ということになる。
要は牡蠣に限らず、夏場の魚介類を生で食べる際は、腸炎ビブリオに気を付ける必要があるということだ。
なお、
夏には生の牡蠣なんて食べないじゃないか。
という意見もあるだろうが、確かにマガキは食べないが、イワガキは普通に生で食べられているし、実は後述するが、マガキだって食べられるのだ。
●大腸菌
大腸菌の中でも病原大腸菌、 腸炎をおこす大腸菌を指す。
ビフィズス菌だって大腸菌の一種ですが、身体に有益であることは周知の事実。
大腸菌にも善玉と悪玉がいるということなのだろう。
腸管組織侵入性大腸菌、腸管病原性大腸菌、 腸管毒素原性大腸菌、腸管凝集性大腸菌、腸管出血性大腸菌などがあり、有名なO157もこの中に含まれる。
しかし、養殖された牡蠣であれば、現在は大腸菌で中毒を起こすことはほとんどない。
というか、大腸菌の事故なんか起こしてはいけない。
昔は事故も多かったようだが、現在ではほとんどの業者が、三重県的矢の「佐藤養殖場」が1953年に確立した紫外線照射した殺菌海水による浄化を行っている。
この浄化法は、牡蠣が一日に100リットル近い海水を摂取し、鰓(えら)で珪藻類を漉すことにより、養分を摂取していることを逆手にとった浄化法だ。
つまり、殺菌した海水の中へ牡蠣を浸け、体液を循環させることにより、牡蠣の体内に残った大腸菌をすっかり洗い流してしまおうというものだ。
さらに、厚生省(現・厚生労働省)からは、1959年に生食用牡蠣の加工基準が示されている。
○生食用牡蠣の加工基準(抄録)
原料用生食用かきは、海水100ml当たり大腸菌群最確数が70以下の海域で採取されたものであるか、又はそれ以外の海域で採取されたものであつて100ml当たり大腸菌群最確数が70以下の海水又は塩分濃度3%の人工海水を用い、かつ、当該海水若しくは人工海水を随時換え、または殺菌しながら浄化したものでなければならない。
これらの浄化を行った上で、抽出による規定の検査を行い、輸送・保存方法まで定められており、通常であれば、牡蠣を食べて大腸菌に当たることはまずない。
もし、そんなことが起きたなら、よっぽど運が悪いか、生産から流通までのどこかに瑕疵があったと考えられる。
●ノロウイルス
実は牡蠣の食中毒で最も一般的なのはこのウイルスによるものだ。
少し前まで小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれていたが、2002年の国際ウイルス学会で正式に「ノロウイルス」と呼ばれるようになった。
細菌とは異なり、ウイルスの性質が悪いところは、牡蠣の中に存在していたとしても、その駆除が極めて難しいこと。
その上、このウイルスは気温が下がってから活発になるという、インフルエンザ・ウイルスと同じ性質を持つため、感染しても「風邪かな?」と思ってしまうのだ。
ウイルスとは最も単純な生物で、核酸(DNA又はRNA)がタンパク質で包まれている、ほぼ遺伝子だけの生物のこと。
そんな構造なので、単体で生きることはできず、動植物や細菌を宿主として生きている。
そして、ノロウイルスは人間を主な宿主として選定している。
牡蠣の中で増殖するのではなく、牡蠣の中ではおとなしくしていて、 それを食べた人間の中で増殖を始めるのだから、本当に性質が悪い。
#というか、そういうウイルスが増えているよね。自然界で最も繁栄している生物は人間なので、宿主としてターゲットにするのは、ウイルスとして自然な成り行きなのだろう。それにしても迷惑な話だ。
もっとも、食べれば全員が発病するというものではなく、インフルエンザと同じで、体力が弱っていると身体がウイルスに負けてしまい、発病することが多い。
元気な人は摂取しても大丈夫だったりするが、その排泄物にはノロウイルスが含まれている。
そのため、下水が流れ込む海域はノロウイルス生息の危険が高くなる傾向にある。
広島湾の場合、後背地に人口百数十万の大都市を抱えているため、どうしても一定のリスクを伴うことになる。
これは知っておいたほうがいいだろう。
ただし、ノロウイルスは空気感染することもあるため、インフルエンザと同じで、牡蠣だけを目の仇にしても仕方がない部分はある。
また、ノロウイルスに当たると、高熱が出るし、下痢はするし、悪寒は酷いし、ろくなもんじゃないものの、直接的に命を取られることはあまりない。
僕自身は、身体が弱っているときには、生牡蠣を食べないようにしている。
そして、これは貝毒以外に共通することだが、
しっかり熱を通せば当たることはないのだ。
腸炎ビブリオは中心温度が70度で一分以上、大腸菌は様々な菌がいるけれど、例えばO157なら中心温度75度で一分以上、ノロウイルスは中心温度85度で一分以上加熱すれば、ほぼ死滅又は不活性化する。
つまり、具体的には中心温度85度で一分以上加熱すれば安全なのだ。
また、大量に食べることも控えたほうがいい。
A型肝炎ウイルスが経口感染する可能性が高くなるからだ。
牡蠣の栄養素は肝臓に良いとされているが、生牡蠣をドカドカ食べて、A型肝炎になったのでは笑うに笑えない。
なお、A型肝炎はその他の肝炎に比べて重症化・慢性化することは少なく、たいていは完治するし 、15歳以上の日本人のほとんどはA型肝炎ウイルスに対する抗体(HA抗体)を持っているため、感染しても発病しないことが多い。
逆に考えれば、小さな子供に生牡蠣をたくさん食べさせてはならないということになるだろう。
さて、これでおおよその牡蠣に当たる原因は整理できたと思う。
結果として、牡蠣を生で食べるには、日頃の健康と、体調が良いときを選んで食べることが大切ということになる。
それが嫌なら、充分に加熱して食べることになるのだが、僕に言わせれば、
そんなに長時間加熱したら牡蠣が不味くなるわい!
ということになる。
僕はこれまで、大量の生牡蠣を食べてきたが、当たったのは前述の一回のみ。
しかも、冬期には地元、広島産の牡蠣をかなり頻繁に食べている。
それでも大丈夫なので、個人的にはほとんど心配していない。
大切なことは、きっちりした説明もせずにウチの牡蠣は大丈夫ですよ!とPRすることではなく、
牡蠣って危ない素材なんだぁと、漠然とした根拠のない不安から毛嫌いするのでもなく、
牡蠣を取り扱う人たちは、正確な情報伝達と、可能な限りの安全確保に努め、
消費者はそのことを理解した上で、料理法等を検討することではないだろうか。
牡蠣というのは、それだけの努力を払っても食べる価値のある、旨さと栄養分を兼ね備えた素材だと僕は思う。
早く元気になってネ・・・








