鮮烈な印象の茜色は「なまはげ」「竿燈」など、秋田の風土に息づいた赤だそうだ。
なぜか秋田にいる。ふらっと一杯飲みにやってきた。出張ではない。
新幹線の車窓からは、北上川の流れ、新緑の杜、残雪の岩手山、盛岡は美しい町だ。
東京から530kmをわずか130分、11番線に茜色のE6系ロングノーズが入ってきた。
E6系はここから高架を降りて、田沢湖線から奥羽本線を経て、在来線を秋田まで走る。
駅ビルFES"ANで仕込んだ釜石の "浜千鳥"、すっきりした純米生貯蔵酒はやや甘め。
岩手が誇る前沢牛と牛蒡をすきやき風に仕上げた "前沢牛めし" は旨い肴になる。
"浜千鳥" にほろ酔ってうたた寝するうちにE6系は後ろ向きに走っている。
すでに大曲を出て奥羽本線をラストスパートにかかっていた。
曇天の秋田駅前はすでに街灯にがともっている。昼間から飲む後ろめたさを和らげるね。
っと、ちょうど提燈に灯が入った「秋田きりたんぽ屋」に吸い込まれてみる。
マタギの家のような古民家風の店内、カウンターで生ビールを呷る。
肴はエイの干物を醤油と酒で甘辛く煮込んだ "かすべ"、海藻を煮込んだ "ゑご"。
どちらも手間のかかった秋田の郷土料理なのだ。
となると酒も秋田の "高清水"、キレある喉ごしの辛口純米が旨い。
〆に "きりたんぽ鍋" をつつく。独りだけどね。
秋田の味を堪能したら、泊まらずに東京へ戻ろう。 きっと終点まで覚めることはない。
秋田新幹線 盛岡~秋田 127.3km 完乗
わたしの首領 / 石野真子 1978